数で勝負はつかれます お帰り「美しき明治」 10/17
調布市美術館に行ってきた。
今回の展示のコンセプトは、「美術史であまり顧みられていない明治期の日本人洋画に着目」というところです。日本に洋画が入ってきたころから、外国人教師の作品やその弟子たちの作品、1878~96年の洋画排斥の時代に作られた作品、外国人観光客向けの土産画と幅広く集めています。特に洋画の歴史的なキャプションは勉強になる。
でも、正直幅が広すぎる。めっちゃ数が多い割に、クオリティがいまいちだ。
いい絵もあるんだけど、パッとしないなという絵が大半だ。まぁ洋画初心者達なのだから仕方ない部分はある。けどそこは良質な作品に絞って展示してくれた方が見る方としてはありがたい。凡庸なお絵描きの中から数少ない上質な作品を選り分けるのに、なんかすごい脳が疲れる。いっそ全部駄作だったら流し見して終わるのだが、良作は混じってるし全体的に小器用なのでつい良いところを探したりしてしまうので疲弊するのだと思う。
値段なりといえば値段なり?でもアクセスがすごい悪いからトータルで言うとしょんぼり。
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小山 正太郎 「猿橋」
全体についてはぼろくそに言ったけれど、個別作品にはもちろん良いものがある。
これとか構図といいあっさり描かれた線の潔さといい、見ていて気持ちいいなと思う。
ただ、下絵なので線画だし、縦長の構図から言っても洋画というよりは日本画の文法に近い気がする。それぞれのいいところとったハイブリッドね。
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アルフレッド・パードンズ「鎌倉の茶屋」
これは鎌倉八幡宮の、旗上弁財天あたりじゃないですかね?あそこ、今でも売店あるでしょ。違うかな。
源平池でぐぐるとそのまんまな写真が出てきます。
群生する蓮の葉がこんもりとしていて、初夏の晴れやかさの伝わる作品です。
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吉田 博「雨上がりの少年のいる風景」
戦後の絵本作家が描きました、と言われても納得してしまうような、メルヘンな絵画。
この時期日本では水彩画が大ブームだったそうです。そしてはっきりくっきり光の鮮やかさを描くグループと、湿潤な空気感を描くグループに分かれたのだとか。この絵は後者ですね。
こういう情緒的な絵が日本に多いのは、このじっとりとした気候のせいなのだろうかと考えると面白いものがある。
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常設展も一緒に見れた
牛島 憲之「田園風景」
牛島憲之 - Wikipedia 一応明治生まれの人ではあるけれど、画業は昭和に入ってからでしょう。溶けたダリのチーズのような、だけど不安になるというよりは妙ななつかしさのある不思議な風景が描かれています。
なんとなく描いたのではなく、実際の風景に取材して、構図をあれこれ検討していた下絵も残っていて興味深かったです。
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うーん、たぶんこれ「遠くまでわざわざ行ったけどいまいちだった」ってのが一番のマイナスポイントで、不当に評価が下がっている気がしなくもない。
もしこれが歩いて5分くらいのところで開催されてたら「値段の割にいっぱい見れてまあまあ」くらいの評価かもなぁ。
でも、とにかく見ていて疲れたのは本当。