【ネタバレ感想】幻影の書
書籍データ
- タイトル:幻影の書
- 作者:ポール オースター
- 訳者: 柴田 元幸
- お勧め度:★★★★★
今日の猫
妻と子を飛行機事故で失った大学教授は、絶望の底にいた。強い鬱状態の中、たまたまTVで見たとある無声喜劇映画に魂の救いを感じる。
その映画の主演男優兼監督である男は数本の無声喜劇映画を作成したのち、ある日突然ハリウッド、映画界から失踪していた。時とともに忘れ去られようとしていた彼の映画は、その後何者かの手によって各地の映画博物館へと匿名の郵送により寄贈されていた。
そうした経緯を知った教授は男優のことを調べ、また、実際に映画を研究して一冊の本を出版する。
そうして教授にとってその映画の件はいったん完了する。
日常に戻ろうとする彼のもとに、男優の妻を名乗る手紙が届くまでは…
京都人一押しの本。ストーリーの先が読めない話だった。
非常に奇妙な話ではあるが、一人の男の再生の物語だ。いや、二人の男の再生かもしれない。
恋愛要素があるのは、いらないなぁと思った。不自然で唐突だし、なんというか女が男のための道具になっているなと思う。まぁそれは男性作家の作品大半がそうなので、ある程度仕方ないのかもしれないが。
過去を探索するパートは「鍵のかかった部屋」のように熱に浮かされて霧がかったような、上ずった焦りを感じる。けれどこの話の大半は地に足をつけた現実の話。いくつかの愛のそれぞれ異なった結末の話だった。
面白かったので、しばらく間をあけてまたこの作者を読んでみたい。