人の金で美術館に行きたい

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。

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日本画と洋画の違い 炎舞 速水御舟

私に限って言えば、美術品の好みは結構変わる。
単純に今まで知らなかった画家に夢中になることもあるし、それほど好きでなかった絵を見直すこともある。嫌いになること、はさすがにないけれど、より好きなものができた結果相対的に優先度が下がることは当然ある。
世の中には山と芸術品があり、さらにどんどん生み出されていくのだから仕方ない。

 

工芸より美術が好きだ。
立体作品より平面作品が好きだ。
写真より絵画が好きだ。
水墨画など唐画より日本画が、さらに洋画が好きだ。
例外はあるものの版画より肉筆が好きだし、モノクロよりカラーが好きな傾向がある。けどその傾向を無視して好きな絵もたくさんある。

日本画の中では浮世絵みたいなやつよりも比較的写実的な花鳥図が好きだ。琳派なんかの華やかな図案化されたものよりも、質素にまとまったものがいい。


速水御舟の「炎舞」が好きだ。
日本画の中では珍しく好きだ。けれどこれ近代絵画だから、やっぱり洋画の影響受けたやつが好きなんだろうなぁとも思う。

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山種美術館で見ることができる。ここは駅から遠い上にすごい坂なんだな。

日本画の専門美術館 山種美術館(Yamatane Museum of Art)

 

炎舞を初めて知ったのはやっぱり中高生の美術の教科書で、あの教科書マジすごかったなと今になって思っている。買い直したい。あんなに色んなジャンルを時系列でまとめている本なかなかない。

 

洋画と日本画の違いは何だろうか、と考えてみると逆にどこが同じなのか?ってくらい相違点だらけなのだけれど。
一番の違いは画材だよね。現代絵画において洋画と日本画を分けるものは作風よりも画材だ。岩絵の具を使っていたら抽象画でも日本画扱いになるだろう。
個人的に思っているのは、「絵と人との距離」だ。
西洋文化において、絵は主役だ。部屋の壁にドン!っとかけて、ある程度離れた所から干渉するものだ。いわゆる美術館で見る時と同じといってよい。
対して日本文化において、絵は主役でない時の方が多い。空間芸術としての茶室や床の間の一部としてある。ホストがいてゲストがいて、茶道具のような調度品、生け花などが合ってそれと調和を取るための絵になる。
掛け軸については上記のとおりで、巻物については絵物語としてストーリーが主になる場合も多い。
洋画が日本に浸透するまで、日本には額が無かったという。それは絵画が絵画という個別のものではなく、空間芸術の一部であったことの表れだ。
絵は掛け軸であり、巻物であり、あるいは屏風や衝立に描かれた家具の飾りであった。
絵画の鑑賞方法は日本と西洋で性質がだいぶ異なっている。
どちらにせよ、狭い日本の家で壁にかかっているのを眺めたり、あるいは手に取ってゆっくり見たりと、日本画と鑑賞者の距離は洋画のそれとは比べ物にならないほど近い。
点描なんかも鑑賞者との距離がある前提の描き方なのだろうと思う。
そのせいか、日本画は洋画に比べてあまり圧が強くないのがいいよね。

油絵が近づくとただのうねりでしかなく、ある程度離れないと何が絵がいあるのかわかりづらいのと対照的に、日本画は近づいてじっくり眺めないと見落としてしまうほど細かく精緻に描かれているのだ。
それが一番の違いではないかと思う。少なくとも鑑賞者にとっては。
だから日本画は美術館向きじゃないよね。せめて単眼鏡持っていかないとね。

 

なんか絵本体というより周囲の話ばかりしているな。
この絵は結構大きくて暗い中スポットライトを浴びているのを見ると不思議な存在感がある。
写実ではない。炎の形は密教芸術のようだし、蛾は昆虫標本のように羽を広げている。いわゆる図案化された日本画特有の画風だと言っていいだろう。
渦を描きながら闇に炎が消えて行く様や翅の模様はとてもリアルだ。これを実際炎を焚いて観察しながら描いたというからすごいなぁと思う。
夢のような世界だ。ずっと見ていたらなんだかおかしくなってしまいそうな気すらする。
引き込まれた先は神聖なるものではなく、地獄の炎なのではないかと思う。