人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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手に入れた自由 ピーター・シスの闇と夢 9/24

練馬区立美術館に行ってきました。美術展らしい美術展行くのすごいひさしぶり…
展示は「ピーター・シスの闇と夢」です。

neribun.or.jp

ピーター・シスは旧ソ連下のチェコスロバキア出身のアニメ作家、絵本画家です。

Peter Sís - Wikipedia(英語)
今回の展示まで知らなかったのですが、彼の一番有名な作品は絵本ではなくアマデウスのポスターデザインだと思います。

社会主義国家として厳しく統制されていた時代、芸術関係の仕事をしていたため国外の自由な世界を知っていた親に育てられた彼もまた、自由な世界に対するあこがれを持って育ちます。
厳しい言論統制をかいくぐって子供たちに少しでも自由な心を伝えようとアニメーションの仕事をしていた彼はついにアメリカへの亡命を果たします。
その自由の国でのびのびと育つ自分の子供を見て、自分たちが生きてきた世界について伝えていかなければならないと描き始めたのが絵本作家としての第一歩とのことです。
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「星の使者ーガリレオ・ガリレイ

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展示の入り口ビジュアルになってる絵。このしたの赤い人達が座る扇状の部分が入り口上に貼られ、そこをくぐって入場するようになっていました。

魔法使いの制服みたいに見えてハリポタみたいだな〜授業風景か試験風景かな。ファンタジー★って入場して元絵見たら、全然違うでやんの…

ガリレオ・ガリレイの伝記絵本の一場面だそうです。地動説を唱えたガリレオが、宗教裁判にかけられているシーンだとか……迫害のシーンじゃん。
母国で思想の強制を受けたシスが、子供たちに迫害の恐ろしさやそれでも正しい道を選ぶことの重要さを伝えようとしたのでしょう。このリアリティよ。

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「三つの金の鍵ー魔法のプラハ

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自分の子供のころの思い出やルーツを、子供に伝えるための絵本だそうです。
夜のプラハの街を黒猫に導かれて街の秘密を探すストーリーということです。
白い線はクレヨンを鉄筆で削り落としたのだと思います。この手法の作品がいくつかあった。
手書きの作品ですが銅版画のような繊細さがあります。

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「鳥の言葉」より「唯一性の谷」

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鳥たちが伝説の鳥を自分たちの王として迎えるために旅をするストーリーとのこと。
レンガのような木々で埋め尽くされた山、雲のような鳥、ミステリーサークルのような模様。硬質で神秘的。不思議な絵ですが見ていると穏やかな気持ちになります。
世界を旅する鳥たちは赤や青の世界も通り抜けます。青が好きだった。
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「マンハッタン・ホエール」

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マンハッタンの地下鉄に飾られたポスターとのこと。マンハッタンの地図をくじらになぞらえているそうです。かなり好評だったというの、わかります。
マンハッタンの土地勘はないけれど、もし自分の街がこんな風に表現されたらうれしいだろうなぁ。自分の家はどのへんだろうって探したりしてさ。
アメリカのたくさんの民族のたくさんの文化を飲み込んで、夕方の海に泳ぎだすクジラ。
いいよねぇ。

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告知を見たときはエドワード・ゴーリーみたいな作品かな?と思ってたけど全然違った。
ブラックジョーク的な黒さではなく、サバイバーの物語だった。

旧ソ連、といってわかるのはアラフォー世代が最後じゃないかなぁ。
ソ連崩壊の時を覚えている。京都人は、ベルリンの壁を見たって言っていた。
そんな抑圧された時代に、子供たちに少しでも自由を教えたい、でも直接的な表現をしたら粛清の対象になってしまう。
そんな複雑な気持ちで作られた抽象的な表現のアニメーション、かなり怖かった。
体制への批判とか現状への不満とかが煮詰められた怨念のような作品、子供のころ観たら絶対トラウマになってる。

ソ連はなくなって、チェコスロバキアは一応自由になった。
でも今はウイグルとかイラクとかがまた緊張状態にある。これから10年20年したら、その地域からまたこういう作品が出てくるのかなぁと思うと、ちょっと寂しい気持ちになってしまった。