人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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それでも、なお サラ・ベルナールの世界展 12/22

サラ・ベルナールの世界展に行ってきたよ。

サラ・ベルナールの世界展|松濤美術館

渋谷の松濤美術館、区立なんだね…あんなオシャレ建物が公営のなんだなぁ。さすが渋谷。

サラ・ベルナールアール・ヌーヴォーのミューズ、伝説の女優です。https://ja.wikipedia.org/wiki/%25E3%2582%25B5%25E3%2583%25A9%25E3%2583%25BB%25E3%2583%2599%25E3%2583%25AB%25E3%2583%258A%25E3%2583%25BC%25E3%2583%25ABとはいえ、ミュシャのモデルとしての方が今では知られているかもね。図録ももちろんミュシャが表紙

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フランス国旗色!
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今回はアール・ヌーヴォー全体ではなく、サラをメインにした展示。かなり珍しく思います。

 

W.&Dダウニー「街着姿のサラ・ベルナール

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これで58歳だってよ…美かよ。「黄金の声」を持つ国民的、いや、世界的女優。時代の寵児であり、芸術家の守護者であり、本人もまた芸術家だったと言います。そこまで言われたらその声が気になるよね…YouTubeに音源上がってるけど、結構音質が酷くて良し悪しがわからないです。ざんねん。

サラは非常に多くの写真、ブロマイドを出しています。自分自身の私生活をプロデュースするアーティスト(まず、ダリが思い浮かびます)の先駆けだったそうです。

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アルフォンス・ミュシャ「ジスモンダ」

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ミュシャ初期のポスターとして、彼の出世作として非常に有名な作品。舞台の広告です。

絵画としての美しさの他に、この絵がいかにドラマチックな経緯で生まれたのかという逸話がよく語られます。曰く、

ある日、急ぎの仕事として印刷所にポスター制作の仕事が来る。しかしちょうどクリスマス時期で休みを取っている職人が多く、絵が描ける者がほとんどいない。それなのに納期はたったの5日間。

当時無名の画家だったミュシャは、その貧しさからクリスマス時期も休まず働いていた。急遽担当となった彼は全く新しい感性でポスターを見事に作り上げ、一気に有名画家となる。

しかし、この展示によるとこんな逸話は少々眉唾というか盛りすぎとのことです。

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アルフォンス・ミュシャ「ル・ゴロワ誌の付録紙面挿絵」

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単純に、ミュシャがサラを描いたのはジスモンダが初めてではないとのこと。大人気だった舞台を紹介する雑誌の挿絵として描いた作品が話題となり、ミュシャがサラの目に止まり、その結果としてミュシャにポスターが発注されたという経緯だそうです。

荒い印刷の小さなイラストだけど、とても美しいです。こういう雑誌取っとくと100年後に価値が出たりするんだろけど、なかなか目利きして保存するのも難しいよなぁと考えてしまう。

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ウジューヌ・サミュエル・グラッセジャンヌ・ダルク」(上:修正前/下:修正後) 

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サラの舞台広告としてのポスター。もともと上だったのを、サラが気に入らないと言って髪型と口を直させたものだそうです。でも断然修正前の方がいいなぁ。表情がとてもいい。生き生きとしている。けど、サラ的には神秘的な雰囲気で売りたかったのかもしれないなぁ。

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サラ・ベルナール「嵐の後」

撮影はシャルル・マルヴィル

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プロやないか!嵐で孫を失った老婆の像だそうですが、ピエタじゃないか。つか、マジうまい…普通にサロン入選とかしてたそうです。プロじゃん。サラは役者で芸術家でもあったと聞いていましたが、ここまでとは。ガチじゃん。

ただ、同時代のロダンは酷評していたそうです。まぁそれもわかる。こういうロマン全面に出したの嫌いそう。もっとちゃんと人体構造正確でないと認めてくれなそう。

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アシル・メランドリ「白の衣装で自刻像とともに写る彫刻家としてのサラ・ベルナール

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自刻像って初めて聞く単語だけど、自画像の彫刻版かな。自分のアトリエで使う作業着としてピエロの衣装を着ていたと言います。それも自己演出の方法なのだろうなぁ。

ジスモンダやメディアのような女性役も、ハムレットのような男性役もこなしたという彼女。スレンダーでどちらかと言えば男顔の、しかしとても美しい女性です。

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サラ・ベルナール「キメラとしてのサラ・ベルナール

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サラの自作彫刻。残念ながら、今回の展示でサラの作品実物はこれだけでした。あとは写真だけ。数も少ない。「サラ・ベルナールの世界」という展示なのだから、もっと彼女自身の作品が見たかった。ちょっとがっかり。

サラのセルフイメージはキメラだったようです。舞台上で様々な役柄を演じ分け、役者、彫刻家、小説家といろんな才能を持つ自分自身を、様々な生物のパッチワークであるキメラのように捉えていたんだろうなぁ。

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本人の作品が少ないこと以外はとても満足な展示だった。衣装やアクセサリーもあって色んなジャンルから総合的にサラに迫る構成が良かった。

19歳期末、20世紀初頭。女性が1人で生きるのが難しい時代。街を1人で歩いているだけで、"まとも"な女性でないと見られるような時代。

そんな時代に私生児として生まれ、女性1人で生計を立てるどころか優雅な生活を送り、数々の浮き名を流して自身も私生児を産み。両性愛者であることを公言し(カトリック国で!)、世界中から愛された女性。

強い、進歩的な女性だなぁと思う。なんなら、現代の女性よりよほど進歩的な気がする。

何をどうすればこんな怪物みたいな才能に溢れた人が生まれるのだろうか。

なんかもうすげぇなとしか言いようがない。

 

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どうでもいいんだけど、図録買ったらおまけに今年(2019年)のカレンダーくれた。流石にいらないwwもう12月も終わりやぞ。