人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【ネタばれ感想】怪奇小説傑作集 1 英米編

書籍データ

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収録タイトル

 

ブルワー・リットン 「幽霊屋敷」

家政婦付きで賃貸に出されているとある屋敷は、賃貸人が数日と耐えられないほどの怪奇現象が起こる幽霊屋敷だった。
とある紳士はその家に興味を持ち、家主の許可を経て勇敢な下男と飼い犬を連れて幽霊屋敷に一泊するが、果たして怪奇現象が起こって下男は失踪、飼い犬は怪死してしまう。
建て増しされた一角が怪しいと睨んだ紳士は、家主とともにその建て増しした部屋を破壊すると、地下室が現れる。
地下室の中から出てきた肖像画を見た紳士は数世紀前とある王朝を牛耳った怪人物のように思うが、家主は自分の知り合いだと言う。
ロンドンに戻ってきた肖像画の男性と紳士は対決することになるが…

ヘンリー・ジェイムス「エドマンド・オーム卿」

とある令嬢に思いを寄せるようになった紳士は、男性の幽霊を見るようになる。令嬢の母親は幽霊がエドマンド・オーム卿と言う人物で、かつて自分が婚約破棄した相手だと言う。絶望のあまり自殺したエドマンド・オーム卿は母親にとりついていたのだ。
令嬢には見えない幽霊を恐れる母親の協力を得て、紳士は令嬢の心を射止めようとするが…

M・R・ジェイムズ「ポインター氏の日録」

地方史の研究に夢中の紳士は、ある時古本のオークションでポインター氏の日録を手に入れる。紳士とその叔母はそこに挟まれていた古裂が気に入ったため布問屋を訪ねてカーテン用にその柄を復元してもらう。
職人はなぜかその柄が不吉な感じがすると渋るが、無事にカーテンは完成。部屋にかけてみると実にマッチするのだが…

W・W・ジェイコブス「猿の手

宿屋の主人の元に訪ねてきた客は持ち主の願いを3つかなえると言う猿の手を持っていた。自分にはもう必要ないと暖炉にくべようとした猿の手を譲り受けた主人は、冗談半分で息子が勧めるまま「大金が欲しい」と願う。
翌日願った通りの金額が届けられるが、実はその金は…

アーサー・マッケン「パンの大神」

ある紳士は知人が貧民街から拾ってきた少女に人体実験をするのに立ち会うことになる。脳に傷を付けることで人間の摂理を超え、狂乱の神であるパンの大神と交流できるようになると言う。手術後の少女は明らかに正気を失っていた。
十数年後、ロンドンの街では紳士達の連続自殺事件が起きていた。その陰には謎めいた女性がいるようで…

E・F・ベンスン「いも虫」

とある別荘に招待された紳士は、食堂棟の上の方の部屋をあてがわれる。紳士は夜寝付けないまま別荘を探検すると、空き部屋になっている寝室のベッドの上に奇妙ないも虫が群がっているのを見る。蟹のハサミのような脚を持ち30センチほどもあるいも虫達がベッドをから溢れるほどに積み上がっているのだ。いも虫に襲われそうになるが、紳士は間一髪逃げ出す。
翌日、紳士は他の招待客に変な虫を捕まえたと見せられる。まさしく昨日のいも虫だが、サイズはだいぶ小さい。戯れに自分の名前と似ているというカニラテン語名で名前をつける招待客だが…

 

アルジャーノン・ブラックウッド「秘書奇譚」

ある日秘書は社長から呼び出される。社長のかつての共同経営者から連絡があり、社長の手元にある書類から署名を切り取りたいと申し出があったのだという。社長代理として共同経営者の元に行く秘書だが、辻馬車の御者は「危ないところには近寄りたくない」と言い、迎えに来てくれるよう頼むも断られてしまう。その奇妙な屋敷の中には奇妙な下男がおり…

W・F・ハーヴィー「炎天」

画家がなんの気なしに描いた絵は、男性が裁判にかけられている様子だった。描き上げた絵を、持ってなんとなく散歩に出かけた画家は、気がつくと石工の工房に無断で入り込んでいた。
その石工の顔が自分が描き上げた絵にそっくりなのにびっくりしていると、石工がサンプルとして掘り上げた墓石に自分の名前と生年月日が刻まれていることに気づく。そしてその死亡日は今日になっていた。
全く面識のない画家と石工はこれはどうしたことだと話し合う。そのうちなんとなく意気投合して石工の夕飯に招かれることになった画家だが…

J・S・レ・ファニュ「緑茶」

とある医師が知り合った牧師は、神経衰弱に悩まされて牧師としての務めも満足に果たさないほどであった。牧師の助けになりたいと考えている医師は、ゆっくりと信頼を勝ち得て行く。
ついに症状を話し始める牧師。彼は以前より緑茶を愛好していたが、徐々に奇妙な幻覚を見るようになっていったのだという…

 

全体感想

うーん、あんまり好みでない話が多かったなぁ…と言う感じです。
収録作品が19世紀末~20世紀頭で中途半端に古いこと、朦朧体というはっきり描写せず匂わせるていどで話を進める描き方が好みでないこと、所謂現代小説の初期であるためストーリーがあっち飛びこっち飛びわかりにくいこと、あたりが原因でしょうか。ねじの回転と同じ感じ。
もっと古い話なら、古典として読みづらい部分も楽しめるのですが、クラシカルな現代小説風でまだ未成熟な描き方なのがいまいちのようです。

「いも虫」「炎天」はとても面白かったです。
とくにいも虫がベッドにうじゃうじゃしている描写とか恐ろしいのに目が離せない感じでいいです。

「幽霊屋敷」と「パンの大神」は話がとびとびでわかりにくい。
とくに幽霊屋敷は主人公と悪役との対決場面が、変なオカルト信仰の教義を食っちゃべっているようでナンジャコリャ?ってなります。まぁ当時はやってたからね、オカルト……

全体に、古典なのだということをまず肝に銘じて読まないと駄目だなって感じでした。