空虚の恐怖 資生堂ギャラリー 菅亮平展
資生堂ギャラリーに行った。今やってるのは「菅亮平展 <インスタレーション>」
今や世界各所に存在するようになった美術館やギャラリーに特有の展示スペースである「ホワイトキューブ」をモチーフとして作品を制作します。当然そこにあるものだと想定される美術作品が消し去られた空虚な空間が展示スペースの壁を越えて、際限のないイメージとして連続していきます。
CGなのかなぁ、壁一面に投影される映像。小さな扉のない穴でつながっただだっ広い窓の無い部屋を、革靴の音を響かせながら歩く誰かの視点。
まるでホラーゲームのムービーを見ているようだ。
こういう空間は好きだ。美術館とか、(観光地化されていない)空港とか、無機質で人工的な空間はとても落ち着く。ユーザビリティを最大化しているのだから当然だと思う。
カツンカツンと足音を響かせながらひたすらなにもない空間を移動し続ける映像が部屋いっぱいに広がっている。
VRのように、自分の視点が移動しているように感じる。
これ、何時間でも見ていられるやつで、ずっと見ているとトリップするやつだ。
奥の部屋には絵画?作品がある。
プリント、とあるけれど何だろうか。写真じゃないかな、CGかな。
なにもないただの空間を表す画像。こうやって写真にすると、奥行きがあるように見えて面白いね。
でもこれはこうやって何もない部屋の壁に掛けられているから面白いのであって、じゃあ買って寝室に掛けようか、とは思わないかな。面白さ半減だもの。
だからこれはプリント作品というよりはやはりインスタレーションなのだと思う。
コンセプト図だろうか、建築の青写真のようなもの。なんかいいね。
ギャラリー全体に、動画の足音が響き渡る。
ずっとここに座っていなければならない監視員さんはつらいだろうなと思う。動画に取り込まれてしまわないだろうか。
池に行けと言われても 増田セバスチャン
銀座行きついでに、ギャラリーを見た。一個はポーラミュージアムアネックスの増田セバスチャンによるモネの池。
Point-Rhythm World
-モネの小宇宙-
連れの手入っちゃったけど。
なんか公式サイトのイメージ図とは全然違うなぁって思った。ピンクのやつないし。モネ?うーん。
奥に映像投影してるのは綺麗だなぁと思った。
よく見ると人形の服とかレースとかブレードとか、手芸洋品店で手に入るものでできてる。
で、ごめんだけどよくわかんなかった。すごい綺麗!てわけでも超かわいい!てわけでもない。
絵コンテの段階では幻想的で万華鏡みたいで素敵なんだけど、実物はなんか暗くてサイコ狙ったお化け屋敷みたい。
小物を組み合わせて作ったらこんな感じのはず!材料も可愛い系にしたら可愛くなるんじゃない?て思って作ったらしょぼかったパターンかな。他の作品見たことないけど、画像検索する限りキッチュでポップを狙ってるらしいから、別階層目指してダメだったのかな。それともこれで完璧なのだろうか。
成功してこうなのか、こんなはずじゃ、なのか気になる。
好きな人は好きなの?あんま盛り上がらない会場だったなー。みんな「ふーん」って感じで終わりで、これが好きだ!最高だ!って長居している人もいない感じ。
銀座じゃなくて原宿あたりでやればうけたのかな。
すごい齟齬を感じた。
触れる謎物体 立体錯視
別に明治大学に縁もゆかりもないんだけれど、明大博物館に行ってきた。
なぜかというと、錯視立体が見たいからだ。
数年前、横浜でエッシャー展をやっていた時に展示されてたのと結構被るなと思った。
右から左に受け流せない話 by みなぎ | エッセイ投稿サービスShortNote(ショートノート)
新しいのもあったけれどね。
ある角度から見たときだけ不思議に見える立体、というのがいくつもあったけど、その正しい角度が指定されないからみんな「え、どっから見るの?」ってうろうろしてた。床にしゃがみこまなければ見えなかったりで、もう少し展示を工夫して欲しい。
ここから見てねマークくらいつけた方がいい。
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落ちない円管
上から見ると円筒の上に球体が乗っているように見える。
でも実は上部は平らなんだよーん!という立体。こういうのが延々と。
この、影がうまく落ちるように工夫されてるところがすごいなぁと。
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反重力二面屋根
これも同じですね。模型家屋の屋根に球が乗っているように見える。
実際には平らだよ、と。
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この辺はすごい。ツイッターとかで見たことがある人もいるのではないか。
実物と鏡に映ったものが全く違うように見える立体。
気まぐれハート
実は上部が結構ガタガタしていて、その高低差でなんかうまいことしてるんだろうなぁということはわかる。そこまではわかるけれど、じゃあどうやってるのかはよくわかんない。
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蜂の巣の変身
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角柱のニアミス
これは角度を変えれば仕組みがよくわかるね。
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くるくる回す立体錯視もありました。
右を向きたがる矢印
面白いねぇ。明大の人が作ったのかしら?
お茶の水の展示、結構人気でした。
かわいい悪魔 ベルギー奇想の系譜展
7月の15日に行ってきたんだけど、色々あって書くのがものすごく遅れてしまった。
ベルギーって大物作家が多いな!って言うのが正直な感想。
ボスとか、ブリューゲル一族とか、マグリットとか、クノップフとか。フランダースの犬で有名なルーベンスとか。有名どころが多く来ていてとてもキャッチ―だ。
しかもベルギーはチョコがとてもおいしい。えらい。
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ヒエロニムス・ボス工房「トゥヌグダルスの幻視」
放蕩の騎士トゥヌグダルス(左手前、赤い服の人)が3日間地獄めぐりをするという話。
アレゴリーというほどではないけれど、色々と小道具で説明をしているのが面白い。
例えば中央手前の人はサイコロの上にいて悪魔に責められている。中世では賭博は罪とみなされていた。
右側の円筒状の中にいる人は無理やり酒を飲まされている、大食の罪。
ベッドは貪欲の罪だろう。巨人の鼻から金貨が降り注いでいるのは貪欲なものたちに、金なんて汚いものだといいたいのだろうか。
罪を表すという巨人の耳から木が突き出しているのは、まともな言葉を聞き入れることができないといいたいのか。ネズミに目を覗きこまれても動けずにいるのは愚かさゆえなのか。
それぞれの部分が何を表すのか、もう失われた文脈のものも多くて全てを読み解くことはできない。それでもどんな意味があるのかと考えるのは楽しいものだ。
たくさんの魔物たちは現代の目で見るととてもユーモラスでかわいらしい。当時の人から見るとどうなのだろうか?ユーモラスなのか、恐ろしいものなのか。
頭の上にいるこの魚みたいな子が一番かわいい。
蛇は原罪だね。
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ピーテル・ブリューゲル(父)原画7つの大罪より「傲慢」
ボスの雰囲気を受け継ぐ百鬼夜行。
あちこちで使われる鏡は虚栄を表します。クジャクも伝統的に傲慢を表すものだったり、これもアレゴリーに満ちている。
でもこちらの方が理路整然としているんだよね。
ボスみたいなナチュラルボーン・狂気を感じない。やっぱり流行に乗ってやってみたんだろうなぁというビジネス・狂気にしか見えないんだよね。
ブリューゲルはあくまでも絵画作品としてやっている感じだけれど、ボスには本当にああいう風に世界が見えていた可能性が1/3くらいある気がする。
「師匠、どうしてこんなすごい悪魔を思いつくんですか?」
「何を言ってるんだ君、そこにいるじゃないか、ちゃんと写生したまえ」
みたいな可能性が相当にある。
ピーテル・ブリューゲル(父)原画七つの徳目より「正義」
ブリューゲルは、上のボス風の絵とこちらのようなオリジナルの絵を比べるのが楽しい。どうみてもこっちの方が気合が入っている。多分本人、こっちの画風の方が書きたいんだと思う。おそらくは敬虔なキリスト教徒で、神を讃える者の方が作りたいんだと思う。
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ルーベンスは版画だけでオリジナルなくてちょっと残念。けれどものすごい躍動感だ。
古い時代の絵は「ああ、この人本当にカバ見たことないんだろうな」ってのも多いんだけど、これは実物を見たことがある人の絵な気がする。
もちろんこれは空想上の風景だけれど、現実味がすごくある。
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フェルナン・クノップフ「もう、けっして」
クノップフが多くてうっとりする。この人の絵は退廃的で耽美的で、絶対に手に入らないものに対するあきらめを込めた憧憬が好きだ。
写真のようにリアルなんだけれど生気が無く、太古の大理石像を見ているような気がする。
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ルネ・マグリット「9月16日」
光の帝国を思い出すね。
ざっくりと描かれたリトグラフ、ちょっと珍しいね。油絵はきっちりかっちり描く人だから。とても美しい色で、こういう作品もいいなぁと思う。
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ヤン・ファーブル「死の死者、慰めの象徴」
もふもふ!もふもふ!
もふりたい。下に広がる羽毛の下に手を突っ込みたい。かわいい。
展示入り口にもこの人の作品があって、それは甲虫を一面に張り付けた気持ち悪いオブジェなんだど、なまえが「ファーブル」だから「え?昆虫記の人?親戚??」と思ってしまう。全然関係ないそうです。
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中世から現代まで、幅広いところから様々な作品を出してきてとても面白い。
現代アートもすごくかっこよくて素敵だなぁと思った。
あと、ねこ。猫がいる。猫かわいい。
猫に会いに行くといいと思う。