人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
Push
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
Push

Push

Push

アップルパイください 富士屋ホテルの営繕さん 1/19

去年の秋、箱根旅行に行きました。

そんで、わざわざ寄り道して富士屋ホテルに行ったんですよ。そしたらね、現在絶賛改装閉店中だったんですよ……
パン屋さんだけやってたけどテイクアウトのみだった。悲しい。お土産は買えたけど、あの派手な店も見たかった。

 率直、今関東は非常に面白くなくなっている。
オリンピック合わせで改装ばっかりだ。駅は補修のため囲いだらけだしビルは壊して建ててる途中だし。関東旅行に来るなら2020年の秋以降にしたほうがいいですよ、マジ。

 

というわけで、閉店中の富士屋ホテルが何故か京橋にいると言うので見に来てみたよ。

 

www.livingculture.lixil

f:id:minnagi:20190122124006j:image

”営繕さん”というのは、ホテルの施設整備担当のこと。
歴史がある上に箱根という土地柄のせいで専門業者が呼びづらく、大抵のものはホテル内で何とかするシステムになっているそうです。ちょっとした修理というレベルではなく、ヒノキ風呂まで作ってしまうというからすごいものです。

 

チラシデザインがイケてる。


f:id:minnagi:20190122124125j:image

 

こんな感じで、実際に使われていたものがこちらに運ばれて展示されている。
この文字、手描きだって。すごいね。

 

f:id:minnagi:20190122124114j:image

客室の写真が展示されていたりする。泊ってみたいです。
箱根は下手に実家に近いものだから、ろくに宿泊したことがない神奈川人だよ。


f:id:minnagi:20190122124017j:image

ルームキーの、これは複製。でっか!実物大なんだろうか。重すぎやしないだろうか。
こんだけ大きいと、逆にどこかに置き忘れそう。

 

f:id:minnagi:20190122124009j:image

コンシェルジェコーナーの再現。シンプルなデザインがかっこいい。

f:id:minnagi:20190122124026j:image

ホテル内の印刷物も、昔は活字を組んでやっていたとか。

f:id:minnagi:20190122131430j:image

1940年代にハロウィンやってたのか、ということにまず驚き。


f:id:minnagi:20190122124021j:image

建具なども展示されていました。

 

なかなかおもしろかったです。2020年過ぎたら、また箱根リベンジしたい。

めちゃくちゃイケてるカッコよさ ブルーノ・ムナーリ 役に立たない機械をつくった男 1/11

始まりはたばこと塩の博物館だった。
入ってすぐのところに他美術館のポスターが貼られていて、このカッコよさに一撃でやられたのだ。こんなの見たら気になるでしょう。行かなきゃ後悔するでしょう。

f:id:minnagi:20190119140617j:image
美術館の分類には、公営/私営、絵画/写真/彫刻/etc、古典/近代と色々な切り口がある。
「広告がうまい/広告が下手orやる気無い」で分けるとしたら、この世田谷美術館というのは確実に「広告下手勢」に入るだろう。だって全然広告打ってないし。TVCMとかやってないし。チラシミュージアムにも載せてないし。公式ツイッター1日1回以下しか呟かないし。フォロワー559人だし。

もっと宣伝しろ!
あと、交通の便何とかしろ!

www.setagayaartmuseum.or.jp

あ、でも私セタビのツイッターフォローしないです。だって交通の便クソ悪いから。あんまり行きたくなりたくない(勝手

 

というわけで、ブルーノ・ムナーリ
絵本とか書いていたブルーノさん、と聞いてとっさにミッフィーちゃん?って思ったけど、それはディック・ブルーナだった。おしい。

ブルーノ・ムナーリ - Wikipedia

ムナーリはイタリア出身の画家・デザイナー・絵本作家。とはいえウィキペディアにもこの程度しか情報が無いので、広く知られているとは言い難いだろう。日本と色々親交があったみたいなんだけどね。
こっちのサイトの方がよくわかる。

ブルーノ・ムナーリって、何者? 学芸員に聞く、ユーモアを忘れない マルチ・アーティストの創作の裏側|MAGAZINE | 美術手帖

画家というより総合芸術家、そして教育者だなぁと作品を見て思いました。

---
「役に立たない機械」

f:id:minnagi:20190119140555j:image

モビールじゃん!って思った。
物自体は昔からあるけれど、芸術作品としてのモビール、キネティックアートはアレクサンダー・カルダーが元祖らしい。「モビール」という名前自体、デュシャンが彼の作品に名前を付けたのが元祖だとか。
カルダーがモビールを発表したのが、1932年、ムナーリが役に立たない機械を出したのが1933年だから、カルダーの方が先行。でも全く作品は似ていないし、同時発生といってよいだろうね。「モビール」で定着したのは名前がよりキャッチーだからだろうな。
会場の空調でゆっくり動いていてよかったです。名前の通り、機械的な印象を受ける固い直線的なオブジェが揺れていた。
どうでもいいけれど、バランスをとるため一番下に来るものは真ん中に死自体が来るのだなと思った。どうでもいいのだけれど。

 ---

 陰と陽」
f:id:minnagi:20190119140551j:image

シリーズ中どれもすごくよくて、どれを紹介するかとても迷う。

色面や線といったすべての要素が等価であり動きを伴う

シンボルや物語性も含めて現実を模倣・喚起させるものをもたない「具体」という思想を引き継いでいる。
五感に反して、造形的には幾何学的なバランスを重んじる抽象主義的な特徴を持つが、造形的な形は何かを表現したものではなく、ムナーリも説明するように「その形や色や動きが、それ以外の何ものも表していない」芸術作品を提唱した

 すごく面白い。
抽象画というのは、どんなに画面がわけわからなくても「なにか」の具象物を表しているのだ。それに対して「具体芸術運動」はなにも表していない。しいて言うなら快さを表現しているのだと思う。リズムの良さを、この作品から受けるプラスの気持ちを。
このピンクの作品も、陰と陽というタイトルではあるが、どちらかが陽=主役でどちらかが影=脇役ではない。どちらかが背景でどちらかが絵画なわけではない。
そういうのに意味が無くなるまで入り混じっている。すごく良い。

---

「額もまた」

f:id:minnagi:20190119140614j:image

タイトル通り、額にも色が塗られている作品。図録写真撮った時かけちゃったけど。
コンポジション的な作品。ぱっ切りした色と、重ね合わせが楽しい。見ると何となくわくわくする感じ。

---

「旅行のための彫刻」

f:id:minnagi:20190119140603j:image

平面的な彫刻作品がいくつかあって、ノグチ・イサムみたいだなと思った。
こちらは紙でできた折り畳み式の作品。ポップアップの仕掛けがついたグリーティングカードみたいな。
仕事なんかで移動して、宿に泊まり、疲れて椅子に座る。鞄の中からこの彫刻を取り出し、軽く広げてテーブルに置く。
それだけでその無機質な客室は芸術の鑑賞場になる。自宅から旅先まで、「心地よさ」を携帯することができる。自分自身に属するものを置くことで、癒しを得ることができる。

そういう発想がとてもよい。私があちこち移動する生活をしていたら、そういう「持ち運びできる”おうち”感」を持ちたいものだと思う。

---

「短い訪問者のための椅子」
f:id:minnagi:20190119140621j:image

写真だとわかりにくいけれど、寄木細工の嵌められたこの椅子、座面がめっちゃナナメです。パースが狂ってるんじゃなくて、そういう椅子。ちょっと腰かけてぱっと立ちあがるための椅子。さっさとお引き取り頂きたい方に勧める椅子。皮肉とユーモアが聞いていて面白い。


でもおいら、これ知ってる。すごい見たことある。
f:id:minnagi:20190119141326j:image

京王線名物、「座らせる気のない椅子」だ!置き棄てられた缶ジュースから、サイズ感を感じて欲しい。この座面、まったく座りづらい。ちょっとでも背中丸めるとまともに座れないからビシッ!と背筋をまっすぐにしなければならず、「くつろぎを与えるもの」という存在意義を否定しているベンチだ。
これじゃんかよ~ムナーリだったのかよ~じゃあしょうがないじゃんかよ~~~
とか思うかっ!

---
「本に出あう前の本」
f:id:minnagi:20190119140607j:image

ムナーリは自分の子供のために絵本を買おうとして、「子供のための本」がなく「子供の本を選ぶ大人のための絵本」しかないと気づいたそうだ。
道徳本や昔話みたいな、子供が喜ぶように作られたのではなく、大人が与えたくなるような本しかないと。
そういうの、すごくありがたいなと思う。こうやって先人が気づいてくれるから、良質な子供向けの本というのが生まれて、その恩恵にあずかってきたのだなと。

これらの本は、絵本ではない。文字を読めず、まだ物語とかも理解できない年齢の子に向けた本だ。本に親しむことが目的の本。ページをめくり、撫で、眺めるための本。
紙をめくることを楽しむ本は、他の作品「読めない本」に類似している。

---

「木をかこう」
f:id:minnagi:20190119140558j:image

芸術も教育ができるとムナーリは考えました。
人が文字や言葉を学習できるなら、絵の描き方だって教育ができる。それは分解して行けばとても単純な構造論に行きつくはずだと。
そういう意図で書かれたのがこの本。最初から巨匠の偉大な芸術を押しつけて委縮させるのではなく、同じ場所に立って一緒に考え、手を動かしながら作っていく芸術。

「葉っぱをつけよう:木」

f:id:minnagi:20190119143445j:image

同じ観点のスタンプブック。いろんな形の葉っぱスタンプとインク、そして裸の木が描かれたカード。子供はこれを使って自由に木を「描く」ことができる。
単純な子供だましではなく、ムナーリ自身もこのスタンプを使って何冊も絵本を出版している。

こういう考え方はいいなと思う。ちゃんと子どもを子どもとして。小さな大人ではなく、何も分からない愚か者でもなく、尊重している。

これはどうかわからないけれど、ムナーリの本は現在でも手に入れることができる。
「きりのなかのサーカス」を読んだけれど、サーカスがぱっと鮮やかに現れるところは単純な仕掛けだけれど新鮮な驚きがあってとてもよい。しいて言うなら、ネタばれになるから現代の「ミラノの霧の中で」の方がよかったと思う。

 ---

上「プラス・マイナス」

下「構成」

f:id:minnagi:20190119140610j:image

こちらは知育玩具。

上はいろんなものが描かれた透明のカードを重ね合わせて、自分だけの絵画作品を作れるおもちゃ。
下は色のカードと型抜きされたカードを組み合わせることで、好きな色柄のものを作り出せるおもちゃ。
両方とも自分なりの作品を生み出す楽しさがあってよいと思う。

現在でも市販されており、ミュージアムショップでも売っていました。
本当、よっぽど買おうかと思ったけど8千円もした。高い。いや、プラカードが山ほど入ってるんだから暴利ではない。でもお財布に優しくない。

 

【楽天市場】Corraini (コッライーニ)「+ e − (「つけたり・とったり)」:ヤマギワ (yamagiwa )

 もし私に子供ができたら、これください。

 

出遅れました エキゾティック×モダン アール・デコと異郷への眼差し 1/13

庭園美術館はいつもカッコイイ

www.teien-art-museum.ne.jp

 

本当はこれ、去年のクリスマスに行きたかったんですよ。行きたかったんですけど、タイミングが合わなくていけなかったんですよ。
そんでやっとのことで終了前日に行ったらですね。

図録もポストカードもみーーーーんな!売り切れでやんの。
かなしい。ひどい。巡回決まってるんだから、もっと刷ってくれてもいいと思う。余ったらそっちで売ればいいじゃん。

というわけで、手元にはパンフのみである。

f:id:minnagi:20190115164059j:image

この庭園美術館の建物、旧浅香の宮邸自体がアール・デコの傑作なので、この手の展示は非常に親和性が高い。特に今回は照明をだいぶ絞っていて、いつものすっきりさわやかな表情から大人の雰囲気に姿を変えていてカッコよかった。

 

ルネ・プルー「肘掛椅子」

f:id:minnagi:20190115164050j:image

おフランス様、上から~!!!
エグゾティスムって現在の感覚からするとポリコレ的に取り扱いがちょっと危うい。
異国、異民族の特色を過剰に強調することは、相手を揶揄していると受け取られかねない。
しかもこの時代というのはがっつり植民地政策が行われていた時代で、「文明の進んだヨーロッパ様が、未開の地アジア/アフリカetcを教化してあげるざます」という驕り高ぶりがビシバシ漏れ出ているのだ。
この椅子とか、フランスを表す鶏が、植民地を表す象やラクダを従えている図です。

他にも「植民地から農作物をささげられるフランス」「植民地に知識を授けるフランス」という対になったレリーフがあったりして、完璧に自然体で自分たちが上だと思っていらっしゃる~~って思った。

 

ヴァン クリーフ&アーペル「中国風の風景のラペル・ウォッチ」
f:id:minnagi:20190115164047j:image

ヴァン クリーフ&アーペルって、あの超高級ブランドのヴァン クリーフ&アーペル???婚約指輪の定番の???
わーお。ゴージャス。とても小さく精巧な、シノワズリの時計。綺麗でした。

 

⑦ジョセフ・ショーメ「パウダー・コンパクト」

⑧マルセル・ショーメ「ペルシア風装飾のシガレット・ケース」
f:id:minnagi:20190115164042j:image

アール・デコはこういった地模様のない均質な色素材、プラスチックとかが使われ始めた時代です。工業製品として大量生産に向くという観点もあるけれど、漆芸を模したものだという説明があって、なるほど確かにそれっぽいなと思いました。こういう黒とかね。

 

フランソワ・ポンポン「シロクマ」

f:id:minnagi:20190115180314j:image

はい、これだけ印刷物じゃないよ。


f:id:minnagi:20190115180322j:image

 クリスマスに蔦屋書店で購入したレプリカです。かわいい。
これを見に行ったんですよぉ!!!フランソワ・ポンポンかわいい。作品かわいい。おしりのラインがかわいい。ぽてっとしたあんよがかわいい。作者の名前も可愛い。反則かよ。
梟とか黒豹とかもいてとてもかわいらしかったです。

こちらはとても小さいサイズなので安かったのですが、ミュージアムショップに売っていたのはある程度大きいサイズで8千円でした…欲しかったけど高かった。

というわけで、さりげなくコレクションの自慢で締めます。

猫は猫であるだけでよい にゃんこ展8 1/12

たまには純粋に人付き合いをする。
学友に会いに原宿に行ったのだが、その後街をふらふらしていたらデザインフェスタギャラリーなるものに行きあたった。

designfestagallery-diary.blogspot.com

ファッションには興味がないのでクソ混んでる原宿-表参道にはほとんど行かないのだが、行くたびに街が拡張している気がする。原宿から裏原宿、表参道から裏表参道、もう意味わからん。

f:id:minnagi:20190117154333j:image

ポスターかわいい。

美術に全く興味のないメンツだったのだけれど、寒さに耐えかねて迷わず入場。
f:id:minnagi:20190117154516j:image

猫写真展示があった。
f:id:minnagi:20190117154337j:image
f:id:minnagi:20190117154326j:image

アートとしての猫写真の欠点は、猫がかわいすぎて写真の良し悪しとかどうでもよくなることだと思う。ピンボケせず猫が映っている。それだけで100万点。

 

絵画もいっぱいあった。
f:id:minnagi:20190117154313j:image

この帽子のやつかわいいね。

 

この人の絵じゃないんだけど、ヘタウマを狙った雑な絵が多くてそうじゃねーだろって思った。もっと真面目に真剣に猫と向き合って欲しい。

 

これはすごいなと思ったやつ。

西浦 康太
f:id:minnagi:20190117154330j:image

オーブン粘土を細いひも状にして、それを貼り付けて焼成しているとのこと。
絵画ではなく彫刻に分類されるのかもしれない。表面が微妙な凹凸を描いているし。

実物を買うと京都人に怒られるからポストカードで我慢。
かわいいねぇ。
f:id:minnagi:20190117154318j:image

ただかわいいだけじゃなくて、世界観があってよいなと思った。
色は上が好きだけど図柄はこっちが好き。f:id:minnagi:20190117154322j:image

twitter.com

ついったで作品が見れるよ。よかったね。

 

その後さらに歩いて、表参道のジャンナッツカフェに行った。ほら、よくカルディにあるやつ。
めちゃくちゃ種類がたくさんあって、表参道の割に空いていて、椅子も気持ち良かったからまた行きたい。でも駅から遠い。

f:id:minnagi:20190117162438j:image
f:id:minnagi:20190117162446j:image

 当時使っていた器具がいくつか展示されていて面白かったよ。

このカシオミニを賭けてもいい アフリカ現代美術コレクションのすべて 1/11

ムナーリを見に世田谷美術館に行ったのだけれど、ちょっとまだまとめ切れていないから先に企画展の話をする。

www.setagayaartmuseum.or.jp

f:id:minnagi:20190115163344j:image

このブログをぱらぱらっとみたらわかると思うんだけど、あんまり現代美術とか、プリミティブ風芸術とか好きじゃないんだよね。だからかる~く流し見した。
現地の床屋の看板、いろんな髪型の男性が描かれたものをもってきて、「これぞアート!」みたいな展示してたけど、そういうの好きじゃねぇなって思った。
製作した人は普通にわかりやすく図示しただけで、芸術作品を作ろうとしたわけではないだろう。それを「これぞプリミティブ、ヘタウマの美」と持ってきてひけらかすのは、バッドアート展のような傲慢さを感じる。
うまく説明できてるかわからないけれど。

--- 

アブラデ・グローヴァー「タウン・パノラマ」
f:id:minnagi:20190115163347j:image

これはすごくよかった。撮影時にぶれたみたいに見えるけど、本当にこういう風に多重撮影したような線の絵だ。そして、大胆に色を重ねた結果、すごくでこぼこと凹凸のある画面になっている。ということは、だ。
結構大きなこの絵、横目で見ながら前を横切ろうとすると、カタカタと動いて見えるのだ。
広告やポストカードによくつかわれている角度に応じて見える絵が変わるやつ、レンチキュラー印刷のように見える。
まるで高いところから街を本当に見下ろしているようで、妙な現実味がある。見渡す限りぎっしりと立ち並ぶ家のガチャガチャした感じが伝わってくる。

 

--- 

アブドゥライ・コテナ「アフリカの力」
f:id:minnagi:20190115163340j:image

こういうのあるよねって感じ(ぉい

 

タウン・パノラマよかったです。うん。

新興趣味 終わりのむこうへ : 廃墟の美術史 1/10

松涛美術館に行ってきた。渋谷駅から歩くと結構かかる。

ここは入場料が安い代わり、ショップがなくてグッズが売ってなくて残念である。建物自体なかなか美しく、解説ツアーもやっているというのでタイミングが合えばいつか参加したい。特にサンクンガーデンが良かったよ。 

www.shoto-museum.jp

唯一の撮影OKコーナー

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ 「『ローマの古代遺跡』(第2巻II)より:古代アッピア街道とアルデアティーナ街道の交差点」

f:id:minnagi:20190115173831j:image

解説で

日本では近代まで廃墟という概念がなかった

とあってなるほどと思った。外国、特にヨーロッパでは古代ギリシア、ローマ遺跡が街中にあるので廃墟に馴染みがある。

けれど、近代以前の日本には廃墟というものがそもそもほとんどない。

単純に建材の違いだ。ヨーロッパの石材に対して日本の木造家屋は、気候的な問題もあって長持ちしない。廃墟になる程長持ちしないのだ。使われない建物は朽ち果ててしまい、廃墟というほどの原型は留めない。

今では廃墟ファンも多数いるけれど、日本で廃墟の美を楽しめるようになったのは鉄筋やコンクリートで建物を建てるようになった近代以降のことなのだ。

 以下、画像はチラシから

---

 ユベール・ロベール 「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」

f:id:minnagi:20190115163145j:image

パンフだから文字かぶってるけど。
一つの絵の中に複数の時制があるのが面白い。ぱっと眼を引く立像の周りは古代ローマの姿。何かを指さして語り合う当時の人たちはどうやら揉めているようで、何が起きたのだろうと考えさせられる。
そして立像の視線に導かれるままに天井を見上げると、それはもう廃墟だ。

廃墟のかつての繁栄を示しているのか
美しく栄える都市もいつかは滅びるということなのか。

---

アシル=エトナ・ミシャロン 「廃墟となった墓を見つめる羊飼い」

f:id:minnagi:20190115163152j:image

廃墟画というのは、歴史画というより風景画に分類されるようだ。
すぐそこにある在りし日の文明を、情緒たっぷりに描いている。
この絵に限らず、ちょっとロマンティックに過ぎる気がしなくもない。

---

藤島 武二 「ポンペイの廃墟」

f:id:minnagi:20190115163141j:image

迎賓館赤坂離宮第七天国を描いた人じゃないですか!やっぱり好き…
色がさ、すっごくいいよね。シンプルで素朴なフォルム、鮮やかな色、どこか感じるさみしさ。
日差しの力強さと誰もいない荒涼とした感じがよいです。

 ---

澤部 清五郎 「群羊図(伊太利アッシジ附近)」 

f:id:minnagi:20190115163149j:image

これはまた一風変わった絵。
日本画の掛け軸に、異国の羊の群れ。牧歌的でのどかな廃墟の世界。
これ、欲しいなぁと思う。

 ---

元田 久治「Indication: Shibuya Center Town」

f:id:minnagi:20190116150324j:image

以前どこかの美術館で見たと思う。

すごく大きなリトグラフ。この画像では潰れてしまっているが、細部までとても精巧に描かれている。

この作品が描かれたのは2005年で、この中に廃墟として描かれている店も、現実にはもう存在しないものも多いだろう。ある一点で時間を止めたこの絵は、未来の姿を表現しながらも実際にとらえているのは過去なのだと思う。
時制について考えるととても興味深い。

 

面白かった。

 

理性が邪魔をする ウィーン万国博覧会展 1/9

人生いろいろあるので、平日半休取ってやる用事がある。終わり時間が読めないので多めに休みを取り、意外と早く終わって時間をもてあましたりする。ので行ってきたよ墨田区
私は少々喘息のけがあるのでタバコは吸わない。なのであまりここには興味がなかったのだけれど、こんなチラシを見たら行くでしょう。なんだよこのパイプめっちゃかっこいい。

f:id:minnagi:20190115131920j:image

たばこと塩の博物館スカイツリーのそばなんだね。初めて来ました。

2018年は明治150年だったね。そんで2019年は日本とオーストリアの外交樹立150周年ということで、ウィーン関連の展示が多くなっています。


f:id:minnagi:20190115132433j:image

万博の日本パビリオンの様子、出展した品々、ウィーンが展示したもの等々。
こちらは日本庭園エリアが描かれた入場券。f:id:minnagi:20190115132437j:image

万博ってのは要するに商業見本市なわけで、基本的に各国の輸入用工業製品見本を展示するのが目的だ。文化の紹介なんかは二次的なものね。
これは変わり漆塗りのサンプル表とのこと。ちょうどシノワズリジャポニスムで漆塗りがブームになっている頃。こんな塗り方もできますよというのは輸入商品注文を獲得するのに重要だっただろう。
カラフルでかっこいい。

 

f:id:minnagi:20190115131924j:image

もちろん「たばこと塩の博物館」なので、タバコ用品が目玉だ。
日本のキセルや煙草入れ、輸入用葉巻入れなど。
にしても一番の白眉はやはりメアシャムパイプだろう。ウィーン製だったと思う。

メアシャムパイプ|ミュージアムコレクション|たばこと塩あれこれ|たばこと塩の博物館

メアシャム(海泡石)は水につけると柔らかくなるという性質があるそうで、こういった細かい細工に向いているそうだ。すげえ。

 

1階は上記企画展で撮影不可だったのだが、2階の塩コーナー、3階のタバココーナーは撮影可能だった。
塩は正直美術工芸的には見るべきものはない。科学関心的にも、子供向けなので大人にはぐっと来ない。いろんな色の塩があったので舐めて見たかったけど衛生的にどうかなぁと我慢した。
f:id:minnagi:20190115132418j:image

 

3階の特設コーナー、企画展と同頃に製作されたたばこ器具が展示されている。かっこいい。

 

他にも世界各地の、いろんな時代の喫煙具が展示されている。工芸的に美しいものも多く、そのバリエーションの豊かさが興味深くある。

f:id:minnagi:20190115132413j:image

バグパイプみたい。あんま長いと吸うの大変じゃないのかな。

 

こちらはダンヒルのパイプセット。f:id:minnagi:20190115131947j:image

木製の器具に火を付けてやるものだから、毎日使っていると痛みが早く、休ませながら使うものらしい。確かにその通りだわね。形によって何か味が違ったりするのかしら?

 

f:id:minnagi:20190115132350j:image

煙草入れコレクションも、刻みたばこや嗅ぎ煙草など、種類に応じて様々。上流階級向けなので美しい細工がされています。

f:id:minnagi:20190115132404j:image

各地のメアシャムパイプがズラリ。やはり細工にこっているのですが、結構色に幅がある。

使い込むと色が変わっていく様を愛でられた

と説明にありました。
それって…それって要するにヤニでは?パイプが茶色に変色すると同時に、肺も同じような色になっているのでは??などと嫌煙思想教育を受けた身としては考えてしまい、素敵ねぇと思うよりヒェッ!てなる。革製品を育てるのとはまた違うだろうよ…
まぁ当時はタバコの害とか知られてなかったからなぁ。

 

日本たばこの歴史的なコーナーもあった。おや、見覚えがあるぞ?

f:id:minnagi:20190115132359j:image

年末に行った長楽館の主、村井兄弟社じゃないか!こんな色だったのだな。f:id:minnagi:20190115132354j:image

日本タバコの歴史コーナーでは江戸時代から始まり、2000年ごろまでの広告資料が展示してあった。闇市で買わないよう呼びかけていたり、1950年ごろは御進物に使われていたり(喫煙者は特定の銘柄しか吸わない印象なのだが大丈夫なのだろうか?)しているのが面白かった。
けれど2000年で更新が止まってたんだよね。
ここ数年で電子タバコとか加熱式タバコ出たじゃないですか。あれ、どういう扱いなのかなぁ。スペース的に、さらに歴史をどんどん継ぎ足していくつくりじゃないのが気になった。新しいポスターとか貼る余裕ないの。すぐそこで出口。
タバコをこれからも発展させていく気概があるなら、拡張性を見せて欲しいものだと思うよ。

 

売店に食塩売ってるのおもしろかった。

f:id:minnagi:20190115132409j:image