My heart will go on 装飾は流転する 2/10
目黒の庭園美術館に行ってきた。「庭園」といいつつ、ここの庭はずーっとずーっと整備中だ。でもいいんだ。建物がすごく素晴らしいから。
今回は現代美術の展示です。1933年にアールデコの理想形として誕生した旧朝香宮邸はもちろんクラシカルな絵画芸術や近代絵画を展示するとまるでその部屋のためにあつらえたかのようにしっくりくるのだけれど、現代アートとの親和性もとても高くて素晴らしい。
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ヴィム・デルォワ <ノーチラス(スケールモデル)>
有機的なゴシック建築。奥の方まできっちりと作り込まれていてすごいなぁと思う。
メインビジュアルになるのも理解できる迫力だけれど、すごく線が細いので軽やかな印象になっている。
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ヴィム・デルォワ 無題(タイヤ)
タイヤを手彫りしたのだという。すごい大変そう。
あまりにも整って美しいからこのまま走ってもグリップしっかり効いていいんじゃない?て思うほど。工業製品のような正確さ。もちろん穴あいてるから無理だけど、こういうの売り出したら人気出そう。
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髙田 安規子・政子 「豆本の山」
今回は書庫も解放されていて、こんな小さな本が展示されていた。
他にもドールハウスサイズの作品がいくつもあって、この古い邸宅に小人が住み着いているようで最高の世界観。
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髙田 安規子・政子 「葉」(テーブルクロス) Four Seasons lates(皿)
テーブルクロスの植物が季節の移ろいとともに散って現実の床へとこぼれおちる。
この人の作品はこういう虚構と現実の境目が揺らぐものが多くてメルヘン。
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髙田 安規子・政子 「カットグラス」
ドールサイズのキリコグラス。何でできてるんだろう?って思ったら。
横から見たらわかる、プラスチックの吸盤でした。アイディアだね。
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ニンケ・コスター「時のエレメント」
新古典主義/1800年代様式/アール・ヌーヴォー/アール・デコ
シリコンゴムでできた椅子。実際に触ったり、座ることもできる。
建築要素を閉じ込めて椅子にしているのも面白いなと思うし、単純に美しいし、それがシリコンゴムだということがめっちゃクール。
だってシリコンゴムって、型取り用の素材じゃん。ここに石膏とか流し込んで複製品を作り出すためのものじゃない。
各時代の芸術建築要素の複製品を大量生産するためのものじゃない。
芸術作品であり、そして大量の芸術作品を作り出すための道具なわけじゃない。
面白いねぇ。
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コア・ポア 「聖なる山」
ペルシャ絨毯のような絵画。
伝統的な文様で作られているように見せかけて、中央で古代エジプトと古代ローマが戦っていたり、山水画がの山の間にファラオがいたり、見るほどに面白い作品。
なんパターンもあって、好きな時代のものがあると最高だなと思う。
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すごく面白かった。
そして何より、やっぱりこの建物が最高だなと思った。
だって全室照明デザインが違ったり、ラジエータカバーがしゃれてたり、扉のちょうつがいですらきちんとデザインされてたりするんだよ!
こういう家に住みたい。
所変われば Moving Plants 2/6
銀座エリアに行ったらここにも行くだろう。資生堂ギャラリー。
開催中の展覧会 | SHISEIDO GALLERY | 資生堂グループ企業情報サイト
なんか評判良かったから気になってた。
ここは普段は撮影可能なことが多いのですが、今回は一部を除き撮影不可。でも入り口でもらえる冊子に小さく写真と解説が載ってるよ。
この解説の文章がかなり興味深く面白いのでちゃんと読むといい。
今回の展示は渡邊 耕一さんの個展「Moving Plants」。世界各地に自生するイタドリという植物の写真がメインだ。
イタドリというのは日本原産の植物で、薬効もあり一応食用にもなり、強い生命力を持つ。200年前にシーボルトによって国外に持ち出され、その生命力、緑の美しさから園芸家に人気となり、世界各地に植えられた。
そしてその結果、今では土地の生態系を崩すほどに成長し、侵略的植物種、危険な外来種として指定されている。地域によっては、イタドリが発見された地域の土壌は持ち出し禁止になる程だという。もしもその土に少しでも根が残っていたら、移送先でもイタドリが群生してしまうからだ。
今流行りの、特定外来生物を駆除するテレビ番組のようだ。
写真は全て 渡邊 耕一
私はあまり植物に詳しくなくて、この植物がその辺に生えているのかあまりよくわからない。近所では見かけない気がするが、気づいていないだけかもしれない。
馴染みのある植物が、他の国では劇物のような扱いを受けているのを見たら、どんな気持ちになるだろうか。かつて望んで持ち出され、もてはやされ、今は忌み嫌われている故郷の象徴を見たらどんな気持ちになるだろうか。
そういう植物はたくさんある。生態系とか在来種保護とかいう概念がなかった頃に移動して根付いてしまったもの。セイタカアワダチソウやシロツメクサ、ハルジオン、ブタクサなどは外国からの帰化生物だ。特にブタクサはアレルギーの人も多いから、そう聞くと憎さが倍になる人も多いのではないだろうか。
けれどもそれらがこんな研究室で根絶やしにするための研究を行われると知ったらギョッとするのではないだろうか。
イタドリを駆除するための天敵昆虫がイギリスで研究されているのだという。
イギリスの生態系に悪影響を与えないと選定されたそうだが、そんなことがあり得るのだろうか。ある種が根付き、帰化し、その土地で繁殖していくのに全く周りに影響を与えないことがあり得るのだろうか。相互に影響を受けるのが当然なのではないだろうか。
そしてその昆虫が何かの拍子に逆輸入された時、イタドリがいるべき日本の生態系には何も影響を与えないのだろうか。
人や物流の動きがある以上、絶対はあり得ないのだから。
写真単体としてもとても美しいものだったけれど、それの問いかけるものというのがとても重いなと思った。
電車がないと生きていけない 2/6
火曜日は用事でお休みをしたのだけれど、あまり楽しいたぐいの用事ではないので、終了後むしゃくしゃして丸の内に行ってやった。
”鉄道写真からピカソまで”というキャッチコピーが謎だけれど、要するに収蔵品展。
ここは現代美術を集めている美術館です。場所が駅舎だし、レンガの壁がむき出しな展示室があったりで、近代~現代の特にシュールな感じの現代アートに相性がいい作りなんですよね。
今回の展示は前半は鉄道や駅舎に関する作品、それが風景がになって最終的には抽象絵画にたどりつくというわかるようなわからないような並べ方。
なかなかいい作品が多いなぁと思いました。
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本城直季 small planet tokyo station
6,7年前かなぁ、すごい話題になりましたよね、本城さん。チルトシフトという技法で意図的にピントの合う範囲を狭めることで作るミニチュアのような写真。彩度もパキパキにして面白いよね。
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谷井俊英 四ツ谷にて
日本画です。架線が金で描かれていて光の感じがとてもよい。ノスタルジックな感じ。
お茶の水~四ツ谷あたりの中央線はやはり絵になります。何枚か題材にしたものがありました。
そういえば私の出身地である鵠沼を描いたものもありましたが、時代が古すぎてさすがに鵠沼のどこかまではわからなかったな。
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丸山直文 汽車Ⅰ 汽車Ⅱ
下塗りされていないコットンのキャンバスにアクリル絵の具を滲ませながら描く「ステイニング」という手法だそうです。夢の中のような不思議な感じになっているけれど、実際前に立つととても鮮やかな色のせいかくっきりとした印象を受ける。
まるで写実画を見ているような気持ちになる絵なのです。
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安部金剛 山査子と裸婦
サンザシはバラ科の植物でつる植物ではない。なのでこの絵にはぱっとわかる形でサンザシが描かれておらず、なぜこのタイトルなのか謎なのだそう。
裸婦の曲線と植物の曲線が共鳴していて素敵な作品。
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夏目麻麦 Room1108
正直ちょっと怖い。ホラー映画の一場面のように思う。静かな部屋の中に派手な服の少女がうつむいている。近づくと彼女はパッと顔を上げるがそこには……って感じ。
不穏な感じするよねぇ。また展示室が内壁をはがしてガタガタになったレンガだから廃墟感があってさぁ。
すごい好き。
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小川信治 バルコニーにて1 バルコニーにて2
ロマン・チェシレヴィチを思い出す。すごく古い、もうだれかもわからない少女の写真を使用したコラージュ作品。同じものを使って再構成したように見せかけて、色々なところが違っている。
こういう作品をペアでもっていたらとても幸せだろうなぁ。
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池田光弘 Untitled
無題だし、特に何の絵とも書いていないのだけれど風景画のような気がする。場所がステーションギャラリーだからか、水田の先を走る青い線路のようにも、その線路と平行に走る電車からの車窓のようにも。
作者の国籍によって絵画の雰囲気は何となく違うもので、それこそ韓国は渇いた感じだったり日本は厨二っぽい根暗さがあったりするんだけれど、日本の人が描いた作品での金色の使い方は特筆すべきものがあるなぁと思う。
ぽこぽこ盛り上がり、リボンやチロリアンテープを貼り付けたみたいな質感とリズミカルさがある。
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ピカソは所蔵品だけれど撮影不可だった。「帽子の男」とかかわいくてすごくよかったのになぁ。
美術展命の男のブログ ピカソと20世紀美術 東京ステーションギャラリー
この方が紹介されているやつね。
この後めちゃくちゃ資生堂パーラーのくそ高いパフェ食った。
しんじゃう
20年ぶりくらいに科博に入ったら結構中が違って面白かったって話がしたいけど仕事が死にそうだから簡単でいい?
始祖鳥アップデート済み
ティラノサウルス、絶対手間違ってると思う。肩甲骨とか絶対おかしい。食ってた小型の獲物の手じゃないの??
ラッコ かわいい(語彙
各原人が、それぞれ別種なのか亜種なのか、進化の前後なのか平行進化なのかがすごく気になる。
頭蓋骨の容量だけなら他の原人の方が大きいこともあるのに、なぜホモ・サピエンスだけが残ったのかも。
けど、ホモ・サピエンスは眉毛あたりの頭蓋骨の丸さが特徴的なんですよね、こうやって並べると。前頭葉の進化が鍵なのだろうか。ちゃんとまとまった本が読みたい。
「ネアンデルダール」って本面白いからオススメ。科学本じゃなくてトンデモ風味SFだけど
マレーグマの嫌いな人間はいない
3時間かかった アンデス文明展 2/2
京都人が興味を示したので、古代アンデス文明展に行ってきた。
上野の国立科学博物館。
めっちゃ久しぶり。もしかしたら20年ぶりとかかもしれない。
結構広くてかなり混んでいた。
一部コーナーと動画を除き、ほとんどの作品が撮影可能。博物館ってゆるい。
特にじっくり見たなという感じはないんだけれど、普通に見て出て疲れたねとカフェに入ったら3時間くらいかかっていてびっくりした。
なんでこんな時間かかるかって、地図を見てわかるように行き止まりがすごく多いのと、マルチメディアガイドという映像つき音声ガイドが有料貸出されていて、それを使ってる人が全く動かないせいだった。
ただでさえガイドって時間食うのにさぁ、アンデスクイズとか出してるんだもん。展示見ないでそっちに夢中になるの、広い会場ならいいけどU字路のつきあたりで真剣に回答されてたら、そりゃ列も進まないよ。
もう少し会場のキャパを考えて欲しい。
「クイズに応えてドローン映像を見よう!」じゃねぇよ!映像は会場の外で見ろ!!!
展示内容については、ものすごく広い範囲のものすごい長い時間のものを一度にまとめていて、京都人の「『極東アジア展』と称して大和朝廷から百済のあたりまでまとめて見させられた感じ」というのが言いえて妙だと思う。
B.C13000年の先史時代から~A.C1572年のインカ帝国滅亡までまとめての展示だもん。
しかしそんな長期間にわたる複数王朝の複数文化であるというのに不思議と似通った表現のものが並んでいて、どれか一つを別の時代のものに紛れ込ませても気付かないだろうなと思った。
文字のない文化だから技術の蓄積が緩やかだったのだろうか。
陶器や金属加工品などの技術、頭蓋骨切開などの医療技術など、相当高い技術はもっていたはずなのに不思議だなぁと思う。
ヨーロッパとか、このくらいの時代の流れで相当変わっているものね。やっぱり産業革命は偉大だなぁとか考えていた。
ヨーロッパとアンデスでどうしてこんなに差が開いたのかというのは、あの有名な「銃・病原菌・鉄」を読めばだいたい雰囲気はつかめるよ。
でもこの本は専門家がものじゃないということを念頭に、ある程度眉唾で読むべきだ。
ついでに、下巻は上巻と同じことがひたすら繰り返されているので読まなくていい。
というわけで大量に撮った写真から気に入った作品を。
見た順じゃなくて、気に入った順です。
製作年が()付きなのは、どの文明化しか書いてなかったから勝手に調べたものです。
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一番好きなのは真ん中のやつです。
左(手前)から、
ネズミ型象形鐙型土器 クピスニケ文化 前800年~500年
刺青またはフェイスペイントをした小像 クピスニケ文化 前1200~前800年
蛇・ネコ化動物土器 クピスニケ文化中期
破裂防止のために開けられたという腹の穴がすごくヘソ感があっていい。オカリナになっているらしい。
全体の特徴として、この不思議な持ち手のある鐙(あぶみ)型、色の境目にも段差のないツルツル輝く質感が全文明を通してあげられる。
この鐙型、何でなんだろうね?皿洗いとかどうやってたんだろう。
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裸の男性の背中にネコ科動物がおぶさった鐙型注口土器 モチェ文化 (後200~後800年頃)
神の従者であるオセロットが生贄にされる男性を抑え込んでいるように見える(断定はしていない)との説明つき。
全体的に、「そんなに一生懸命男性であることを強調しなくていいよ…」って思った。股間。
でっかい猫にニャァ!って来られるのかわいいなぁ。物騒な主題のものが多いんだけれど、表現は現代作家みたいにポップでキッチュ。本当に全体的にかわいい。
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トウモロコシの穂軸の姿をした神を描いた土器 モチェ文明 (後200~後800年頃)
京都人いわく「これは日本で言うオニギリだね」顔の表現が鬼がわらっぽくて、現代陶芸感がすごい。
豊穣でも祈っていたのでしょうか。
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自身の首を切る人物の象形鐙型土器 クピスニケ文化 (前1200~前800年頃)
えええ、自分で切るのおおおお????
ああ、でもよく見るとナイフ持ってる。なんか無駄に管(血管とか食道?)が表現されていて、人体のポップさと裏腹なナンジャコリャ感がすごい。
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左から
鉢型の金の器 シカン文化(後800~後1375年頃)
細かい細工が施された金の装飾品 後期シカン文化
打ち出し技法で装飾を施した金のコップ(アキリャ)5点セット 中期シカン文化
めっちゃほしい。このコップ、めっちゃほしい。
コップといいつつよく見ると小さい穴がそこにあいている。コップじゃなかったのか、あとから空いたのか、穴があるのが正解なのか。
しかし、金100%だとちょっと風情が無いですよね。ペカペカしすぎて本物と思えないというか、繊細さに欠けるというか。
デザインって大事だなぁと。
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頭を覆う布 チャンカイ文化(11~15世紀)
ワタの布。わざわざ『レースのように』と解説されているのだが、レースではないのだろうか。
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装飾付きの壺 中期シカン文化(後800~後1375年頃)
「シカン神の両脇にはウミギクガイの一種が左右対称に象られている」とのことなので、決っしてパァではないとのことですw
面白かったけどとにかく混んでいるのに疲れた。導線大事。
あと、物販のアンデスチョコがおいしかったよ。さすが本場のチョコだ。
もじもじ 西郷隆盛と幕末維新 遺墨展 1/31
シャープなのが好き 白いうつわ十人一色展 1/31
急用が差し込んで半休をとった結果、始業まで微妙に時間が余ったので行ってきた。1月31日。
柿傳は新宿東口、ルミネエストのすぐ隣にある京懐石料理のビルだ。ぶっちゃけ超高級料亭なので、ここで食事をしたことはない。
けれどこの地下2階にあるギャラリーには割とよく行く。
なぜなら無料だし、駅激近なのでこういう風に時間が微妙に余った時に便利だからだ。
料亭だからいつも和食器や茶道具、華道の道具なんかを展示していて正直守備範囲がいでわかんないことの方が多いのだが、異文化を見るというのはなかなかに楽しいものだと思う。
地下で写真を撮っていいかは知らないが、1階のショーウィンドウにこうして飾られているもの街の雑踏を背景に見るとなかなかシュールで楽しい。
白色に統一したというコンセプトでも様々な白色が個性を出しているし、個人的に陶磁器はシンプルなほうが好きなのでうれしい。
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新里明士 「光椀」
蛍焼き、とはあまり言わないのかな。蛍手は好きです。
こうして幾何学的に光を並べるとモダンな感じがしてとてもいい。
けれど地下にあったみたいに透かしの部分が全体を埋め尽くすほどに増えてしまうと面白みが減るので、どこにどの程度出すかというのはセンスだと思う。
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高橋奈己 「白磁盃」
ピンボケになってしまった……公式サイトで見て欲しい。
こういうシャープなの好きです。この人は何度か柿傳で見たことがある気がする。
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丹羽シゲユキ 白磁削手1,000刻片口「あふれるふるる」
チューリップの花のようなシャープなうつわ。装飾過剰かどうか微妙なライン。個人的にはちょっとケバイなぁと思う。
どこからお茶を飲めというのだろうかw
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徳丸鏡子「白磁茶碗」
何度も液体を重ねたような、炎が燃え上がるような、メロンの一種のような茶碗。
液体を重ねた、といいつつ切り口はとてもシャープ。
上のもだけれど、茶道具は緩やかな曲線を描くものが多いから新しいなと思う。
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温かい印象のものも多かったけれど、すっきりした作品の方が好みです。
ナチュラルな感じというか、暖色が和食器のうつわには多いから、なかなか新しいん総があってよかったと思う。
お役立ち情報として、この柿傳は食事レストランはもちろんお高くて行けやしないのだけれど、喫茶はくずきり千円で頂けるらしい。
そのうち潜入してみようと思う。