【ネタバレ感想】アメリカ短編ベスト10
書籍データ
- タイトル:アメリカ短編ベスト10
- 作者:エドガー・アラン・ポー 他
- 訳者: 平石 貴樹
- お勧め度:★★
収録タイトル
- エドガー・アラン・ポー「ヴァルデマー氏の病状の真相」
- ハーマン・メルヴィル「バートルビー」
- セアラ・オーン・ジュエット「ウィリアムの結婚式」
- イーディス・ウォートン「ローマ熱」
- ジャック・ロンドン「火をおこす」
- ウィリアム・フォークナー「あの夕陽」
- アーネスト・ヘミングウェイ「何かの終わり」
- バーナード・マラマッド「殺し屋であるわが子よ」
- ジェイムズ・ボールドウィン「サニーのブルース」
- レイモンド・カーヴァー「シェフの家」
- リチャード・ブローティガン「東オレゴンの郵便局」
- 全体感想
エドガー・アラン・ポー「ヴァルデマー氏の病状の真相」
催眠術の研究をしていた男は、かねてより「死に行く人に対する催眠術の効果」について調査をしたいと考えていた。今まさに死につつある人には催眠術はかかるのか、かかりかたはどうなのか。
そんな彼の疑問に長患いの末死期が近いヴァルデマー氏が協力を申し出てくれた。今まさに臨終と言う時に男がかけた催眠術の影響で、ヴァルデマー氏は…
ハーマン・メルヴィル「バートルビー」
法律家の男は代書人としてバートルビーという男を雇い入れる。問題だらけの他の従業員と比べ、バートルビーは黙々とたくさんの仕事をこなす能力を持っていた。
しかしバートルビーは、代書以外の仕事はどんな些細な雑用でも「しない方がありがたいのですが」と繰り返すばかりで何もしようとしない。そのやんわりとした拒絶は徐々に拡大し、やがて代書の仕事さえしなくなり…
セアラ・オーン・ジュエット「ウィリアムの結婚式」
久しぶりに田舎に戻った女性は、旧友の女性を訪ねる。そこで遠くで働く彼女の息子、ウィリアムが帰省し、結婚式を挙げることを知る。村はその噂でウキウキとわきたっている。
イーディス・ウォートン「ローマ熱」
幼馴染の未亡人二人が、お互いの娘を連れてローマへと旅行に来た。娘たちが出かけたあと、二人はかつて娘時代に共にローマに来た時の思い出話を始める。
そしてかつての悪意と裏切りが、今になって暴かれてゆく。
ジャック・ロンドン「火をおこす」
極寒の山中。男は犬を連れ、一人で調査に出かけ、仲間の待つキャンプ地へと戻るところ。とてつもない寒さの中、川の氷を踏み抜いて足を濡らしてしまった彼は、命を守るために火を起こして濡れた体を温めようとするが…
ウィリアム・フォークナー「あの夕陽」
まだ幼い白人の少年。彼の父が所有する黒人奴隷の女性は失踪した内縁の夫である黒人奴隷が自分を襲うために隠れていると信じている。
少年は彼女に懐いているが、そんな妄想のような考えを持っていることに不安を抱いてもいる。
アーネスト・ヘミングウェイ「何かの終わり」
河原に釣りに来たカップル。いつも通り振る舞う女性に対し、男性は妙に心沈んでいる。
バーナード・マラマッド「殺し屋であるわが子よ」
仕事もせず引きこもり、ただ街を徘徊する息子を心配する父。しかし何をしてやればいいのかもわからず、ただ息子の後を追いかけている。
ジェイムズ・ボールドウィン「サニーのブルース」
教師である黒人青年は弟のサニーを心配していた。サニーは過去問題を起こし、刑務所に入っていたことがある。出所後何をしているかもわからないサニーがバンドでピアノを弾くと呼ばれ、青年は弟を見守りに行く。
レイモンド・カーヴァー「シェフの家」
アルコール依存症の夫と離婚した女性。入院した元夫が友人のシェフの家をただ同然で借り、自分とやり直したがっていると聞く。現在の恋人と別れ、元夫を支えるためその家に行き、彼を支えることにする。
今までにないほど穏やかで満ち足りた生活を送る二人のもとに、家主のシェフから連絡があり…
リチャード・ブローティガン「東オレゴンの郵便局」
ごめん、全然印象に残らなくて話忘れちゃった…
全体感想
なんというか、この編者とはあまり趣味が合わない。何の印象にも残らない話が多々あった。「東オレゴンの郵便局」とか、「ベスト10といいつつ11あるやんけ」という衝撃に負けて、ストーリーを完全に忘れるくらい印象に残らなかった。
「ウィリアムの結婚式」はシリーズ長編小説のエピローグらしく、なんでこんなもん収録したんだろう?と思った。風景描写等はきれいだけれど、キャラクター説明不足で魅力を感じない。ウィリアムって誰やねんってなる。
「何かの終わり」はすごくぼんやりふんわりした話で、主人公が幼い少年で大人たちが何をしているのか理解していないという設定なので、読んでるこちらとしても何が起きているのかよくわからない。
よかった話としては
「サニーのブルース」最初何が起きてるかよくわからなかったが、主人公たちが黒人と判明した時点でようやくストーリーがつかめた。名前で分かれよって話かもだけど…
話が分かれば、音楽がいかに人の魂に作用するかの表現がすごくよかった。
「ローマ熱」最後のどんでん返しが、よかった。ずっとひそかに見下していた相手に出し抜かれた瞬間。でもこうなったらもう友情は復活しないだろうなぁ。
「火をおこす」ストーリー的には淡々としたもので、主人公も感情に乏しく魅力的ではない。でも自然描写の美しさ、恐ろしさが良い。どんどん追い詰められていく焦りが、主人公が大げさでないため余計に震える。
「バートルビー」他の訳でも読んだことがあるけれど、とても心惹かれる訳だった。
彼をむしばんでいたのは死に至る病、絶望だったのだろうなぁ。"I would prefer not to"「しないほうが有り難いのですが」は覚えておきたいけど使いどころないなぁ。
「ヴァルデマー氏の病状の真相」やはり巨匠、古さは感じるけど安定して面白い。フランケンシュタインの、自分が起こしてしまった事態が制御不能になる感じを思い出した。けれどこちらの主人公はちゃんと自身の行為に責任を取る気概があるので安心。
まぁ、こうやって並べると面白い話のほうが多い…か?
つまらない:普通:面白いの割合が3:3:4か。そんなもんかな。