人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【ネタばれ】粘膜戦士

書籍データ

  • タイトル:粘膜戦士
  • 作者:飴村 行
  • お勧め度:★★★★

f:id:minnagi:20190613160155j:image

舞台

戦時下(第二次世界大戦?)の日本及び日本占領下の東南アジア小国ナムール。
日本軍はナムールの抗日ゲリラに手を焼いている。
ナムールには爬虫人という種族が人間と共存している。髪が無く顔の中央が隆起し大きな目玉を持つ爬虫人の顔面は爬虫類そっくりだが、人間と同じ知能を持っている。
日本に連れて行かれた爬虫人達は使用人として重宝されている。

収録タイトル

↓粗筋開始(白文字)↓

鉄血

ナムールに駐屯している丸森軍曹、ベカやんとあだ名される男は大佐の私室に呼び出された。そこでベカやんは大佐に同性愛行為を強要される。また、その後も行為に従うならば様々な特典を与えようと持ちかけられる。軍隊で上官に逆らうことはできないこともあり、一度は承諾する。
しかしいざ行為に及ぼうとすると大佐は彼をナイフで切り裂こうとする。
ベカやんは助かるために大佐に調子を合わせなぜそんなことをしようとするのかを語らせる。

大佐はナムールに赴任してから現地の料理が気に入り、究極のナムール料理を求めるうちに現地人が呪われるとして食べない爬虫人の脳みそを食べてしまった。その時から狂気に侵された彼は、性欲の虜となり、爬虫人の頭にある謎な器官を食することで奇跡が起こると信じ込むようになったのだ。大佐はベカやんを切り裂いて犯したうえで器官を食するつもりだった。

ベカやんは大佐を言いくるめて自分に危害を加える前にその器官を食べるさせる。するとベカやんは自分の脳内に何かが侵入してくるのを感じ、それに伴い大佐は廃人のようになる。脳内への侵入者に操られるまま、ベカやんは大佐を刺殺する。大佐に脳を食われた爬虫人がベカやんの体に侵入してきたのだ。

大佐殺しの罪から逃れるため、ベカやんは軍を脱走し、日本を目指す。

肉弾

ナムールで大怪我を負った兵士は治療中にその強い生命力を評価され、人体改造手術を施されてサイボーグ戦士となる。その成果を評価されて大幅に出世した兵士は日本の実家へと戻ってくる。両親と弟に迎えられる兵士。その見た目は半機械といった様子だった。
兄が国の英雄になった弟は学校で教師や級友にもてはやされて戸惑う。

その直後、町にサーカスがやってくる。
猛獣たちを引き連れたパレードの警備にあたった兵士は突然の轟音に驚いた猛獣に襲われ、「故障」してしまう。まるで狂人のように奇声を発して暴走する兵士は軍に引き取られるが、修理不能として除隊扱いで実家へと戻される。

その狂態が町じゅうに知れ渡ったため、家族は非常に肩身の狭い思いをする。弟は学校でひどく虐められるが、教師にすら「兄が自決しないのが悪い」と見捨てられる。

悲惨な状況にショックを受ける弟のところに、級友の優等生が訪ねてくる。そして猛獣が暴れたのが虐めっ子の仕業だと告げ、復讐をそそのかす。言われるがまま、兄に軍からの指令が来たと騙して虐めっ子を殺させる。復讐に手を貸してくれたと思っていた優等生は実は自分の家に都合の悪い虐めっ子一家の殺害を目的としていた。さらに虐めっ子の父も殺すようにと強要する優等生からの指令を受けて呆然とする弟。

その時正気を取り戻した兄は自分が完全に故障してもうすぐ機能停止することを告げる。そして自爆してその場の証拠を全て消すから逃げるようにと弟に告げる。
言われるがまま逃げる弟だが、なかなか爆発が起こらない。もしも自爆前に兄の機能が停止してしまえば、自分たち家族は不名誉除隊の家族なうえ殺人犯の遺族となってしまう。敬愛する兄ではあるが、早く自爆してくれと祈ることしかできないでいる。

柘榴

早くに母を亡くした少年は、祖父母と父、そして厳しい婆やと共に屋敷で暮らしている。祖父は不治の病に冒されており、ベッドの上でまったく体を動かすことができずにいる。少年は祖父に会うことを禁じられている。上流家庭では召使として爬虫人を使うのが一般的なこの国で、婆やは異様に爬虫人を嫌っている。

少年は父と婆やの話の端々から、昔父は誰かと浮気をして母をひどく苦しめ、それを婆やは恨みに思っているのでないかと推測している。
庭に生えているザクロの実を食べようとして婆やから異常なほどの叱責を受け、その下には母の死体が埋まっているのではないかと考えるようになる。

少年は自分の部屋の下、地下から不思議な歌声が聞こえてくるのに気づく。また、夜中に不審な人物が庭をうろついていることにも気づく。
ある日体調を崩した少年は、学校を休む。そして婆やと父がいない隙に地下へと侵入する。
真っ暗な部屋の中には一人の少女が暮らしていた。自分が誰かわかるかと問う少女に、異母姉妹ではないかと答える。
少女の答えは少年の想像を超えるものだった。少女の母は昔父に雇われていた爬虫人の女中だった。性格の悪い正妻=少年の母とうまくいかない父が爬虫人女中と愛し合い生まれたのが少女。それに怒った制裁が爬虫人女中を殺し、庭のザクロの下に埋めたのだという。ショックを受けて倒れる少年。

意識を取り戻した少年は、自分が祖父の部屋にいること、父と祖母がいることに気づく。そして祖父が死んだことを聞かされる。
雇い主である祖父が死んだからと家を出る婆や。
二人の口から祖父が横暴で浮気性のひどい男だったこと、それに耐えかねた祖母が爬虫人の下男と不倫していたこと、祖母と爬虫人下男の間に子供が生まれたこと、二人が結婚したことを告げられる。また、父も自分の娘である地下で暮らしていた爬虫人少女と結婚すると宣言する。
爬虫人と人間が真に愛し合って行為をするとき、異様な快感が生まれるのだという。祖母と父はその中毒のようになっていた。
父はそのうち少年にも爬虫人の女をあてがうことを約束する。

極光

日本の軍事施設で残忍な少佐は部下とともに拷問の準備をしていた。
ナムールゲリラの青年と老人が軍事施設に侵入し、重要書類を盗もうとしたところを拘束されていた。少佐たちの任務は、彼らの窃盗目的、またゲリラたちの最新の情報を得ることだった。

何をされても一言も口を聞かないスパイ二人だが、少佐は青年が主犯で老人はただついてきただけの無能者だと推定する。
青年は鼻の穴に巨大肉食ムカデを入れられる拷問を受けて気絶してしまう。
老人は同じ拷問を受けさせられるが、逆にムカデを噛み砕いて食べてしまう。

青年に何も話さないと誓ったという老人は、口だけを動かし「しゃべらずに」自供を始める。少佐は読唇術でそれを読み取る。

獣姦趣味の老人は若者に軍から重要書類を盗むのを手伝えば大金を与え、しかも軍に飼われている豚を好きにしていいと言われたのだと言う。
やはり老人はただの無能な気違いだと少佐たちは結論付ける。

しかし翌日意識を取り戻した青年の自供は老人のものとは全く異なるものだった。
博打癖があり金に困っていた青年はヘモやんという老人に声をかけられ軍から書類を盗めば大金を渡すと言われ、引き受けていた。また、老人に催眠術をかけられ、自分をナムールの抗日分子で恐れを知らぬ男と思い込まされていたため拷問にも耐えられたが、無視恐怖症のためムカデの拷問で催眠術が溶けて自分の意識を取り戻したのだという。

慌てて老人の牢屋を確認するが、すでに老人は逃亡した後だった。
少佐はかつて軍にいた超有能スパイだが軍上部と揉めて銃殺刑となった男を思い出す。
もしや老人の正体は彼だったのであろうか。

凱旋

第一話、鉄血の主人公ベカやんはひっそりと日本に帰還し、逃走を続けていた。村を目指して山の中を進む彼は、爬虫人の女の死体を発見する。検分していると男に襲われて意識を失う。

気付くとベカやんは手錠をかけられ拘束されていた。襲ってきた男は彼に酒を渡し、酒盛りをするから嘘をつかずに本当のことを言えという。
ベカやんは脱走兵であることを自白するが、とっさに偽名を使ってしまう。男はベカやんの鉄砲を奪い、銃弾を投げ捨てる。そして自分の話を始める。
彼はナムール人と日本人のハーフで、日本で人種差別を受けていた。そんな日本のために命は投げ出せないと徴兵逃れのため森に入り、そこで出会った爬虫人の女中と意気投合し、夫婦同然の生活を送るようになる。爬虫人はカッパのモモ太や不思議な生き物とも知り合いなのだという。
彼らの希望はナムールに行くこと。爬虫人は故郷に帰ることを、男は人種差別を受けない生活を夢見ていた。しかし徴兵逃れの男が海を渡ることは現実的ではなく、男にとってナムール移住は夢物語に過ぎなかった。いつまでも移住を実現しようとしない男と爬虫人は口論となり、男は爬虫人を殺してしまったのだという。

話し終えると男はお前は嘘をついたとベカやんを責める。軍支給の持ち物に書かれていた本名と名乗った偽名が一致しないことが最初からばれていたのだ。
男はベカやんを殺そうとするが、先ほど投げ捨てた銃弾が偶然焚火の中に入っていて、暴発したものにあたって死んでしまう。

命拾いしたベカやんは男の持ち物から手錠のカギをとりだし、自由の身となる。そして先ほどの話にあったカッパに興味を引かれ、会いに行ってみることにする。 

シリーズ第一巻、粘膜人間の前日譚であることが判明する。

↑粗筋終了(白文字)↑