なじめる気がしない 自由学園明日館 3/21
目白まで行ったのに目的地がお休みだったよ。というわけでのんびり池袋までお散歩をすることになった日。
目白と池袋の間といえばあれがあるじゃないですか、自由学園明日館。
フランク・ロイド・ライト設計の広々とした建物です。
大正十年に学園が設立される時、ちょうどライトが帝国ホテルのために来日しており、学校教育の理念に共感した彼が忙しい中設計してくれたと言います。
直線的なデザイン、幾何学模様の窓が特徴的ですが、小さい子のための学校ということもあって帝国ホテルに比べすっきりしたデザイン。とても開放的な雰囲気です。
大きくとられた窓。建設中に急遽追加されたとかで、筋交いをきって作ったのだとか。強度大丈夫?
教室後部にも黒板。めっちゃシュッとしている。
正面から見える一番大きな窓。かっこいいです。2階の食堂で紅茶と焼き菓子がいただけます。今は東久留米に移転したという学園で作られたクッキーは以外にも本格的な味でおいしいです。やりおる。
道を渡って反対側には講堂。
こちらはライトではなく、そのお弟子さんの設計。これがすごいんですよ。舞台裏とか二階とか、普通そんなところまで見せる?ってところまでドアが開いていて見ることができる。監視員さんもいない。配管まで見えるってすごくない?
すごく開放的で綺麗な空間でした。
学園が移転してからは放置され、一時はひどく荒れていたそうです。その当時の写真を見ると、土地を売って学園運営資金に充てようという意見が出されたのも理解できます。立地がかなり良くて、マンションでも建てればここの見学客が払う料金より何十倍も儲かりそう。それでもこうして美しい歴史的建築を残してくれるのはありがたいなぁと思います。
全ての建築物を残すわけにはいかないですよね、現実問題。維持管理にはお金がかかるし、老朽化にも対応しないといけない。それ以前に、単純に古いものをどかさないと新しいものを作ることができない。過去の名作にこだわりすぎていたら、新しい傑作が生まれない。
建物保存問題は難しいよなぁと思います。
でもここが残っていてくれてよかった。
学校として使っていた頃の写真を見ていて思ったのですが、私、絶対この学校なじめない。
めっちゃ集団生活強調されてるし、自然に親しむとか言ってるし、自分のことは自分でやるとか書いてあるし。
私みたいなコミュ障は絶対やっていけないだろうなって思った。
今もそんな感じなのかな……コミュ強ばっかりいるんだろうな…
【感想文】東京貧困女子
書籍データ
タイトル:東京貧困女子
作者:中村 淳彦
お勧め度:★★★★★
発売前に無料で全文読めるキャンペーンやってたので読んだ。微妙に内容が違うって書いてあるので、書籍版とはどう違うのかわからないけど。
面白くて一気に読んでしまった。
面白い。そして、恐ろしい。私は今貧困ではないけれど、いつそっち側に落ちるかわからない恐怖は常にある。
客観的に言えば私は全く貧困だったことがない。周りが妙に金持ちばかりだったから格差は酷かったけど、決して貧困まで行ったことはない。生活に困るまではしたことがない。
それでもロスジェネ世代の私はこの本に出てくる貧困の話を聞いて、全く他人事とは思えなかった。
実家が貧しい学生。介護離職。ブラック企業。本人の病気。離婚。一度レールから外れてしまうと、まともな生活に戻るのがどんなに難しいのかというのがひたすら繰り返される。
対してスラム街に住む生活保護の人達は貧しいなりに安定した生活を送っている。
やっぱり大事なのは知識だなと思う。どんな仕事がやばいか、どんな制度が使えるか。そういうことを知らないと、道を踏み外してからでは手遅れなんだなと。
今、ありがたいことにそれなりの生活をしている。上流とは言えないけれど、中の上くらいの生活ができている。
でも、明日どうなるか正直わかんないよね。京都人と離婚するかもしれないし、二人して事故とかで働けなくなるかもしれないし。
毎日毎日働くの嫌だなぁ専業主婦になりたいなぁって思ってるけど、仕事を辞めるのがこの本読んで怖くなった。
明日も働こう。
ノンフィクションドキュメンタリーという性質上、粗筋は書かないです。
【粗筋】不思議な少年44号
猫最高
主要人物
青年:主人公。印刷工見習。気が弱いがいい人。
44号:突然現れた不思議な少年。
舞台
中世の雰囲気が色濃く残る1490年のオーストリア。
↓粗筋開始(白文字)↓
文盲も多い村の城で親方の元で職人たちに混じり印刷工見習いとして働いている青年。そこにある日、「44号」と名乗る不思議な少年が現れる。追い出そうとする職人たちだが、44号は親方に気に入られ、城に住む魔法使いの庇護もあって印刷工として働くことになる。
嫉妬から44号を浴びる職人達だが、青年は44号と密かに友人になる。そして、「何の教育も受けていない」と自称した44号は「教育を受けるまでもなく全てを知り尽くしている」のであり、テレパシーやタイムトラベルなどの不思議な力を持っていると知る。44号はその力を使って城を混乱に導くが、あくまでも魔法使いの力であると周りを信じさせる。実際には虚仮威しだけでなんの力も持たない魔法使いは周囲に責められても44号を制御できないでいる。44号は自分が魔法使いの命令と称して魔法を使うことで、彼の名声を高めることに楽しみを覚えている。
言うことを聞かない44号に業を煮やした職人たちは、大口の注文が入ったタイミングを見計らってストライキを起こす。仕事が終わらないことに悲観した親方は寝こんでしまい、青年は伝説の凄腕印刷工が助けに来てくれることを神に祈る。はたして凄腕印刷工は現れるのだが、締め切り直前過ぎて他の職人を説得するも間に合いそうにない。
そこで44号は魔法使いの力と称して白の職人全員にそっくりな複製人間を作成し、仕事を終わらせる。複製職人たちがいるから本物が働かなくても仕事は回る。仕事をしていないのに本物が給料を要求することはできない。事態は膠着状態に陥る。
騒動の中で44号は魔法使いに殺される。葬式まで上げるが、44号は青年のところに姿を現す。死んだふりをしただけだと言い、他の人には姿を見せないが青年とは一緒に行動する。青年は44号をキリスト教徒にしようとするがうまくいかない。
青年は44号に、人間は起きている時=肉体と寝ている時=魂とで違う2つの人格からなっていると教わる。ところで青年は親方の姪に前から片思いをしていた。44号に教わった姿を消す魔法を使って姪に会いに行くと、彼女は前から自分が好きだったと打ち明ける。しかし、それは姪の魂のみの感情で、肉体は青年の複製を愛していたのだ。自分そっくりな恋敵に苦しむ青年。親方は誤解から姪と青年の複製を結婚させようとする。
ごたごたに巻き込まれて姪の侍女が44号の力で猫に変えられてしまう。彼女は人間でいた時より猫になった方が幸せだという。
何とか姪の結婚を阻止できないかと苦しむ青年のもとに、青年の複製がやってくる。複製は実は空気の精霊で、44号の力で捕えられて人間の姿に変えられたのだという。名を愛していなくはないが結婚したくない、そもそも人間の肉体に閉じ込められたくない、自由になりたいと懇願する複製。
44号はお祭りが始まるという。今回の祭りは特別なものにすると宣言し、時間を逆行させ始める。逆回りに時が進む中、44号は青年だけその時間の流れから影響を受けないようにする。今までに死亡した全て人間、アーサー王やノア、アダムとイブの先祖までがよみがえって大行進となる。
世界の始まりまで時間は逆行し、何も存在しない世界で44号は神は存在せず、世界の全ては実在するのではなく青年の考えたことなのだと告げ、姿を消す。
そして青年は何もない世界の中、それが事実だとついに理解する。
↑粗筋終了(白文字)↑
こうやって書くと粗筋へたか!って思うけど、実際各パートが唐突に始まって投げ出して終わるんだもんなぁ。
目黒区はお金持ち。 目黒区美術館コレクション展 3/21
せっかく目黒まで来たのだから、目黒区美術館も見てやるぜ!と思い立ったはものの、松岡美術館から目黒美術館までは相当遠かったw
目黒は区立美術館があるのか、すごいなぁ、私の地元はどうかしら?と調べてみたら中野区には公立美術館がなかった。私立もろくにない。格差〜。
「目黒区美術館コレクション展 コレクションの<現在(いま)> ― 絵画・彫刻・版画」ってやつを見たよ。
2部屋だけ撮影可能だった。撮影基準はこんな感じ。
なのでざっくりした写真である。
青木 野枝「Untitled(7点組)」
巨大なオブジェ。何を表してるのだろうねぇ。錆色の鉄でできたものがこのサイズだから相当な迫力である。なんだか物寂しい雰囲気が漂っていて私は好きだ。できればこの真ん中の道を通りたいなぁと思う。
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多和 圭三「景色ー境界ー(2点組)」
鉄でできた巨大な枠が部屋に並んでいる。ギザギザした上面は地面からせり上がってきたかのようだ。
鈴木 省三「静かな呼吸Ⅰ」「地面からの空Ⅳ」
他の作品はこんな感じ。
滲んだ水辺の写真のような、蟲師2のオープニングのような。
篠田 教夫「海岸の断崖」
ポスター。普段なら切り抜いて歪みを撮った画像を載せるんだけど、今回は美術館の意向を考えて歪んだまま載せる。
下塗りした紙に鉛筆と電動消しゴムで描いたという細密画。海から打ち上げられたような岩の下に、半ば砂に埋もれた小さな鳥居がある。荒さ、力強さと繊細さ。自然の中に紛れる鳥居は唐突感が強く、よく見ないとわからないこともあり気づいてはいけないものに気づいてしまったような不安感がある。何か悪いものが封印されているかのような。
技術的な面では、わざわざ「電動消しゴム」って明記されてるのなんだろうなぁと思う。普通の消しゴムや練り消しとは何か違うのかしらね?白黒写真のような不思議ななめらかさのある絵でした。
写真が歪んでるのは、ガラスの写り込み防止だからね!普段は光や影が入らない方向から敢えて撮って補正してるんだからね?決して真正面から撮るのか下手すぎるわけじゃないからね。下手なのは事実だけど。
【感想文】 不思議な少年44号
書籍データ
今日の猫です。
本に興味がないので、おやつで釣ってます。
中世の雰囲気が色濃く残るオーストリア。
文盲も多い村の城で親方の元で職人たちに混じり印刷工見習いとして働いている青年。そこにある日、「44号」と名乗る不思議な少年が現れる。親方に気に入られた44号に対する他の職人たちの嫉妬から、様々な不思議な騒動が巻き起こる。
マーク・トゥエインの生前は未完として発表されなかった本。ある人物が他の作品と組み合わせて捻じ曲げたものを勝手に遺稿として発表していたが、オリジナル版に近い形に直しての刊行となる。
あの冒険少年物語の王様みたいな「トムソーヤの冒険」を書いたマーク・トゥェインが晩年にはひどく厭世的な話を書いていたという。そんなん言われたら気になるじゃないですか、と入手して読んでみた。
面白いことは面白かった。けれどすごい粗い内容だなと思った。
・44号登場
・巻き起こされる騒動
・青年の恋
・エンディング
と物語はだいたい4つにわけられるのだが、それぞれのパートがちゃんとつながっていない。青年が「前から彼女が好きだった」とか言い出しても、彼女今までろくにストーリーに出てきてないぞ?とか。結局騒動は膠着状態のまま放置とか。
44号の設定もあやふやな感じが強い。
いま読むとクローン人間かな?とか思うけど執筆時にそういう概念はなかっただろうし、機械なのかもしれないがそういう描写はない。神とか悪魔とか精霊とか、人間を超えた何かであることは確かだが、明記されているわけではない。はっきりと決まらないままに書いているのかもしれない。
エンディングも派手で圧巻なのだがすごい唐突で、え?なんでこうなるの?って感じだ。神曲のラストも唐突に終わるけれど、あれは全体のトーンが合っているからこういうのもありかなと思える。しかしこの話では、それまで魔法など出てくるなりにリアリティのある書き方だったのになんでいきなりこうなるんだろうって思ってしまう。
元々作者が未発表の、校正前の下書き段階だと言われれば納得できるかなという感じ。
でもだとしたら、下書きの割に面白いだろ!って思うよ。
とはいえ冗長な部分も多いし、キリスト教を否定する概念のところは、そもそもキリスト教がわかっていないと理解しづらいだろうと思う。
なにより、いくら圧巻とはいえラストの唐突感はどうしようもないなと思う。
そういう意味ではお勧め度は低いのだけれど、それを了承のうえで読むなら結構楽しめる本だと思う。
私が読んだのはこれ。面白かったが万人受けはし無さそう。
岩波文庫のはだいぶ内容が違うようなので、ちょっと読んでみたくある。
こちらはあらすじ見る限り新訳なだけで内容同じなのかな?
猫祭り 松岡美術館 3/21
人生が嫌になったので松岡美術館に行ったら猫がいっぱいいたので生きる。
松岡美術館は白金台にある私設の美術館だ。
新宿西口を使う人なら松岡って聞いたことあるかも知れない。
あの松岡セントラルビルディングの松岡です。
存在は前から知ってたんだけど、なかなか興味のある企画展をやっている時にこちらの暇が無くて行けなくて。でも今年の6月から長期休館に入ってしまうというので今のうちに行かないとなぁと。
行ってみた感想は、安い。
1階は博物が中心なのだけれど、説明がとても細かくて勉強になる。
2回は美術の企画展で、残念ながら今回は好みではなかった。中国陶器と文楽人形の絵が展示されていた。洋画もいっぱいあるはずなので、リニューアルされたら洋画の企画展やってるときに行ってみたい。
ディエゴ・ジャコメッティ「猫の給仕頭」
ジャコメッティのニャコメッティ!かわいい!玄関に置いて自転車の鍵とか持ってて欲しい。
ちょっと欲しすぎてレプリカ売ってないかなと検索してみたら、アマゾンで絶妙に胡散臭い偽物が売られていた(現在在庫切れ)
ジャコメッティらしくすらっとした姿ではありますが、あの特徴的な無機物のような痛々しさは感じられない。
すっごい欲しい。どっかに売ってないかなぁ。
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エジプト末期王朝時代 バステト像
ちっさい猫さん。すごいまじめな顔している。かわいい。
細かいところまでよく作り込まれている。本当は右手には儀式用の楽器を持っていたことが予測されるとのこと。
エジプト 新王国時代 セクメト像
おっきい猫さん。柔和な顔をしている。
こういう古い神像って鼻が壊れてること多いですよね。単純に細くてもろいのか、打ち倒された時に被害を受けやすいのか、はたまた邪教の悪魔として異教徒に打ち壊されたのか。
ロマン。
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エジプト 末期王朝時代 セクメト像
ちっさい猫さんアゲイン。きりっとした顔をしている。
ライオンも、猫です(猫原理主義)
ただ作品を置くだけでなく、どういうことをつかさどる神なのか、どういった歴史的流れで信仰されたのか、ヒエログリフではどう書くのかなどと詳しい説明があるのが撮っても興味深い。
ミイラの木棺とかもあったし、エジプト好きな人にはお勧めだ。
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エジプト 新王国時代 王女頭部像
初期の研究では、肥大した頭部やなめらかな顔のラインなどは持病による奇形と推測されていたが、現在では崇高なイメージを付与するための芸術様式だったと判明している。
王を実際の人間とは異なる姿で表現することで、神性を強調する意図があった。
と説明があってフムフムと。私がこの辺のことを勉強した時は持病説しか聞かなかったなぁ。知識のアップデートは大事だね。
フィフス・エレメントの宇宙人みたい。縄目のように仕上げられた質感も含め、現代美術のような質素な美しさがあると思う。
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ヘンリー・ムーア「馬」
かわいさよ。耐えがたきかわいさよ。
近代彫刻の大きいのもいっぱいありました。これが断トツでかわいい。ミニチュア欲しい。
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ガンダーラ 菩薩立像
ともに3世紀ごろの作品。
正直私には仏陀と菩薩の見分けがつかないよ…
菩薩とは悟りを求める者のことで、釈迦が悟りを開く前の修業時代の姿であらわされる。仏陀とは異なり、豊富な装身具(耳飾り、首飾り、胸飾り、椀釧など)をつけ、腰に布をまとい、上半身は裸形で肩から腕に書け天衣を付けている。当時の王族の姿がモデルとなっている。
ってあるけどさぁ!その特徴全部この仏陀坐像に当てはまるじゃんか!!
他にもヒンドゥー教の神像とかいろんな様式の仏像とかたくさんあった。アジア系好きな人にお勧め。
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大正時代 御殿飾り一式(京都製)
この美術館創立者の松岡清次郎が長女の初節句のためにしつらえたもの。
ひな祭りだから展示されていたのでしょうが、まぁでっかい。お雛様とお内裏様が建物の奥に引っ込んでるスタイルなんて初めて見た。大きすぎてどんな御顔してるのかわかんないね。見事すぎてやばいなという感想しかわかない。
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宮前 秀樹「置かれた人形」
日本画はあまり好みでない上に文楽は一度も見たことが無いのでわからんです。正直。
これは使用済みの人形が置かれているという設定の絵。ぼんやりと浮かび上がる人形は魂を宿しているようで美しく恐ろしいなと思う。
神楽舞を表した大きな二対の絵。おごそかな感じであり、押し殺したような迫力がある。
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鏑木 清方「保名」
元の話を知らないのですが、あらすじが解説されていて物語の世界を感じることができた。色がとても美しい絵。
正直二階はよくわからんな!ってなった。和物が好きな人は楽しい展示だと思う。
しかしこれだけのボリュームをこんなに詳しい説明付きで千円以下で見れるなんてすごいなぁと思う。タイミングがよければ無料解説ツアーもやっているそうだし、どんだけふとっぱらなんだよ、と。
リニューアルオープンしたら絶対にまた行くと思う。