人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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日曜の日記と銀座six

昨日思いの外仕事遅くなって今日のネタないから、銀座sixの現代アート見なよ。そういえば写真撮影可否書いてなかったから撮っちゃダメだったかも。でも止められなかったからいいや。

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僕ちょっとこれよくわかんない。

 

最近はデカメロンを読んでるんだけど、デカメロンってのは要するに短編100話を集めた本だ。そんでうっかり分冊されてないのを借りてしまったので、ひたすら重い本を持ち歩く羽目になっている。とても重い。

これほど重いと、デスクに置きっ放しにできる職場には持って行けても、ずっとカバンを持ち歩かねばならない休日はさすがに持ち歩けない。なかなか読めなくてやだなぁと思う。

 

時々毎月○冊本を読みます!とかいう人を見ると、いつ読んでるんだろう?って不思議になる。読むのめっちゃ早いのかな。でも速読術は読書楽しくなさそうだから身につけたくないな。

土曜だけど出勤だよ💢💢💢

週末は猫だよ

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朝起きるとこんな感じだよ。猫を探してね。

 

とか言ってるけど今日は出勤日だ。交代で土曜に出てそのぶん週明けに1日休む。しかし土曜日作業がそんなにあるわけでも無いのでひまひまのひーである。

職場ネットワークの調子が悪く、作業するたびにポータルサイトに繋げなくてブラウザ再起動しなきゃならんのでやってらんないっしゅである。

文体がどうかしてるのはヤケだ。

 

月曜(今週は海の日だから火曜)に休みもらっても、私が好きな美術館、博物館、図書館といった施設は休みである。ついでに資生堂パーラー銀座本店も休みである。意味ナッシーである。水曜日とか休みたい。レデイースデーだし。

 

そんな猫だが、最近私が夜帰ってから2時間くらい撫で続けても満足しないし、2時ごろ寝ようとすると怒り出すのやめて欲しい。

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ガチめに怖いので、昨日は用事を放り出して早めに帰宅し、猫を撫でていた。

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おかげで機嫌が直ってよかったよかった。

猫にピント合わせると人がゾンビみたいな色になるね。

以上終わりだよ。帰りたいよ。

 

追記

定時後にトラブル対応2時間!!!!!

近代建築! 明治生命館

生命保険のビルはでかい。
以前某生命保険に加入していたことがあるのだが、「こんなでかいビルが建つほどもうかるんだから、加入者が得をするわけないよな…」などとしみじみしてしまうほどでかい。

 

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というわけで今は大手保険に入っていないのだけれど、明治安田生命のビルが見学できると聞いて行ってきた。

明治生命館(公式)

明治生命館 - Wikipedia

 全然詳しくないけれど、近代建築が好きだ。大好きだ。
昭和初期に建てられた大型建築とか見て楽しくないわけがない。
この時代の大企業というのは現代の大企業よりも相対的な価値が大きいし、どっしりと重量感がある。ノブレスオブリージュの考え方も根付いていたように思う。
現在の美術館とかも、昔の大企業が社会貢献のために集めた美術品がもとだったりするしね。
景気がよく趣味のいい最高の時代だ。

建築については好きなだけで詳しくないので紹介と感想だけね。

 

エントランスからしてかっこいい。

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資料もたくさん掲示されていてわかりやすい。
ちょっとこの用語覚えたいな。役立ちそう。

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何がすごいって、現役でビルが使われていること。
このエレベーターとかも。

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 中のボタンとか超しびれる。

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さすがに今は使われていないメールシューター。昔のアメリカ映画みたいだ。
地下にメールボーイとかいたんだろうな。

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応接室付属食堂の配膳用エレベーター。

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健康相談室。とっさに”支払いたくないから加入者に健康になれと!?”とか思ってしまうけれど、そもそも「健康」「予防」という考えを根付かせる努力が必要な時代だったのだろうな。

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カルテとか入ってたのかしらね

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偉い人の部屋。座りたい。椅子超座りたい。
部屋に入った瞬間、「あ、このカーペットめっちゃふっかふか!」ってなる。

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応接室。どういう人が使ったのかね。
この時代はカーテンレールがすごいかっこいい。

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1階の総合フロアは現役で使用しているみたい。

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とにかくくすごいかっこいいなぁと感心します。床とか総大理石張りで、アンモナイトの化石とかも見れるw
曜日によって公開エリアが違うのは、会議室とか現役で使用しているからなんでしょうね。
これだけのために行くのはちょっとボリューム足りないかもだけれど、丸の内に用があったら覗いてみる価値はあると思う。
ついでにキッテの博物館でも行くがいいよ。

www.intermediatheque.jp

オークションに行きたい 三菱商事アート・ゲート・プログラム

三菱一号館美術館に行く時、普段は地上を通るんだけど暑さにやられて地下を移動。
そしたらこんなのを見つけた。

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www.mcagp.com

色んなことをやっているんだね。返済義務なしの奨学金とかすごいな。

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溝口まりあ「見栄っ張り」

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生意気~な顔をしていてよい。伊達者なんだろうなと思わせる表情や、見事なひげ。背景にも雲が浮かんでいる。
典型的な、ありがちな絵といえば確かにそうだ。こういう絵本ありそう。
でも結構好き。

 

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溝口まりあ 「青の猫」
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同じ人の絵。石膏像みたいな猫。かわいい。

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木村直広 「夏の宝物」
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タイトルからすると、夏の海で集めた思い出なのだろうか。
どちらかというと、温かい海の底のように思う。
遠浅で、太陽の光で温められた南の海の底。穏やかでとても素敵な絵だ。

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木村直広 「星のありか」

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いいなと思って撮ったら同じ人だった。海亀の守る海の底の宝物たち。
写実と幻想的な雰囲気のバランスがいい。

 

ものすごい数絵が飾ってあっていいなと思った。
ありがちだねぇ学生の描く絵だねぇというものもあれば、こういう素敵な作品もある。
これらの一部は9月にオークションに出されるらしい。
行ってみたいなぁ。でも過去履歴を見るとどれも10万以上になるんだろうなぁ。
見るだけ行ってみても、しょんぼりするだけかもしれないw

三菱商事アート・ゲート・プログラム:参加方法 | 三菱商事

三菱1号館に行く時は、地下ものぞいてみようと思う。

ミケランジェロにかこつけて レオナルド×ミケランジェロ展

三菱一号館のレオナルド×ミケランジェロ展に行ってきた。
行ってきたけど…ビミョーというか正直がっかりであった。

 レオナルド×ミケランジェロ展|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

数が少なかった。の割に1700円とちょっと高かった。最初からわかってたけど、素描展なので地味だった。
ここまではいい。
けど、ファクシミリ版という高精度コピーが多かった。1割くらい?
研究のために使用される超高精度コピー、わかりますよ。それ自体も貴重なものなんでしょうね、わかりますよ。
でも、印刷でしょう?レオナルドもミケランジェロも、たくさん解説本も画集も出てるでしょう。今回展示されている絵画も、ほとんど既存本に掲載されているよ。
それをあえて足を運んでるのは、実物見たいからじゃん。
なのに複製印刷見せられたらテンション下がるよね。


何枚かある絵画も「○○に基づく」てやつ。要するに、模写。

「レダと白鳥」に見る2人の対比|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

本展の見どころ!!!とか特設サイトに載せている絵ですら、ミケランジェロダ・ヴィンチも両方模写ってどういうことよ。
ダ・ヴィンチの模写とか、ぱっと見でわかるの。色が濃すぎるから。
美しい淡いスフマートじゃなくて、がっつりしっかり色を乗せて描いちゃってるから。模写ってどうしても輪郭を取りながら描くからそうなるんだよね。
そんで横に「ダ・ヴィンチの絵はこんなだよー」って小さい写真貼られてもさぁ。さぁ。
あるならそっち持ってきてよ。テンション下がるよね。
テンション下がり過ぎて、実際見たの7/2なのに今頃記事書いている。

 

全体的になんかトラブルでもあったのかな?て思った。
ミケランジェロの彫像が展示開始日に間に合わなくてまだ来てないし。
入り口にもなんか展示内容が変わったって掲示あるし。
両面に描かれた紙のどちらを見せてどちらを写真展示にするかも直前に変更しましたって案内あったし。
色々間に合わなかったの?て思った。
それは邪推だとしても、色々と残念だなぁって思ったよ。

 

気を取り直して。

レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロ・ブオナローティは同時代の人として対比される傾向が強い。

レオナルド・ダ・ヴィンチ - Wikipedia

ミケランジェロ・ブオナローティ - Wikipedia

実際2人とも相手のことを意識していたという記録が残っている。
彼らの発言もいくつか記録に残っていてそれが掲示されていたんだけど……メモを書いたパンフと絵葉書を無くしてしまった……なぜだ…愛が足りないからか…こんな文句を書いているからなくすのか…
悲しみ。
とりあえずで撮った一枚しかない。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「少女の頭部/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作」

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と言うわけでうろ覚えで書くしかあるまい。

 

共に万能人ではあるものの、ダ・ヴィンチは主に絵画、ミケランジェロは彫刻を得意分野としていた。そして当時絵画と彫刻のどちらがよりすぐれた芸術かという議論が沸き起こったという。
ダ・ヴィンチは「平面の中に立体にしか見えないものを作る絵画の方が高等だ」と主張。
そんでミケランジェロは、以前聞いた話では「馬の彫刻すら作れない人が何を言う」みたいにダ・ヴィンチをこき下ろしたということだったが、今パッとソースが出てこない。
今回の展示では年下らしくダ・ヴィンチを立てつつ受け流し「どちらも芸術から生まれた姉妹であり優劣などない」という要旨の言葉を残したという。大人である。

 

ダヴィンチはミケランジェロを指して「老若男女全て同じ体型をしている」と批判したという。
確かにその通り。
一番有名な例でいうと、ダビデ像だろう。

 

ダビデ - Wikipedia

ダビデ旧約聖書の登場人物、羊飼いの少年だ。神の命を受けて新しい王を探しに使者が来た時、息子達を呼ぶように言われたダビデの親は、最初彼の兄達だけを呼び寄せた。なぜなら、ダビデはあまりにも幼くてそのような大役を果たさないと考えたからだ。
神の召命を受けた少年ダビデは国に尽くし、戦に赴いて身長3メートルほどもある敵の将軍を小さな石投げ器で倒してしまう。これを含め、一般的なダヴィデ像はこのシーンを表している。片手に小さなスリング状の石投げ器を持っている。
この話のポイントは、小国イスラエルが神の恩寵を受けて大国を打ち倒したというところだ。
少年ダビデは、イスラエルの小ささの象徴である。なので、幼く細く、可憐な少年でなければならない。

一般的なダビデというとこんな感じだ。

カラヴァッジオダビデゴリアテ

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グエルチーノ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」

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のに、なんだこのムキムキ青年は。

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フリー素材、レプリカ像

 

話は実に単純で、ミケランジェロはムキムキ青年が好きだったのだ。ただひたすら単純に好きだったのだ。なら好きなら仕方ないね。
同性愛者だったという説もあるけれど、女性と愛情のこもった文通をしていたという説もあり、昔すぎてわからないね。どっちでもいいと思うし。
性的にどうかは置いといても、芸術的に筋肉スキーだったことは間違いない。
システィーナ礼拝堂とかもマッスル大集合だもの。

 

うん、ダヴィデの話がしたかったの。

 

ミケランジェロダ・ヴィンチのどっちが好きかというと、タイプが違いすぎてなんともいえない。
絵はダ・ヴィンチの方が好きだな。でもこの人絵を描くより哲学とか発明メモとかの方が多いからな。
彫刻は、ピエタとか素晴らしすぎるからミケランジェロの圧勝だよね。
うーん、甲乙つけがたい。
どっちにしても、オリジナルが見たい。

本当に怖い絵が見たい 読書感想文・ロンドン塔の王子たち

中野京子さんの「怖い絵」を2冊読んで、正直げんなりした。

 

なんでこれを読もうかと思ったかと言うと、秋に東京で開催される「怖い絵展」を楽しみにしているからだ。

www.kowaie.com

ここの所美術展のトレンドが光にあふれた明るい絵になってきている。揺り返しでボスとかも出てきているけれど、やっぱり明るめの絵が多い。
そのせいで、私の好きなヴァニタスが全然見られないのだ。明るい絵も好きだし印象派も好きだ。けどやっぱり幻想絵画の方が好きだし、もっといっぱいいろんなヴァニタスが見たいんだよ!と言うわけで、怖い絵展にはいまから期待しているのだ。

 

ちょっと話はそれるけど、ヴァニタスが何かと言うと、「生の虚しさ」を描いた絵である。日本風に言えば諸行無常

ヴァニタス - Wikipedia

時の流れの無情さを様々な小道具で表現した静物画だ。

たとえば、感情を強く揺さぶるも跡形もなく消えてしまう楽器の音色。
一瞬の盛りを見せて色褪せる花の色。
書き上げた瞬間から過去のものとなり、宛先人が読む頃には既に消え失せた感情が綴られた手紙。
そしてもちろん、死を表す骸骨。

そう言うものが定番だ。明るさの中に毒のあるメメント・モリと異なり、ただ静かに物思いに耽るヴァニタスが私は好きだ。
「手紙には 愛溢れたり その愛は 消印の日のその時の愛」俵万智『サラダ記念日』
日本人の精神にも似たものがあると思う。

 

そんなヴァニタスは説明不要なんだけど、怖い絵がなんで怖いかわかんなかったら面白さ半減だから予習しておこうかな、などと珍しく考えてしまったのだ。
期待していたのは、ジョン・エヴァレット・ミレイの「ロンドン塔の王子たち」みたいなやつだった。

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 なんとなく暗い部屋に美少年が2人、としか見えないこの絵がなぜ怖いのか。それはこの絵が肖像画ではなく歴史画だと知り、その背景を知らなければ理解できない。

リチャード・オブ・シュルーズベリー (ヨーク公) - Wikipedia

 前に立つ少年はイングランドエドワード5世、後ろは弟のヨーク公リチャードだ。
エドワード5世は12歳にして戴冠するものの、言い掛かりに近い形で叔父に王位を奪われ、ロンドン塔に幽閉されてしまう。そして、その後生死不明となり記録から消えてしまうのだ。彼らが殺されたのか、一生をその塔の中で終えたのか、名を変えて外の世界に逃げ出したのか。それもわかっていない。
寄る辺もなく立つこの2人の絵こそ、「意味がわかると怖い絵」だし、こう言う解説本を求めていたんだけど……

 

この本は正直妄想本だ。絵画の専門家が書いていないのも原因だが、解説はググれば出てくるような浅いものだし、「怖い理由」自体が筆者の妄想なのでどうしようもない。

例えばピカソの「泣く女」

ピカソは女たらしだった(今更
・モデルは愛人で、よくなく女だった(なるほど?
藤十郎の恋の挿話(唐突
ピカソはサディストでモデルを泣かせて面白がった(妄想
ピカソのフルネームすごい長い!(今更だし怖さ関係ない

と、 怖い理由妄想じゃねーか!である。

 

他にもジェラールの「レカミエ夫人の肖像」が怖い理由は「この薄着が流行して風邪で死ぬ人が多かった」「当時は政情が不安定で人々は死を恐れていた」って、対象の絵画とは全く関係ない話になっている。
コレッジョの「ガニュメデスの誘拐」では「この絵を見て本当に少年を誘拐した男もいるかもしれない」から怖いとか完全に言いがかりだ。 

 

事実誤認もある。ルドンの「キュクロプス」では(どうでもいいけど好きな絵を妄想で貶められるの腹立つね)「六十歳近くなって彼の真価は認められる。それとともに作品に色彩があふれはじめる」と、まるで周囲に認められたから機嫌が良くなってカラー絵を描き始めたように書いているが、実際には結婚して子供ができたことで色彩に溢れた絵を描くようになり、知名度が出たのだ。順番が逆だ。

 

医学解剖を描いた絵で「遺体に対するヨーロッパ人の考えは、時として日本人にはひどく怖く感じられる。魂の抜けた身体はモノとなる」と書きつつ、当時の人がいざ自分の死体が解剖されるのを嫌がる理由について完全に間違った説を書いている。
死後解剖されることを「かつて…死刑囚に加えられた行為が身に降りかかってくる」から嫌がっているわけではない。
もしも死体が悼むべきものではなくただの物体だと皆が考えているのなら、なぜ自分の死体も「モノなんだから死んだらどうなってもいいや」と考えないのか?少し考えればこの理論は破綻していることがわかるはずだ。

そこはキリスト教精神が理由だ。キリスト教徒は死後一時的な眠りにつき、最後の審判の時に蘇って天国で永遠の命を受けると信じていたのだ。それなのに死体が損なわれていては復活に支障をきたす。だから彼らは基本的に土葬を望むのだ。
死刑囚が解剖の素体として利用されるのは、死後の復活を与えるにふさわしくないと考えられたのも一因だろう。
そんなことも理解しないでドイツ文学研究してるってのもなかなか理解に苦しむ。あまつさえ、こんなめちゃくちゃな絵画解説本まで書いてるなんて。

 

正直に言うけれど、この本を読んで怖い絵展に行くのがちょっと怖くなってきた。
ちゃんと怖い絵が展示されているだろうか。
まぁ解説は学芸員さんがちゃんと書いてくれると信じてるけど。

 

日本画と洋画の違い 炎舞 速水御舟

私に限って言えば、美術品の好みは結構変わる。
単純に今まで知らなかった画家に夢中になることもあるし、それほど好きでなかった絵を見直すこともある。嫌いになること、はさすがにないけれど、より好きなものができた結果相対的に優先度が下がることは当然ある。
世の中には山と芸術品があり、さらにどんどん生み出されていくのだから仕方ない。

 

工芸より美術が好きだ。
立体作品より平面作品が好きだ。
写真より絵画が好きだ。
水墨画など唐画より日本画が、さらに洋画が好きだ。
例外はあるものの版画より肉筆が好きだし、モノクロよりカラーが好きな傾向がある。けどその傾向を無視して好きな絵もたくさんある。

日本画の中では浮世絵みたいなやつよりも比較的写実的な花鳥図が好きだ。琳派なんかの華やかな図案化されたものよりも、質素にまとまったものがいい。


速水御舟の「炎舞」が好きだ。
日本画の中では珍しく好きだ。けれどこれ近代絵画だから、やっぱり洋画の影響受けたやつが好きなんだろうなぁとも思う。

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山種美術館で見ることができる。ここは駅から遠い上にすごい坂なんだな。

日本画の専門美術館 山種美術館(Yamatane Museum of Art)

 

炎舞を初めて知ったのはやっぱり中高生の美術の教科書で、あの教科書マジすごかったなと今になって思っている。買い直したい。あんなに色んなジャンルを時系列でまとめている本なかなかない。

 

洋画と日本画の違いは何だろうか、と考えてみると逆にどこが同じなのか?ってくらい相違点だらけなのだけれど。
一番の違いは画材だよね。現代絵画において洋画と日本画を分けるものは作風よりも画材だ。岩絵の具を使っていたら抽象画でも日本画扱いになるだろう。
個人的に思っているのは、「絵と人との距離」だ。
西洋文化において、絵は主役だ。部屋の壁にドン!っとかけて、ある程度離れた所から干渉するものだ。いわゆる美術館で見る時と同じといってよい。
対して日本文化において、絵は主役でない時の方が多い。空間芸術としての茶室や床の間の一部としてある。ホストがいてゲストがいて、茶道具のような調度品、生け花などが合ってそれと調和を取るための絵になる。
掛け軸については上記のとおりで、巻物については絵物語としてストーリーが主になる場合も多い。
洋画が日本に浸透するまで、日本には額が無かったという。それは絵画が絵画という個別のものではなく、空間芸術の一部であったことの表れだ。
絵は掛け軸であり、巻物であり、あるいは屏風や衝立に描かれた家具の飾りであった。
絵画の鑑賞方法は日本と西洋で性質がだいぶ異なっている。
どちらにせよ、狭い日本の家で壁にかかっているのを眺めたり、あるいは手に取ってゆっくり見たりと、日本画と鑑賞者の距離は洋画のそれとは比べ物にならないほど近い。
点描なんかも鑑賞者との距離がある前提の描き方なのだろうと思う。
そのせいか、日本画は洋画に比べてあまり圧が強くないのがいいよね。

油絵が近づくとただのうねりでしかなく、ある程度離れないと何が絵がいあるのかわかりづらいのと対照的に、日本画は近づいてじっくり眺めないと見落としてしまうほど細かく精緻に描かれているのだ。
それが一番の違いではないかと思う。少なくとも鑑賞者にとっては。
だから日本画は美術館向きじゃないよね。せめて単眼鏡持っていかないとね。

 

なんか絵本体というより周囲の話ばかりしているな。
この絵は結構大きくて暗い中スポットライトを浴びているのを見ると不思議な存在感がある。
写実ではない。炎の形は密教芸術のようだし、蛾は昆虫標本のように羽を広げている。いわゆる図案化された日本画特有の画風だと言っていいだろう。
渦を描きながら闇に炎が消えて行く様や翅の模様はとてもリアルだ。これを実際炎を焚いて観察しながら描いたというからすごいなぁと思う。
夢のような世界だ。ずっと見ていたらなんだかおかしくなってしまいそうな気すらする。
引き込まれた先は神聖なるものではなく、地獄の炎なのではないかと思う。