人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【ネタばれ感想】ねじの回転

書籍データ


今日の猫
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家にあるホラー小説短編集を読み始めたら、序文に「過去にこんな名作が」みたいな感じで紹介されていたので読みかけの本をほっぽり出して読んでしまった。だって家にある本って基本何度も読んでる本だし。

というわけで、「ねじの回転」

田舎屋敷で住み込みで孤児の家庭教師をすることになった女性。
かわいらしい妹と、何故か学校を放校処分になって戻ってきた兄。その前に男と女の幽霊が現れる。それが既に死亡した下男と前任の家庭教師だと判明する。
下男と家庭教師の間に何があったのか。
兄はなぜ放校処分となったのか。
家庭教師にしか見えない幽霊は実在するのか。

 なんだかクラシカルな表紙。

「turn the screw」と言う成句は「圧迫を加える」「追い打ちをかける」と言う意味があるそうです。
その言葉の通り、ギリギリと追い詰められていくような物語です。

Wikipediaに粗筋が完全ネタばれで全部のっている。

ねじの回転 - Wikipedia

妖精たちの森って映画が前日譚設定であると書いてあるけど、ストーリー怖くない…?

 

以下ネタばれ

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【ネタばれ感想】葉桜の季節に君を想うということ

書籍データ

  • タイトル:葉桜の季節に君を想うということ
  • 作者:歌野 晶午
  • お勧め度:★★★★★


今日の猫
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こないだ借りたモース警部シリーズがつまんなかったよ!と注文をつけつつ京都人から借りた本。
この本はすごく面白かったです。

タイトルがみやびだよね。
タイトルと言い表紙デザインと言いなんか青春物ドラマ?聞き覚えあるってことは映画かとかしたんだっけ?程度の認識で読み始めたら全然第一印象と違ってびっくりした。 

ある日主人公の弟分の高校生の片思い相手である資産家の家のお嬢様に彼女の家の「おじいさん」が死亡したこと、恐らくは保険金殺人を狙ったものであること、そして死後とある悪徳健康商法に多額の金額がだまし取られていたということを告げられる。
家の名誉を考えて警察には行かず全て見て見ぬふりをしようとする家長の「おとうさん」を説得するための材料として、悪徳健康商法の会社を調べて欲しい……
そう願う資産家の家のお嬢様にいいカッコをしたい弟分の高校生にせがまれ、元探偵は調査を始める。
電車に飛び込み自殺をしようとしていたところを助けた謎の美女との恋愛も絡み、徐々に謎が解明されていく

以下ネタばれ

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見ただけです PIXARの秘密展 7/1

塩田千春展のチケットで同時にPIXARの秘密展も見れたので、値段に含まれるのならと一応ぐるっと見た。

www.disney.co.jp

けどびっくりするほどつまんなかったので特に感想はないです。子供向けなのかな。

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ピくサー映画は好きだけどね。
と言うだけじゃなんだから、猫見る?

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おしまい。

理屈か結果か 塩田千春展:魂がふるえる 7/1

年単位で久々の森美術館。ここは……なんだか合わないんだ…
まず入り口の導線がクソで、展望台に行きたい人と森美術館に行きたい人とアーツセンターギャラリーに行きたい人とをごちゃ混ぜに並べて入場券買わせるからクソ混んでるし、そもそも展示内容が好みに合わないし、商業主義がすごくて広告詐欺みたいなのも多いし。
相性ってあると思う。飲食店だって小売業だって好き嫌いがあるのに、サービス業の最たるものである美術館に相性が無いわけがない。
というわけであんまり好きじゃないけどこれ気になるしなぁどうしようかなぁと悩んだ挙句に行ってきた。

www.mori.art.museum

写真撮影可能

  • 撮影された作品写真/動画は、非営利目的でのみ利用できます。営利目的には利用できませんのでご注意ください。
  • 撮影された写真/動画に変更を加えることはできません。
  • 上記作品写真の使用条件はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で許諾されています。

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Creative Commons

だってさ!

以下全て、

作家名:塩田千春
この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています。
でよろしく!

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「不確かな旅」

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籠状の船と、部屋を埋めつくさんばかりに張り巡らされた赤い糸の作品。
この糸どうやって止めてるんだろう?って思ったら、タッカーだった。
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単純にすごく綺麗ですね。「不確かな旅」と言うタイトルで思い起こさせるものも面白いです。船旅なのだろうな。たくさんの選択肢から収束してそれぞれの船に帰着するのか、いくつかの船からスタートして無限の分岐を繰り広げて拡散していくのか。
上の方が密度が高いから、後者なんだろうな。

どうでもいい感想としては、これだれがどうやって設営しているんだろうなぁってのが気になる。
この作品って部屋によってサイズ違うじゃないですか。大きく作ったものを小さい部屋に再設置することはできない。というか、部屋から取り外したらもう糸が絡んでしまってどうにもならなくなりそう。船の枠組みだけを残して、糸は都度貼り替えと考えるのが自然ですよね。
アーティストである塩田千春さんが毎回やってるわけじゃないんだろうなぁ。時間的にも無理があるだろうし。
設営スタッフの人がひたすらぐるぐる糸を張っているのかなぁ。張り方にも決まりとかあるんだろうなぁ。訓練された専用スタッフがいるのかなぁ。
設営動画があったらぜひ見たい。

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「小さな記憶をつなげて」

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ドールハウスの家具や小さな指輪、ビーズなんかが赤い糸でつなげられている作品。
記憶回路って一本道じゃなくてこうやっていろんな事柄を行きつ戻りつ複合的につながっているんだよね。子どもの頃の世界がある感じ。

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「静けさのなかで」

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あ、燃やしたんだ。
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これはこれで面白いねって思うけど、燃やしてるの見たかったな。

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「時空の反射」

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ホラー映画みたい。持ち運びできそう(小並感

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「集積:目的地を求めて」

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たくさんのトランクが天井からぶらさがっている。いくつかのトランクはがたがたと動く。空港の手荷物受取コーナーみたいな光景。
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動く奴にはひもが二本入っている。モーターを使っているとあるから、中で巻き上げているのだろうな。
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下から見たほうが楽しい。
これからどこにだって行けると言う明るい気持ちになる。浮遊感がいい。

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「アフター・ザット」

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インスタレーションの記録写真。
長さ3メートルもあるドレスを作成、泥で汚して天井からつるし、それをシャワーでずっと洗い続けると言う作品だったそうです。

なんかなぁ。
紐を使った作品はその緻密さと巨大さに圧倒されるけど、それ以外は苦手かな。
“穢れた私…消えないツミ…心の闇…私を罰して……”
みたいなの、ほんと現代アート多いっすよね。またかよって感じです。

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面白いものは面白いけど肌に合わないものはウゲッて感じだった。
病み系の美術好きじゃないんですけど、この人もそうっぽいなぁ。やだなぁって。
アウトプットは(半分くらいの作品は)好きだけど、その制作過程、発想的なところがどうも好きになれない。
成果物だけ見て楽しめばいいじゃないかと思いつつも、どうしたって製作過程や設計思想は透けて見えるもので、“好き…好き?好きなのかこれは?でもなんかむかつくんだよななんかが…”と考えることが多くて疲れる鑑賞となりました。

あと、別の展示で動画作品を流していたのだけれど、ほんとクソつまらなくってやっぱり森美術館とは趣味があわねーなと思った。オチのないコントをひたすら続けてる感じの動画だった。なんか意味があるのかな→ないんかい!の連続でイライラした。

キレッキレです。 メスキータ展 6/30

久しぶりのステーションギャラリーに、メスキータを見に行った。www.ejrcf.or.jp

日曜美術館だったかな?テレビで特集されていて、これは面白いぞと気になっていたのです。
サミュエル・イェスルン・デ・メスキータと言う人のことを私は知らなかったです。まぁそれも当然で、日本で個展が開かれるのは今回が初めてとのこと。

ja.wikipedia.org「モスク」という意味のメスキータという名字を持つ彼はユダヤ系オランダ人。
19世紀末に生まれ、20世紀に活躍した版画家です。建築を学び、美術学校の教師となり、エッシャー達を教えた人です。そしてこの時代のオランダのユダヤ人ということは、ナチスに処刑されてしまった人の一人でもあります。
おそらくは「退廃芸術」扱いであったであろうこのユダヤ人の作品を持っていることは当時かなりリスキーだったことでしょう。それでもエッシャーら教え子は作品の散逸を防ぐため、ナチスの目を盗んで彼のアトリエから作品を改修して保管していたと言います。

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「トーガを着た男」

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この作品が一番好きです。非常にシンプルで力強い。最小限の表現で浮かび上がる確実なシルエット。知性と高貴さ、そして聖性。受ける印象として、仏像が非常に近い。広隆寺の木造弥勒菩薩半跏像みたいな。

撮影可能な部屋が最後にあるって案内だったので楽しみにしてたんだけど、作品ではなく代表作を印刷した巨大バナーが飾ってありました。なーんだ。

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京都人はこの右側のパイナップルが非常に気に入っていた。パイナップルひっくり返そうとか普通思わないよなー。

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「ブレスボック」

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たくさん製作された動物版画の一つ。私、こう言うドラマティックなやつ好きです。緊張と、純化された美しさ。物憂げな顔。

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「シマウマ」

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紹介されていたエッシャーのコメントが面白い。

メスキータは自然界のモチーフで既に鮮やかに黒と白とに分割されているものをもとに、くっきりとした黒と白の創造物をつくることには反対していたのだ。
「シマウマっていうのは生きている木版だ。そのシマウマをもう一度木版にすることは自生しなくちゃいけない」
後に、メスキータ自身の木版「シマウマ」があることを知って、どんなに驚いたことか。
M.C.エッシャー

この発言が、シマウマの作品を作った前なのかあとなのか知りたいよねw
作成した上でやっぱダメだなと思ったのか、ダメって言ったけど一応検証の必要を感じたのか、単にエッシャーにやって欲しくなかったのか。気になる。

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「鹿」第10ステート(全10ステート)

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し、鹿…?鹿なのか、お前は?どうしたんだそのツノは!!!

シマウマなんかはかなりリアルですが、メスキータは多くの作品で対象の要素をそぎ落とし、デフォルメし、純化して表現する。その過程で、敢えて実物とは違う表現をとることさえある。その動物にあるべき模様を消し、毛並みを変え、そしてこのように自然ではありえないフォルムをとる。
ただの再現ではなく、その要素だけを取り出すような方法は、ちょっと後期のピカソが目指していたものに近い気がする。

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「ファンタジー:微笑む男たち」

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めっちゃ作風違うやつ。
メスキータは版画やその下絵である絵画では写実的な表現をしていますが、主に水彩画からなるドローイングではこういう不思議な絵を描いています。

ほとんど無意識の状態で浮かんでくる映像を作為なく描いた

 と解説されていたが、ほぼほぼ悪夢の世界だ。ディズニーのプーさんでみた悪夢に出てくるズオウたち。醜く下卑た顔をした人たち。横目でこちらをちらりと見やり、声に出さずにひそやかに含み笑いをする。

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「ファンタジー:月を見上げる人」

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ちょっとルドンっぽい。ほっぺがくるっとしててかわいい。
フードでもかぶったかのように闇をまとった人物が一人さみしく月を見ている。途方に暮れたような表情はなぜ闇に塗り込められているのか、世界と断絶しているか全く見当もつかないといった様子だ。
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「10点のリトグラフ集」9

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リトグラフもペインティングなのだろうか?まぁ作画工程の感覚としては彫り物と言うよりお絵かきに近いんだろうな。
狐のような、タヌキのような、手塚治虫初期作品のモブのような。
人形劇の一場面を見ているような楽しい絵。そして、楽しいだけではない何かが隠れているのにまだ気付かずにいるような気持ちにさせる絵。

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私は最後の「ファンタジー」作品群が好きです。
自分が見ているものがおぞましい悪夢だと気づく直前のような世界がある。

入口で配布しているパンフ、4種類ありました。
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裏に乗ってる作品も全部違うから、ちゃんとチェックしてもらうといいよ。もしくは全部もらってくるのが一番の正解。
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【ネタばれ感想】キドリントンから消えた娘

書籍データ

  • タイトル:キドリントンから消えた娘
  • 作者:コリン・デクスター
  • 訳者: 大庭忠男
  • お勧め度:★

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2年前、キドリントンの街から失踪した少女。
彼女の行方を捜査し続けていた警察官が事故死する。
遺族にも心当たりのない街に向かっていた彼は、事件について何かつかんでいたのだろうか?
引き継ぎを命じられたモース警部は「彼女はもう死んでいる」と決め込んで捜査に取り掛かるが…

しばらく読書記事を描いてみて、感想文と粗筋とを両方書くの正直つらいなって思った。
粗筋を書くのは備忘録としてそれほど苦ならないのだけれど、つまらない本の場合は正直つらい。何より、ネタばれせずに感想を書くのがめんどくさい。どこがつまらないって具体的なやつ言えないじゃん。
もういいやネタばれ感想で…読書感想文読む人、ネタばれとか気にしない人でしょ……

 

というわけで感想。

つまらなかった!とてもつまらなかった!
この人の本を読むのは2度目なんだけれど、もう読むのやめようって決めるくらいにはつまらなかった!!!
なんでこの本を読んだかと言うと、京都人に勧められたからなのです。
スティーブン・キングが好き
・相棒とか科捜研とかの刑事ドラマが好き
・小説に求めるものは、予想外のストーリー
という好みを聞いたうえで蔵書(持ってるだけで読んだかは不明)から勧めてくれたのがコリン・デクスターでした。
1作目のウッドストック行最終バスでイマイチだなと思いつつ2冊目のこれを読んでみたら、まぁ酷くてひどくて。
予想外なら何やってもいいってわけじゃないんだぞ、と声を大にして殴りたい。

以下、ネタばれ

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【感想文】ご冗談でしょう、ファインマンさん

書籍データ

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理系、特に物理化学系にはおなじみのファインマンさんである。
理系野郎が「ご冗談でしょう」なんて言ってるとしたら、この本のことを念頭に入れていると考えてほぼ間違いない。

ファインマンは物理学の教授であり、量子電磁力学でノーベル賞を取った科学者である。そのファインマンがラルフ・レイトンに自分の逸話を面白おかしく語り聞かせたものを記録したものがこの本である。
だから厳密には"自"伝ではないし。ご冗談でしょうの前書きにも困りますの後書きにもそれは明記してある。
ノーベル賞受賞者の自伝とした方が売れるから作者をファインマンとしているのだ」とまで書いておきながら、いまだに作者名がファインマンのみでラルフ・レイトンを併記すらしないのはちょっと不誠実じゃないかなぁと思う。
せめて、自著ではないことくらい表紙に明記したほうがいいんじゃないかしらね。

ファインマンの逸話はWikipediaに詳しい。
というか、Wikiの内容がこの本をもとに記述されているようだ。

ja.wikipedia.org

このノリの話がひたすら続くのだから、エッセイ集としては最高に面白いこと請け合いである。

様々なエピソードが語られているが、原発作成中の逸話が面白い。
また、ご冗談でしょうで原発を作っている時はコンピューターどころか今でいう電卓すら発明されておらず、"足し算をする機械"と"掛け算をする機械"といった専用機械を使用していたのが、戦後IBMのコンピューターを使うようになっていき、困りますではスペースシャトルまで飛んでいるのだから技術の進歩には目覚ましいものがあるなぁと驚嘆する。

計算機の歴史 - Wikipedia


原発を作って置きながら日本好きを公言したり、旅のそろばんマスターと暗算対決をしたりと、不思議なエピソードが数多くあり、偉人のエピソードとは思えないほど楽しい。

この人くらい頭がよかったら、色々人生楽しいだろうなぁと思う。
軽く読んで楽しめるエッセイなので、振り仮名を振って子供向けにしてくれたらいいのに。考え方やものの見方など、小さい頃に読んでいたら為になるだろう内容がとても多い。

物理が苦手でも気にせず読める本だと思います。ファインマンなので物理の話は当然いろいろ出てくるのだけれど、ギリシャ神話を読む時にゼウスへの信仰がなきゃいけないってわけでもないし、物理はわからんなぁと思いながら読む分には差しさわりが無い程度です。