人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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初期作品が好き コンスタブル展 2/26

三菱一号館は英国絵画が多いよね。好きです。

mimt.jp

そして今回の展示、芸術新潮の今月号を読んでから行くとかなり楽しいと思うよ。お土産コーナーにあったから思わず買ってしまった。

読み終わったらまた行こうかな。ほら、年パス買ったから。年パスをさ!

 さて、ジョン・コンスタブルは18世紀後半のイギリス画家です。この時代絵画がどうだったかというと、宗教改革が起こって宗教がの需要が下がり、かといって宗教画・歴史がを上位とする絵画のヒエラルキーはまだ残っていた状態。新興市民からの肖像画注文が増え始めたころですね。専業画家にとってはやや不遇の時代だったかもしれません。コンスタブルも経済的理由から多くの肖像画を描いています。
一歳違いのウィリアム・マロウド・ターナーもコンスタブルと同様に風景画を好んで描いていますが、どうやら才能というか商才はターナーのほうがあったようで、ちょうどこのころ開設されたロイヤルアカデミーの正会員にわずか14歳でなると自前のギャラリーを開設したりしてかなりの人気画家だったようです。

コンスタブルとターナー、この二人の天才画家が同時代にともに風景画を志したおかげで、イギリスが団に大きな影響を与えて風景画の地位が大きく向上したことは間違いないようです。

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ジョン・コンスタブル「モルヴァ―ン・ホール、ウォリックシャー」

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初期のコンスタブルの絵、かなり好きです。
屋外で好んで制作し、スケッチだけでなく本番作品も屋外で完成させたというコンスタブルは、印象派の初流といってよいと思います。(プレ印象派としてはターナーのほうが有名ですが)
特に木の葉の表現がいいなぁと思います。それまでのまるで粘菌類のような執拗に細かい北方美術の木の葉表現と異なり、風が吹いてざわめいている姿そのままを映しとったような表現が見事です。ゆったりとした強い風が吹き、大地全体をゆすっているような気持のよい平原の表現です。

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ジョン・コンスタブル「雲の習作」

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写真のない時代に雲を屋外でスケッチってどうやってたの?というのが正直な感想。
しかもものすごく正確で、日時のメモがない習作も当時の気象情報と照らし合わせれば何年のものか特定できるほどなのだそうです。
すごく筆の早い人だったのかなぁ。結構しっかりした風景画を2日で完成させたとかいうのもあったし。
嵐の来る前のような不穏な空。いつ振り出してもおかしくない雨雲。でもその向こうには光がさしている。
ドラマティックで美しい絵です。

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ジョン・コンスタブル「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)」

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でも中期~後期になると、正直あんまり好きになれない…のでポストカードは買わず芸術新潮から。
自然をありのままに写し取るというよりピクチャレスクな、様々な景色を組み合わせてより理想的な風景を作り出すことにコンスタブルの関心は移っていきます。
まあわかるよ。そのほうが売れるだろうしね。俺の考えた最強の風景!って楽しいだろうしね。
でも正直くどいよね。
この絵画もとにかく圧が強くて抜きどころがないし、かといって細かく緻密に描かれているというわけでもなく全体的にぶれたような線で表現されています。
そうじゃないんだよな~~~という気持ちでいっぱい。

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ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」

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さて、こちらはターナー。ロイヤル・アカデミーでの展示で先ほどのコンスタブルの絵と同じ部屋に飾られたものだそう。
中央の赤いブイはもともと存在せず、コンスタブルの絵と並べたときに物足りなさを感じたターナーが後から付け足したものなのだとか。
展示の準備期間に加筆できる日ってのが設けられていたのが面白いなと思います。
この二つの絵だったら私はこちらのほうが好きだなぁ。開放感があってすっきりまとまっている。風が吹き抜けていく動きのある絵です。

とはいえターナーも後期になるとコンスタブルのようにピクチャレスクな、ゴリゴリ塗り込んだメロドラマみたいなギラギラした絵も描いてるんだけどね。
ミニマルな絵で終わらせるっていうのは難しいことなのかもしれないな。

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ジョン・コンスタブル「虹が立つハムステッド・ヒース」

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この1作品だけ撮影可能。
きらきら光るというよりはギラギラぺかぺかメッキみたいな光に満ちた作品。(悪口か)
雲の表現は美しいなぁと思うけど、虹はないほうがいいのでは?というか虹を見せるためにその後ろの雲が急に黒くなってるのがすごい不自然で気になる。

でも作品の評価的には中後期のほうが高いのかなぁ。ポストカードもそっちの作品ばかりで残念でした。

またゆっくり見に行きたい