人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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クンストカンマーほしい ルドルフ2世の驚異の世界展 2/24

土曜日に渋谷文化村でみてきた。神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展。

 

www.bunkamura.co.jp

本当は日曜日にルドンを見ようよということになっていたのだが、日曜日くそ寒いという天気予報を受けて、土曜日に映画を見た帰りに流れで見た。
ルドンに行きたかったけど、まぁこっちも行くつもりだったし。

ルドルフ2世というのは神聖ローマ帝国ローマ皇帝であり、ローマ王であり、ハンガリー王であり、ボヘミア王である人だ。それぞれの在位期間は完全に一致するわけではないのだが、16世紀当時のヨーロッパに置いて一番偉い人だった、といっても間違いではないだろう。

政治には興味が無かったという彼が金と権力にあかせて集めたコレクション、なかなか見ごたえのある作品ばかりだ。
個人コレクションは似たり寄ったりになりがちだが、多分母数が多いのだろう、それなりに傾向はあるけれど見あきるほどの類似性は感じられない。
そして何より、趣味がいいのが最高だ。

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ジュゼッペ・アルチンボルド「ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像」

f:id:minnagi:20180227205516j:image

去年、アルチンボルト展がやっていたよね。彼が宮廷画家として仕えたのがルドルフ2世だと言えば時代がわかりやすいかもしれない。
率直に言うとアルチンボルトはあまり好みではない(から去年は見なかった)けれど、実物を見るとやっぱりうまいなぁと思う。特にこれは最高傑作と言っていい。
様々な素材の組み合わせ方もうまいし、一つ一つの表現も見事だけれど全体として調和していてちゃんと肖像画として成立している。

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作者不詳「四季のうち春」f:id:minnagi:20180227205533j:image

アルチンボルトが人気で、多分あのスタイルがはやったんでしょうね。でもこれは…
こちらはルドルフ2世ではなくフエスターハージーパウル1世のコレクション。
無理やり色だけで描き集めたから形はめちゃくちゃだし全部が全部同じ濃さでどぎついから人物画として成立していない。
ていうか、単純に怖い。特に口が怖い。なんでこんなにしちゃったの。

アルチンボルトは偉大だなぁって思った。
アイディア勝負の同工異曲ばっかじゃなかったな。このスタイル難しいんだな。

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マテイス・コック「擬人化された風景」f:id:minnagi:20180227205448j:image

一見、さらっと描かれた風景画。でも「擬人化された」とあるし横向にすると羽根の生えた修道士が現れるという解説付き。だけれどみんな首をひねっていた絵。
横、というか斜めにするとわかりやすい。f:id:minnagi:20180227205458j:imageトンスラの鼻が高いおじいさんが現れます。

本当は修道服を着ないでケルビムみたいに首から直で羽が生えているみたいなこと書かれていたけど、イメージしづらいだろうから服を着せてみた。

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フランチェスコ・マッツォーラのコピー 「神話画」

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弓を削り出すキューピッド。コピーとはいうけれど、なかなか美しい絵です。
構図が面白くて、主役の足の間から顔をのぞかせるもう2人の子供がなかなかいい顔をしている。

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ディルク・ド・クワード・ファン・ラーフェステイン 「ルドルフ2世の治世の寓意」f:id:minnagi:20180227205524j:image

図録によると

皇帝は戦争の神マルスに扮してトルコ軍を押しとどめている。
学問の女神が半裸の女性、角をもつ豊穣の女神、剣を持つ正義の女神、鳩を伴う平和の女神を皇帝から遠ざけようとしている。
平和の象徴であるオリーブの葉をもつ皇帝の鷲は、正義と学問につながれている。
とのこと。マルスに扮してるって珍しいかな。あまり人気のある神様じゃないよね。政治や戦争に頑張る王様でもないと思うけど。

 

敵国であるトルコ人を追い出しているのはわかるけれど、豊穣・正義・平和を皇帝から遠ざけるってなんだろうね。別に来て欲しいじゃんね。
女神たちが慕ってきて国は豊かだけれど、そういう安寧さには流されず自立した皇帝であるとでもいうのかしら。

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 作者不詳 「人魚の付いた貝の杯」

 f:id:minnagi:20180227205538j:image

写真壊滅だけど、工芸品。貝の形を上手に使っていてすごいなぁと思った。
この時代はこういう細かい細工をした器がたくさんあって、塩や香辛料入れとしても使っていたとのこと。

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ルーラント・サーフェリー「動物に音楽を奏でるオルフェウスf:id:minnagi:20180227205542j:image

錬金術にも興味を持っていたというルドルフ2世のコレクションには、たくさんのはく製もあったのだとか。そして、異国の獣も飼育されていたのだとか。
そういう見慣れない生き物たちを描いた作品。
オルフェウスはほぼ背景と同化して、よく見ないとどこにいるかもわからない程度にしか描かれていません。
この絵は画家の、そしてそれを擁護する皇帝の知識の豊かさ、財力の見事さを誇示するための絵画でもあるでしょう。

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ヤン・ファン・ケッセル「ヨーロッパの寓意」f:id:minnagi:20180227205545j:image

『愛好家の陳列室』コレクション画と呼ばれたりする絵画です。
いわばカタログのようなもの。コレクターのもつ逸品を一枚の絵に多数配置して、その豊かさを誇るものです。

中央の花瓶の絵などはこの時代に流行したスタイルです。

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ルドルフ2世の説明として「誰もがわかるテーマと見せかけて、わかる人にしかわからないものが好み」と書いてあって「それオタクじゃん!」って思った。それ、明らかに「めんどくさいオタク」じゃん!!!

彼は居城の半分を絵画や彫刻のコレクションルームにして、自分の寝室からそちらに行く通路に珍品貴品を集めたクンストカンマー、”驚異の小部屋”をしつらえたそうです。
すごく楽しかっただろうなぁ。私もクンストカンマーが欲しいなぁ。
現代のクンストカンマーと呼べるのは実は東京駅丸の内にある。

INTERMEDIATHEQUE

剥製や骨格標本、鉱物標本などが所狭しと並ぶこの展示はまさに”驚異”の名にふさわしい。

無料だから、是非とも東京お寄りの際はお勧めしたいもんです。