人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
Push
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
Push

Push

Push

私だけの世界 アーティストたちの室内画 町田市立国際版画美術館 4/4

町田駅から歩いて20分くらい。芹が谷公園の中にある町田市立国際版画美術館、二回目。最近ダイエットを強制されているので、歩いて行って来たけどやっぱり坂がすごいすごいえぐい。
公園はちょうど新緑の季節でものすごくきれいだったよ。でも坂がえぐい。

hanga-museum.jp

今回は「室内画の版画」というなかなか変わった切り口での展示です。18世紀から現代作家までの幅広い期間、画風も様々なものが見られてお得な感じ。

 

シャルル・フィリポン「まあ、いとこに冷たくしろっていうの?そんなこと私好きじゃないのを、よく分かってるでしょ」

f:id:minnagi:20210412194731j:image1870年ごろの、個人コレクター向け版画がはやっていたころの作品。
タイトルは長いけれど状況が一気に想像できる。憤懣やるかたない夫に涼しい顔をした妻。知らん顔でくつろいでいる従弟、という設定のだれか。フランス人は本当にコキュが好きだよねぇ。

妻の服装もとってもかわいくて好き。

---

マックス・エルンスト「慈善週間、または七大元素」より

f:id:minnagi:20210412194742j:image

エルンストがいっぱいあったぞ!!!!
私、エルンストすごい好き。何かものすごいものを見ている気になる。絶対に見てはいけないもの。内緒の秘め事。人の世界とは違う道徳のもの。そういうものをこっそり見てしまった気持ち。見たくて見たわけではないのにという焦り。それでも目を離せない恐ろしさ。おそらくは全く何の問題もない普通の絵からとられたイメージを重ね合わせるだけで、どうしてこんな世界が作れるのだろうか。

---

マックス・エルンスト「慈善週間、または七大元素」より

f:id:minnagi:20210412194735j:image先ほどと同じタイトル。というか、同じ本のために作られた作品群。

厳重な門の前に立つ鳥頭の紳士。ものすごく不自然なはずなのにめっちゃスタイリッシュで最初からこうだったかのような自然なスタイルに感じる。どう見ても知的なジェントルマンだ。扉の中央にある円盤は、こちらをのぞき込む別の異形の頭なのだろうか。足元にあるのが一体何なのか。生き物なのか、段差の表現なのかすらわからない。
不思議の国のアリスに出てくる魚とカエルの召使みたいだな。それよりずっとかっこいいけど。

---

長谷川潔「薔薇とハートの1(未完成)」

f:id:minnagi:20210412194728j:image

長谷川潔が見れるとは思わなかったよね。この人のメルヘンな世界観、好きです。
このレースの表現がすごい特殊な技法を使っていて、他の誰にも方法を明かさなかったからロストテクノロジーになっているそうです。そうなの?よくわからない。
みかんっていうのもよくわかんないな。十分に完成されているような気がするんだけれど。

他にも意外なところで、ベルメールが見れたよ。

---

モーリス・ドニ「『愛』より」

f:id:minnagi:20210412194739j:image

とても親密な雰囲気の絵。室内画なのか?まあ下着っぽいし窓のサンも見えるけれど。
妻のマルトに対する愛をつづった日記からとった文章が添えられているそうです。
パット見何が描かれているのかわかりづらいほどぼんやりとした絵。とても弱いコントラストで儚い世界を表現しています。百合の世界みたいだよね。

 

室内画、といっても人物画や風刺画、静物画とばらばらのジャンルでした。その中で共通しているのは、親密さ。親しい間柄の人たちだけで作られる穏やかな世界。たった一人でくみ上げる寂しい世界。そのどちらにも閉じた親密な安定感があって、見ていて落ち着く作品が多くてよかったです。

今回の室内画に対して、次は風景画の展示をやるそうです。京都人が見たがってるから、たぶんまた行くと思う。