リアルなSFの世界 ライゾマティクス_マルティプレックス 4/14
ライゾマティクス展に行ってきたぞ
元々行くつもりだったのだけど、ある日Twitterで「日曜美術館」ってNHKの番組名がトレンド入りしてて、なんでかな?て思ってテレビつけてみたらこの展示会の特集をしてた。
やべー、混んじゃうじゃん!と慌てて行ってきたわけだけど、でも平日だからかそれほど混んではなかった。よかったよかった。
ライゾマティクスってなんぞや?という問いには芸術集団という解説があった。わからん。
ハイテクを利用したパフォーマンスや映像作品を作ってるとこなのね。
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Rhizomatiks×ELEVENPLAY "multiplex"
perfumeの演出担当をしているmikikoの担当する別ユニット、elevenplayというダンスユニットとのコラボ作品。
まず全室で、elevenplayのダンス動画を見る(こちらは撮影不可)。動く台座を舞台にしてめまぐるしい照明、レーザーの中で彼女たちが踊る。その踊りに合わせてCGが展開され、腕の振りから春のように光が生まれたり、ダンサーの体が光の粒子に分解されたり、幻想的な動画が展開される。
その次の部屋に行くとみれるのが、elevenplayが踊っていた舞台。台座が動き、音楽が響き、レーザーが舞う。
果たして先程の映像はどこまでが実写でどこまでがCGなのだろうか?と考えてしまう。今見ているのは彼女たちが見ていたものと同じなのか。だとしたらダンサーの動きに対応するようなレーザー照明は難しいのではないか?でもライゾマティクスならリアタイで映像解析してやりそうでもあるしなぁ。
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Home Sync Light
これ、使うアテもないのに欲しくなった。
ライブ動画配信に合わせて使用するLEDデバイスだそうです。
配信する動画の可聴音域に埋め込まれた音響透かしをデバイス内蔵のマイクで検出し、映像と光のパターンを同化して表示。そのため、電源を入れるだけで配信ライブと光の連動した演出を楽しむことができるのだそう。
つまりこういうこと
ライブ音源に合わせてギュンギュン光るのね。パターンも色々あってめちゃくちゃ盛り上がりそう。アニメの応援上映とかでやっても良さそうだ。
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Points "Air Gun"
実演映像もあったけどそちらは撮影不可。
画像を設定してその輪郭線どおりに球を発射するエアガンなのだそう。割と複雑な模様も綺麗に撃ち抜くことができるみたい。
なのでこのエアガンの前に立てば、映画の凄腕ガンマンみたいに体スレスレのところをぐるりと打ち抜いてもらうこともできるはず。
…とはいえ入力データの問題か動作精度の問題か、全然関係ないとこにたまに発射されたりしてたからリアルでやるのは厳しいかな。
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particles 2021
日曜美術館でやってた、すごい展示。
子供用のおもちゃでこういうのあるよね。レールの上をパチンコ球が滑り落ちるやつ。あれのものすごく巨大バージョン。
ライゾマティクスってそういう団体なんだなってわかるね。子供の頃夢中になってた遊びを、今でも真剣にやっている。楽しいんだろうなあ。
このピカピカ光ってるのは、球が光ってるのではなくレーザーを照射して照らしています。このレーザーをどこに当てるかの算出をどうやって行ってるのかテレビ見てもよくわからなかったな。画像認識で場所を判定してるのか、球をレールに乗せた段階で軌道計算してるのか。画像認識するには暗いから後者かなぁ。
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最初に希望者は謎のデバイスを渡されるんだけど、音声ガイドでもない展示に連動するでもないで何かな?と思ってたら、最後の部屋に軌道のログが表示されてた。面白いけど、この最後にちょっとだけ面白いのためだけにデバイス持ち歩くのは肩がこる。
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全体にすごくおもしろかった。
撮影不可の動画作品に、perfumeやelevenplayの衣装デザイン、ライブ技術なんかが当て本当に何時間でも見てられるなって思った。
けど、昼前につくように行ったので途中でおなかすきすぎてリタイアした……
マジで万全の体調で行ったほうがいい。もったいなすぎる。
自然へ畏怖はある? クールベと海 4/13
ついに海を見た。地平線のない海を。
それはとても奇妙なものであった。
ギュスターヴ・クールベ
私は「海も山も見えるところ。青空の下に青い海」(わが母校オリジナル臨海学校の歌)こと神奈川県生まれなので、とうぜんのこと海は物心つく前から身近に見ている。
神奈川は海有山あり都心あり田舎あり、富士山も見えれば東京タワーも見える街なので、あまり自然に対して「初めて見た」と思うことがない。
昔岐阜に旅行した時、現地の人に「初めて富士山を見たとき感動した」と聞いたことがあるが、この人やクールベのように自然に対して驚いたことがあるだろうか?と考えてみたが、残念ながらあまり遠くに旅行しないせいかそんな経験がない気がする。
しいて言えば、神戸の北野異人館街に連れて行ってもらったとき、「こんなやばい坂に家を建てるなんて神戸の人何考えてるの?!馬車とか使えなくない?」って思ったくらいか。
前置きが長くなったが、クールベ展である。
フランスの山村に生まれたクールベは22歳の時に初めて海を見て、その驚きを家族に手紙で伝えたのだという。
彼はそれまでの「ピクチャレスク」という考え、自然を理想化して描く方式を否定して、徹底的なレアリスムで風景画を描いた人である。その姿勢が印象派へとつながる一つのピースになったのだという。(のは本当なんだろうけど、日本で印象派が人気すぎるからって何でもかんでも印象派に関連付けて紹介する美術展が多いのはどうかなぁと思わんでもないよ正直なところ)
今回の展示は構成が工夫されていて面白かった。展示タイトルは「海」なのに、最初は山から始まる。クールベの描いた山、野生動物、そしてクールベ以前の海、クールベと同時代の海と周辺を固めてからの堂々たるクールベの海の絵である。
絵画の流れを知ってからの海の絵はすごくわかりやすくていいなと思った。
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ギュスターヴ・クールベ「岩山の風景、ジュラ」
うまい…のか?なんかクレヨンでぐりぐり描いたみたいでのっぺりしていてあんま好きじゃないな。美化しないで見たとおりに描いたといえば確かにその通りなのだけれど、でもそれがいいのかっていうと必ずしもそうじゃなくない?っていうか。
この時代の他の人と比べて面白いのは、この絵画にはパッと見て水がどこにあるかわからないところ。
他の人の”理想化された”絵画、水が水色で描かれているんだよね。でも川の水というのは鏡であり、光を反射して白く輝くか、周囲の風景を溶け込ませて暗く沈み込むかのどちらか何だよね。さすがレアリスム画家。
この絵は正直好きじゃないんだけど、「木陰の小川」という作品はものすごくよかった。
何が違うんだろう?って考えたんだけれど、コントラストかな。一本調子にならずにぐっと暗いところがあるだと思う。
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クロード・モネ「アヴァルの門」
今回の展示で一番いいと思ったのがこの絵。ポストカードなくてチラシからなので荒い。全然よさが伝わらない。実物見るべき。
同じ海岸線をクールベも描いているのだけれど、モネのほうがずっといい。
海の絵というのはあまりにも描かれた範囲が広すぎて、遠近感が出しにくい。海岸にあるものや船なんかで何とかリズムを作ろうと皆努力してはいるのだけれど、どうしてもただ水平線が何本もあるような絵になってしまう。それでも悪くはないんだけれど。
この絵は海と崖を描きながらも、手前のはっきりした波でそこに海面があるのだとはっきりと水平面を打ち出している。ここにすごい立体感を感じる。そして崖向こうの穏やかな海と空とが一体化して、描かれない水平線が永遠の広さを感じさせる。
いい。ものすごくいい。
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ギュスターヴ・クールベ「波」部分
コンスタブル展での空のように、クールベ展では海のある風景ではなく海、なんなら波そのものの絵画が展示されていてすごく印象深かった。全く同じ場所から描いた3枚の絵、波が来て、高まり、崩れ落ちるその数秒間を連写のように描いた絵がものすごくよかったのだけれど、ポストカードにもチラシにも全体図がなくてなんでじゃあああ!と私は憤っている。ひどいよ。この絵の前にベンチまでおいているのに、推しじゃないのかよ。
所蔵品じゃないから大人の事情なのかな……
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ジョルジュ・ルオー「人物のいる風景」
汐留の最後はルオー。といいつつめちゃルオーっぽくない絵。
学生時代の絵だそうです。当時は「レンブラントの再来」といわれたそうで、そうほめそやしていた人たちは最終的にルオーが画風を確立させたときどんな顔してたのかなって思うと面白くなってくる。
「ルオーの裸婦」という小展示ですが、彼が描いた裸婦画は16点、そのうち大作は4つだけなんだそうです。そのうちの9つが所蔵品として展示されていて、収集頑張ったなというのが最初の感想。敬虔なキリスト教徒だったから裸婦とか描きたくなかったのかな。
幻想的でロマンチックな絵です。ふわふわとした森、ぼんやりとした薄明かりに小さく浮かび上がる人物。おとぎ話のようで面白い絵ですね。
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汐留、久しぶりだけどすごくよかった。
クールベ以外にもいい絵がたくさんあったよ。これとかもすごい好き。
ちょっとスカスカ 明治神宮ミュージアム 4/12
宝物殿から20分くらい歩いて明治神宮ミュージアムにも行ってきた。
建物は隈研吾の設計で、かなりすっきりとしてかっこいい建物です。外側は黒で森に溶け込む感じ。内側からは大きな窓から森が見えて開放的。縦のラインが強調された明るい室内はさすが隈研吾という感じ。
ただ、展示内容はなぁ……入場料が千円なんだけれど、それにしてはボリュームが少なくてがっかりした。500円くらいじゃない?適正料金。
一階は明治神宮の紹介。なりたちから紹介するので、明治天皇葬儀の行列模型から始まるのちょっと面白かった。いきなり葬式から始まるって景気悪すぎて笑える。
そのあとには建設時の計画模型や、現在の祭祀の情報などが続いてなかなか興味深い。
二階にあるのは正直公式サイトに載ってあるもの以上のものはないので、プラスアルファがなくても実物が見たいよっていう人にしかお勧めできないなぁ。
エドアルド・キヨッソーネ「明治天皇御尊影/昭憲皇后御尊影」
イタリア出身のお抱え外国人が描いた肖像画。明治天皇は写真が嫌いだったので、カーテンの裏からのぞき見をして描いたものだそうです。
明治天皇の肖像や写真はそれなりにあるけど、修正バリバリで本人には似ていないっていうよね。どの程度似ていたのだろうか?
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六頭曳儀装車
行幸等で使用したという馬車。
なるほど、どの角度から見ても隙のない美しい装飾です。屋根につけられた鳳凰?のお尻まできっちり仕上げていてさすがだなぁと思いました。あちこちから群衆に見られるもんね。
また、車輪につけられたサスペンションがしっかりしていて赤黒の引き締まったデザインでイケてると思ったよ。
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昭憲皇后のどれす、このポスターに載ってるのが全部だった。さみしい。あと着物とか錦絵とか直筆和歌とかあったけど、もっとドレスが見たかったよう。
城金のドレスが特によかった。胸元にループが2つあって、お花でも刺したのかなと思った。ピンクのドレスもここまできれいに色が残ってるのすごいなぁと。
すべての展示の開設が、皇族をたたえる感じの文章なのが面白かった。
全部興味深くばあるけど、でもやっぱりちょっと値段のわりに展示が少なすぎるなぁ。
建物の不思議が過ぎる 気韻生動展 4/12
明治神宮ミュージアムに行くぜぇ~~と意気揚々と家を出て、たどり着いてしまったのがこちらの巨大な建物。
東洋趣味というか、アールデコというか、エキゾチックな巨大門つき。なんかインドネシアの神みたいなのが口からわっかを下げている。なんか穴が開いてて鈴になってそうな気がするのだけれど、どういう時に音が鳴る装丁なのかわからない。
もうでかすぎて全体を写真に収めることができやしない。
左右はなんか復旧工事中?
よく見ると屋根は瓦。でもこのカーブ、普通は青銅とかで葺くやつじゃない?変態的だな。
石造りなのに校倉造。意味あるのか?デザインだけだろ。
石造りなのに高床式。これ、重量的に持ち上げるのすごい大変そう。
というわけで、間違えてたどり着いたのは明治神宮宝物殿です。
内部は全く柱のない30m×15mの巨大な木造空間。体育館みたい。鉄筋コンクリートだからできる作りだろうな。
ものすごく不思議な建物です。どうしてこんなデザインになったんだろう?と想像するだけで面白い。
行ってみたら無料で展示やってて、めちゃくちゃよかったし撮影もほとんど可能だしで最高だった。
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土屋 仁応「鹿」
あ、前銀座で見た人だ。
この人好きです。何が好きって、足先がピンクのところが好き。
すらりとしてまるで心中か夢の中の生き物のようだけれど、足先を見ると生きているんだなぁって思うところがめちゃ好き。
明治神宮という神域にふさわしい作品だと思う。
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secca「A⇔UN」
きゃわわいいいい~~~~
後ろに鏡があって照明が反射して、奥行きがすごくSFみたいになってるのもめちゃくちゃエモくていい。でも写真はめちゃくちゃ撮りにくい。
パズルのピースを組み合わせたような狛犬の像。めちゃくちゃかわいくていい。ぜひ実物を見てほしい。写真じゃよさ全く伝わらない。
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保井智貴「untitled(IGH2)(IGH1)」
順路に従って作品を見ていくと、角を曲がってまっすぐに飛び込んでくるのがこのわんこちゃん。ずるい。これはずるい。何だこのわんころりは。ハートわしづかみじゃないか。キュン死したらどうしてくれるんだ。逮捕。逮捕だこの野郎。
取り乱しました。
実物大の2わんこ、めちゃくちゃかわいらしい。すごくいい。もういいしか言えない。ごめん。
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須田悦弘「雑草」
巨大なケースに作品名プレートだけがあって、何これ?と思ったらこんなところにオオイヌノフグリ。か~わいい。すごくいい。
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いや~思いがけずめちゃくちゃよかった。今年の秋には左右の渡り廊下も修復工事完了するとのことなので、そうしたらまた行きたいです。この建物面白すぎる。
私はあっても良い派です 電線絵画展 4/6
練馬区美術館に行ってきたよ。
今回は日本近代絵画における電線、電柱に関する展示です。
2014年ごろ、無電柱化を推進する団体が葛飾北斎の赤富士に電柱や電線を重ねたヴィジュアルでキャンペーンを行っていたことを覚えているだろうか?
電柱の是非はおいておいて、このヴィジュアルがめちゃくちゃカッコイイことが話題になってしまい、キャンペーンがグダグダになってしまった。そのせいか現在このキャンペーンサイトは消えており、「電柱赤富士カッコイイ!!」というニュースサイトしか見られなくなっている。まあ実際電柱赤富士がかっこよすぎるから悪い。もっと見た目が悪くなるビジュアルにするべきだったよね。
無電柱化自体は悪くないと思うんだけどね~地震とかでも意外と電気より地下管のガスのほうが早く復帰する場合もあるらしいからさ~見た目より機能でどっちがいいのか判断してほしいよ。
ともあれ、電線絵画です。
日本で初めて電線が建ったのは1854年。ペリーが電信機の実験で横浜の野毛に電信線を引くために建てられたものだそうです。
その時に関わった幕府の役人が残した写生が残っていました。すごいな。よく描いたな。
最初の電柱は、電話線でも電気線でもなく電信線用だったんですね。電話の発明が1875年、エジソンが電気供給会社を作ったのが1882年なのでそのそもペリーの時点では電話や電機というもの自体がなかったことになります。
確かに電柱って「でんしんばしら」っていうよね。電信用の柱だから電信柱なんだね。そんなこと考えたこともなかったよ。
おもしろい!
最初に公衆電信(電話じゃないよ)がひかれたのは1869年に横浜築地間だとか、1887年に茅場町に発電所が作られた(しかも火力発電。煙とかすごそう)とか、いろいろ勉強になる展示ですごく楽しいよ。
でも、公式ポストカードに僕の好きな絵が一個もない!ので全部パンフからだよ。
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川瀬巴水「東京十二題 木場の夕暮」
電柱・電線のある浮世絵。めちゃくちゃカッコイイ。
この作品は1926年の制作とのこと。このころには普通に街中に電線はあったはず。
写実的に描けば当然こうなるし、低い街並みに高い電柱はコントラストとなってとても美しい。夕焼けに映えるシルエットも素敵だけれど、水面に映る電柱がコントラストとなってすごい素敵だよねぇ。
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岸田劉生「代々木付近(代々木付近の赤土風景)」
1915年。新興住宅地に建てられた電柱。
彼は電柱を発展や都市部の象徴として描いているけれど、同時代に同じ場所を描いた画家の中には電柱をあえて描かない人もいたのだという。そういう人にとっては、すでに電柱が「醜い」ものだったのだろうか。
明治時代の錦絵では電柱は文明開化・発展の象徴として、新らしい東京の名物として誇らしげに描かれていたのに、どうして疎まれる存在になってしまうんだろうねぇ。
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山口晃「演説電柱」
こちらは2012年、平成24年の作品。寺社のような屋根付きの電柱に演説台が意外と日憂いところについている。それを聞いている人、演説の順番待ちをしている人。ともに着物の人もいれば背広の人もいて、昔のような未来のような不思議な絵となっている。
小松左京のSFみたいでいいねぇ。
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朝井閑右衛門「電線風景」
1950年ごろの作品。電線のある風景、というより電線がメインである絵。サインペンで描いたような風景のほとんどを電線が埋め尽くしている。
どんなにリアルに描いてもさすがにこんなに電線ないだろ~~と思いながら見ていたのだけれど、美術館を出て街に出たら普通に電線だらけでこんなもんだっけか?と驚いた。普段どれだけ無意識に見ているかってことだな。
それでも昔の絵は現在の街並みよりも電線がすごく多い。腕木がものすごく多かったり、ハエタタキのようなデザインになっていたりする。多分電信線があったりだとか、今みたいに線をある程度まとめて通したりしていないからだと思う。
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電線、普通にかっこいいなと思った。
普通に考えたら昔より今のほうが電線多そうなのだけれど、どう見ても昔のほうが多かったりするのが面白かった。
世界的に言えば無電柱化は進んでいて、日本は電柱が非常に多い国になっているのだという。とはいえそれは日本の電線が非常に安全だからということもできる。もちろん工事の難易度や耐震性、災害時の復旧の難易度など、無電柱化に対しては考えるべきことがたくさんある。
こういう展示を見て楽しいなと思うこととは別に、美的感覚だけで電柱の是非を議論すんじゃねえよって正直に思うよ。
私だけの世界 アーティストたちの室内画 町田市立国際版画美術館 4/4
町田駅から歩いて20分くらい。芹が谷公園の中にある町田市立国際版画美術館、二回目。最近ダイエットを強制されているので、歩いて行って来たけどやっぱり坂がすごいすごいえぐい。
公園はちょうど新緑の季節でものすごくきれいだったよ。でも坂がえぐい。
今回は「室内画の版画」というなかなか変わった切り口での展示です。18世紀から現代作家までの幅広い期間、画風も様々なものが見られてお得な感じ。
シャルル・フィリポン「まあ、いとこに冷たくしろっていうの?そんなこと私好きじゃないのを、よく分かってるでしょ」
1870年ごろの、個人コレクター向け版画がはやっていたころの作品。
タイトルは長いけれど状況が一気に想像できる。憤懣やるかたない夫に涼しい顔をした妻。知らん顔でくつろいでいる従弟、という設定のだれか。フランス人は本当にコキュが好きだよねぇ。
妻の服装もとってもかわいくて好き。
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マックス・エルンスト「慈善週間、または七大元素」より
エルンストがいっぱいあったぞ!!!!
私、エルンストすごい好き。何かものすごいものを見ている気になる。絶対に見てはいけないもの。内緒の秘め事。人の世界とは違う道徳のもの。そういうものをこっそり見てしまった気持ち。見たくて見たわけではないのにという焦り。それでも目を離せない恐ろしさ。おそらくは全く何の問題もない普通の絵からとられたイメージを重ね合わせるだけで、どうしてこんな世界が作れるのだろうか。
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マックス・エルンスト「慈善週間、または七大元素」より
先ほどと同じタイトル。というか、同じ本のために作られた作品群。
厳重な門の前に立つ鳥頭の紳士。ものすごく不自然なはずなのにめっちゃスタイリッシュで最初からこうだったかのような自然なスタイルに感じる。どう見ても知的なジェントルマンだ。扉の中央にある円盤は、こちらをのぞき込む別の異形の頭なのだろうか。足元にあるのが一体何なのか。生き物なのか、段差の表現なのかすらわからない。
不思議の国のアリスに出てくる魚とカエルの召使みたいだな。それよりずっとかっこいいけど。
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長谷川潔「薔薇とハートの1(未完成)」
長谷川潔が見れるとは思わなかったよね。この人のメルヘンな世界観、好きです。
このレースの表現がすごい特殊な技法を使っていて、他の誰にも方法を明かさなかったからロストテクノロジーになっているそうです。そうなの?よくわからない。
みかんっていうのもよくわかんないな。十分に完成されているような気がするんだけれど。
他にも意外なところで、ベルメールが見れたよ。
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モーリス・ドニ「『愛』より」
とても親密な雰囲気の絵。室内画なのか?まあ下着っぽいし窓のサンも見えるけれど。
妻のマルトに対する愛をつづった日記からとった文章が添えられているそうです。
パット見何が描かれているのかわかりづらいほどぼんやりとした絵。とても弱いコントラストで儚い世界を表現しています。百合の世界みたいだよね。
室内画、といっても人物画や風刺画、静物画とばらばらのジャンルでした。その中で共通しているのは、親密さ。親しい間柄の人たちだけで作られる穏やかな世界。たった一人でくみ上げる寂しい世界。そのどちらにも閉じた親密な安定感があって、見ていて落ち着く作品が多くてよかったです。
今回の室内画に対して、次は風景画の展示をやるそうです。京都人が見たがってるから、たぶんまた行くと思う。
ちょっと消化不良 絵画のドレス|ドレスの絵画 3/23
神戸ファッション美術館と東京富士美術館のコラボ展ということで八王子まで行ってきた。ちょうど桜の時期なので、八王子の山中はなかなか見事。
本物の時代衣装と、当時の家具調度品。そして同じ時代に描かれた絵画とを展示するという試みは非常に豪華で興味深いものでした。もちろん絵画と衣装は全く同じものではないんだけれど、スタイルや色などかなり近いものを並べていて非常に勉強になる。特にナポレオン戴冠式の絵画とレプリカドレス、そして本物のジョセフィーヌのティアラが展示されていたのはこの2美術館が協力してこそだなぁと感心しました。
けど、やっぱり服が見にくいよ~そこどうなってんの?てところが多すぎるよ~
あとパンフレットが薄い!図録って厚さじゃないよパンフレットだよこれじゃ。ドレスの正面写真じゃなくてせめて後ろからの写真も載せてくれ。できれば横からのも頼む。
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「ローブ・ヴォラント」1730-35年ごろ フランス
18世紀のドレス。贅沢に布をたっぷりと使ったガウンのようなデザイン。背中部分の「ヴァトー・プリーツ」と呼ばれるタックが特徴的とのことでしたが壁を背にこういう座り方をしているマネキンなので見えず。
これさぁ…これ全然わからないよ…背中どうなってるの?打ち合わせの下どうなってるの?スカート部分どうなってるの???
これはさすがにもう少し展示を工夫してほしかったです。
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「シュミーズ・ドレス」1800年ごろフランス、イギリス
ジャン・フランソワ・ボシオ「バドミントン」
これはすごくよかった!
同時代の絵画と衣服とを並べ、同じポーズをとらせているの。めちゃくちゃわかりやすかったです。
胸の下と襟ぐり、そして袖のところをひもで引き絞り結んで着付けをしています。ファスナーとかない時代だから開きはスリット状になっているのだけれどそういうものらしい。スカートの下にはペチコートを着ているようですが、上半身の下着は不明。来てないことはないんだろうけどマネキンだから省略したのかなぁ。
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「プロムナード・ドレス」1880年ごろイギリス
エドゥアール・マネ「散歩」
おんなじ…おんなじ服や!!!!手興奮したけどよく見ると首周りのデザインとか違う。ていうか、マネの画風だと荒いのでよくわかんないねそもそも。でも当時の流行服なんだなぁということが良くわかります。
展示されている女性服の大部分に言えることなんですが、ワンピースだかツーピースだかわかんないんだよねぇ…上半身も下半身も、そしてペチコートも同じ布でできている。そして恐ろしい量のタックとプリーツで全身が覆われている。
どこからどこまでが一つのパーツなのか全然わかんない。前開きなのか後ろ開きなのかすらわかんない。
手に取って見たいなぁ。
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ジョルジュ・クロエガート「夫人像」
こちらは東京富士美術館所蔵の絵。前にも常設展で見たことがあります。
今回新たに追加された開設によると、この状態は着替え中、いわば下着姿なのだとか。探せば同じドレスの絵もありますよというので検索してみました。
たしかに、オーバースカートを着ている絵が見つかりますね。でも上半身はどうなんだろうなぁ。肩紐、着替えた後のほうが細いからこの絵の上に何か来ているというよりは着替えている感じに見えるけれど。ボディスだけ変えて変化をつけたりもしたんだろうか。
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全体にすごく面白くてきれいでいいんですけど、だからこそもうちょっと!もうちょっと何とかならんのか!!!!って思うところがあまりに多かった。
わからん。俺は服のことは何もわからん。
神戸ファッションミュージアムさんは、動画DVDを販売してほしい。マネキンが下着から着付けをしていく様を動画に保存して見せてほしい。
こういうのがすべてのドレスに対してみたいんですよ!!!!
でも実際わからないんだろうな~ドレスは残ってても下着とか残ってないのかもな~
めちゃくちゃ気になる。