人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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ファム・ファタルの主役は男達 ギュスターヴ・モロー展 パナソニック汐留美術館 4/8

パナソニック留美術館、開始直後のギュスターヴ・モロー展に行ってきたよ!ここはルオーを多数所蔵しているので、そのお師匠さんであるモローも時々やってくる。素晴らしい。

panasonic.co.jp

特に今回は、見たことがない絵がたくさんあった。サブタイにあるようにサロメが中心。というか、正直下絵が多かった。
モローといえば精緻で流麗というイメージだと思うのだが、それとは全く違う絵を見ることができて、イメージを確かめるためだけにざっくりと塗り分けられたその絵はやっぱり美しくて、力強さが加わった分ぞっとするほど重厚で素晴らしいと思う。

 

今回は図録を買ったよ。だってこの表紙!エンボス加工が素晴らしいじゃん!開いてみたら、展示されてなかった絵もたくさんあって良かった。買うべき。

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雲の上を歩く翼のあるアレクサンドリーヌ・デュルーとギュスターヴ・モロー

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なにこれぇ!!!

生涯独身を通したモローですが、30年連れ添った恋人がいたのだとか。その彼女との、おそらくは私的な一枚。なんだよ、ラブかよ。ラブラブなのかよ。最高かよ…尊い

羽を生やして天国を散歩するキュピドのようですが、モローのお腹まであるズボン(可愛い)がモジャモジャの髪と相まってサテュロスみたいにも見えますね。いたずらっ子かよ。尊すぎる。

でもさぁ。なんで結婚しなかったんだろね…普通に母親からも交際を認められてたっていうし。なんか理由があったのかなぁ。画業の、セルフブランディングの妨げになるからかなぁ。個人の自由といえば自由なんだけど、この未婚女性に風当たりの強い時代、ちゃんと守ってあげて欲しいなぁ。ボナールもそうだったし、事実婚がトレンドだったのかしら。

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パルクと死の天使
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馬を引いているのがパルク、人の運命を支配する女神です。前述のアレクサンドリーヌに先立たれた悲しみのうちに描かれたそうです。

よじれねじくれ、混沌とする画面。悲痛な紺碧の空。彷徨う大地には草も生えない。

すごく辛い絵です。まるで効果のダリのような圧倒的なエネルギー。耽美方向に整える余裕もない感情。すごく辛かったんだろうなぁ。

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出現
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モローと言えばこれ!という有名な絵。

本当に美しいです。周囲の誰も気づかないままサロメの前にだけ現れる洗礼者ヨハネの首。背景に白い線で描写された建物も現実の王宮と一部重なるものの明らかに全く違う構造を示している。サロメと彼だけが、二人だけの世界に入ったかのようだ。

洗礼者ヨハネがなぜか驚いたような顔をしているのに対して、サロメは下から睨みつけるような強い表情をしている。一枚一枚ヴェールを脱ぎ去る踊りを終えたばかりの艶かしい姿だが、その手には白い花がある。純潔を示す百合だろうか。

モローは、サロメを悪女として描いたのではないのだろう。美しく、男をまどわせ破滅させる運命の女は、彼女自体は罪とは無縁なのだろう。善や悪に縛られない、誰にも汚されずに凛と立つ女の周りで、勝手に男達が狂って堕ちてゆくのだろう。

サロメは、まるで自らにはなんの恥じるところもないと宣言しているかのようだ。

アジアというよりインドやトルコのようなオリエンタリズムがとてもエキゾチックで美しい。

あと、サロメの絵をみたら新約聖書読んで。マジ読んで。サロメちゃん悪くないから。みんなランボーの創作なんだから。*1

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サロメのための油彩下絵
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出現とは別の構図の絵のための下絵。おそらくは色彩効果を試すためのもの。
赤い服を着たのがサロメだろう。とすれば、黄色くざっと塗られたものは洗礼者ヨハネの首だろうか。
完成図がこうなりましたよってのが展示されていないのでわからないのだが、ずっと見ていると登場人物が浮き上がってくるかのようだ。
コードウェイナー・スミスのシェイヨルという名の星、クラウン・タウンの死夫人に出てくる"一筆画"はこんな絵なのかもしれない。

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サロメ
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また別バージョンのサロメ。下絵なのか、描きかけのまま放置されたのか。
まるで長い時を経て剥落した古代神殿の壁画のようで、私はこれがものすごく好きだ。
赤いドレスを脱ぎ捨て、今から踊りを披露する瞬間のサロメとそれを見つめるヘロデ王だろうか。
簡素に白で表現されたサロメはミロのヴィーナスのようだ。

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モローに対するイメージが大きく変わる、ものすごくいい展示だった。
細かく美しく、でもちょっとだけ軟弱なイメージの画家の、力強いエネルギーを感じることができるから。

ルオーの部屋で、師匠としてのモローに触れていたのもとてもよかった。
精緻なモローの一番弟子が、あの素朴でごつごつしたルオーって正直意外じゃないですか。でも彼は、生徒の個性を伸ばす方向の教育をしていたんだそうです。ただアカデミズムを伝えるだけの他の教師より、慕われていたんだろうなって感じがした。

 

あと、地下のショールームで複製画を見ることができる。生活空間を模した中に飾られていると、本当に家に飾っているみたいでよさがある。

ピエタ

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ガラテア2

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こっちはもうモローど定番って感じだね。
ただ、ふつうに住宅施設見に来てるお客さんと商談とかしてるから注意だよ。
商談中でも絵画見せてくれる(案内のお姉さんありがとう)けど、やっぱり気を使うよね。
本当はあと2枚あったんだけどちゃんと写真撮れなかった。
これはもう現地に行って自分で見るしかないね。

*1:洗礼者ヨハネの首を欲しがったのはサロメではなく、その母ヘロディア。マルコによる福音書6章24節

【感想文】藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 3

書籍データ

 

収録タイトル

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 この短編集、1巻が面白かったけど2巻がめちゃくちゃつまらなくて、もう読むのやめようかと思った。でも手元にもう3巻あるしなぁと読み始めてみたらそれなりに面白くて安心した。よかったよかった。
短編集って編集者の腕も大事なんだなぁとマジで思った。

ぼくの悪行

パラレルワールド物。並行社会があるからって一般人には大したことは起こらない…とおもいきや、雪だるま式に事態が悪化していくのが面白い。因果応報的な終わり方がちょっと意外。

 

メフィスト惨歌

悪魔と魂を賭けて取引する話。現代のファウスト。魂の相場とか契約の詳細とかが現代的で面白い。
いつ死亡が確定するかは分からなくても、確実に死亡した時点(移植先の人間が死亡した時)はわかると思うんだけど、そうもいかないのかな。死んだ瞬間に魂を取らなきゃダメなのかしら。

 

神さまごっこ

神様セットという道具を使って神様になる男の話。これ、ドラえもんにも同じ道具があったような気がする。忘れられた神は死ぬという設定よく見るけど初出はどこなのだろうか。アポロンの最後の神託かなぁ。

 

あいつのタイムマシン

流し読みすると意味がわかりづらい話。ネットにも結構この話の意味は?という質問が散見される。今の自分が知らないことも未来の自分は知っているはず、というところから未来を捻じ曲げる。信じれば夢は叶う!という話。

 

いけにえ

宇宙人の理解できない考えに人間が振り回される話。自分ひとりの命で地球が救えるとしたら自分から差出せるか?私なら絶対拒否だろうな…と正直思う。漠然とした「みんな」より、身近な「あの人」の方が大切なのだな。
なぜ宇宙人は最後に要求を変えたのだろうか?というと、多分彼女を主人公のものにしたかったんだろうなと思う。けれどなぜ主人公に便宜を図りたかったのかは、人間にはわからんということなのだろう。

 

超兵器ガ壱號

かわいそうな象みたいな話だな。戦争への皮肉、軍国主義への皮肉、大和魂への皮肉。コンプレックスを解消できるなら命すら惜しくないという考えは全くわからないでもないだけにしょんぼりするラストだ。

 

テレパ椎

世知辛い。この本、世知辛いネタ多いな!
自分に向けられるやさしさや親愛の情は、周囲のやさしい嘘でできている。
嘘自体は悪いことではなくて、相手をそれなりに大事に思うからこそという一面もあるけれど、真実に気づいてしまったらもう前とは同じように受け止めることはできないよね……
繊細な人ほど生きづらい。周りの機微なんかに気づかない鈍い人の方が幸せ。
世知辛いなぁ。

旅人還る

まあまあちゃんとしたSF。

サイクリック宇宙論 - Wikipedia
前人未到のその先を見たい、というアルピニストのような狂おしい欲求は男のロマンなのだろうか。たとえそれを誰に伝えることができなくとも、自分はその先に到達したいという気持ちはさっぱり分からない。
ナルニア国物語のリーピチープが最果てに向かうのはその先を見たいという冒険心もあるけれど、その先にアスランの国があると思っていたからだし。
再生した世界が以前のものと寸分たがわず一致するのはロマンがあるようなないような。

白亜荘二泊三日

内容が薄いし設定も雑だなぁと思った。
ゆる~いタイムパラドックスものなんだろう。未来からの旅行者が意図せず未来を変えてしまう話。自分たちの未来の行動を主因として自分たちの過去が確定する。
それだけの話はちょっと弱いな。
1頭だけを別として過去の動物には干渉できない、という設定はどこに行ったのだろうか。

福来たる

人の欲望には限りがない。昔に比べればずっと恵まれているはずの現代の人間も不満ばかり。これではいくら福を与えてもキリがない。
とはいえなぁ。
幸福って言うのはどうしても相対的なものだと思う。周囲の水準に比べてとか、過去の自分に比べてとか。その基準点というのもどんどん変わっていくし、一度上がったらあまり下がらないものだ。
それを嘆く福の神さえ、「自分が活躍していた頃」という基準から逃れられないのが皮肉だなぁと思う。
幸せは「いる」のではなく幸せに「なる」ものなんだろうな。
吾唯知るを知るのは難しい。

求む!求める人

この話に出てくる機械、営業マンならみんな欲しいだろうなぁと思う。
相手の希望が予測できるならこんなに楽なことはない。
訪問販売って形態が古いなぁと時代を感じる。

倍速

009とかフラッシュみたいにスピードというのは何よりも大きな武器だ。
自分と周囲との体感速度を変化できればお得だよなぁというワンアイディアの話。
オチがアダルティw自分の時間を遅くすることはできないのかな。

侵略者

寄生生物である宇宙人が地球を乗っ取るスピードは…という話。
人間の繁殖スピードが非常に遅いというのがネックになっているけれど、本当に繁殖スピードが遅いならなんでこんなにいっぱい人間がいるのかなぁと考えてしまった。
進化を進めたいなら寿命の長い生物ではなく、寿命の短い生物を選ばないといけないよね。
でも何でネズミって進化しないのかな。あれはもう一つの最適解なのかな。それとも進化してるけど気付かないだけなのかな。

マイホーム

タイムパトロールが出てくる。住宅難に関する話がすごく多い。
住宅展示場ではしゃぐ子供がリアルというか、私もこうやって大騒ぎして親に怒られたなぁとほのぼのする。

マイシェルター

旧約聖書のロトを思い出した。また、いけにえの対になるような話だなと思った。
世界中の人を犠牲にしても、自分だけが助かりたいのかという論理的命題。
実際自分が他の人を見捨ててでも生き延びたいかって言うと、やっぱりそうでもないよなぁと思う。私はごく普通の人間だから、他人を犠牲にすることにはある程度ストレスを感じてしまう。あくまでも"ある程度"ではあるけどね~

裏町裏通り名画座

つまんなかった。いや、パロディだってのは普通にわかるんですけど、だから?っていう。

有名人販売株式会社

誰かのクローンを本人の許可なくして作成し、自分に都合がよいように教育する…という話、藤子不二雄に結構出てくるよね。今回は自分の意図しないところでというところが特異点
しかしこの手の話を読むと、クローンの人権とはって考えてしまう。ハッピーエンド風に終わってるけど、生き方も好悪の情も、クローン本人が選び取ったものじゃないよなぁ。

 

うすうす気づいてないわけじゃなかったけど、短編集の感想を1記事にまとめるって労力の割に読み物として面白くなくない?
全話についてじゃなくて気に入った話に絞って書こうかな。

 

【粗筋】シェイヨルという名の星

書籍データ

 

 収録タイトル

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↓粗筋開始(白文字)↓

共通世界観

遥かな未来、宇宙全体に広がり高度な技術の発展した世界。
全ての人間は生殖センターでその性質や職業も含めて計画的に生み出される。
不老不死を実現し、完璧に整えられた社会に住む人間は、しかしなぜか無気力さを抱えていた。
力作業や単純労働は人間ではなく、動物の脳を組み込んだロボットや動物を人間の形へ作り変えた「下級民」と呼ばれる獣人が担っている。
獣人達の治世はあげられ、見た目も人間そっくりに作られていたが人権はなく、長寿措置も取られず、少しでも仕事ができないと殺される。彼らは虐げられて生きている。

 クラウン・タウンの死夫人

全ての人間が正しく計算され、社会に役割を持って生まれる中、管理機能のエラーで産まれたエレインは社会に馴染めずにいた。ある日エレインは街を彷徨ううちに忘れられた旧市街地に迷い込むそこで彼女はレディ・パンク・アシャシュという人間の記憶と精神をコピーされた古い機械に合う。

レディの言葉に従い先に進むと、下級民達が人間の目を逃れて生活していた。彼らはレディの予言-未来予測演算-に従い、全ての下級民の記憶を引き継がせたド・ジョーンと言う名の犬娘を育てていた。

予言の時が来たと判断した下級民達は、エレインとド・ジョーンを中心に反乱を起こす。と言ってもただ堂々と下級民達で行進し、道行く人間に愛と、自分たちも「人間」であると伝えるだけのものだった。しかしそれは許されるものではなく、下級民達はその場で殺され、ド・ジョーンは裁判の末火あぶりの刑となる。最後まで愛と人権を訴えたド・ジョーンの姿は、下級民を使い捨てのモノだと考えていた人間達の心をわずかに動かすが、その人権意識が変わるのは遥か先の話。

 

老いた大地の底で

ロード・スターオーディンは敬愛される政治家であったが、若返り措置を行わずに70日後に死ぬことを決めていた。彼は完璧に整えられた幸せな世界であるはずにも関わらず人間達が生きる力を失いつつあることを心配していた。その状況を打ち破るヒントを探すため、地下世界ゲエビット、整えられた幸せな大地の下の無法地帯に視察に行くことにする。
軍人の精神を移植したロボットを連れとしてゲエビットに行った彼は、そこで一人の女と会う。彼女が見つめる先にはその恋人が、コンゴヘリウムと言う高エネルギー体を利用して音楽を搔き鳴らし、踊り続けていた。彼女の話では、彼はもうずっと長いこと休憩も食事もとらずに踊り続けているのだと言う。
ロードは彼女を地上に送るようにロボットに命じ、地下水脈を爆破して踊り続ける彼とともに死亡する。
彼女は恋人のように無軌道な死を選ぶ人が出るのは人が生きる喜びを平素の世界で得られずにいるからと考え、世界を変える道を選ぶ。
※後半よくわからない…

帰らぬク・メルのバラッド

下級民を迫害する世界の中、ロード・ジェストコートは下級民の人権を認める少数派の一人だった。彼は猫娘のク・メルを通じて下級民のリーダーに接触する。下級民達の助けになりたいと伝えたのだ。彼は下級民のリーダーをク・メルをテレパシーの媒介に評議会のコンピュータに接触させる。人間が下級民を迫害するときのために逃走ルート等の情報を盗ませる。
その経緯の中、ク・メルはジェストコートを愛するようになるが、法的に人間と下級民の愛は許されないために告げられることはなかった。ク・メルは下級民と結婚し、子供を産み、死んでゆく。不老長寿処理を受けたジェストコートも他の人間と結婚し、何百年も生きる。時折ク・メルの子孫を見かけることもある。
ジェストコートもその後に死を迎える。その時になって、彼はク・メルが自分を本当に愛していたことを知る。

 

シェイヨルという名の星

犯罪者マーサーはシェイヨルという星なる流刑になる。そこでは奇妙な生物が生息しており、それに寄生された人間は奇形となる。体の表面に、腕や耳といった体のパーツが生えてくるのだ。受刑者たちは外科移植手術のパーツ製作工場として飼われているのだ。シェイヨルには牛男があり、パーツを刈り取ったり受刑者の苦痛をいやすために強力な麻薬を与えたりしていた。マーサーもその受刑者の一員となり、パーツ工場として何百年も過ごす。それは奇妙な生活だが、麻薬のために苦痛もなく、それほど不快な者ではなかった。

そんな恐ろしい生活を送るある日、この宇宙を統べる機構の役人がやってくる。役人はこんな非人道的な刑罰が行われていることに気づかなかったことを詫び、受刑者達を別の星に連れて行き、きちんとした生活を送らせることを保証する。

 
↑粗筋終了(白文字)↑

 

 

【感想文】シェイヨルという名の星

書籍データ

 

 収録タイトル

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う~~ん、困る。この本の評価はとても困る。
ぶっちゃけ、私が悪い。今この本を読むべきじゃなかった。でもそんなん読まなきゃわからんじゃんって言いたい。

この本を読む前に、人に「シリーズ物だけどこれだけ読んで大丈夫かな?」って聞いたんですよ。そしたら「このシリーズはそれぞれ独立してるから大丈夫だよ」って言われたんですね。ならば安心だと読んでみたら、確かに完結した物語なんですよ。前からの続きではないし、次巻に続く終わり方でもない。特にこの一冊は短編集だしね。問題はなかったです。問題は。

 

でもこれ、全部外伝じゃねーか。

 

いやほんと、物語の終わりが

「この人こそが後の重要人物○○である」とか

「この一族からあの重要人物○○が排出されるのである」とか

し・ら・ん・わ!!!

はーい、私が悪いんですよねー。既刊読まないでいきなりほぼ最終巻から読んじゃったんですもんねー。失敗ですねー。

チクショ。

1巻から読んでたら、オススメ度は変わるかもしれない。

 

クラウン・タウンの死夫人

ノーストリリアに名前だけチラリと出てきたド・ジョーンの話。

未来から過去を振り返るような、神話や伝説を語るような、面白い語り口の話。遥か未来の世界が舞台のSFなのに、古代の話をしてる荘厳さがある。

また、伝説となった話を語っているため「この場面はあの有名な絵で知られている」という描写が入るのがよかった。

いちばん有名のは、サン・シゴナンダのあの驚くべき "一筆画"だろう。ーー背景のパネルはむらのないグレイ一色で、左手にかすかな茶と黄、右手にかすかな黒と赤、そして中央に絵の具のこすれた跡と見まがう不思議な白い線、ーーそれがなぜか途方にくれた女エレインと、悲運に祝福された少女ジョーンを想起させる。

この絵、すごく見てみたい。小説だから成り立つ表現で、実際にどんな絵なのかは全くわからないけどその鮮やかさが眼に浮かぶようで、でも形が掴めなくて、気になる。

 

あと、これ宗教色めっちゃ強いなと思った。名前といいストーリーといい、完全にジャンヌ・ダルクをなぞっている。

宗教が禁じられた世界で

<第一の忘れられた者>の御名において。<第二の忘れられた者>の御名において。<第三の忘れられた者>の御名において。

って、完璧に<父>と<子>と<精霊>の三位一体じゃない。

 

老いた大地の底で

正直よくわからなかった…。なんなんだよダグラス=オウヤン惑星団って。この話だけなの?前々からの重要要素なの?なんでロードとサンボーイは対決したの?あの二人がなんで戦ったのか全然わからなかった。一人で踊りたいなら踊らせておけばいいじゃないか。テロリスト的な扱いだったのだろうか。

表現とかは面白いけどストーリーは面白くなかった。

 

帰らぬク・メルのバラッド

これはノーストリリアの外伝。完全にオマケ小説で、これだけ読んでもイマイチな話。ク・メルは魅力的だけどストーリーはひどく単純。

 

シェイヨルという名の星

これはすごく面白かった。設定も面白いし、牛男のキャラクターも非常に魅力的。ドラッグでトリップしているような怪しい世界。どんどん姿を変える奇怪な人物達。ああ、フルCGで見てみたい。どれほど美しくどれほどおぞましい世界なのだろうか。

ハッピーエンドなのかどうか微妙なオチは弱いなと思うけど、牛男の良さでだいぶ救われてる。

 

というわけで人類補完機構の本を二冊読んだ。シリーズ物の後半いきなり読んじゃって失敗したなって思う。一巻から読むかどうかは…微妙だなぁ。

 

【粗筋】藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編2

 

↓粗筋開始(白文字)↓

どことなくなんとなく

友人とキャンプに来ている男性。彼はある時期を境に全てに現実感がなくなったという。全てが自分の想像の範囲内で、意外なことが何も起こらない。まるで自分が思い描いた空想の世界のようだと。友人は最近彼がおかしいと妻から頼まれて気晴らしに来てやったのに、思い上がった言い方はなんだと怒り出す。自分が想像の産物なら消してみろとナイフを持って襲いかかる友人を、消してしまう男性。
と、同時に消えてゆく世界。実は地球は核戦争で消え失せていた。男性は宇宙人によってほんの一つだけ残った細胞から作り出されたクローンだったのだ。世界は彼の記憶から作られたものなので彼の想像を超えることができなかったのだ。彼の世界を存続させることを諦めて宇宙人は消えてゆく。

 

3万3千平米

狭い借家に住む男は友人の不動産屋から土地を買って家を建てるか悩んでいる。金のない男に帰る土地は狭くて立地も良いとはいえない。
そんな男の家にある日不思議な客がやってきて、男が所有する一万坪の土地を売ってくれという。そんな土地などあるわけがなく、客のことは信用できない。
悩む男はある業者から広くて安い土地を買うが、住宅を建てられない土地を騙して売りつけられたことに気づく。大騒ぎになる家に不思議な客がまた現れ、男の持つ土地を強制収容したと告げて2億相当の宝石をのこしてゆく。それを売って広い家を手に入れた男は、昔冗談で買った火星の土地権利書を思い出す。

 

分岐点

夜の公園で帰宅せずに佇む男に、浮浪者が声をかける。人生をやり直したいのでは、と。息子のことを思い出して一旦は家に帰る男だが、昔、二人の女性のどちらと結婚したら良いかと悩んだことを思い出す。偶然その結婚しなかった方の女性と再会し、嫉妬に狂った妻に責められて、男は今の人生を捨ててやり直したいと願う。深夜浮浪者と再会し、気がつけばベッドの中。いなかったはずの娘に起こされ、結婚しなかったはずの女性と結婚しているが、男は前の人生を思い出せない。
新しい人生もそれほど完璧な訳でなく、男は娘が人生の選択肢を誤らないことを願う。

 

女には売るものがある

夜の街を歩くしょぼくれた男。それに声をかける若い女。交渉の末話はまとまり、二人はラブホテルへと入っていく。
すわ売春か、と思いきや、男が要求するのは性的なサービスではなくとにかく亭主関白的に威張り散らすこと。約束の時間を過ぎてお金のやりとりが始まる部屋に、警察官がやってくる。
男尊女卑社会から女性上位の時代を勝ち取った歴史を逆行させようとしたと「売権防止法」でおんなは送検される。

 

あのバカは荒野をめざす

晦日、あるホームレスが27年前にタイムスリップする。それはかつての自分が実家を捨てて駆け落ちした日。ホームレスはかつての自分を止めようと説得するが失敗。女性の元に直談判に行くが、かつての自分に阻止されて現代に送り返される。
自分がかつて誰になんと言われても止めない熱さを持っていたことを思い出したホームレスは、人生を今からでもやり直すことにする。

 

パラレル同窓会

大会社の社長、人生に成功したが何か満たされない男の趣味は誰に見せるでもない小説を書くこと。ある時パラレルワールドにすむ全ての自分が集まる催しに招待され、ありえたかもしれない自分達に出会う。さまざまな自分の中で占い小説家になった自分を見つけて人生を取り替えてもらう。
しかし取り替えてもらった人生も満たされるものではなかった。さしあたり金銭面で。

 

クレオパトラだぞ

自分がクレオパトラになった妙にリアルな夢を見続けている男。彼の人生は全く上手くいかず、自殺も考えている。
漫画家の友人が男の夢を元に漫画を描くという。転生を繰り返している主人公が、嫌なことがあるとすぐに自殺転生して逃げ出すという話だ。それを聞いてサラ金に追われる男は自殺して転生しようと毒を飲んでしまう。しかし今まで全ての人生が不運だった男は、転生しても不安なまま。滅びゆく地球の最後の人間として生まれ変わるのだ。

 

タイムカメラ

恋人とギクシャクしている男。デートをキャンセルされた夜、彼女が上司とホテルに入るところを目撃してしまう。
そこで出会った不思議な男に、その場所の過去の写真が撮れるというカメラを売りつけられる。訪ねてきた恋人が上司と何もなかったことを証明するためにホテルに行き、昨日の写真を撮ろうとする。と、上司がさまざまな部下の女性と関係を持っていたことが明らかになる。
彼女とは仲直りし、男は理不尽に責めてくる上司をその写真で脅迫することにする。

 

ミニチュア製造カメラ

隠居した大会社の元会長か、ミニチュアを作るカメラを不思議なセールスマンから買う。それを使って模型を作ることにはまった元会長は周囲の写真を撮りまくるうち、暗い雰囲気の女性に気づく。事故で幼い子供と夫と死に別れた彼女の家が締め切られてるのに気づいた元会長はその家のミニチュアを作成し、中に遺書があることに気づく。なんとか女性の自殺を止めた元会長は彼女の力になろうとする。

 

値踏みカメラ

古道具屋の娘、売れないカメラマン。彼女は同じく売れないカメラマンの恋人がいるが、大金持ちからも求婚されている。不思議な男から物の価値を映し出すカメラを手に入れた彼女は、対立する二人の男性のどちらを選ぶべきか悩み、二人の価値をカメラで確認する。世間的価値、生涯年収では比べ物にならない恋人が、自分にとっての価値は計り知れないことに気づき、彼女は恋人と結婚することを決める。

 

同録スチール

道出会う少女に片思いしている学生。彼は不思議なセールスマンに、写真を写すとそれを撮影した時の音を再生できるようにするカメラを売りつけられる。奥手な学生は友人に片思いの少女の写真を撮ってもらうが、そのうち彼女には恋人がいると友人に告げられる。
せめて彼女の声が聞きたいと不思議なカメラで写真の音声を確認すると、友人が彼女を横取りしようとしていること、彼女が自分を気に入っていることをしる。学生は自分の写真を撮影し、ラブレター代わりに彼女に渡す。

 

タイムマシンを作ろう

友人と別れて家路に向かう中学生の元に怪しい男が現れる。未来の自分だという男は、中学生につくりかたを教えてタイムマシンを作らせようとする。苦労の末完成したタイムマシンで過去を楽しんでいると、そこに、未来の友人が現れる。ほぼ同時にタイムマシンを開発した二人は、自分こそがタイムマシンの発明者になろうと昔の自分に製法を教えて作らせることを時間を遡って繰り返していたのだ。乱闘の末未来の二人はさらに過去の自分へとタイムマシンを作らせに行くが、中学生はなんとか自分の時代へと戻る。友人との友情を壊さないため、タイムマシンなど発明しないことを決意する。

 

夢カメラ

男は不思議なサラリーマンから夢を撮影できるカメラを買う。自分の夢を撮影した彼は、部下の女性と不倫している夢の写真を手に入れる。しかしその写真が妻の手に渡り、逆鱗に触れる。サラリーマンから問題が解決できるとカメラとオマケを買った男の夢を妻が撮影すると、「部下に誘惑されるも妻を愛していると断る男」が映し出され、妻の機嫌はなおる。実は好きな夢を見ることができる機械で妻向けのストーリーを作っていたのだ。男はこれからは自分に都合の良い夢を見ようとする。

 

コラージュ・カメラ

新聞記者の男。汚職事件の取材を続けてはいるが、どうしても証拠が出てこない。激務の中息子とともにジオラマを作ろうと遊んでいると不思議なセールスマンに簡単に合成ができるカメラを買わされる。それを使って記者は汚職証拠写真を作成し、事件の首謀者に送りつける。それを信じた首謀者は罪を認めることになる。

カメラは息子が楽しんで使っている。

 

懐古の客

オンボロアパートに住む男のところに不思議な客がやってくる。タイムトラベルツアーで来たという未来人はお金を払って男の部屋に泊まることになる。未来人と別れて5分もすれば彼のことを忘れるらしく、過去に影響を与えず旅行を楽しめるのだという。
しかし未来人は予防接種をしなかったらしく、夜になると雑菌などで体を壊して入院してしまう。入院中、男は未来人のことを忘れて引っ越しし、アパートも取り壊されてしまう。未来人は退院するものの、ツアーにはぐれて未来に戻れなくなってしまう。

 

四海鏡

愛人の浮気を疑う金持ちの家に、セールスマンから手紙が送られてくる。世界中のどんな場所の写真も撮れるというそのカメラを売りつけられそうになるが、大した金額にならない。そこはそのカメラを欲しがるもう一人が現れ、奪い合ってどんどん値が釣り上がる。喜んで見ていたセールスマンだが、二人は共同購入することになったと法外に安い値段を示してくる。

ショックを受けたセールスマンはその場を離れて考えようとするうち、体が弱くて旅行に行けない少年と知り合う。世界の写真を見て想像するのが趣味だという少年に、サラリーマンはカメラをタダ同然で譲り渡す。金持ちたちは待ちぼうけ。

 

親子とりかえばや

堅物の父親と浪人生の息子。どうにも最近分かりあえないでいる二人の体が突然入れ替わってしまう。擦れ違いが多かった二人はまず情報交換をしようと休んで話し合いをすることに。しかし父親の体に入った息子は彼女とデートがしたいと家を抜け出してしまう。病欠した父親を心配した同僚につかまって話をするうちに、父親が会社で慕われていること、本人には言わないものの息子を大切に思っていることを知る。
息子の体に入った父親のもとには息子の彼女が現れ、約束通り一緒に映画を見るうち、彼女が見た目よりもしっかりとした考えの持ち主であることを知って安心する。
父親と息子がお互いをわかりあった時二人の体は元に戻り、相手をいたわりながら家に帰っていく。

 

丑の刻禍冥羅

どうにもついていない男が謎のセールスマンから不思議なカメラを売りつけられる。そのカメラで人物の写真を撮ると、写真に加えた危害が本人のダメージになるのだという。恐ろしいカメラではあるが男なら適度に使えるのではないか、人間だれでも憎い相手の一人くらいいるだろう。そう言い残してセールスマンは姿を消す。
男は腐れ縁の相手を思い出す。昔から虐められ、たかられ、彼女を奪われた憎い男の写真を撮り、軽く痛めつける。腐れ縁が苦しむのを見て喜ぶ男だが、すぐにそのトリックがばれてしまう。反対に自分の写真をカメラで撮られ、脅迫して意気揚々と帰る腐れ縁だが、男から取り返したはずの写真を落としてしまう。
後日、未亡人となった腐れ縁の妻、元恋人を訪ねる男。腐れ縁は落とした写真をトラックにひかれ、同じように轢死していた。代金を回収に来たセールスマンにカメラ入らないと答える男。セールスマンもこんなものがあってはいけないと、カメラをゴミに出すことを決める。

 

鉄人をひろったよ

老人が道で倒れていた瀕死の男にリモコンを託される。救急車を呼ぼうとしているうちに、男は姿を消してしまう。リモコンを持ったまま帰宅した老人は、それが巨大ロボットの操縦装置であることを知る。何でも言うことを聞くロボットではあるが、日本の狭い家には置いておけない。老人はロボットを説得し、リモコンとともにロボットを海に沈める。

 

異人アンドロ氏

ぼろアパートに住む男はある日夢で不思議な男に出会う。安いアパートに住みたいという彼に自分のアパートを紹介する。
金欠の男は友人が詐欺師を脅迫して金を手に入れに行くという。身の安全のためにと脅迫用の写真を預けられるが、友人が心配で仕方ない。しばらくして友人から話がついたから来るようにと連絡が来るが、それは罠で詐欺師に逆につかまってしまったのだろうと悟る。
そのとき無人のはずの隣の部屋で騒ぎが置き、覗いた男は隣に夢で見た男が住んでいることに気づく。そして、彼が宇宙人であることを知る。秘密を知られて記憶を消されそうになる男だが、宇宙人に友人を助ける手伝いをするように頼みこむ。宇宙人の不思議な道具で無事友人を助け出し、男と宇宙人は友達になることを約束する。
宇宙人に仕事を紹介してくれないかと頼まれるが、ろくな仕事のない男にはそのつてもない。

↑粗筋終了(白文字)↑

【感想文】藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編2

書籍データ

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全体的にあまり面白いと思わなかったので、たいして感想はないです。読書時間に興味が持てなかったことが如実に表れている。

どことなくなんとなく

 世界に対するうっすらとした違和感って言うのがなんかわかるなぁって思う。自分のあるいている道の一本向こうはがらんどうなんじゃないかっていう感じ。自分以外は全部偽物なんじゃないかって感じ。
こういう話はよくあるよね。と思っていくつか思い出してみたけど、トゥルーマン・ショー+A.Iだと思う。

 

3万3千平米

 主人公と不動産屋さんとの友情が気になる。
こういう思いがけない財産が手に入る話って、手続き的にはどうなるんだろうなぁって考えてしまう。いきなり大金手に入ったら犯罪を疑われるじゃん?拾得物として警察に届けて、半年待つのかなぁ。
関係ないけど、よくある人外(鶴とか雪女とか猫とか女神様とか魚の子とか)が彼女になる話も、戸籍どうするのかなぁって気になるからあんまり集中できない。

 

分岐点

 もやもやとしたはなし。人生に全く後悔しない人はいないだろうけれど、周りからしたらたまったもんじゃないよなぁと思う。

 

女には売るものがある

フェミニズムを皮肉った話。表紙とかぱっと見スタイリッシュだけど悪意がすごいなと思う。これが描かれた時って男女雇用均等法すらない時代でしょう?それなのに「ウーマン・リブが進むとこんな世界になるぞw」ってさぁ……好きじゃない。

 

あのバカは荒野をめざす

 人には間違える権利がある、って言うのが面白かった。キリスト教における自由意思かな。クリスマス・キャロルみたいな話。

 

パラレル同窓会

 分岐点・あのバカは荒野をめざすに続いて3作目の人生やり直しの話。タイムマシンを作ろうも広義ではそうだから、似たような話を連続で読まされてちょっとつまらないなと思ってしまう。
同窓会の会場はデザインがいいなと思った。広がりを感じる。

 

クレオパトラだぞ

今はやりの転生ものだろうか。小島アジコさんも「また来世」で似た感じの描いてたな、とおもいきやオチに意外性があってよい。

 

タイムカメラ

 ヨドバ氏シリーズ。ドラえもんみたいな話。特に感想はない。

 

ミニチュア製造カメラ

 ヨドバ氏シリーズ。ジオラマの話よく出てくるよね。好きなんだろうね。

 

同録スチール

 ヨドバ氏シリーズ。写真に音がつくっていう発想自体が古いな!って思う。 

 

タイムマシンを作ろう

 また人生の分岐点もの。でもちょっとひねりが効いているからおもしろい。
友情は儚く、野心はみにくい。

 

夢カメラ

 ヨドバ氏シリーズ。おまけに出てきた機械とか、ドラえもんにあった気がする。 
オジサンは汚いなって思う話。 

 

コラージュ・カメラ

  ヨドバ氏シリーズ。ドラえもんに(略
これ、いいのかよって正直思う。不正じゃん。正義を追求する主人公みたいな立ち位置だけど、お前がやってること不正じゃん。ないわ~。

 

懐古の客

  ヨドバ氏シリーズ。ヨドバ氏登場編。旅行は計画的に。

 

四海鏡

  ヨドバ氏シリーズ。大人は汚い。

 

親子とりかえばや

ハートフルな感じ。お互いの立場になるのは大事だねって言う。でも正直「相手を知れば理解できる、わかりあえる、大切にしあえる」って発想は嫌い。

 

丑の刻禍冥羅

ヨドバ氏シリーズ。珍しくちょっとダークな感じ。主人公の写真はどこに行ったんだろう?ってのが気になるし、一度写真を撮ってしまったらもうキャンセルできないのかなというのも気になる。

 

鉄人をひろったよ

世知辛い。世知辛さが過ぎる。リアルに住宅地に巨大ロボットがあっても迷惑だよね…鉄人がどこまで理解しているのかわからないけど、最後ちょっと悲しい。

 

異人アンドロ氏

なんか変わった絵柄。さえない日常の中に異邦人が現れるという点ではドラえもんと同じ構造で、内部でもメタ発言をしている。単発だから面白いけど続かないだろうなという。

 

ヨドバ氏の不思議なカメラシリーズが多かった。
なんというか、1巻に比べて驚きのある作品が無かった。え、そうなるの?みたいな、意外なストーリーというのが無い。大人向けのドラえもんって感じ(個人的には子供のころからドラえもんは嫌い)。
あと、主人公に共感できないってのもあまり気に入らない要因の一つ。成年男性向けということもあるだろうけれど。おまえクズ人間だな!ってのが多かった。
読んでもいいけど読まなくてもいいなって感じ。なるほど想定内で刷ってだけで、特に感想はないって話ばかり。
1巻が面白かったから期待値が上がってしまったのだろうか。つまらんかったなぁ。

【感想文】ニュートン 無とはなにか

書籍データ

  • タイトル:ニュートン
  • 読書時間:約1時間
  • お勧め度:★★★★★

今日の猫
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 漫画も一冊だし、雑誌も一冊だし、デカメロンだってラノベだって京極夏彦だって、一冊は一冊だよ。
昔っからこの雑誌はしっかりした内容なんだけど、イラストがどことなく胡散臭いのは何とかならないのかしらねぇ

 

 特集記事内容です

  • 無とは何か そのおどろくべき正体とは?
  • 謎多きフォッサマグナ
  • 本州を分断する、比類なき巨大な溝
  • 未知の宇宙へのいざない 
  • はやぶさ2,着陸に成功!
  • 小惑星リュウグウへピンポイント着陸 
  • コーヒーは体によい?悪い?
  • 眠気を覚ます仕組みや病気とのかかわり
  • 星は,なぜ輝くのか?

普段雑誌は買わないのだけど、特集があまりに面白そうなので買ってしまった。無に関する最新の知識とか、面白いに決まってるじゃん。読んでる最中、すごく楽しくてよかった。

 

私は元化学の徒かつ現ITの人なので、一般的な「無/NULL」というのはわかっているつもりだ。特にITでは、NULL、未定義、長さゼロの値という3つを判別できなければ、正しく処理できないのはよくあることだ。
「ここに"ない"が"ある"」と考えるのはゼロの概念に近いものがある。肉眼では見えないから難しいかもしれないけれど、実際には"無"はそこらじゅうにあふれているし、私たち自身の中にも含まれている。

中学くらいの理科で、原子のことを習ったと思う。全ての物質は原子の組み合わせでできている。原子がつながって分子になり、それが連なって様々な混合物でこの世界は構成されている。人間の体だってそうだ。
その原子と原子の間、原子のサイズからすれば結構な大きさのその隙間は、無だ。
原子は陽子と中性子とでできていると習ったのを覚えている人もいるだろう。もちろん陽子と中性子の間だって、無だ。
化学的にいえば、この世界は無であふれている。ミクロの目で眺めてみれば、この世は巨大なジャングルジムなのだ。

別な見方をして、物理的に言ったらどうだろうか?と話は進んでいく。ヒッグス粒子ダークマターに話が進んでいくのも面白いけど、簡略に語れるもんじゃないからそれは雑誌を読んでね。

個人的にダークマターって、話としては面白いけれどもなぁとちょっと否定的です。
間違ってると思うってわけじゃなくて、仮定の物理計算の結果がどうしても合わないから、こういうものがあると仮定するといい感じになるよ、ってその態度があんまり科学的じゃないなぁと思う。でも計算が合ってるからイイじゃん、なんてのはますます科学的じゃない。地動説につじつまを合わせるために水星逆行とか無理やり捻りだした歴史を忘れちゃいけないよ。
もちろん、実証されたら面白いなって気持ちはがっつりあるから現役科学者さんには頑張って欲しい。

 

 SF好きな人は、

あたりが載ってるるのがすごい楽しいんじゃないかなと思う。
フォッサマグナとか珈琲とか全く興味ないんだけど、読めばなるほどなと思う。
星は,なぜ輝くのか?って特集もよかった。やっぱり時々はこういう雑誌を読んで、ざっくりでいいから知識のアップデートをしないといけないなぁと思うよ。

 

小特集で思考パズルがあった。よくある「3組の夫婦が、夫婦以外の異性と二人きりにならないように川を渡るには?」というやつの初出を知れて大興奮。
イングランド出身の修道士アルクィンによるラテン語で書かれた「Propositioned ad Acuendos Juvenes」青年達をきたえるための諸命題だそうです。
関連論文見つけたよ。

http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81001191.pdf

 

実に楽しい雑誌だった。

雑誌なので、粗筋はありません。