人の金で美術館に行きたい

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。

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深海と空の青 ルドン-秘密の花園 3/4

三菱一号館に、去年から楽しみにしていたルドンを見に行きました。

ルドンー秘密の花園|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

 

ルドンについては何度か書いているので詳細は省く。

世界の薄闇の中で オディロン・ルドン - 人の金で美術館に行きたい

彼の作品は白黒のほうがインパクトがあってメジャーだと思うのだけれど、今回はカラー作品がメインの展示になっている。それも、花や木といった植物をモチーフにしたものが多く集められている。

 

もともとフランスの田舎で育ったこと
メインで師事した恩師が樹木を描くように指導したこと
画業の方向性を決定付けた年上の友人、アルマン・クラヴォーが植物学者だったこと
そういった関係から、樹木や花は彼にとって特別なモチーフとなっているようだ。

 

今回は三菱一号館が所有するグラン・ブーケを含む「ドムシー男爵の食堂装飾」が着ていたりして、どちらかというと私的なコレクション向けの絵画で知られているルドンの大きな壁画を見ることができるというのも特筆すべき点だろう。
普段見ることのすくないルドンの一面を見ることができるのだ。 

図録だけアマゾンで買うこともできるよ。

 

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 『 起源 』 II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた

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植物学者であるアルマン・クラヴォーの影響をうかがわせる作品。ダーウィン種の起源が発表された頃の作品で、「起源」というタイトルから当時の人はすぐに進化論を連想しただろうということ。

信仰と科学の過渡期、世界の秘密が少しずつ解明されて減っていく時代。

神秘がそのベールをほんの少しだけ持ち上げて誘う様は、耐え難く蠱惑的だったことだろう。

 

このタイトルが凄く良い。今は消えてしまった、ありえたかもしれない世界を思わせる。

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『 夜 』 Ⅴ. 巫女たちは待っていた

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この絵を見ると、そしてこの絵の姉妹たちとでもいうべき巫女達の絵を見ると、私はいつも「十人の乙女たちの例え」を思い出す。

油を用意して花婿を待つ、賢い乙女たちの物語が描かれているわけではないし、ルドンはそれほどキリスト教に傾倒していたわけではないのでおそらくは違うのだろうけれど。タイトルも巫女だし。

闇に沈む神殿の中で、所在無げな彼女たちは何を待っているのだろうか。

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「 花:ひなげしとマーガレット」

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これは習作のようです。

「不確かなものの傍らには確かなものを置いてごらん」とカミーユ・コローに助言されたルドンはその教えを守り、不思議な現実感の作品。生み出しています。

その為に樹木や花々のデッサンも行なっているのですが、明らかに我慢してやっているというか、途中で辛くなっているのが見て取れて面白いです。

この作品は完成度がとても高い。ケシの花の鮮やかさも、花瓶の艶も、溶け込むような世界も素晴らしいと思う。

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「瞳を閉じて」

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ルドンは油絵もよく書いているのだけれど、不思議に乾いて艶のない質感で、ぱっと見だとパステルのように見えるのが特徴だ。

左側の白い花の部分などは絵の具を出してそのままチョンと盛り上げたようで、乾いてひび割れてさえいる。

このざらりとした質感が、鮮やかでいながら乾いた世界が、粉っぽく風化した古の世界のような、リアリティとは全く別の現実感を産んでいる。

すぐそばにあるのに手に触れない感じ、全く別の世界の風景になっている。

 

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「若き日の仏陀

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こちらはパステル画。今回は絵画にアクセントとして使われる赤について繰り返し解説がされていたが、この赤を効果的にするのは当然ながらルドンの世界の大部分を占める深く鮮やかな青だ。

物販コーナーにフランスのメーカーのパステルが売っていて、その青色がまさにルドンの青で、なんて美しいんだろうと思ったのですが。チョークの1/4位のサイズで何千円もして買えねーよバカ!ってなった。

たぶん、ラピスラズリを使ったウルトラマリンなんでしょうね…綺麗だね…高いね…そういえば、ルドンって割と金持ちのボンボンだったっけね……

 

ルドンはキリストの絵も何枚も書いているのですが、仏陀の絵もまた多く描いています。ちょうどジャポニスムが流行しだした頃で、西洋の宗教とは違う独特の世界観に惹かれたのでしょう。未だ王子の頃の、世界の悲しみを憂うシッダールダは彼の世界観によく合っているような気もします。

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「花とナナカマドの実」

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ドムシー男爵の食堂装飾の中で一番気に入った絵。上下はあってます。

ナナカマドの実がゆったりと浮遊する不思議な空間。

ヨーロッパの室内装飾は部屋の使用目的と密接にリンクしていることが多いです。食堂には果物などの食品を、魚を盛るための皿には魚をデザインするのがヨーロピアンセンスです。

でもこの食堂装飾は「何か」の絵ではないようです。樹木が、花々が、人や天使が描かれてはいるけれど、それが何を示しているわけでもない。元々ルドンの絵はイメージの固定を嫌うけれど、この装飾はその傾向が強いように思う。花が描かれているからと言って、花の絵ではないような気がする。

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「グラン・ブーケ( 大きな花束)」

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三菱一号館所有の絵画。

ドムシー男爵の食堂装飾のうち現在伝わる16枚のうちこれだけが日本にあり、残りは全てオルセー美術館にあります。

……オルセーに譲ってやれよ、そうしたら元の組み合わせで常設展示できるだろうよ、と思わなくもない。でもそうしたら日本でこれが見れない。いっそ残り全部三菱一号館が買い取って常設展示して欲しい。

大きな花瓶に活けられた花々、という題材としては一般的なもの。けれど画面からは重力が感じられず、全て花瓶からゆっくり浮かび上がり、どこかへ漂っていく直前のように見える。

陸の植物ではあるけど、全て深海の不思議な生き物のように見える。絵画であるけれど、何も固定されず何も約束していないように見える。

だからこの絵画はいくら見ていても見飽きない。

 

食堂の配置再現した部屋もありました。撮影可能。

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もう一回くらい見に行ってもいいなぁ。