人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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無料工芸展 5/2

何がゴールデンウィークだ畜生。2つ美術展予約してたのに緊急事態宣言で休館キャンセルだわ。

という悲しみを胸に事前に目をつけてたイベントで唯一開催されてたこれに行ってきました。

ザ・美術骨董ショー The Japantique Show

美術骨董ショー2021。サイトの作りがゼロ年代感漂ってるし、コロナで中止になるとも決行するとの案内もないので不安だったけど、まあ入場無料だし会場はちゃんとしたホテルだしとダメ元で行って見たらやってたよ。よかったね。

 

なかなか広い会場に沢山のショップが来ていてすごかったです。バンクシーとか伊藤若冲とか濤川惣助とかあった。ちなみに若冲はゆるふわ鶏の掛け軸で220万円だった。

他にも象牙の彫り物ですごいリアルな鳩があって欲しかったけど、流石に象牙の管理はできない以前にどうせ買える値段じゃないなって金額も確認してないよ。昔三井美術館でやってたデミタス・コスモスに出てたのと同じ、金地にターコイズのジュールがびっしりついてるカップもあってすごかった。

誰が買うんだろうなあ。いいなぁ。

普通に美術館行ったくらいの満足感がありました。来年も行きたい。

 

京都人がなんでだか買ってくれるというので購入。シャムロックという店から。

シェリーのクイーンアン、サンライズのデミタスカップ&ソーサーとティーカップトリオ。わかりにくいけど手前がデミタスです。

両方1927年イギリス製とのこと。

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こっちがデミタス。すっかりまとまってます。
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こっちが通常サイズ。河からの日の出なんでしょうな。
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どちらもなかなか変わったデザインです。好き。

アンティークフェアに私の好きなこの年代のものがないなぁと呟いたら、京都人に「まだアンティークじゃないからね」って言われた。確かに。あと10年くらいしないとダメか。でもそしたら値段上がりそうだな…

ふわふわのモフモフがたくさん 渡辺省亭 欧米を魅了した花鳥画 4/16

藝大美術館でやっている 渡辺省亭展。迎賓館の七宝絵で有名な人ですね。

seitei2021.jp

しかし「忘れられた天才」みたいな扱いになっててなんでや~って思った。

渡辺省亭 - Wikipedia

濤川惣助というあまりに有名な七宝作家の陰に隠れてしまった感じなのかね。いくら超絶技巧とはいえ下絵があるからこそだろうになぁ。
あと、帝展などに作品を全く出さず個人受注制作が中心だったことも後世に名前が残りにくい原因とのことでした。もったいな~って思うけれど、渡辺省亭自身はべつに仕事もあるし困らなかったんだろうな。本の挿絵の仕事とか、注文が多すぎて「請われて書きましたって添えてもいいなら描く」って条件つけたりしてたみたいだし。

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「牡丹に蝶の図」

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メインビジュアル。やっぱすげえ。
全体としては日本画、それもしっかり本流の古典的なものなのだけれど、リアリティがすごい。
花のにじみの美しさは恐ろしいほどだし、後ろで散ってゆく花の諸行無常管、花弁の落ちる静かな時間経過表現も素晴らしい。

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「葡萄に鼠図」(部分)

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鼠の作品がいくつかあってよかった。すごくふわふわでかわいい。
この作品もだけれど、基本的に動物はめっちゃ精密に写実表現がされている。まるでそこに生きているかのように。対して背景は伝統的日本画、むしろ水墨画のように表現され、稲妻のような茎の植物たちがデザインされている。
本物の動物が絵の中に迷い込んだようなファンタジーの世界を感じる。

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「鳥図(枝にとまる鳥)」

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ドガース君とありますが、印象派の巨匠ドガへプレゼントしたものだそうです。それもその場でさらさらっと描いたものなのだとか。
ちょっとしたデッサンでこれかよ~~~という気持ち。

他の絵みたいにすごい精密描写も良いですが、こういう勢いであっさり描かれたものも良いです。ポストカードなかったけど烏の絵とかめちゃくちゃよかった。

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会場入ってすぐのところに迎賓館の七宝絵の下絵が展示されていましたが、それが迎賓館の壁を模した掲示になっていて雰囲気つかめてすごくよかったです。ちなみにその絵はこれで下絵か?てくらい容赦ない描きこみで、普通の一枚絵作品くらいの緻密さだった。これを七宝にできるんか?っていう挑戦状みたいな。でもそれをちゃんと絵画と見まごう精度で仕上げてくる濤川惣助も化け物だなって思った。

印象に残ったのはこちらのサイトにもあるヒラメ図です。

seitei2021.jp

古今東西、ヒラメのこのポーズ描こうと思った人おる?ていうかヒラメって生涯でこのポーズ撮ることあるの??

半分くらい入れ替わるみたいだから後期も行ってもいいかもな。

超ボリューム アーティゾン新収蔵作品展示4/15

アーティゾンミュージアムのSTEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示に行ったよ。といっても全部が新収蔵作品というわけではなく旧蔵品もあるけれど。

www.artizon.museum

しかしボリュームがすごい。作品リストが16ページだぜ?撮影可能だからモバイルバッテリー持って行ったほうがいいよ。私これで充電カラになってスマホ依存症禁断症状で死ぬかと思った。

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イサム・ノグチ「魚の頭 No2」

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今度東京都美術館イサムノグチやるよね。ちょっと楽しみにしている。
石のかたちを生かして、元のままの岩肌を保っているところ、鑿の跡が残るところとツルツルに磨き上げたところ(この角度じゃ見えないな)があって面白い作品。彼の彫刻にしてはツルツル部分がだいぶ少ない。
穿たれた穴のところが眼窩なのだろうか。上から見ると全体が体をくねらせた魚の形のようにも見える。ずっと見てると手前の出っ張ったところがヒレで左側が頭なんか名?とも思うし。
魚の頭を彫ろうと思って作ったのか、できたものに名前を付けたのかどっちなのかな。

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マン・レイアストロラーベ(天体観測器)」

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これは観測器なので、中央の覗き窓からのぞくのが正しい見方なんだそうです。

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なので裏から見てみた。横に渡された枝の上にある小さなガラス。そこからのぞき込むらしい。
なるほどわからんだし、このダダイズム特集の部屋にあるマン・レイの作品なのだから、わからんのが正解なのだ。

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アルベール・グレーズ「手袋をした女」

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わからんといえばこれもまあまあわからんくてじっくり見てしまった。
タイトルは「手袋をした女」だし解説に「大きな手袋をした女性の姿を認めることができる」ってキッパリ書いてあったんだけど…どれが手袋?
中央の茶色いパーツが上向きのミトンなのかな?

ぽかんとした女性の顔。ステゴサウルスみたいなギザギザ。全体的に歯車の機構のようでリズムが良い作品です。

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田中 信太朗「Heliotrope 2008」

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 これはいいですね!
すごく大きな絵。一面に緑色のごつごつした、ライムの皮のような質感が表現されています。画面全体から光り輝くようで、こういう美術館とかホテルのロビーとか広くてすっきりした場所に置くと本当に良さが引き立ちます。
ヘリオトロープって花の名前らしいけれど、別に緑色の花なわけじゃないんだよね。中央の部分が花芯というわけでもなさそう。
月の表面みたいにも見える。何を描いたというわけでもないのかな。

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見どころがすごくたくさんあってよかったです。
デュシャンのトランクの箱がいくつかあって私も欲しいな!って思った。跡見ろが結構あったし、白髪一雄も見れた。キュビズム多かったなって印象。
9月までずっと同じ展示やってるみたいだからぜひ見に行くとよいと思う。

顧客が本当に求めていたもの コレクションを巻き戻す 4/14

コレクション展だよ。

www.mot-art-museum.jp

東京都現代美術館の設立やコレクションの順番、方針なんかの歴史的解説もあって面白かった。東京都美術館の別館的なやつだったのね。

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浅井 忠「象の図」

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すごいリアルな像の絵。ちゃんと実物に取材してるんだなって。やはり日本画は西洋絵画が入った後の写実主義を消化した作品が好きだな。背景の赤い布地も可愛くて好き。

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石井 林響「童女の姿となりて」

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ヤマトタケルの話だそうです。
クマソタケル兄弟を討つときに、相手を油断させるために叔母のアドバイスで女装して宴に侵入したという古事記の逸話を描いているのだとか。いわゆる、日本最初の男の娘話ですね。ぱっと見は美しいけれどよく見ると顔は割とりりしいような、でも女装子さんだって分かってるからそう見ちゃっているだけのような。
足元画面外に置かれた光源から柔らかく光の当たる布。特に薄物の輝くさまが幻想的。

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黒田 清輝「入江」「引汐」「上汐」

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最近こういうシンプルな絵が好き。数色のグラデーション、何本かの横線で海だと認識できるのは色の選び方が良いからだろうか。海というものの本質をつかんでいるからだろうか。
こういう絵が家に一枚あったらいいだろうなと思う。

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アラン・マッカラム「240個の石膏の代用物」

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撮影不可作品。パンフより。
これね、すごくいい。せっこうでできたふれーむのようなもの。ピカピカに磨かれた黒い表面を持つ四角い塊。それが整然と並べられている。
美術館でリトグラフの小品が壁一面に並んでいるさまを思わせる。岐阜美術館のルドンのような。
なんか、これでいいじゃんねぇ?
人が絵画に求めているもの、この代用品であらかた充足できている気がする。そこにあるという確かな質感と埋められた壁。それで割と十分じゃない?
”顧客が本当に求めていたもの”って割とこれなのかもしれないな。

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バリエーション豊かな作品が多くてとても面白かった。
東京都現代美術館はレストランのパフェが素晴らしいと聞いたので、次は朝鮮史に行ってみたい。

TCAA 2019-2021 受賞記念展 4/14

現代美術館でやってた無料展示。東京都とトーキョーアーツアンドスペースが行っているTokyo Contemporary Art Awardの受賞記念展。今回は2人の作品が展示されていました。www.mot-art-museum.jp

 

下道基行「14歳と世界と境」

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14歳(なんでこういうの14歳なんだろ。エヴァかな)に、自分と世界との境界をテーマに短いエッセイを描いてもらうプログラム。
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日本だけでなく、中国と韓国でもやって新聞で連載したり、冊子にまとめたりしてた。美学ではなく理論系の人ね。

まあ試みは面白いけど、それって「美術」かなとか、この「作品」の作者は14先の少年少女達ではないのかなとか考えてしまう。そういう作品集としてはいいけれど、美術展としてはあんまり面白くない。

これがアートならSF短編集だって現代アートになるのかな。

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風間サチコ「国粋的アイドル(富士山)」

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版画と、その版木を組み合わせた作品。ぱっと見ただ組み合わせただけかなと思いきや、よく見るとだいぶ違う。上の絵を刷り終えた後、版木をさらに彫り進めたようだ。雲の部分とかだいぶ彫られている。

下の部分は木なので彫ることはできても元に戻すことはできない。中央の英字の部分などは黒く塗りつぶしてるだけで、よく見ると英字は上と同じものが彫られてるのがわかって面白かった。

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風間サチコ「新秩序」

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世界の底が抜けたような絵。巨大な水栓を抜いて河から水が抜けて行く。

世界の新秩序とはなんだろうか。この人の作品は不穏なものが多いので、これも決してユートピアが訪れるわけではないのだろうなと思ってしまう。水が枯れてマッドマックス怒りのデスロードみたいになるんではなかろうか。

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風間サチコ「肺の森ーLINDENBAUM」

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昔話の恋物語のような絵。背景の木のようなものはレース襟のようにも見えるが、よく見ると逆さまになった肺の毛細血管とわかる。こういう風に肺をデザインした版画作品が何枚もある。

肺をテーマにした一連の作品群。

最初に世界観の説明のような解説があるんだけど、全然意味が読み取れなくて???てなった。とあるクラシック音楽の話をしていたはずがとある男の半生や死に様の話になって、映画の話なのか小説の話なのか数回読んでも理解できなかったので諦めた。

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風間さんの作品は大きくて思い切りがよく、勢いがあって好きだな。

リアルなSFの世界 ライゾマティクス_マルティプレックス 4/14

ライゾマティクス展に行ってきたぞ

www.mot-art-museum.jp

元々行くつもりだったのだけど、ある日Twitterで「日曜美術館」ってNHKの番組名がトレンド入りしてて、なんでかな?て思ってテレビつけてみたらこの展示会の特集をしてた。

やべー、混んじゃうじゃん!と慌てて行ってきたわけだけど、でも平日だからかそれほど混んではなかった。よかったよかった。

 

ライゾマティクスってなんぞや?という問いには芸術集団という解説があった。わからん。

Rhizomatiksrhizomatiks.com

ハイテクを利用したパフォーマンスや映像作品を作ってるとこなのね。

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Rhizomatiks×ELEVENPLAY "multiplex"

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perfumeの演出担当をしているmikikoの担当する別ユニット、elevenplayというダンスユニットとのコラボ作品。

まず全室で、elevenplayのダンス動画を見る(こちらは撮影不可)。動く台座を舞台にしてめまぐるしい照明、レーザーの中で彼女たちが踊る。その踊りに合わせてCGが展開され、腕の振りから春のように光が生まれたり、ダンサーの体が光の粒子に分解されたり、幻想的な動画が展開される。

その次の部屋に行くとみれるのが、elevenplayが踊っていた舞台。台座が動き、音楽が響き、レーザーが舞う。

果たして先程の映像はどこまでが実写でどこまでがCGなのだろうか?と考えてしまう。今見ているのは彼女たちが見ていたものと同じなのか。だとしたらダンサーの動きに対応するようなレーザー照明は難しいのではないか?でもライゾマティクスならリアタイで映像解析してやりそうでもあるしなぁ。

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Home Sync Light

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これ、使うアテもないのに欲しくなった。

ライブ動画配信に合わせて使用するLEDデバイスだそうです。

配信する動画の可聴音域に埋め込まれた音響透かしをデバイス内蔵のマイクで検出し、映像と光のパターンを同化して表示。そのため、電源を入れるだけで配信ライブと光の連動した演出を楽しむことができるのだそう。

つまりこういうこと
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ライブ音源に合わせてギュンギュン光るのね。パターンも色々あってめちゃくちゃ盛り上がりそう。アニメの応援上映とかでやっても良さそうだ。

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Points "Air Gun"

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実演映像もあったけどそちらは撮影不可。

画像を設定してその輪郭線どおりに球を発射するエアガンなのだそう。割と複雑な模様も綺麗に撃ち抜くことができるみたい。

なのでこのエアガンの前に立てば、映画の凄腕ガンマンみたいに体スレスレのところをぐるりと打ち抜いてもらうこともできるはず。

…とはいえ入力データの問題か動作精度の問題か、全然関係ないとこにたまに発射されたりしてたからリアルでやるのは厳しいかな。

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particles 2021

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日曜美術館でやってた、すごい展示。

子供用のおもちゃでこういうのあるよね。レールの上をパチンコ球が滑り落ちるやつ。あれのものすごく巨大バージョン。

ライゾマティクスってそういう団体なんだなってわかるね。子供の頃夢中になってた遊びを、今でも真剣にやっている。楽しいんだろうなあ。

このピカピカ光ってるのは、球が光ってるのではなくレーザーを照射して照らしています。このレーザーをどこに当てるかの算出をどうやって行ってるのかテレビ見てもよくわからなかったな。画像認識で場所を判定してるのか、球をレールに乗せた段階で軌道計算してるのか。画像認識するには暗いから後者かなぁ。

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最初に希望者は謎のデバイスを渡されるんだけど、音声ガイドでもない展示に連動するでもないで何かな?と思ってたら、最後の部屋に軌道のログが表示されてた。面白いけど、この最後にちょっとだけ面白いのためだけにデバイス持ち歩くのは肩がこる。

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全体にすごくおもしろかった。
撮影不可の動画作品に、perfumeやelevenplayの衣装デザイン、ライブ技術なんかが当て本当に何時間でも見てられるなって思った。
けど、昼前につくように行ったので途中でおなかすきすぎてリタイアした……

マジで万全の体調で行ったほうがいい。もったいなすぎる。

自然へ畏怖はある? クールベと海 4/13

ついに海を見た。地平線のない海を。
それはとても奇妙なものであった。
ギュスターヴ・クールベ

私は「海も山も見えるところ。青空の下に青い海」(わが母校オリジナル臨海学校の歌)こと神奈川県生まれなので、とうぜんのこと海は物心つく前から身近に見ている。
神奈川は海有山あり都心あり田舎あり、富士山も見えれば東京タワーも見える街なので、あまり自然に対して「初めて見た」と思うことがない。
昔岐阜に旅行した時、現地の人に「初めて富士山を見たとき感動した」と聞いたことがあるが、この人やクールベのように自然に対して驚いたことがあるだろうか?と考えてみたが、残念ながらあまり遠くに旅行しないせいかそんな経験がない気がする。
しいて言えば、神戸の北野異人館街に連れて行ってもらったとき、「こんなやばい坂に家を建てるなんて神戸の人何考えてるの?!馬車とか使えなくない?」って思ったくらいか。

前置きが長くなったが、クールベ展である。

panasonic.co.jp

フランスの山村に生まれたクールベは22歳の時に初めて海を見て、その驚きを家族に手紙で伝えたのだという。

彼はそれまでの「ピクチャレスク」という考え、自然を理想化して描く方式を否定して、徹底的なレアリスムで風景画を描いた人である。その姿勢が印象派へとつながる一つのピースになったのだという。(のは本当なんだろうけど、日本で印象派が人気すぎるからって何でもかんでも印象派に関連付けて紹介する美術展が多いのはどうかなぁと思わんでもないよ正直なところ)

今回の展示は構成が工夫されていて面白かった。展示タイトルは「海」なのに、最初は山から始まる。クールベの描いた山、野生動物、そしてクールベ以前の海、クールベと同時代の海と周辺を固めてからの堂々たるクールベの海の絵である。
絵画の流れを知ってからの海の絵はすごくわかりやすくていいなと思った。
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ギュスターヴ・クールベ「岩山の風景、ジュラ」

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うまい…のか?なんかクレヨンでぐりぐり描いたみたいでのっぺりしていてあんま好きじゃないな。美化しないで見たとおりに描いたといえば確かにその通りなのだけれど、でもそれがいいのかっていうと必ずしもそうじゃなくない?っていうか。

この時代の他の人と比べて面白いのは、この絵画にはパッと見て水がどこにあるかわからないところ。
他の人の”理想化された”絵画、水が水色で描かれているんだよね。でも川の水というのは鏡であり、光を反射して白く輝くか、周囲の風景を溶け込ませて暗く沈み込むかのどちらか何だよね。さすがレアリスム画家。

この絵は正直好きじゃないんだけど、「木陰の小川」という作品はものすごくよかった。

www.google.com

何が違うんだろう?って考えたんだけれど、コントラストかな。一本調子にならずにぐっと暗いところがあるだと思う。
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クロード・モネ「アヴァルの門」

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今回の展示で一番いいと思ったのがこの絵。ポストカードなくてチラシからなので荒い。全然よさが伝わらない。実物見るべき。
同じ海岸線をクールベも描いているのだけれど、モネのほうがずっといい。
海の絵というのはあまりにも描かれた範囲が広すぎて、遠近感が出しにくい。海岸にあるものや船なんかで何とかリズムを作ろうと皆努力してはいるのだけれど、どうしてもただ水平線が何本もあるような絵になってしまう。それでも悪くはないんだけれど。
この絵は海と崖を描きながらも、手前のはっきりした波でそこに海面があるのだとはっきりと水平面を打ち出している。ここにすごい立体感を感じる。そして崖向こうの穏やかな海と空とが一体化して、描かれない水平線が永遠の広さを感じさせる。
いい。ものすごくいい。

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ギュスターヴ・クールベ「波」部分

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コンスタブル展での空のように、クールベ展では海のある風景ではなく海、なんなら波そのものの絵画が展示されていてすごく印象深かった。全く同じ場所から描いた3枚の絵、波が来て、高まり、崩れ落ちるその数秒間を連写のように描いた絵がものすごくよかったのだけれど、ポストカードにもチラシにも全体図がなくてなんでじゃあああ!と私は憤っている。ひどいよ。この絵の前にベンチまでおいているのに、推しじゃないのかよ。

所蔵品じゃないから大人の事情なのかな……

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ジョルジュ・ルオー「人物のいる風景」

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汐留の最後はルオー。といいつつめちゃルオーっぽくない絵。
学生時代の絵だそうです。当時は「レンブラントの再来」といわれたそうで、そうほめそやしていた人たちは最終的にルオーが画風を確立させたときどんな顔してたのかなって思うと面白くなってくる。

「ルオーの裸婦」という小展示ですが、彼が描いた裸婦画は16点、そのうち大作は4つだけなんだそうです。そのうちの9つが所蔵品として展示されていて、収集頑張ったなというのが最初の感想。敬虔なキリスト教徒だったから裸婦とか描きたくなかったのかな。
幻想的でロマンチックな絵です。ふわふわとした森、ぼんやりとした薄明かりに小さく浮かび上がる人物。おとぎ話のようで面白い絵ですね。

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汐留、久しぶりだけどすごくよかった。
クールベ以外にもいい絵がたくさんあったよ。これとかもすごい好き。

spmoa.shizuoka.shizuoka.jp