人の金で美術館に行きたい

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。

にほんブログ村
にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
Push
にほんブログ村 猫ブログ MIX黒猫へ
Push

歪む自己と完璧な夏 うるしのかたち展

東京藝術大学の「うるしのかたち展に行ってきた。

めっちゃフォトジェニックな展示館の中でやっている無料の展示。

入ったらパンフが置いてあって、この厚さなら500円くらいかな?て思ったら名前書けば無料でくれるって言われてびっくりした。

f:id:minnagi:20170821140755j:image

超綺麗じゃない?クオリティ高くない?ピッカピカで漆みたいじゃない?

f:id:minnagi:20170821140810j:image

こんなしっかりした冊子無料で配って大丈夫なの??

学生や教授陣が作成した漆工芸が40点ほど見ることができます。

 

大西 長利 「漆玄盤」

f:id:minnagi:20170821140829j:image

幅530mmのお盆。ただシンプルな楕円形だけれどとても美しい。まるで水を湛えたかのような深さがある。

 ----

方 兆華 「太湖石」

f:id:minnagi:20170821140842j:image

方解石のような不思議な多面体。ある面は光を反射して真っ白に光り、ある面は闇に沈む。そして他の面は周囲と私を写して揺らめく。

鏡面にしか見えない漆器の美しさが完璧に出ている。

 ----

今井 美幸 「そうそうと」

f:id:minnagi:20170821140852j:image

壁に掛けられていた。ゆらりと描かれた直線は風を表すのか波を表すのか。飄々として、真っ黒なのに軽やかだ。

----

長島 友治 「有限性の前に」

f:id:minnagi:20170821140903j:image

高さ1.2mだけれど台の上にあるので見上げるほどの大きさだ。フードの中が空虚で、ハリーポッターに出てくるディメンターのようだ。正面に立つと逆さまに映る自分の姿と向き合うようになっている。

 ----

青木 宏憧 「心境」

f:id:minnagi:20170821140917j:image

あああああ!青木好きぃ!!!

以前都美セレクションで見てからファンだ。欲しい。

黒い部分は楕円形ではなく、こちらは膨らんでいるが反対側は凹んでいる。周囲をぐるりと巡ると自分の姿が映る。膨らみ、広がり、急に細くなって一瞬映らなくなり、また歪んだ姿が現れる。そんな上部に対して下部は緑青のような色をした棘が無数に生えている。

膨らんで、歪んで、ねじ曲がりながらもつるりと滑らかに見せておいて、もし気づかれたらそれをあっという間に破裂させてしまう鋭い棘。

大好きだ。

続きを読む

新宿謎のビル

新宿西口に、なんのキャプションもなく唐突に芸術品飾ってあるビルがあるの、知ってる?

f:id:minnagi:20170818200057j:image

これは松岡セントラルビルディング。三井住友銀行とか入っているビルです。

これは、まさに銀行の地下入り口に置いてあるのだけれど、作者名も作品名もナーーンにも書いてない。

f:id:minnagi:20170818200430j:image

ものが良さそうなのはなんとなくわかるぞ。

 

さらにすごいのが一階。銀行の出入り口脇にやはりなんの説明もなく大理石像が。

f:id:minnagi:20170818201011j:image

f:id:minnagi:20170818201040j:image

羊の毛皮とか結構すごいぞ。

f:id:minnagi:20170818201133j:image

弓矢を持っているからこれはキューピッドであって天使じゃないですね。花と荊の冠は愛の喜びと苦しみを表しているのでしょう。

横の部屋にはやはりなんの説明もなく無造作に大理石像が。

f:id:minnagi:20170818201322j:image

なんなん。このビルなんなん。

 

というところで地下に戻ってみますとね。通路に写真が飾ってあるのです。

f:id:minnagi:20170818201419j:image

こちらにはそれぞれ説明書きがあり、それによると「松岡美術館蔵」とのこと。

松岡美術館

なるほど、経営母体が一緒だから装飾兼宣伝で飾っているんですね。それにしても扱い雑だけどね!

松岡美術館とやらは駅から近いし安いし、面白そうなことやってるからそのうち行ってみたいです。

おしらせ

急なんですけど引っ越しが決まった感じなので1ヶ月ちょい忙しくなるし、その後も更新頻度落ちるかなーって感じです。

(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎ hand of peace

今日は通院で半休とったけど、病院空いてるから時間あまりまくるんだよね。

だから損保ジャパン行こうかと思ったんだけど。

f:id:minnagi:20170818122757j:image

ちょっとどうしたの?土日でもこんなに混まないよね?シルバー無料デーとか??てくらい混んでたから挫折した。

時間が読めないのは困る。

ちぇっどうしようかなーと思って外に出たら、なんか見覚えのないものが隣のビルに。

f:id:minnagi:20170818123038j:image

あ、2017って書いてある。

f:id:minnagi:20170818123136j:image

 鎌田 恵務 「Hand of Peace」

f:id:minnagi:20170818123451j:image

新宿クリエイターズ・フェスタ

新宿クリエイターズ・フェスタというイベントの一環のようです。

ウサギさんみたいで可愛い。Facebookのいいねとかみたい。あの穴に子供が体突っ込んでこそ完成の気がするけど、もちろん触っちゃいけません。

 

じゃあ他の展示でも観てみようかねぇと思ったけど、気になるイベントはまだ始まってないみたいだし、何よりスマホサイトのあまりの見辛さに挫折したのです。

無念。

アプリ買い日記

直近で行ったら美術展の話は終わったし、今週末は用事があるので美術展に行けるか怪しい。

なのでしばらくネタがない。

前行った美術展の話をするかもしれないし、猫の話をするかもしれないし、すっぱり休むかもしれない。

 

こないだ買ったアプリの話をしたい

Mediachance「FrontView」

FrontViewを App Store で

120円だったけどこういうの値段割とコロコロ変わるから参考価格ね

f:id:minnagi:20170817131610p:image

こういう最近よく美術展の出口にあるやつを撮影して取り込み

f:id:minnagi:20170817132019j:image

4隅を指定して

f:id:minnagi:20170817131932p:image

f:id:minnagi:20170817131952p:image

縦横比を指定するとこうである

f:id:minnagi:20170817132031j:image

すごい。

 

しかしキャプチャを見てわかるように、最新のiPhoneに対応していない。画面サイズおかしい。

もっといいアプリあるんだろうなと思いつつ、必要10分。120円なら満足なのだ。

聖アントニウスの誘惑

キリスト教の聖人で、聖書に出てこないのに絵画によく出るのは聖カテリナ、聖ゲオルギウス、聖セバスティアヌス、それになんと言っても聖アントニウスだろうと思う。
これら聖人はだいたい絵画の中にいきなり現れるので、それが誰かを判別するアトリビュートの知識は西洋古典絵画で必須である、というのは前も書いた話。
こないだ聖クリストフォロスの話を書いたときに軽く出てきたし、次は聖アントニウスの話をしたいねぇと思ってずいぶん経ってしまったのだ。

 

 彼については、黄金伝説の1巻に出てくるが、意外と記述が詳しくなかったと記憶している。

聖アントニオスまたは聖アントニウスキリスト教の家庭に生まれる。両親の死後、財産を処分して荒れ野で隠遁生活を送る。その際、悪魔の誘惑を受ける。
後年、キリスト教徒たちに慕われてそのリーダーになり、修道院を設立する。修道服を制定したのは彼だという。また、病気の治療に豚の脂を使用したという伝説もある。

アトリビュートはアントニオス十字架(T字型)、悪魔、足下の火焔、子豚、鈴。また、悪魔からの誘惑のシーンが多く描かれる。

養豚、丹毒、脱疽、火事、ペストの保護聖人である。

 

逸話によると殉教していないのに、なんでアントニオス十字架なんて出てくるのか謎である。もしかしたら、ほかの聖人伝とごっちゃになっているかもしれない。キリスト教関連人物は同名の人が非常に多いのだ。そして、その同名の人たちにちなんで名づけをするものだから、さらに似たような名前が増えている。いわゆるマリア多すぎ問題である。おかげで他の人と勘違いされたり同一視されたりはよくあることだ。
むしろ名前のバリエーションがこんなに多いのは、日本くらいではないか?と最近は疑っている。

また、病気の治療云々はおそらく後付けだ。 後世の人が聖アントニウスに祈って子供の病気が治ったことから修道院を立てて病人に奉仕した史実が、いつの間にか聖アントニウスも医者だったことになったのだろう。

 

さて、絵画の話。

アントニウスの絵といえば、荒野で子豚ちゃんを連れている絵か、悪魔に誘惑され苛まれている絵である。

なぜ彼が悪魔から誘惑を受けたのかというと、そういうもんだからとしか言いようが無い。宗教初期の人は荒れ野に行くもんだし、荒れ野に行ったら誘惑されるもんなのである。ブッダだってマーラに誘惑されてんじゃん。
直接的にいえば、キリストにならっているからだ。キリストも、布教を始める前40日間荒れ野にこもっている間、悪魔の誘惑を受けている。
アントニウスは迫害を逃れるため、またキリストと同じ行動をとってその精神に近づくため、誘惑を避けるために荒れ野に行くのだ。そしてそれを悪魔が誘惑するのは、キリスト教徒の魂を堕落させるためなのだ。

 

ぶっちゃけ、荒れ野の聖人が誘惑を受けるのは、食物もろくに無い厳しい環境で錯乱して幻覚を見たんじゃないかなぁって思う。

 

アントニウスといえば、ダリの絵が有名だろう。

サルバトール・ダリ「聖アントニウスの誘惑」1946年

なんせダリなので独創的にもほどがある。
しかし、聖アントニウスの誘惑は悪魔、魑魅魍魎が出てくるので定型というのがあまりないのも事実。聖クリストフォロスならば部隊もポーズもある程度指定があるのに対し、画家の創造力が求められる。
だから、見ていて面白い。

 

古典で有名なのはショーンガウアーだろうか。

聖アントニウス ショーンガウアー - Google 画像検索

 

こないだの文化村ベルギー奇想の系譜にも何枚もあった。

ピーテル・ハイス帰属「聖アントニウスの誘惑」

 f:id:minnagi:20170816090852j:image

図録なんだけど、見開きにすると見づらいからやめて欲しい…

これは比較的正統派。聖者を誘惑する美女と周囲を蠢く悪魔というわかりやすい構図。

 

 

ヤン・マイデン「パノラマ風景の中の聖アントニウスの誘惑」

f:id:minnagi:20170816090856j:image

こっちはボスの真似をした百鬼夜行が描きたかっただけで聖アントニウスは添え物。一応お約束の美女とかはいるけどすごく小さい(重要なものは大きく、他は小さく描くのが基本)。アントニウスは右上の空でショーンガウアー風に悪魔に引きずられている。多分、美女とか見る余裕ない。

 

グリューネヴァルド「イーゼンハイム祭壇画」

f:id:minnagi:20170816090905j:image

クオリティが全然違う。先の二枚は制作年不明だが、ボスの模倣作品なので、彼が生きた1450年ごろ〜1516年かそれより後のもの。この絵は1516年のものなのでほぼ同時代のものなのだが。
ボス風のユーモラスなものとは桁違いに恐ろしい悪魔に責められる聖アントニウス。手前の悪魔は病気に苦しみ、太陽の中には救いである神の姿がおぼろげに描かれているようだ。
迫力がすごい。これは雑誌で見たものだ。実物もっとすごいんだろうな。

 

現代ものもある。

花澤武夫「レッツ グルーブ(聖アントワーヌの誘惑)」

f:id:minnagi:20170816011055j:plain

穏やか、和気藹々とした絵だ。よく見ると悪魔はチューバッカや屋敷しもべ妖精など、近年の映画に出てくるキャラクターで表現されている。とても可愛らしく面白いけれど、じゃあこれが聖アントニウスなのか?本当にそういうつもりで描いたのか?というとタイトルを借りただけなのかもね。

 

同じ題材同じ構図で別の人が描いた絵を見比べるのも、技法や興味の関心の違いがわかって面白い。
しかし聖アントニウスの誘惑は、主題は同じでも作者が自由に創造力を働かせることのできる画題だ。古典時代、中世とかでそういう画題はなかなか少なく、バリエーション豊かで見るのが楽しいものだ。またあれか〜ではなく細かく見て見ると面白い。

 

ちなみに、グリューネヴァルドが載っている雑誌はこれ。この雑誌、号によってクオリティが全然違うから興味のある特集の時立ち読みしてから買うのがいい。