人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
Push
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
Push

Push

Push

私はあっても良い派です 電線絵画展 4/6

練馬区美術館に行ってきたよ。
今回は日本近代絵画における電線、電柱に関する展示です。 

www.neribun.or.jp

2014年ごろ、無電柱化を推進する団体が葛飾北斎の赤富士に電柱や電線を重ねたヴィジュアルでキャンペーンを行っていたことを覚えているだろうか?

prtimes.jp

電柱の是非はおいておいて、このヴィジュアルがめちゃくちゃカッコイイことが話題になってしまい、キャンペーンがグダグダになってしまった。そのせいか現在このキャンペーンサイトは消えており、「電柱赤富士カッコイイ!!」というニュースサイトしか見られなくなっている。まあ実際電柱赤富士がかっこよすぎるから悪い。もっと見た目が悪くなるビジュアルにするべきだったよね。
無電柱化自体は悪くないと思うんだけどね~地震とかでも意外と電気より地下管のガスのほうが早く復帰する場合もあるらしいからさ~見た目より機能でどっちがいいのか判断してほしいよ。

 

f:id:minnagi:20210412194903j:image

ともあれ、電線絵画です。
日本で初めて電線が建ったのは1854年。ペリーが電信機の実験で横浜の野毛に電信線を引くために建てられたものだそうです。
その時に関わった幕府の役人が残した写生が残っていました。すごいな。よく描いたな。
最初の電柱は、電話線でも電気線でもなく電信線用だったんですね。電話の発明が1875年、エジソンが電気供給会社を作ったのが1882年なのでそのそもペリーの時点では電話や電機というもの自体がなかったことになります。
確かに電柱って「でんしんばしら」っていうよね。電信用の柱だから電信柱なんだね。そんなこと考えたこともなかったよ。
おもしろい!
最初に公衆電信(電話じゃないよ)がひかれたのは1869年に横浜築地間だとか、1887年に茅場町発電所が作られた(しかも火力発電。煙とかすごそう)とか、いろいろ勉強になる展示ですごく楽しいよ。

 

でも、公式ポストカードに僕の好きな絵が一個もない!ので全部パンフからだよ。

---

川瀬巴水「東京十二題 木場の夕暮」

f:id:minnagi:20210412194914j:image

電柱・電線のある浮世絵。めちゃくちゃカッコイイ。
この作品は1926年の制作とのこと。このころには普通に街中に電線はあったはず。
写実的に描けば当然こうなるし、低い街並みに高い電柱はコントラストとなってとても美しい。夕焼けに映えるシルエットも素敵だけれど、水面に映る電柱がコントラストとなってすごい素敵だよねぇ。

---

岸田劉生「代々木付近(代々木付近の赤土風景)」

f:id:minnagi:20210412194906j:image

1915年。新興住宅地に建てられた電柱。
彼は電柱を発展や都市部の象徴として描いているけれど、同時代に同じ場所を描いた画家の中には電柱をあえて描かない人もいたのだという。そういう人にとっては、すでに電柱が「醜い」ものだったのだろうか。

明治時代の錦絵では電柱は文明開化・発展の象徴として、新らしい東京の名物として誇らしげに描かれていたのに、どうして疎まれる存在になってしまうんだろうねぇ。

---

山口晃「演説電柱」

f:id:minnagi:20210412194910j:image

こちらは2012年、平成24年の作品。寺社のような屋根付きの電柱に演説台が意外と日憂いところについている。それを聞いている人、演説の順番待ちをしている人。ともに着物の人もいれば背広の人もいて、昔のような未来のような不思議な絵となっている。
小松左京のSFみたいでいいねぇ。

---

朝井閑右衛門「電線風景」

f:id:minnagi:20210412194918j:image

1950年ごろの作品。電線のある風景、というより電線がメインである絵。サインペンで描いたような風景のほとんどを電線が埋め尽くしている。
どんなにリアルに描いてもさすがにこんなに電線ないだろ~~と思いながら見ていたのだけれど、美術館を出て街に出たら普通に電線だらけでこんなもんだっけか?と驚いた。普段どれだけ無意識に見ているかってことだな。

それでも昔の絵は現在の街並みよりも電線がすごく多い。腕木がものすごく多かったり、ハエタタキのようなデザインになっていたりする。多分電信線があったりだとか、今みたいに線をある程度まとめて通したりしていないからだと思う。

---

電線、普通にかっこいいなと思った。
普通に考えたら昔より今のほうが電線多そうなのだけれど、どう見ても昔のほうが多かったりするのが面白かった。
世界的に言えば無電柱化は進んでいて、日本は電柱が非常に多い国になっているのだという。とはいえそれは日本の電線が非常に安全だからということもできる。もちろん工事の難易度や耐震性、災害時の復旧の難易度など、無電柱化に対しては考えるべきことがたくさんある。
こういう展示を見て楽しいなと思うこととは別に、美的感覚だけで電柱の是非を議論すんじゃねえよって正直に思うよ。