現代の始まり ウィーン・モダン 5/6
GWに1日くらい好きなことがしたいんじゃあ!とウィーンモダン展。ウィーンとの国交150年でたくさん展示がありますね。
特に今回東京展は300点も来てるとか。絵画や工芸、彫刻に都市計画建築模型と内容も盛りだくさんです。
ただ、小品が多いかな。最初の1ブロックくらいは「内容は歴史的に興味深いけど美術的にはあんまり上手とは言い難いなぁ」という感じなのだけど、段々とひきこまれていく構成です。
- グスタフ・クリムト「愛」
- ハンス・マカルト「ドーラ・フルニエ=ガビロン」
- ルドルフ・カルヴァハ「ユーモラスなグリーティング・カード」
- リヒャルト・ハルルフィンガー「第40回ウィーン分離派展ポスター(国際ポスター展)」
- アドルフ・ロース「ゴールドマン&ザラチュのオフィスビル」
- エゴン・シーレ「ひまわり」
- その他・全体
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グスタフ・クリムト「愛」
クリムト結構あった。けれど一般的にクリムトと言われて思い描くような、平面的で装飾的、金箔を多用した日本画のような絵はなかった。初期の作品だろうか、西洋的なものや白黒のリトグラフがメイン。クリムトクリムトしたものも見たいので、都美にも行かないとね。
これは初期作品でアレゴリーを表現した絵というまさに西洋的な文法によるものです。左右に金を塗って縦長にしているところとかは、ちょっとジャポネスム入ってるかなと思うけどね。ロマンティックでメロドラマ的だけど、もう少し鬼気迫る作品の方が好きかな。
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ハンス・マカルト「ドーラ・フルニエ=ガビロン」
かっこいい!!!
今回の展示で一番良かった。めちゃくちゃ美しく、カッコいい絵。ハンス・マカルトの絵はどれも素敵だったのですが、このあでやかさが最高です。クールな表情、ざっくりと描かれて背景に溶け込むような服、魔法の世界のようです。
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ルドルフ・カルヴァハ「ユーモラスなグリーティング・カード」
可愛い…すごい可愛い。なんだろ、昭和レトロ的な?
この画像は図録からですが、真ん中のやつはポストカードあったので買ってしまった。だって可愛すぎるでしょ。今売られてても普通に人気出ると思う。
小人と鬼なのかな、何か物語があるんだったら知りたい。
リヒャルト・ハルルフィンガー「第40回ウィーン分離派展ポスター(国際ポスター展)」
タイポグラフィのかっこいいのが非常に多かったのが印象的でした。ちょっと旧ソ連っぽさある。きっちりした線と鮮やかな色、お洒落なフォントはすごくスタイリッシュでモダンです。
日本では「世紀末美術」と呼ばれるこの時代、現地では「ウィーン・モダン」と現代と冠されるのが実感できる。
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アドルフ・ロース「ゴールドマン&ザラチュのオフィスビル」
まぁ、普通のビルじゃね?って思うのだけれど。
古典様式建築から装飾をそぎ落とした直線的なデザインは当時批判を浴び、ウィーン市の建設局から建築中止命令が出ました。花を窓辺に飾ることで、この問題は解決されました。
とまぁ発表当時は大騒動だった模様。これでー?って思うけれど、隣の「普通」のビルと見比べれば確かに斬新なデザインだわねぇと思わなくもない。割と町の主要地域に建てようとしていたみたいだし。しかし現在の感覚からすると、派手すぎて怒られるならともかく地味すぎて批判を浴びるってわかんねぇなぁ、と。
ところでこの作品の前で京都人大興奮していまして。アドルフ・ロースさんって建築界ではとても有名な人なんですね。
「装飾は罪悪(犯罪)である」とまで言い切ったその感覚は非常に面白い。
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エゴン・シーレ「ひまわり」
エゴン・シーレいっぱいあった。
歪み、ねじくれて奇妙にくすんだ色をしたシーレの人物画は正直苦手です。私にはちょっと圧が強すぎる。草間彌生も同じ理由で苦手。
このヒマワリの絵は前から好きです。
なんというか、この絵からは死のにおいがする。
普通ヒマワリと言えば生命力の象徴みたいな描き方をされるものだ。ゴッホのひまわりがあまりにも有名だけれど、あれだってユートピアの象徴だし、ちょっと画像検索してみると他の人だって大体「夏!青空!花畑!夏休み!白い雲!」みたいな表現をしているものだ。
それを、この表現。花を終えて種だけになった黒い顔。それだって新たな生命と見ることもできるのに、枯れた葉や墓標のような姿がそれを許さない。力強く圧倒的な、目をそむけることを許さない死がここにある。
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その他・全体
今回はとにかく数が多くて見るのも時間がかかりました。絵画や工芸品、都市計画、建築模型に家具までジャンルも様々で面白かった。
めぼしい作品はミニ図録に収められているからお勧め。
図録にもポストカードにもない作品で、ヨーゼフ・ホフマンの「ヘルマン・ヴィトゲンシュタイン邸のキャビネット」ってのがあってすごくよかった。
どんな作品かというと、ただの四角い箱のような小箪笥。ニトリにでも売っていそうな、飾り気のないつるんとした箱。そりゃ図録にも載らんわな、というくらいのふっつーの箱。
それの何がよいかって言うと、それこそが「モダン」だからです。それまでの過剰ともいえる装飾を排除した、実用品。先ほどのアドルフ・ロースの言葉「装飾は罪悪(犯罪)である」を思い起こさせます。
ヘルマン・ヴィトゲンシュタインさんって誰かというと、あの有名な哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインさんのお父さんだそうです。
後のヴィトゲンシュタインハウスを彷彿とさせる作品でした。こういう家庭だからああいう人が育つんだなぁと。しみじみした。
購入したポストカードの裏が、作品のイメージに沿って全部違う柄になっているのも楽しい。
とても面白かった。誰が行っても何かしら自分の興味のあるジャンルを見つけられると思う。