人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【感想文】藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 3

書籍データ

 

収録タイトル

f:id:minnagi:20190409155053j:image

 この短編集、1巻が面白かったけど2巻がめちゃくちゃつまらなくて、もう読むのやめようかと思った。でも手元にもう3巻あるしなぁと読み始めてみたらそれなりに面白くて安心した。よかったよかった。
短編集って編集者の腕も大事なんだなぁとマジで思った。

ぼくの悪行

パラレルワールド物。並行社会があるからって一般人には大したことは起こらない…とおもいきや、雪だるま式に事態が悪化していくのが面白い。因果応報的な終わり方がちょっと意外。

 

メフィスト惨歌

悪魔と魂を賭けて取引する話。現代のファウスト。魂の相場とか契約の詳細とかが現代的で面白い。
いつ死亡が確定するかは分からなくても、確実に死亡した時点(移植先の人間が死亡した時)はわかると思うんだけど、そうもいかないのかな。死んだ瞬間に魂を取らなきゃダメなのかしら。

 

神さまごっこ

神様セットという道具を使って神様になる男の話。これ、ドラえもんにも同じ道具があったような気がする。忘れられた神は死ぬという設定よく見るけど初出はどこなのだろうか。アポロンの最後の神託かなぁ。

 

あいつのタイムマシン

流し読みすると意味がわかりづらい話。ネットにも結構この話の意味は?という質問が散見される。今の自分が知らないことも未来の自分は知っているはず、というところから未来を捻じ曲げる。信じれば夢は叶う!という話。

 

いけにえ

宇宙人の理解できない考えに人間が振り回される話。自分ひとりの命で地球が救えるとしたら自分から差出せるか?私なら絶対拒否だろうな…と正直思う。漠然とした「みんな」より、身近な「あの人」の方が大切なのだな。
なぜ宇宙人は最後に要求を変えたのだろうか?というと、多分彼女を主人公のものにしたかったんだろうなと思う。けれどなぜ主人公に便宜を図りたかったのかは、人間にはわからんということなのだろう。

 

超兵器ガ壱號

かわいそうな象みたいな話だな。戦争への皮肉、軍国主義への皮肉、大和魂への皮肉。コンプレックスを解消できるなら命すら惜しくないという考えは全くわからないでもないだけにしょんぼりするラストだ。

 

テレパ椎

世知辛い。この本、世知辛いネタ多いな!
自分に向けられるやさしさや親愛の情は、周囲のやさしい嘘でできている。
嘘自体は悪いことではなくて、相手をそれなりに大事に思うからこそという一面もあるけれど、真実に気づいてしまったらもう前とは同じように受け止めることはできないよね……
繊細な人ほど生きづらい。周りの機微なんかに気づかない鈍い人の方が幸せ。
世知辛いなぁ。

旅人還る

まあまあちゃんとしたSF。

サイクリック宇宙論 - Wikipedia
前人未到のその先を見たい、というアルピニストのような狂おしい欲求は男のロマンなのだろうか。たとえそれを誰に伝えることができなくとも、自分はその先に到達したいという気持ちはさっぱり分からない。
ナルニア国物語のリーピチープが最果てに向かうのはその先を見たいという冒険心もあるけれど、その先にアスランの国があると思っていたからだし。
再生した世界が以前のものと寸分たがわず一致するのはロマンがあるようなないような。

白亜荘二泊三日

内容が薄いし設定も雑だなぁと思った。
ゆる~いタイムパラドックスものなんだろう。未来からの旅行者が意図せず未来を変えてしまう話。自分たちの未来の行動を主因として自分たちの過去が確定する。
それだけの話はちょっと弱いな。
1頭だけを別として過去の動物には干渉できない、という設定はどこに行ったのだろうか。

福来たる

人の欲望には限りがない。昔に比べればずっと恵まれているはずの現代の人間も不満ばかり。これではいくら福を与えてもキリがない。
とはいえなぁ。
幸福って言うのはどうしても相対的なものだと思う。周囲の水準に比べてとか、過去の自分に比べてとか。その基準点というのもどんどん変わっていくし、一度上がったらあまり下がらないものだ。
それを嘆く福の神さえ、「自分が活躍していた頃」という基準から逃れられないのが皮肉だなぁと思う。
幸せは「いる」のではなく幸せに「なる」ものなんだろうな。
吾唯知るを知るのは難しい。

求む!求める人

この話に出てくる機械、営業マンならみんな欲しいだろうなぁと思う。
相手の希望が予測できるならこんなに楽なことはない。
訪問販売って形態が古いなぁと時代を感じる。

倍速

009とかフラッシュみたいにスピードというのは何よりも大きな武器だ。
自分と周囲との体感速度を変化できればお得だよなぁというワンアイディアの話。
オチがアダルティw自分の時間を遅くすることはできないのかな。

侵略者

寄生生物である宇宙人が地球を乗っ取るスピードは…という話。
人間の繁殖スピードが非常に遅いというのがネックになっているけれど、本当に繁殖スピードが遅いならなんでこんなにいっぱい人間がいるのかなぁと考えてしまった。
進化を進めたいなら寿命の長い生物ではなく、寿命の短い生物を選ばないといけないよね。
でも何でネズミって進化しないのかな。あれはもう一つの最適解なのかな。それとも進化してるけど気付かないだけなのかな。

マイホーム

タイムパトロールが出てくる。住宅難に関する話がすごく多い。
住宅展示場ではしゃぐ子供がリアルというか、私もこうやって大騒ぎして親に怒られたなぁとほのぼのする。

マイシェルター

旧約聖書のロトを思い出した。また、いけにえの対になるような話だなと思った。
世界中の人を犠牲にしても、自分だけが助かりたいのかという論理的命題。
実際自分が他の人を見捨ててでも生き延びたいかって言うと、やっぱりそうでもないよなぁと思う。私はごく普通の人間だから、他人を犠牲にすることにはある程度ストレスを感じてしまう。あくまでも"ある程度"ではあるけどね~

裏町裏通り名画座

つまんなかった。いや、パロディだってのは普通にわかるんですけど、だから?っていう。

有名人販売株式会社

誰かのクローンを本人の許可なくして作成し、自分に都合がよいように教育する…という話、藤子不二雄に結構出てくるよね。今回は自分の意図しないところでというところが特異点
しかしこの手の話を読むと、クローンの人権とはって考えてしまう。ハッピーエンド風に終わってるけど、生き方も好悪の情も、クローン本人が選び取ったものじゃないよなぁ。

 

うすうす気づいてないわけじゃなかったけど、短編集の感想を1記事にまとめるって労力の割に読み物として面白くなくない?
全話についてじゃなくて気に入った話に絞って書こうかな。