人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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ルドンのためならエンヤコラ ルドン ひらかれた夢 11/23

連休は箱根に行ってきたよ。もちろん、目当てはルドン。

www.polamuseum.or.jp

この部屋だけ撮影可能。ルドーン!!!大きすぎて全部収められない。

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オディロン・ルドンが好きだ。ここ数年、一番好きな画家と言ってよい。好きすぎて2回も岐阜まで一人旅行するくらいには好きだ。(岐阜県美術館というところが日本一ルドンを所蔵しているのだ)
なので正直、初見の絵は少ない。もうこうなりゃフランスに行くしかない!と言いたいところだが、猫やなんやで遠出は難しい。
それに、いくらたくさん所蔵してたっていつも全部展示しているわけではないのだから、見たことない絵を目指してえっちらおっちら行くのですよ。やっぱり。

でも前期展示にあったという笑う蜘蛛と起源の1枚が見れなくて残念。サイトわかりにくいよ…展示換えとあるけどどれが対象なのか書いてない。後期に追加された絵はないんだよね?多分。メインビジュアルになってる絵が無いのはどうかなぁと思う。

 

今回の展示は「ルドン ひらかれた夢」というタイトルにあるように、今回は世界に対して「ひらかれた」ルドンがテーマだ。
ルドンはその孤独な生い立ち、まどろむような世界観、そして静謐な黒い画面から、孤高の画家という扱いになっている。だが実際にはどうだったのだろうか、というのが観点。

つながルドン | ルドン ひらかれた夢 | ポーラ美術館

師匠の版画家ブレスダン(先輩かも?と書かれているが、しっかり師事しているのだから”かも”とするのはよろしくないと思う)や画風に影響を与えた学者のクラヴォーとともに、実は同い年というモネや同世代の画家たち、フォロワー達も紹介している。

モネが同い年とは知らなかったなぁ。確認しようとも思わなかった。
けど、別に同い年だからって交流があったわけでも影響を与えあったわけでもないよね…他の画家についても同様です。
とりあえず同じ時代だし並べてみたって感じで、キュレーションとしては微妙だなと思いました。はっきり友人だとわかっている人の作品ならともかく。

ルドン自身はそれほど社交的でもなかったようなのだけれど、世紀末芸術として後輩にはめっちゃ尊敬された画家であったようです。ナビ派とか。どっちかというとそちらを中心に展開したほうがよかったんじゃないかなぁと思う。ナビはなかったな。

京都人の感想としては「この美術館は見せたがりなの?」でした。岐阜から借りてきた絵の隣に「うちだって似たテーマの絵あるし!」と言わんばかりに別バージョンの所蔵作品を並べ、解説は自館所蔵作品にだけ付ける、みたいなのが多かった。モネだってあれやろ。いい機会だから見せびらかしたかったんじゃろ。さすがにルーアン大聖堂出てきたときは「教科書で見たやつや!!」ってびっくりしたぜぃ。

 

というわけでテーマ的には???と思うところが無くもなかったけど、初見の作品結構あってよかった。

 

イカロス」1890年ごろ

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初見。とってもいい。イカロスの話にこんなシーンあったっけ?となりますが、タイトルは後付けなのだそう。蛍光オレンジが印象的。こんな色のパステルあったのね。そして、それをポップな感じではなくこんなドラマティックな絵に使うって発想がすごいなぁ。
飛行の前に青年が捧げ持つのは、神か太陽への供物であろうか。具体的に何なのかは分からないが、心臓のように思える。

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「弓を持つケンタウロス

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弓を放った直後か、躍動感あふれるケンタウロス。厚塗りの色は壁画のようだ。ざっくりと大胆に描かれている。ルドンの赤は素晴らしいと思う。

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「花」1905-1910年ごろ
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花と言いつつ、何が描かれているのかもわからないような絵。中空にぽっかりと浮かぶ花瓶からは重力を無視した花が広がる。そもそも花というよりも深海の海藻や幻視生物のように見える。うつろな目が下を覗き込んでいるようにも見える。全体としても美しいし、各部分についてもいつまでも見ていられる良さがある。すごく好き。

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アネモネ」1908-1916年ごろ
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大正時代の日本洋画みたいだなって思った。渡仏した日本画科が入手して持ち帰ったものだそうです。さもありなん。
素直にかわいらしいです。シンプルで、最小限の造形で、鮮やかな効果。少しの物悲しさ。黒が全体を引き締め、青の抜け感が美しい。

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ロドルフ・ブレスダン「魔法をかけられた家」1871年
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ルドン以外だとこれが好き。魔法をかけられた、といえども実際にどんな魔法なのか読み取ることができない。ただの大きく静かな家に見える。やたらに動物がいるのがキルケーを思わせるけれど確証はない。右奥の塔や、茂みの奥が不穏ではある。
色々深読みをしてしまいそうだし、あまりに細かくて仔細に確認していてはどれだけの時間が必要なのかもわからない。

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岩明 均「寄生獣」(原画)1990-1995年
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京都人大興奮の原画。漫画ファンならみんな気になるよね。
古い漫画だけど、私も好きです。確かにちょっとルドンみある。ヒエロニムス・ボスの方が近い?

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こちらは美術館内レストラン(周り何にもないから、ここでしかごはん食べられないよ)の特製ルドンコースのデザート。きれい!すごくルドンっぽい。この赤い枝。

「神秘的な対話」1896年頃

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ルドンは赤い木をよく描いているんですね~わかってる~~
美術館の庭園にも、真っ赤な幹の木が生えていました。ヒメシャラという種類だそうです。秋の物悲しい庭園はルドンぽさあるなぁと思いながらおいしく頂いた。

この絵も好きです。空中に浮かぶような謎の神殿の中、巫女たちが信託を伝え合う。祝福された言葉からは花々がこぼれおちる。

 

図録も買ったけどまだ読めていない。ぱっとみ、展示されていない絵も参考資料として大量に載っているようだ。
ポーラ美術館がこんなにルドン持ってるとは知らなかったけど…頻繁に見に来るにはあまりに遠い。