人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【感想】魔法使いになる14の方法

書籍データ

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好きだ!この本マジで昔から好きだ!

中高の頃に読んだ本です。すごい好きだったけどもすでに本屋に見つからなくて。各短編のタイトルは覚えてたけど流石に本のタイトルはうろ覚えで、ずっと探してました。

最近の図書館は、短編集の収録タイトルで検索出来るんだねぇ。賢くなったものだ。というわけで本のタイトルさえわかれば今ではネットでサクッと手に入ります。さぁ買おう。君も買おう。我こそは読書家だという人は今すぐ買って収録作「何か読むものを」を読むべき。

 

全部書くのも冗長だよなぁと思うので、ちゃんとした感想は特にお気に入りのやつだけ。

  

 

ドゥ・ララ教授と二ペンスの魔法

  • E・ネズビット

正統派児童文学って感じ。可愛らしく、教訓めいた話。私はイギリス児童文学で育った人間なのですごく馴染み深い。

学校奇譚

シンプルなクラシックホラー。短い話ながら段々と恐ろしい事実が明らかになって罠にはまっていく様とか、王道で良い。

悪魔の校長

  • ジリアン・クロス

可愛らしいコメディ。明るくて機転の利く女の子がとても魅力的。

ワルプルギスの夜

  • ハンフリー・カーペンター

シリーズ物の一つなんだろうな。新し目の児童小説。ハリポタとか、ちびっこ吸血鬼とか、そういう雰囲気。ちょっと頼りない先生がとても可愛らしい。ファンタジックビーストのニュートみたい。

暗黒のオリバー

これはちょっと雰囲気話って感じかな。風のない真夏の正午。強い日差しでできる短い濃い影。ストーリーはぼんやりしているけど美しい。

さがしものの神様

  • ジョーン・エイキン

子供に嫌われる子供の第一は「嘘つき」だと思う。嫌われて、無視されて、なんとか注目を得たくてまた嘘をついて嫌われる。そういう子いたなぁって苦々しく思い出す。
新入生の嫌われてる感じとか、逆転のアイテムを手に入れた喜びとか、それでどんどん悪化していく感じとか。読んでてああああってなる。
またこの誰も救われない感じの終わりかたも好き。

 

ダブラーズ

  • ウィリアム・ハーヴィー

ちょっと雰囲気の違う話。ホラーというよりドキュメンタリータッチが入っているような。手元から始まってどんどん大きくなって転がっていき、また一周して戻ってくる。そうしてもう終わったような顔をして、まだ背後に何かを秘めている。そんな話。

飛行術入門

これもキャラクター小説。女の子の可愛らしさ。なんだか自分でも魔法が使えるようになりそうで、子供に人気でそう。

中国からきた卵

現代物。登場人物がみんな大人なのが、ファンタジーというより現実を舞台にしたリアリティのようで面白い。

お願い

ストーリーラインは実にシンプルで、ああ子供ってこういうことするなぁという懐かしい思い出からどんどん余裕がなくなって破滅していく様が、迫真の描写で描かれている。表現がとても良い。

こうやって自分で自分に制約をかけて、自縄自縛していくのが真の魔術なんだろうな。

 

見えない少年

なんか…なんかすごいつらい…
SF作家のイメージが強いブラッドベリがファンタジー?と思うけどやはり一捻り効いている。

魔法使いの老婆のキャラクター造形がすごくいい。そしてすごくつらい。希望するものになりたくて、なれなくて、でも諦められなくて、今更後戻りもできなくて、ずっと自分自身に嘘をつき続けてる。そうやって自分を騙すことに慣れきってしまっている。

人生ってそういうところあるよね。全部理想通りになんかいくわけがなくて、見て見ぬ振りをしている、気づかないふりをして認めないでいるしこりってあると思う。

そういうところをざらりと逆撫でされるような話。とても悲しい。

 

わたしはドリー

  • ウィリアム・F・ノーラン

怖い。あっさりした語り口で洒落にならない現実の恐怖と狂気が語られている。どこまでが本当でどこからが幻覚なのか。語られている事柄をどこまで本人が事実と把握できているのか。意図的についている嘘なのか、強いストレスでそう思い込んでしまっている、本人にとっては救いの魔法なのか。

はたから見ると狂気でしかないけれど、目覚めない方がいいのだろう。その結末は救いのままにした方が良いのだろう。

 

なにか読むものを

最っ高のホラー。本に取り憑かれた人なら誰でも、主人公の少女に共感してしまうだろう。うまく世間に馴染めず、馴染めないことより馴染むことを強制されることに苦しんでるところとか。活字中毒の描写とか完全に読書中毒あるあるでしかない。

そうなって惹きつけるだけ惹きつけておいての転落はほんと恐怖でしかない。

私がこんな地獄に落ちたらと思うと本当にゾッとする。逃げることも狂うこともできずにいるなんて耐えられないけど、耐えられなくても逃れられないんだよなぁ。怖。

 

キャロル・オニールの百番目の夢

すっごく可愛い話。ふわふわピンク色の綿あめみたいな話。

才能はあるけどまだ幼い少女。ステージママに乗せられてちょっぴり傲慢になりかけてる子が自分を見つめ直し、子供らしさを取り戻す話。

カーニバルのような世界の表現、開放感のカタルシス、魅力的なキャラクター。

モーリス・ドニのプシュケの物語みたいな世界。

 

ホラーからコメディから、様々なタイプの話があって良い。出版されたのがちょうどハリポタが人気だったせいか、序盤にやたらハリポタの話が出てくる。あやかりたさがビシビシ伝わってくるけど、J・K・ローリングの話は一個もないよ。

各話の前についてる序文も面白いし、一カットずつついてる線画も児童小説に親しんでる人にはおなじみのタッチで懐かしい。文句の付け所がない一冊。