人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
Push
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
Push

Push

Push

夏休みに行くべき美術展 巨匠たちのクレパス画展 損保ジャパン 8/8

損保ジャパン美術館に行ってきた。

美術館には宣伝のうまいところとうまくないところがあって、ここは正直アクセスと規模の割にヘッタクソである。あまり混まない。

けど今回の「巨匠たちのクレパス画展」はものすごくいい。夏休み向けだし、もっと話題になってほしい。そしてお子様がたくさんくるといい。

www.sjnk-museum.org

だって、クレパスだよ?日本発祥の、誰もが一度は使ったことがあるであろうあのサクラクレパス。それを使ったプロの絵が見れるなんて夏休みキッズ向けでなくてなんだというのだ。

というか、私が子供の頃、図工でクレパス使ってた頃に見たかった。「クレパスは厚塗りも可能で混色しても色が濁りません」なんて誰も教えてくれなかった。むしろ、色が混ざらないよう気をつけて塗り分けてた気がする。

グリが塗り重ねていい

定規で引っ掻いてもいい

輪郭線なんかなくていい

そんなこと図工の時間に教わったりしなかった。現役でクレパスに親しんでいる時にこれを見たら、どれだけ世界が広がることだろうか。

…てなこと思いながら見てたら幼稚園くらいの男児がいたんだけど、完全に飽きてたよね。興味1ミリもなさそうだったよね。まだ早いのかな。対象年齢狭いのかなー。

 

気を取り直して。今回あんまり良かったから図録を買ってしまったので写真いっぱいあるよ。

入り口フォトスポット。

岡本 太郎「鳥と太陽」

f:id:minnagi:20180810152124j:image

サングラスをかけたみたいな太陽の塔。不良だ。

岡本太郎は何をしても岡本太郎なのがすごい。油絵の迫力も好きだが、クレパスの伸びやかさもとても良い。

 ---

寺内 萬治郎「緑衣の婦人像」

f:id:minnagi:20180810152001j:image

これが!クレパス!!
それほど大きい絵じゃないんですよ。下にサイズ書いてあるけど、画用紙サイズ。それでこの存在感。プロすげえな!って感じ。
製作年不明とあるけれど大正~昭和初期のはず。まったく色あせていないのもすごい。めちゃくちゃきれいなモダンガールだ。

---

伊藤 悌三「老人」

f:id:minnagi:20180810151957j:image

これが!クレパス!!!
どう見たって油絵じゃないですか…マジかよ、すげーよ。
クレパス画というと手軽さが先に立って、デッサンや習作として使っている人が多いようですが、本気で描くとこうなるんだなぁって驚愕します。

---

池田 龍雄「パトロール

f:id:minnagi:20180810161404j:image

すげえすげえと言いつつ、クレパス画の良さが“まるでクレパスじゃないみたい”なところだってのもどうかしている。
クレパスは児童向けというイメージが付いているのでどうしても芸術として広まらない、という解説もあったが、画材イメージってあるよね。油絵は水彩画より格が上、みたいな。アクリル絵の具とか油絵と同じように扱えるのにどうしたって商品価値はぐっと下がる。画材としての能力よりも、イメージで値段が決められているようなところが多少なりともあると思う。
この絵はクレパスらしさを生かしたとてもよいものだと思う。薄塗りから厚塗りまで、くっきりとした線も複数色のぼかし込みも、書いた後で削り取るような技法も。画材の特色を大いに活用している。

絵画としてもとても素敵。ぱっと見ユーモラスでかわいらしくて、その実不穏なものがある。武者のような忍者のような異形の者が守るのは古城なのだろうかと想像が膨らむ。
---

伊藤 廉「鳩とベコニヤ」f:id:minnagi:20180810152019j:image

これもクレパスらしさを活かした絵。背景のグラデーションがとてもきれい。鳩の足の色とかこんな表現思いつかないなぁと思う。夢の中のような世界。

---

岡本 太郎「虫」
f:id:minnagi:20180810152014j:image太郎は太郎だ。抑えきれないエネルギーがほとばしるのに、クレパスというのはとても向いている画材ではないだろうか。調色や↓処理の手間もわずらわしく勢いよく描きあげられたような絵だ。

---

杉全 直「作品」
f:id:minnagi:20180810152009j:image

これこそ、クレパスでしか描けない絵だなぁと思う。勢いよく乱雑に叩きつけたようなステッチだけれどきちんと計算して重ねられたのだろう美しさがある。
こういうのって作れないなぁと思う。

 ---

吉原 治良「作品Ⅰ」
f:id:minnagi:20180810151949j:image

これも大正~昭和の画家だけれど、未来感がすごい。
レトロフューチャーの夜景のような美しさと疾走感があって好きだ。抽象画だから特になにを描いたものでもないのだろうけれど、だったら何に受け取ったっていいんだよね。
この人はJ-オイルミルズの御曹司で、社長業傍ら画塾を開いていたというからすごいなと思う。この時代の画家はマジですっごい人が多いのにあまり大きな展示とかされていないのもったいないなぁ。

---

藤岡 冷子「南の風が吹く頃」

f:id:minnagi:20180810152023j:image

この人は現代作家さん。

残念ながらこの絵は印刷向きじゃない。クレパスの白ってうまく印刷に乗らないみたい。本当はもっとふわふわした感じでグラスウールのような、輝くような画面なのにもったいないなぁと思う。

これに限らず、やはりクレパス画は実物を見るのがいいなと思うよ。塗り込めた色の力強さとか、盛り上がったタッチとか、そういう印刷では消し飛んでしまうところに良さがつまっている。

ちょっと安めだし、ぜひ見に行くといいと思う。
大阪の人はサクラアートミュージアムに行くとよい。

www.craypas.com

サクラクレパスは画材を提供して様々な画家に絵を描いてもらっているらしいのだ。なんだよそれめっちゃ見たいよ。いつか大阪行ったら寄ってやるんだからな。