あなたとわたしと 鴻池朋子 ちゅうがえり 7/14
アーティゾンミュージアムに行ってきた。事前予約制だけど当日券もあり。日本橋の高い建物3フロア3企画を予約券ならたったの1100円で見れて全部撮影も可能。
予約すれば大学生まで無料とかマジで何考えてんの?でくらい太っ腹。
建物もオシャレ。カフェ飯も旨い。にわかには信じがたいゴージャスさ。必見。
と言うわけでまずは企画展の話。
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり
ブリヂストンってやっぱ石橋なんだねとどうでもいい感想を抱きます。
以下、すべて作者は鴻池朋子さんです。
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皮トンビ
メインビジュアルになっている作品。巨大な革に、宇宙が描かれています。
そう、宇宙だと思う。銀ぎつねと、トンビと、オタマジャクシと、惑星たち。全部まとめて宇宙。
もともと
いろんな作品を見ていて思うのだけれど、この人は循環に取りつかれているように思います。ぐるぐるとめぐり、どんどん姿を変えて進んだ先にいつの間にか元のところに戻る物語。自然の摂理。そういうものを感じます。
この作品はもともと2019年の瀬戸内国際芸術祭のために作成されたものだそうです。
大島の屋外に展示し、芸術祭が終わった後もその場に残して半年ほど野ざらしにしてから回収したものなのだそうです。なのでパッチワークのように破れ、補修している部分は風雨にさらされていたんだ部分を修復したものなのだとか。
建物の中ではなく自然の木立の中に、風雨にさらされ蜘蛛の巣の張られた状態で見るこの作品はさぞ迫力があったことだろうとおもう。
夜とか見たらおしっこちびっちゃうかもしれ知れない。
これを見た野生生物はどう思うのだろうかね。
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山ジオラマ(大)
湖ジオラマ
洗面器のような器の中に女性?の顔が沈んでるシリーズがいくつかありました。その中の一つ。
レノックス・ロビンスンの小説「顔」を思い出しますね。自然の風景が女性の姿に見えて、それに魅入られてしまった男性が破滅する物語、他にもSFで同じテーマのものを読んだ気がするのだけれどタイトルが思い出せない。
驚いたような表情の女性は本当に生きているのか、それともただそう見えるだけなのか。自らの意志でそこにいるのか、それとも閉じ込められてしまったのか。
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襖絵(インスタレーション)
写真めっちゃ下手じゃん……
会場の中心はこのインスタレーションでした。円を描く坂道をゆっくりと登り、会場に展示された様々な作品を別の角度から見て、滑り台で下に降りる。循環。
体育マットめっちゃ久しぶりに見たよ。
でも僕大人だから…大人は体重が子供より重くて重力加速度が強くて滑り台怖いから…高いところ苦手だから…見るだけでパス。
前チームラボの滑り台めっちゃ怖かったし、あれより角度急そうに見えたんだもん。体育マットだけでは心もとない。
なので下から回り込んでみました。
襖絵は水晶の貼りこまれたものや嵐を描いたものなど、自然をテーマにしたものでした。
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影絵灯篭
すごくカッコいい影絵が見れる作品がいくつか。
地下の生き物から地上、空の生き物へ。生き物の動き、進化の流れ。そういった時間や空間の連続を表す作品になっています。
全体としてはユーモラスで、でもそれだけでは終わらない鵜すら怖さのようなものがある。
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カービングタブロー 赤熊
木の板を掘り込んだ、木版画の版木のような作品です。とはいえ版画のために作成されたわけではなく、この彫り込んだ板そのものが作品。
絵本みたいで好きです。日本の昔話のような絵。かわいいだけではない、恐ろしさも含んだ熊の表現。
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オオカミ皮絵キャンバス
狼の皮???て思ったけど、素材は牛革、水彩、カンヴァスとのこと。
動物の革を利用した作品が多かったです。熊、狼、アザラシなんかも。会場の入り口に「毛皮に触れる可能性があります」と書かれていてなにそれ?とおもったら、大量の毛皮がつるされた通路があったり。
命の存在、生きること、殺すこと、殺さなければならないこと、そうしてめぐる命の循環。そういうことを考えさせられる。
怖かったり、可愛かったり、またユーモラスな作品も多い。でもその裏にはより大きな力の存在があるように思う。
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作品自体の説明というのはほとんどないのだけれど、作者の長めのコラムがいくつもあって興味深く読んだ。
その中で「決められない」というフレーズが何度も繰り返し使われているのが印象に残った。
このアーティゾン美術館での展示で、美術館所蔵作品を3点選んでコラボするように言われたのに決められず、美術館側に決めてもらったこと。瀬戸内国際芸術祭でも何を作るか全く決められないので全然違うことに着手して時間を使ったこと。
こんなに大胆な作品を作る人なのに、発言は随分と、言い方は悪いが優柔不断でそのギャップに戸惑った。
もう一つアレ?とおもったのは作品リストが入り口に置いてなくて、会場の出口にあったこと。ということは作品名とかにはとらわれずにただ作品を見てほしいということなのかなぁ。会場には革トンビを除いて作品名も、何を材料にいつ作ったのかといった情報も全くなかったから、あえてなんだろうなって。
(なのでブログに作品名を書くかちょっと迷ったけど一応書いてます。)
最初に掲示してあった、このコラムがすべてなんだろうと思う。
ただ作者からすべてを開示し、説明し、それで納得して終わるのではなく、鑑賞者側からも意見の発露を求めているのだろうなと理解しました。
なかなか面白かった。