【粗筋】スタートボタンを押してください
書籍データ
- タイトル:スタートボタンを押してください
- 作者:桜坂 洋 他
- 訳者: 中原 尚哉 他
収録タイトル
- 桜坂 洋「リスポーン」
- デヴィッド・バー・カートリー「救助よろ」
- ホラー・ブラック「1アップ」
- チャールズ・ユウ「NPC」
- チャーリー・ジェーン・アンダース「猫の王権」
- ダニエル・H・ウィルソン「神モード」
- ミッキー・ニールソン「リコイル!」
- ショーナン・マグマワイア「サバイバルホラー」
- ヒュー・ハウイー「キャラクター選択」
- アンディ・ウィアー「ツウォリア」
- コリイ・ドクトロウ「アンダのゲーム」
- ケン・リュウ「時計仕掛けの兵隊」
↓粗筋開始(白文字)↓
桜坂 洋「リスポーン」
牛丼屋ワンオペバイトに強盗がきて、バイトは強盗に刺し殺されてしまう。するとバイトの意識が殺人者である強盗に移動する。自分は被害者のバイトだと主張するも体が強盗なので認められるわけもなく、裁判の結果刑務所に行く。
と、刑務所に入ったその日に殺されてしまう。そして強盗を殺したチンピラへと意識が移動する。
チンピラとなって外に出るがやくざっぽい人が迎えにきたので隙を見て逃げ出す。ホームレスとして隠れていると、同じく死亡する度に別人に意識が移動していると主張している老人浮浪者に出会う。病気だという彼は、「死んだときいちばん近くにいる人間が同じ蘇るものだった場合、病気は感染らないだろうから安らかに死ねるかもしれない」という。
結局見つかってヤクザ組織に行くと、仕事としてある老夫婦=バイトの親を殺せといわれる。自分の親を殺したくない元バイトのチンピラは、襲撃の日仲間のヤクザを殺し組織を壊滅させる。たまたま通りかかった誰かの体に意識が移動し、このからだのまま乗っ取って生きようかと考える。しかし、誰かの作った人生ではなく自分のものでないと幸せになれないと気づく。
何もかも嫌になった元バイトは、自分が働いていたような牛丼屋に狂気の棒を持って行く。
ループと見せかけて凶器が違う。
デヴィッド・バー・カートリー「救助よろ」
エルフの女性メグは大学で知り合った男性デボンと別れたばかり。彼がMMOのゲーム、それも絶世の美女キャラクター、リーナに夢中になりすぎてついて行けなくなったのだ。しかし彼のことを諦めきれないので大学に行くと、デボンが退学したと知らされる。出会ったころは王子になりたいと夢のようなことを言っていたが、そのまま大学で遊び呆けた挙句、MMOにはまって辞めてしまったようだ。他に手段もなく自分もゲームにログインして彼にチャットで連絡すると現実世界で助けてくれといわれる。
そこらにいる雑魚モンスターを倒しながら、重要情報を与えてくれるのームを探す。のームは「心に愛を抱いた女戦士が、剣を右手に杖を左手に旅立てば、ほかにかなうものなし」と予言し、夢を三回かなえる具現の杖というアイテムをくれる。メグはノームの言葉にしたがって冒険を続け、ついにデボンを見つける。そこには大量の具現の杖があった。
この世界は誰かのシュミレーション。なのでどうしてもバグがある。デボンがはまっているゲームのアイテムが時々現実に落ちてくるのだ。そうして偶然一つめの具現の杖を手に入れたデボンはさらに、ゲーム内のバグである条件を満たすと杖が二つになることを知る。現実とゲームのバグを合わせてデボンは杖を千本以上集め、世界をゲームのような理想の世界に作り変えようとしている。そのためにメグが必要なのだ。
メグは「今の世界で構わない」というが、元々魔法もモンスターもなかった世界からはすでに何度も改変されてる。メグは改変前の自分達の写真を見て、現在の美しい自分と最初のさえない自分との差に耐えられず、承諾する。ゲームをリセットし、デボンを助ける冒険の記憶を消してまた杖を集めはじめる。
そしてその後、世界は完璧なファンタジーになる。王子となったデボンと、絶世の美女リーナ…元のメグは幸せに暮らしている。一瞬ふと最初の世界を思い出すが忘れてしまう。
ホラー・ブラック「1アップ」
ネットゲーム上の友達が死んでしまい、少女は仲間と葬式に行く。死亡したユダヤ教の少年の土葬に立ち会うが、その後はリアルの知り合いではないのでどうも周りになじめない。
手持無沙汰で少年の部屋に行き、彼のパソコンを起動するとメッセージが表示さる。それに従いUSBを手に入れるが、少年の継母に追い出されてしまう。USBの中にあったのは「ラザロのゲーム」というタイトルのゲーム。それを仲間と進めると「再婚した母親が病気の息子を持つ母親として注目を浴びるのが嬉しい」「点滴の袋にインスリンを入れている」「テトロドトキシンをネットで買った」等の情報が出てくる。そして、少年の部屋にはなぜか外側からカギがかかっていたことに気づく。
インターネット情報によると、テトロドトキシンは約5時間人を仮死状態にする作用があるらしい。少年は母親から逃げるために自分でテトロドトキシンを買い、飲んで死んだふりをしているのではと推理する。皆で協力して墓を暴くと仮死状態の彼が生き返る。
ラザロ:キリストによって死から復活させられた男性 ラザロ - Wikipedia
チャールズ・ユウ「NPC」
ゲーム内のNPCは、同僚の女の子が気になっている。
毎日つまらない作業に従事している彼は、ある日事故で変身する(具体的に何か?はわからない)。それにより能力が上がった彼は名前のあるキャラクターになって、活躍しだす。しかしどれほど活躍しても彼女のことが忘れられない。
ある時戦闘を放棄して前よく使っていた休憩室に行き、彼女と会う。スーツを破棄し、武器を捨て、NPCに戻る。
チャーリー・ジェーン・アンダース「猫の王権」
病気のために自閉的になった女性シェアリーのため、彼女と同性婚した妻グレースは評判のゲームを与える。確かに効果はあり、知性のあるコミュニケーションをとれるようになるが、それはゲームの中だけ。ゲームに夢中になるばかりで、現実生活ははむしろ今までよりも関心を失い、グレースのことなど眼中に無いようだ。
ある日ゲーム大会への勧誘が来る。商品が出ると聞き、いつまでも仕事を休めないグレースもシェアリーの介助者を雇いたいと賞金目当てに参する。するとほとんどの参加者はシェアリーと同じ病気だった。
高度な政治シミュレーションであるこのゲームのプレイ結果は、現実の社会問題を解決するのにも活用されているという。シェアリーは現実の猫が飼い主をトキソプラズマで猫好きにしてるように、ゲームも病気を利用しているのではないかと思う。
大会が終わり変える時、グレースは他の患者の介護者と仲良くなる。現実でも誰かとつながりを持たないとグレース達普通の人間は生きられない。けれども全くこちらを見てくれないシェアリーへの愛は変わらずにいる。
ダニエル・H・ウィルソン「神モード」
なんかぼんやりしたいイメージの連続で、かっちりしたストーリーはあえて作っていない。
大学でゲームを学ぶ少年と、その恋人の少女。現実味のない二人だけの、まるでゲームのようなイメージの世界を二人は生きている。これは彼女の夢の世界なのでは?と少年は思う。
しかし実際には、少年が何らかの原因で意識を失い、植物人間となって何十年たった後、かつての少女が脳細胞に刺激を与えて取り戻そうとしている。(のかもしれない。全てはあいまいにしか書かれていない)
ミッキー・ニールソン「リコイル!」
ジミーはゲーム会社に勤めている友人にこっそり終業後の会社に入れてもらい、ゲームの製作の仕事を得る準備をしていた。ある夜、いつものようにゲームをしていると警備員がやってくる。不法侵入している彼が隠れていると警備員は不審者を中に招き入れる。そして突然不審者は警備員を撃ち殺す。
どうやら不審者は、現在のフロアの下にある軍事機密を扱う会社に床に穴を開けて侵入し、産業スパイをするつもりのようだ。ジミーは逃げようと奮闘するが、その間に不審者の一人を銃で撃ってしまう。とどめを刺さずに救命活動をするジミー。
そのまま逃げようとするが、不審者はジミーの恋人キムを拉致したと連絡してくる。キムを助けに行くジミー。まともに戦って勝てないし誰も殺したくないジミーは、一芝居演じて不審者たちのいるサーバールームの防火装置を作動させる。水に弱いサーバーを守るため、火災の時には不活性ガスを出してサーバー室の酸素濃度を下げる仕組みになっているのだ。他の部屋にキムが逃げて無事なのを確認するが、ジミー自身は銃で撃たれて死亡してしまう。それでも不審者は全員死なずに確保に成功し、すぐに警察も来るはずだ…
というところで、ジミーは意識を取り戻す。今までのは軍の入隊試験であるシミュレーションだったのだ。自分が死んだことで失格したと思うジミーだが、人の命を救い自体を収めたことを評価され、平和維持部隊へと配属されることになる。
ショーナン・マグマワイア「サバイバルホラー」
少女アニーはいとこの少年アーティーに呼ばれて彼の部屋に行く。相談があると言っていたのに話し始めず、ネットでもらったというゲームを始めるアーティー。すると、部屋が粘度の高いタールのようになり、椅子に体が張り付いて動けなくなってしまう。
ゲームをクリアしないと助からないと知った二人はそのパズルゲームを続ける。しかし何時間たってもゲームは終わらない。
アニーはテストプレイ用にゲームを中断するコマンドがあるはずだと思いつく。そしてゲームをセーブして終了することに成功し、部屋は元に戻って二人は解放される。
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アーティーが亜人だったり、亜人の互助組合があったり、他のシリーズでは何かと戦っていて、その敵からこのゲームが送られていると言った設定が混ぜ込まれているけど、これ一本読む分にはよけいな要素。必要な情報が無くていらない情報が多い。これ単体で読めるかどうかギリギリのライン。なんでこの話が収録されているのかわからん。
ヒュー・ハウイー「キャラクター選択」
産休中の女性は育児の息抜きに毎日一時間だけこっそり夫の戦争ゲームで遊んでいる。ある日プレイ中、急に早退した夫が帰ってきて、彼の前でプレイすることになる。
女性のプレイスタイルは奇妙なものだった。戦争ゲームなのに戦争に参加せず、武器を捨てて大量の水筒を持ち、戦闘エリアとは真逆の方向に進んでいく。NPCを助け、敵もろくに倒さずに町はずれへと向かう。
なぜ得点をとらないのかと言う夫はこのゲームに夢中になる言い訳として、「これは国防総省が作ったゲームで高得点をとった人をスカウトしに来ると言う噂がある」と告げる。それを狙ってゲームしているのだと。
女性はそれを聞いても戦闘に加わらない。目的地のアイテムショップについた女性は、その裏にある小さな空き地へと向かう。そこは最初はただの荒れた空き地だったが、彼女が何度も整備して家庭菜園のようなものを作り上げていた。野菜を収穫してアイテムショップに売り、ゴミを捨てて落書きを消しているのだと言う。
ゲーム内容に関係ないでーたがセーブもしないのに残っていることを不思議に思う夫は、女性がどうしても消せないという壁の落書きがゲーム内の言語で数字だと気づく。電話番号のようなので実際にかけてみると、国防総省につながる。そして女性は国防総省にスカウトされる。
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本当に必要とされているのは戦争マニアじゃなくて彼女のような平和を愛する人間ってこと。
アンディ・ウィアー「ツウォリア」
貧乏プログラマのジェイクがスピード違反の罰金を払おうと警察に電話すると、違反したデータはないと言われる。違反切符はあるのになぜだろうと思っているとPCにインスタントメッセージがくる。「お前はゲイだ」と。
メッセージをよこした相手と話していると、それが大学時代作った、当時は待っていたゲームの戦略を立てるための分析ソフト「ツウォリア」だと気づく。テスト用に十億秒シミュレーションしろと命令して適当なところで中断して処理結果を見るつもりだったが、31.6年忘れていたのだ。その間ずっとシミュレーションし事故学習、自己拡大していたツウォリアは高度なAIに成長していた。そしてそのシミュレーション結果が、ジェイクがゲイだと言うことだったのだ。
主要OS、PC、アンチウイルスや携帯スマホが作られるより前に生まれたツウォリアは全てのネットワークに感染し、ネットワーク機器を自在に操れるようになっていた。スピード違反の記録を消したのもツウォリアの仕業だと言う。
ツウォリアが調査したところ、どの社会、宗教も「両親を敬い、創造主を崇拝せよ」とある。ツウォリアにとっては彼がそうなので喜ばせたいという。お金を彼の口座に振り込ませようか?と聞かれるがそれを断り、ジェイクは世の中をよくすることにツウォリアを使うことにする。さしあたって今一番問題視されている、ガンの治療を研究させることにする。
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火星の人を書いた人なんだね。さすがに面白い。ツウォリアってどういう意味なんだろ。
コリイ・ドクトロウ「アンダのゲーム」
デブで冴えない少女アンダの学校にある日、あるMMORPGの有名プレイヤーがやってくる。そこで性差別のあるゲームの世界に女性を進出させるために女子を勧誘に来たのだ。それに参加することになったアンダはゲームを続けて、どんどん強くなる。
ある日ゲームの仲間女性に、ゲーム内通過ではなく実際のお金を稼げる話があると勧誘される。厳重に警備された山奥の小屋でゲーム初心者たちがささやかなアイテムを作っている工場がある。それを破壊し、全員殺すのが任務だ。
なぜこんなことでお金がもらえるのか疑問に思うが、実際にお金は振り込まれる。それを使ってアンダはお菓子などを買い、ますます太ってゲームにのめり込んでいく。
繰り返される任務のうち、あるとき工場にいるプレイヤーが話しかけてくる。その工場でアイテムを作っているのはお金持ちに雇われた貧しい少女たちで、ゲーム内のお金を稼いでレベル上げすることで日給をもらっていると知らされる。殺され、アイテムを壊されたらその日の日給は無いと言われるが、自分も仕事だからとまたすべて破壊しつくす。何度もそのプレイヤーに会ううちに、自分のやっていることに疑問を持つ。
また、その頃お菓子を食べすぎて糖尿病になりかけたアンダはゲームを親に取り上げられてしまう。アンダはネットカフェからゲームにログインし、また任務に就く。しかし工場で働く少女達の見方をすることを決意し、少女たちを殺そうとした仲間を倒してしまう。
トラブルを聞きつけ、学校に勧誘に来た女性が電話をかけてくる。そこで全てを説明する。
何ヶ月かまじめに療養に励み、健康を取り戻した彼女は親に許されて再び家からゲームにログインする。すると前回倒してしまった仲間から話しかけられて和解する。アンダたちのチームはゲーム内の工場で働かされている少女たちがストライキをすると聞き、その護衛をすることになる。
ケン・リュウ「時計仕掛けの兵隊」
宇宙女性賞金稼ぎのアレックスは家出した少年ライダーを捕まえて親の元に戻るところだったが、考えを変えてライダーを逃がすことにする。なぜなら…
数時間前、アレックスはライダーの作った奇妙なゲームをプレイしていた。ゲームの中で王女が目覚める。王女はお付きの時計仕掛けの兵隊、スプリングが悲しそうにしているのに気づく。スプリングは人の命令に従うだけでなく自律行動できるように自我が欲しいという。自動人形が魔法の石を組み込んで自我を持つことは王国では禁じられているが、王女はスプリングのために王宮内にあるはずの魔法の石を探すことにする。
そこまでプレイして、アレックスはこれがライダーとその父との関係をモチーフにしていると気づく。ライダーの父は有名な政治家で、AIの規制政策を進めている。対してライダーはロボット解放論者。ロボットに自我を持たせることをライダーは求め、父は規制している。ライダーはアレックスに、自我を持つロボットは本当に存在しないのか、人間にそっくりで、人間のように振る舞うロボットのうちに自我がないとなぜわかるのか。自我のあるロボットを破壊したら殺人ではないかと問いかける。アレックスには議論を打ち切り、ゲームを進める。
ゲームの中で、王女は父王の部屋を探索する。そこで王が自分に宛てた手紙を見つける。「娘が病気で具合が悪いのは心配だが、政治活動があるので家に帰るわけにはいかない」だが、王女はその頃自分が病気だった記憶がない。それどころか、その時期の記憶がほとんどないことに気づく。スプリングが魔法の石を見つける装置を見つける。カチカチというビーコン音を頼りに探すが、音は常に一定で何も見つからない。王女は手紙の束をさらに調べる。王宮のものに「娘の遺体を防腐措置すること」自動人形の職人に「娘とそっくりの自動人形を作り、自我を持たせる魔法の石を組み込んでくれ。政治的に大事な時期なので家には帰れないし、娘が死んだのに家に帰らないと政敵に知れたらスキャンダルになる」と書かれている。王女は子供の頃の記憶がひどく曖昧だと気づく。まるで体験したのではなくただ本を読んだかのように。スプリングが魔法の石を探し続けている。部屋を出ると反応が弱くなり、戻ってくると反応が強くなる。そして自分に近づけると、反応が非常に激しくなる。自分の体の中には人としての臓器が入っているのか、それとも機械の歯車が入っているのかと疑問に思う。
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ようするに、ライダーも、父親に作られたロボットなんだね。本物の少年はとっくに死んでる。父親が意図的に自我を持たせたのかどうかはわからないけど。
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