人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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年間大賞2018

2018年はあまり美術館に行けなかったなぁと思う。特に前半は非常に忙しかった。

美術展にいくつ行きましたか、と聞かれるとどう数えていいのかちょっと迷う。
企画展は1つとカウントしていいけれど、同じ日に同じチケットで見た常設展も1つとカウントしていいのだろうか。常設展の中にある所蔵品展は規模が小さめだがこちらも別途カウント対象だろうか。デパートのアートフロアでやっている無料の展示販売会はどうなのだろうか。昨日の長楽館みたいな建物目当てに行ったカフェなんかもカウント対象にしてるんだけど怒られない?

あんまりそういう厳密なことを考えずにざっくり数えると、80個くらいみたかなと思う。

 

思いついた順に、よかった展示をあげてみる。

 

パリジェンヌ展
パリジェンヌは戦い 世田谷美術館 パリジェンヌ展 3/24 - 人の金で美術館に行きたい

単純な美しさだけでなく、生き様みたいなものを見た。

 

装飾は流転する
My heart will go on 装飾は流転する 2/10 - 人の金で美術館に行きたい

すごくかっこよかった。旧朝香宮邸と現代美術が思いのほかマッチしていた。特にシリコンブロックと、吸盤彫刻がよかった。

 

ルドン-秘密の花/ルドン ひらかれた夢

深海と空の青 ルドン-秘密の花園 3/4 - 人の金で美術館に行きたい

ルドンのためならエンヤコラ ルドン ひらかれた夢 11/23 - 人の金で美術館に行きたい

年に2回もルドンを見れるとはね。
作品はどちらもよかったのだけれど、三菱一号館の方がキュレーションの力があるかなぁ。初見の絵はポーラの方が多かったと思うのだけれどね。

 

巨匠たちのクレパス画展

夏休みに行くべき美術展 巨匠たちのクレパス画展 損保ジャパン 8/8 - 人の金で美術館に行きたい

企画が面白かったし、クレパスというなじみのある画材に対するイメージをがらりと変えてくれたのがすごいよかった。

 

冨安由真展

あなたの悪夢 冨安由真展 資生堂ギャラリー 6/23 - 人の金で美術館に行きたい

資生堂ギャラリーであそこまでやる人は初めてだったね。お化け屋敷は苦手だよ…

 

―景・水景― 松原 賢

思ってたんと違った ―景・水景― 松原 賢 展 - 人の金で美術館に行きたい

いろんな意味で想像をはるかに超える作品だった。よかった。そういえば最近ここ行って無いなぁ。

 

 

5個上げようと思ったら数え間違いで6個になった。気にしない。

いい美術展ってなんだろう、と考えてみたのだけれど、やっぱり印象に残る美術展がいいやつだと思う。その時綺麗だったな~と思うかどうかももちろん大事だけれど、名前を聞いてぱっとあの作品を見たやつだ、と思いだせるのがやはり身になった展示ということじゃないかなと思う。有名作が来ればいいというわけではないだろう。
最後に上げたやつとか、特に美術雑誌に載っているわけでなく、チラシを見てふらりと行ったら予想外によかったやつで、見逃さずにラッキーだった。

今年も面白可笑しく生きたいものだ。

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サムネが何もないのもさみしいので猫をあげておきます。

美しいところでおいしいものを 京都・長楽館 12/31

年末年始にちょっくら京都。
前から行きたかった長楽館へ行ってきた。うらやましかろう。

www.chourakukan.co.jp

 

外観のまともな写真が無いのは、12月31日が盆地特有地獄の底冷え&前日北部は雪&じめじめ時雨という最悪のコンディションだったからです。寒い。京都寒い。風もないのに立っているだけで足元から熱を奪われる恐ろしさ。

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内部の写真が少ないのは、予想以上にちゃんとしたカフェで、フロアに店員さんがめっちゃたくさんいて、”これうろうろしたら怒られるやつだ”って思ったからです。
二階には入れなかった。多分一階が喫茶で二階がレストラン。そのうち行きたい。

長楽館は京都の指定有形文化財となっています。入ってみた感想としては、大体は元の形が使われているけれど大胆に変更している個所も多く、重文とかになるほどは原形をとどめていないのかなぁという感じ。
タクシーの運転手さん情報によれば、タバコで財をなしていた村井吉兵衛という人が、明治政府がタバコを国営販売にする際にもらった保証金で建てた建物ということです。
公式の沿革ではその辺のことバッサリ省かれてますね。
貧しい生まれから明治維新の波に乗って一気に出世したアメリカンドリーム的な物語があった模様。

入ってすぐのところ。ジャコビアン様式の旧岩崎邸にちょっと似ている。
塗り壁が広いので明るい印象を受けるのと、色石の柱が珍しいなと思う。
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これは洋館に限らず街の建物を見ていて常に思うのですが、関西は関東と比べてとてもデコラティブですよね。地下鉄の駅とかもとても装飾的。
例えばこの天井に接した狭い壁の部分とか、関東だったらこんなみっちりモチーフで埋めないで平らにしちゃうと思う。
空間恐怖症的なこの過剰なデコラティブさが圧迫感を生み、実際より狭い感じがするのはもったいないことだと思う。

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外は石造り、入口はゴシック、喫茶室はロココ調と、部屋によってだいぶデザインが異なるのが特徴的です。全く伝統的ではない。統一感とか無視してよさげなものテンコ盛りにした感がある。言い方は悪いけれど、地元の金持ちのおっちゃんが作ったんだなぁという感じ。ガチ上流階級が作るとこんな自由にはならない。京都人曰く「アメリカ的」。
この建物を作ったJ.M.ガーディナーという人も変わった経歴のようで、普通に大学に通って建築を学んできたのではなく、独学で建築を学んだ人だそうです。だから、発想が全く伝統的でない。他で見ない独特の建物となっていて面白いなと思う。

 

現存する日本最古のロココ風部屋だそう。たしかに、ロココのデザインは他で見たことがない。ウェッジウッドのジャスパーカップの中にいるような気持ちになる。

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部屋の中にこういう柱があるのは見たことがない。一応カーテンとかついている。

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カフェなのでテーブルがいくつも置かれているが、これもアンティークなのだろうか?多分当時使われていたものではないのだろうなと思う。統一感がないから。

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私の座った席のは中国風。

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タバコで財をなした人ということで、関連グッツがいくつか。
これはコースターなのだけれど、当時のパッケージデザインになっている。3種類あった。持って帰りたかったけど忘れちゃった。

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とてもおいしいスコーンでございました。f:id:minnagi:20190107193324j:plain

 そのうちに階のレストランにも行きたい。
建物は三階建て(珍しい)で、三階は和室だそうだけれど宿泊者しか見れないとのことなので難しいかなぁ…

寒すぎて美術館に行けない 読書感想文 ルドン 私自身に

年末に借りていたルドンの本を読み終えました。

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私の好きな画家オディロン・ルドンの自伝的な本なのですが…

つまんなかったね!エッセイを書こうという気がそもそもないように思った。日記、覚書、批評、思い付いた事柄をただ書き連ねているだけで、人に読ませること前提とした文章ではないようだ。
まぁそもそもの性質からしてそんなものかもしれないね。
このだらだらした本からキャッチーで瑞々しい一文を拾ってきて美術展のコピーとするキュレーターさんはすごい。

 

他の画家や芸術家に関して色々語っているところは面白かった。
ちょうど印象派の人なのだけれど、なぜマネの「草上の昼食」が(ルドン的に)芸術的ではなく下品なのか、というくだりはとても興味深かった。
言っていることに賛同するという意味ではなく、当時大スキャンダルを巻き起こしたあの絵がどう受け止められたのかということが垣間見えるからだ。

 

ルーベンスについても面白い。昨年末、ルーベンス展を見たばかりだったし。

ルーベンスは、あえていえば、退廃気の巨匠である(中略)ルーベンスは古い美術の衰退期に属する。真に新しいと言えるものは何も作っていない。

そう言われてみると、正面切って反論するのは確かにちょっと難しい。彼の作品は確かに王道であるからだ。
群れずに独自の作風を作り上げた自負のある彼は古典的作品があまり好きではないようで、アングルなんかも嫌いなようだ。かといって、当時最先端の印象派も好きではないので面白い。反面、彼が褒めた画家はあまり現代まで評価が続いておらず、結局どんな絵だったのかわからないのも多い。挿絵入れてよ。

まぁ芸術家なんて、自分が最高他はクソくらいな気持ちでないとやってられないのかもしれない。

 

読み終わった正直な感想は、ダリは文章がうまかったなぁ、だ。
ぶっちゃけ画家の自伝って言うから、前に読んだダリの本を読むのと同じテンションで読み始めてしまった。すごいつらかった。面白くないんだもんよ!ルドンの文章!!

minnagi.hatenablog.com

時代が相当あいているのもあるけれど、ナルシスとの総合芸術家と引きこもりコミュ症の画家が書く文を同じ気持ちで読んだ私が悪かったかなと思わなくもないです。

日本一度派手なところ 迎賓館赤坂離宮 12/24

迎賓館がクリスマス期間特別に正面玄関から入れてくれるというので、喜び勇んで行ってきた。

www.geihinkan.go.jp

玄関から入れると言っても、撮影可能なのは相変わらず外側だけ。まぁしょうがないよね。普通に現役で使ってる建物だもの、セキュリティとかあるよね。

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中に入ったらすごいパンフをくれて前はなかったよな!と大興奮。

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この建物は、元々は明治天皇の息子、東宮(後の大正天皇)の住居として建てられたものだ。
しかし「あまりにも華美が過ぎる」として、あとどこがかはわからないけれどいまいち使い勝手が悪いらしく、ほとんど使用されなかったと言われている。

これまでの歩み | 迎賓館赤坂離宮 | 内閣府

でも公式サイトの沿革からすると、意外とみんな住んでたのかしら。住居として使用された、とはあるけれど実際に何年くらい住んでたのかは分からないね。そういうの公表はしないだろうしなぁ。

 

現在は国賓を迎える場、国際会議を行う場、そして国賓の宿泊所として利用されています。端の方の部屋にはホテルよろしく部屋番号が振られているし、ルームサービスもあるらしく、それ専用の食器も展示されている。
日本一派手なホテルですよ間違いなく。中が見たいわぁ。客室見せて欲しいわぁ。セキュリティの馬鹿。
でもここに泊まったとして、普通にフラフラ廊下歩いてたら怒られそうな気がする。

 

内部の写真はないので、以下パンフです。
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正面玄関から入れる、というのが今回のウリでしたが、正面の真ん中の扉は開けてくれませんでした。そのわきの扉が開いていた。あと、この中央階段も通らせてくれなかった。
ケチである。
ぐる~っと左側を見て、中央階段の先を見て、右側の端に行って、階段を下りて玄関まで戻る形だ。いいけどさぁ。順路を一方通行で案内するのはそれが楽なのかもしれないけどさぁ。
まず入って中央階段の上のド派手なエリアをドーン!って度肝を抜く、ってのが設計理念でしょうがよぉ。それを見せてくれよぉ。宮内省内匠寮の真髄で殴りに来てくれよぉ。

正面玄関は、寺田春弌の天井画第七天国が好きです。ルドンの青。

 

ここを作成したのは宮内省内匠寮という建築士集団で、特に山東という人がメインだと言います。片山は明治政府お抱え外国人建築家、ジョサイア・コンドルの弟子ということもあり日本トップクラス、と行くより日本最初期の西洋建築専門家です。
他に上野の表慶館、高輪の旧竹田宮邸である高輪貴賓館などを設計しています。

外側の雰囲気は表慶館にちょっと似てるかな。床のタイルとかは、貴賓館に近しいものがある。

 

こうやって、一部を切り取ると貴賓館の現在チャペルとして使用されている部屋に似ていると思う。

花鳥の間

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でもこうやって全体をみると、どの建物にも似ていない。うん、華美である。この部屋は他の部屋に比べてだいぶシックなほうなのだが、それでもすげえ。
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まぁ、派手すぎ!って怒られたから方向転換したんだろうね。
全体にとても美しい建物で、好きです。朝日の間という第一応接室、メイン部屋と言っていいところが修復のために閉鎖されていてちょっと残念。
他の部屋も、全体的に天井画が痛んでるなぁと思った。
絵を透かして、「あぁ下は板がはってあるのね」ってわかるほど板の線がバリバリに出ていた。順次修復して欲しいです。

最近使用した国際会議の写真がいっぱいあったけど、普通に日米共同声明発表とかで使っててびっくりした。ここでやってたのか。天皇家より、総理大臣が一番使ってるんじゃないか?この建物。

スペイン王室の人の写真とかあったけど、この建物をどう思うのか聞いてみたいです。派手や!って思うのかな。「アルハンブラよりちっちゃいね」としか思わないかな。


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グッズが売ってたのでマグネットを買ってしまった。本当は公式写真集が欲しかったのだけれど、売っているところを見つけられず、寒さに負けて早々に撤退してしまったよ。
そのうち和風別館に行ってみたい。その時こそ、写真集をゲットしてやるぜ。

いいから履き変えろ チームラボ プラネット 12/22

お台場、新豊洲のチームラボ プラネッツTOKYOに行ったことはあるだろうか?
あるなら今回のブログを読んでもいい。行くつもりがない人も読んでいい。

でも、これから行く予定のある人は読まないほうがいいかもしれない。ネタばれが無い方が楽しいと思うからだ。
これから行く人にはただ一つ、「ハーフパンツに履き変えろ」とだけ伝えておきたい。

planets.teamlab.art

 

入場前に携帯以外のすべての荷物をロッカーに預けるよう案内がある。
そして、足が濡れること、一部展示では床が反射するためスカートの人は注意するようにと案内がある。

「足が濡れちゃうから靴と靴下脱いでね!女子はパンツ見えちゃうかも(><)気になる人はハーフパンツ貸すから言ってね!!」
説明はその程度のノリだった。だからもちろん靴下は脱いだけれど、私はロンスカの下に毛糸のパンツはいてたからOKだと思ったし、長ズボンを履いたメンズこと京都人は、完全に「ワイは対象外や」と思ったようだ。実際、その格好でロッカールームを出る時、特に係員からとがめられることもなかった。

 

が、しょっぱながこれである。

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滝。
エスカレーターくらいの角度の坂に、ごうごうと水が流れている、滝。まじかよ。角度急だよ。えぐい坂だよ。普通に笑い声が出る。
えっちらおっちら上った先で係員からタオルを受け取り、足を拭きながら思った。
舐めてたな、と。

 

会場はいくつかのエリアに分かれています。でも基本、写真を撮っても何が何だか分からない。公式サイトの動画を見たほうがわかりやすい。
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光の林。天井と床が鏡で、「あぁパンツ云々言ってたのこれね」って思った。係員さんがみんなモップ雑巾履いて掃除しながら歩いているのが面白かった。

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奥の方に柱が無いエリアがあって、そこは鏡張りの世界を楽しむことができる。
LEDを外から見ることで、どういう表示パターンが動いているのかが見えてくる。先ほどその中にいた時には全く分からなかったけれど、ここからならどういう風に動いているのかがよくわかる。

 

そして、ネタばれである。
通路をうろうろしていると、係員さんが「お出口こちらです」と教えてくれる。
が。それとは反対側に行くと完全に違うエリアに行ける。
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エリアからガラスで隔たれた小部屋の中にはタッチパネルが存在し、光軌パターンを選択することができるのだ。これ、展示内からは知らないとわからないと思う。
自分が選んだパターンで中の人たちがどよめくのを見ると、まるで神様みたいな、ちょっと上位の存在になった気がして面白い。

 

順路をふらふら進んでいくと、係員さんに京都人が呼びとめられた。

「もっとズボンをめくってください」
頑張るけれど、ふくらはぎあたりで引っかかるズボン。
「それじゃ足りません。もっとめくってください」
頑張る京都人。上がらないズボン。そして奥から聞こえてくる別の係員さんの声。
「こちらのエリア、水深が約30cm程になっています」
ムーリー!
だって京都人履いてるの普通のチノパンだもん。30cmもまくりあげられる長ズボンって、どんだけダボダボなのよ。いまどきそんなん履いてる人いないでしょ。
夏ならそのうち渇くじゃろとあきらめて濡れるままにしてもいいかもしれないけれど、12月は真冬である。しかも、この日は冷たい雨まで降っている。この気温の日にズボンの膝下を濡らしたら普通に死ぬ。

困ってたら、簡易更衣室に案内してハーフパンツを貸してくれました。履いてたズボンは自分で持てって言われたけど。私も不安なので履き変えた。
もうね、これ、全員着替えるよう義務化すべきじゃないのかな…

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そうやって頑張って入ったエリアは、CMにも使われている泳ぐ魚のエリアでした。
半透明に濁るお湯の上から映像を投射して、魚が及びまわっているように見える。うん、CMで見た時は霧かなって思ってた。お湯だったんだね。
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水面が濁って波打っているのでとても幻想的に見えます。動画は結構粗いピクセルだけど、普通にリアルに見える。

自然、こういう温泉があればいいのにねって話になりました。
不透明の温泉はいっぱいあるし、銭湯でも入浴剤を入れたら、上にライトを取り付けるだけだから割と低コストですごく綺麗なものができるんじゃないかなと思った。

 

他のエリアの写真はないです。
すごく面白いなと思ったのが、通路がすごく暗くてフットライトだけでぼんやり照らされているのだけれど、角を曲がるたびにその床材が変わるの。裸足になるよう案内されているから、歩いていると感触が次々に変化しているのがわかる。その場にいるとすごくよくわかって面白いのだけれど、もちろん写真にも動画にも写らない。
こうして説明を聞いても、フーンすごいね、って程度の話だと思う。
その場にいて、体感することではじめてわかる展示。これこそ正しいインスタレーションだなぁと思った。

 

その後は恵比寿ガーデンプレイスにシャンデリアを見に行ったよ。こんな大きなもの、普段どこにしまっているんだろうねぇ。
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建築印刷 続々 GGG 12/15

お久しぶりねのGGG
いや、GGG自体には行ってるのよ。けどここ基本的にタイポグラフィの展示だからさ、ごめんね、浅学な私にはわからんのよ。
本文のフォントの組み合わせの美しさとかさ、なるほどわからんなのよ。
普通に人気のギャラリーで、デザイン系学生さんだろうなって人がいつも結構いるんだけどさ、ふらっと入って読ませてもらえない本なんて!と憤慨してそのまま出てきてるの。本は読んでナンボだと思うんだ…めくれない本なんて……

だけど今回はわかりやすく面白かった。

www.dnp.co.jp

 磁性を持った紙?というより薄く切った金属?を磁力で動かすインスタレーション

youtu.be

 ざわざわと何かが動いている

youtu.be

 密閉系の中で、永遠に動作するもの。

youtu.be

 おもしろい。おもしろいねぇ。理科の実験を見ているような気持ちになる。
インスタレーションってなんだろう?彫刻や現代アートと何が違うんだろう?って、「体験を提供する」ものなんじゃないかなぁと思う。
楽しい。美しい。

 

地下には基本的に動かないものが展示されている。

一階にもあったけど、不思議な水槽。これ、ホテルロビーとかあったら絶対人気出る。シンプルだけど発想が面白い。

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「インクのレンズ」
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透明のインクと白のインクを重ねて印刷することで現れる立体。深堀隆介さんの金魚みたいだね。
て言うか透明のインクってあるんだね。いや、あるだろうけど。よく考えてみれば見たことある気がするけれど。けどこうやって形になっているの見るとすごく面白い。

 

「空間平面」
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網目状にカットした紙を重ね合わせた、と見せかけて一枚の紙。レーザーカットで緻密に切り抜いたものだそう。

ほんとですかー?わかんないですー!触らないとわかんないですー!!!(触りたいだけ

発想はシンプルだけど結果がすごい。レーザーカットってすごいんだね、って作品がいくつもあった。

 

「紙の水面」
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薄い紙に透明インクを一部を残して印刷したもの。インクが芯まで染み込むことで、ハトロン紙のような質感を見せる。

好きです。こう言うのすごい好きです。めっちゃ好きです。油紙とかたまらなくすきなんです。

これは上に何も載ってなかったので、紙の薄さをじっくり楽しむことができました。素晴らしい。

 

空間構成、印刷、切り出しといった技術から想像もつかないものが生まれるのが面白い。なんか、建築っぽいなと思った。建築技術を使ってるわけではもちろんなくて、作成時に意識してるわけでもないだろうなって思うんだけど。空間構成の取り方が建築文法に似てる気がした。お仕事で建築系かじってる京都人も同意してくれたから、なんか近しいエッセンスがあるのだと思う。

空間とはなんだろうかと言うことを確かめに行くと良いと思う。

あなたのしもべ ロマンティック・ロシア12/1

文化村再オープンしましたね。

www.bunkamura.co.jp

少なくともミュージアムに関しては、どこが変わったとかわからなかったw毎回レイアウトとか違うしね。

と言うわけで今回はロシア絵画。あんまり特集されることないよね。東京で絵画展と言ったらやっぱりフランスあたりがメジャーかなぁと思います。西洋、に含むのかどうかも微妙なエリアだし。

 

イワン・クラムスコイ「忘れえぬ女(ひと)」

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約10年ぶりに来日とのこと。多分私前回見たと思う。前回も文化村だったと言うし、その頃なら普通に美術館徘徊してたと思うし。こんな美しい人を忘れるわけないし。

ただ、彼女にインパクトがありすぎて背景や経緯、ディテールが全て吹っ飛ぶと言う欠点もあるw

馬車に乗った貴婦人、気難しげな、訝しげな顔。蔑むと言ってもいいくらいの目つき。物凄い衝撃です。これをきっかけにMに目覚めてもおかしくないくらいの美しさ。

今回は2回目と言うことで多少冷静に見ることができたのですが、背景が意外とあっさりしていてこんなもんだっけ?と思った。サムネイルくらいのサイズだと気にならないけど、リアルに大きな絵画を見ると下塗りかな程度の色彩しか乗せられていない。多分普通にがっつり描きこむと、女性のインパクトが薄れてしまうのだろうなと思う。

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イワン・クラムスコイ「月明かりの夜」f:id:minnagi:20181205152407j:image

同じ作者のもっと大きなこちらの絵は、むしろ背景がメインくらいの勢いで細かく描写されている。満月の明かりの中で漂う女性は妖精のようだ。


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構図としてはロマンティックに儚い物語を連想するのだけれど、まあまあ悪そうな表情してるんだ。いたずらっぽいと言うよりも、悪巧みをしているというほどの。なんだろ、気の強い女が好みなのだろうか。ただ儚く頼りない竹久夢二の絵のような女はいない。しっかりと芯がある。

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イワン・アイヴァゾフスキー「嵐の海」
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これは実物を見ないと伝わらない絵。手前のティファニーブルーの波の美しさは印刷には出ない。嵐に翻弄される人、遠くに素知らぬ顔で悠然と構える山脈。自然の中であまりに無力な人間。

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ワシリー・バクシェーエフ「樹氷f:id:minnagi:20181205152329j:image

パッと目に飛び込む鮮やかな空が印象的な絵。

この展示ではロシア絵画を春夏秋冬、女性、肖像画といったジャンルに分けて展示していたけれど、「冬の絵画は驚くほど少ない」と説明されていた。

うん、ロシアの冬に外で写生してたら凍死するからじゃないかな。

こう言う完璧な、ちょっとだけ誇張された遠近感の絵が好き。清々しい風が吹いているみたいな。

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コンスタンチン・コローヴィン「小舟にて」
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ポーラ美術館にこんな口座の舟遊びの絵があったな。

こういう小舟が画面の外にはみ出しているような立ち切りの絵、印象派あたりが書いたら「浮世絵の影響!」と大々的にアピールされるのが常ですが、こちらの展示では特に触れられることもありませんでした。1888年の絵だから、時代的には同じようなものなんだけど、実際どうなんでしょうね。

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イワン・シーシキン「正午、モスクワ郊外」
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パンフレットの絵だから文字が入っちゃってるけど。

こういう空がメインな絵も「日本特有の講座でジャポニスムで世界に広がった」などと解釈されがちなものですが。

でもロシア実際に広大だからなぁ。あんだけ広い世界の広さをテーマに描こうとしたら、自然とこういう構図になるのかもしれない。入道雲があって真夏の昼の絵だろうにこんなに涼しげなのはさすがロシアというところか。

 

ロシア絵画、いいなぁと思いました。今までイメージとしては20世紀初頭の直線的なポスターデザイン、ロシア・アヴァンギャルドの方が先に出てきてたけど、こういう伝統的絵画もいい。もっと特集されてもいいのにと思う。ただ、絵画的にはソ連暗黒期があるのかなぁ。