人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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犯人はお前か イサム・ノグチと長谷川三郎―変わるものと変わらざるもの 3/16

横浜に行ったので、横浜美術館に行く。ついでに併設のレストランでごはんしたらおいしかったし値段の割にボリュームがあったのでお勧めである。

というわけで、イサム・ノグチと長谷川三郎展です。

yokohama.art.museum

二人とも神奈川に住んでいたことがあるそうで、イサム・ノグチの作品は横浜美術館に何点か所蔵されている。いつもなら写真撮影可能な作品も、企画展の部屋に移動したとたん撮影禁止になるのケチくさいなぁって思う(すでに撮影済みなんだから別にいいんだけど)

ていうか公式グッツやばい。悪い意味でやばい。ていうかほぼ無い。
ポストカードは1種類しかない。それも、横浜美術館所蔵品のみ。
そんで、公式図録がクッソクッッソ高い!五千円もする図録とか初めて見たわ!!
さすがにそれはどうかと美術館側も思ったのか、千円くらいするパンフレットも別売りであったのですが、そちらは長谷川三郎作品がメイン。
……これはね、利権のにおいがしますね。今回のメイン作品を多く所蔵しているイサム・ノグチ財団・庭園美術館、あやしいですね。絶対利用料金関連の契約のせいな予感がしますね。

 

イサム・ノグチについては前も取り上げた気がする。日米ハーフの彫刻家。
長谷川三郎というのは正直知りませんでした。ウィキペディアにも情報がろくにない。戦後の新しい美術を作り上げた人として功績は多そうですが、忘れられていますね。
美術館でもほとんどみたことが無いです。正直、アメリカの方が情報ありそうな感じ。

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長谷川 三郎「無題」

f:id:minnagi:20190320153317j:image

谷間に建つ神殿だろうか。それとも凱旋門のようなものだろうか。
ミニマムで余韻のあるいい絵だと思う。

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長谷川 三郎「形態」
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コラージュ作品。と言っても、写真や印刷物を張り合わせたわけではない。
なんと、厚みのある額の中に木製の雲形定規を切ったものを並べているのだ。立体物のコラージュ、面白い。
昔は雲形定規木製だったんだねぇってのが正直最初の感想。
なんか音符みたいでリズムがいいと思う。

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イサム・ノグチ「三位一体」

f:id:minnagi:20190320153331j:image

三位一体、というと父なる神と息子キリスト、そして精霊(概念が難しい)は別のものでありかつ同一のものであるというキリスト教の基本概念なのだけれど。
イサム・ノグチキリスト教だったのかしら。

とはいえこの作品は、単に3つのパーツからなってるから名付けられたのであってキリスト教概念を表現しているわけではないと思うけれど。
かわいい。こういうオシャレ系ゲームキャラとかいそう。

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イサム・ノグチ「死すべき運命」

f:id:minnagi:20190320153326j:image

英語のタイトルはMortalityだ。辞書を引くともちろん「死すべき運命」と出てくるのだけれど、「死すべき運命=永遠の神ではないもの=人間」と、ここまでで常識だろうと思う。
だからこれは小難しい概念を表したものではなく、「人間」を表現したものなのだ。
この写真はブロンズ像だけれど、軽いバルサ材で作られたバージョンもあった。白く塗られたバルサのこの縦長のパーツは土台にゆるく取り付けられ、空調のわずかな風でもゆったりと動いている。
そんな乾いた動きを見ていると、これは骨なのだなと素直に思えてくる。
この作品はメメント・モリだ。
バルサバージョンの方が好きだけれど、「死すべき」というタイトルで堅牢なブロンズというのもなかなかひねりがあって悪くないと思う。

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イサム・ノグチ「書」

f:id:minnagi:20190320153320j:image

ポスターで見た時、遠目では「日本」って書いてあるのかな?って思ったけどよく見たら違った。じゃあ何なのかというと多分文字ではなく、「文字というイメージ」なのだろう。
外国人がイメージで描いた漢字。
曲線が美しい。

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ちょっと話は飛ぶんだけどね。
海外ドラマで、「日本のモノ」として出てくるものってあるじゃない。風変わりでエキゾチックで、筆で書かれたものとか。
CSIとかで、現場に残されていた謎のものを調べたら日本の民芸品だと判明し、捜査は日本人街へと舞台を移す…的な小道具。
そういうのって、大体へんてこりんじゃないですか。
掛け軸とか、そんな水墨画ねぇよ!ってデザインじゃないですか。あれ何なんだろうなぁってずっと思ってたんですが、「胡蝶の夢」という長谷川三郎の作品を見たときその疑問がようやく氷解した。
こちらのサイト見て。一番上の画像見て。

www.picturethispost.com

洋ドラでよく見るエセジャパンじゃねぇかああああああ!!!!!!
お前だったのか犯人!お前がへんてこクール・ジャパンアメリカに根付かせたのか!!!

この作品のような、長谷川三郎がアメリカに渡っていた時の作品、すっごいです(悪い意味で)。
すごい雑。それまでのミニマムではあれど計算してじっくり作成しているなと見てとれる作品と違って、とにかく数作ろうと描き飛ばしてるのがすぐ分かる。作りたいものというより、アメリカでウケそうなものを作ってるのが一目瞭然。
「とにかくアメリカで売れたいんだ!!」という強い意志を感じる。
売れるのも大事だけど、それまでのよさが無くなってしまったのが悲しいなと思う。
あと、エセジャパンやめろし。