あなたの知らないクレー 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー
アーティゾン美術館の最後は、クレーです。 というか、一つの美術館でこんなに書くことがあるのがすごい。これで1100円とか!(また言う)
所蔵品展の一角に、パウル・クレーのコーナーがありました。
閉館中であった去年、大幅にクレー作品を追加で購入したそうです。既存収集品1つを含めて網羅的な展示となっていました。
そう、網羅的なんですよね。典型的なクレーというより、クレーってこんな絵も描いてたの?と思うような、まるで全部の作品が別々の人が描いたかのような、いろんなタイプの絵でした。
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「庭師の家」
クレヨンで描いたかのようなざっくりと下地を活かした作品。
幾重にも重なる世界の中にたくさんの木が描かれています。それで庭師なのかな。
リズミカルな作品で、にぎやかになりそうなところを落ち着いた色合いでしっとり大人びた仕上げになっています。
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「数学的なヴィジョン」
何かの回路図のような作品。何の図なんだろうね。教会かな。ネズミ取りかな。上にあるベルを鳴らすためのものなのだろうね。
ブルーノ・ムナーリのような世界。特許用の構造図、建築青写真。
いろんな可能性を想像する。
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「宙飛ぶ竜の到着」
すごく好きです。この中で一番好きかもしれない。
竜というより龍。中国の長い龍。中華街のお祭りのような、ねぶたのような。
お祭りの日に掲げられる長崎くんち。
絵本の一場面のようです。物語がある。
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「立ち向かう矢」
これも好き。さっきの絵とどちらがいいか迷うほどに。
本当にシンプルな絵で、碁盤と矢印しか描かれていない。それでも動きがあるし、これからどんな話が始まるのだろうかという期待感、革命がおこる前のような高揚感がある。
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「羊飼い」
こわーい。
パウル・クレーは無宗教ということになっているそうだけれど、時々ファナティックなものを感じるんだよね……たまに急にアウトサイダー感だしてくるっていうか。普通この色使い出さないでしょうよ。
羊飼い、と言えばもちろんキリストのことだし、美術館の解説でもそう書かれているのだけれど、実際にはどうなんだろうね。
神の子キリストの後光というにはあまりに色遣いが怖いし、キュビズムというにはちょっと違う感じに顔が二つある。どちらかというと二面性を表しているような気がするよ。
キリスト教嫌いなのかな……
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いろんなタイプが見れて面白かったと思う反面、私の好きなタイプのクレーがなくてさみしかったともいう。
しかし閉館中も絵を増やしてるってすごいなぁと思いました。ブリヂストン余裕ある。
リクシルギャラリーみたいに閉館する美術館も増えている中、頑張ってほしいよね。