人を選びます 白髪一雄展 2/14
今回の展示は結構えぐいから、苦手な人は結構だめだと思う。
何だろう、ただの絵の具の奔流といえばそれだけの作品なのだけれど、エネルギーが相当あるのでもうグロテスクなものにしか見えなかったりする。
あと、猪の毛皮に血糊をぶちまけたり水の中に臓器を放置したもの(の複製)があったりして単純に露悪的なところもある。
見に行くなら、公式サイトを見て雰囲気 つかんでからのほうがいいだろう。
私は割と嫌いじゃない。なんだろうなぁ、ちみちみしたしみったれた中二病はみっともなくて嫌なんだけど、エネルギーがあるやつはそれだけで好きだよ。
白髪一雄は兵庫出身の画家。最初は時代感のある具象画を描いていたけれど、次第に絵の具を巨大なキャンバスにおいてのフットペインティングや、スキー板で延ばして描いていくようになる。絵の具と格闘するようなその手法は圧巻だ。
制作風景の動画を見てたんだけど、なんか見覚えがある気がする。昔テレビで特集でもされていたのを見たのかもしれない。
一部撮影可です。ここはいつも一部"以外"撮影可だけど、今回はマークがついてるものだけ撮影可。間違えないようにね☆(間違えて怒られた)
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「長義」
タイトルは中国古典文学からとられているものが多いそうです。たぶんだけど、最初から長義をイメージして描いたというよりは完成品を見てタイトルを決めている感じだよね。
大きな絵具のチューブを縦に切り裂き、中身をスプーンでキャンバスに全部落として、滑って転ばないよう天井から吊るした縄につかまってフットペイントだそうです。と聞いても、同じことをしてこの暴力性が自分に出せる気がしない。
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「色絵」
こちらはスキージを使って絵具を伸ばして描いたもの。ワイパーみたい。
これは、すごくいいです。マジでずっと見てられる。
特にさぁ、左上のここがいいわけよ。わかる?わかるよねぇ?
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「貫流」
こちらはスキージを手で持って描いたのでしょうか、より動きのある流れになってます。
右側の大きな流れがいいなぁと思います。
しかし白髪自身はこのスクイージでの製作を「均一化されてしまう」としてフットペイントに回帰してしまうとのこと。
まぁフットペイントもすごくいいけどさ、私はこっちのより洗練された作品の方が好きだよ。まぁ作者自身がもっと激しくないとって思うなら仕方ないけどね。
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初期のいかにも戦後絵画だなぁという可愛らしい作品からこのタイプの作品に行くまで一足飛びで、移行期などないのでビックリする。
私はこの人の絵かなり好きです。こういうのが描けたら気分がいいだろうなぁと思う。そう簡単じゃないんだよな〜
さようなら工芸館 パッション20 2/11
竹橋駅を出て皇居を左手に国立近代美術館本館を超えて10分ほど歩くと、首都高の入り口側にかっちょいいレンガ造りの近代建築がある。それが国立近代美術館工芸館だ。とてもマイナーな施設である。
しかしこの工芸館という施設、というかシステムはもう移転が決定している。石川県の方に移動するらしい。まぁ国立のくせに美術館東京に密集しすぎ問題あるから仕方ないかしらとは言いつつ勿体無い。向こうに行ってもみんなに可愛がってもらうんだよという気持ちである。
割にそんなに行ってないんだけどね。駅から遠いし広告下手だし地味だしさ〜。
とはいえ最後の展示ということで行ってきました。
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大島 如雲「鋳銅大膽瓶」
なにこれめっちゃイケてる。
ぱっと見ただの黒い壺なのですが、よく見るとその中を鯉が泳いでいます。暗い水面に溶け込む黒い鯉がうっすら透けて見える。その意匠を思いつくだけで天才かよって思うのに造形力もすげえ。ほんの一部だけで全体を破綻なく表現してる。比べるもんじゃないけど、宮川香山の高浮彫りと真逆の発想でこれはこれで超クール。
欲しいなぁと思うけどどう考えても家に置くところがない。工芸品はいつもそうだ。
あ、もちろん今回も宮川香山の作品見れるよ。
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田口 義国「日食蒔絵飾箱」
クール…めっちゃクール。
日食の暗闇の中、眠っていた木兎たちが森の中でそっと目を覚ます。そんな意匠だけれど、これは本当に木兎なのだろうか。何かもっと不穏な生き物なのではないだろうか。
この角度だとニャンコちゃんにも見えるな。超かっこいい。
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中村好文 「LAPIN」
これは厳密には展示品ではないです。映像作品の鑑賞用に、子供椅子が並べられているところです。現行市販品。
LAPIN(ラパン) 白 - kanata art shop online
かーわーいーいー!うさちゃん可愛いしネジの目つきが悪いとこがまた可愛い。白と黒一個ずつ欲しい。可愛い。でも高い。ああ、僕がお金持ちで家にキッズがいたら買ってしまいたいよ。
この他にも柳宗理とか、ブランド椅子がいっぱい置かれて座れるようになってた。よき。
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杉田禾堂「用途を指示せぬ美の創案」
これは工芸品とはいえないかもしれません。
しかし工芸以外の何ものでもない、形態の研究と素材の扱い方、こういう手段が存在しても差し支えなく信じます。年月の経過が素材をますます美しくして来ます。
と、作者の箱書きにあるとのこと。
工芸…工芸って何だろうね…狭義の工芸としては「意匠のある実用品」だろう。では百円ショップに売っているレポート用紙は工芸だろうか?カラフルな付箋紙は工芸品だろうか。翻って、見て楽しむ以外に用途のないリヤドロ人形は工芸なのだろうか。美しさというのは実用の一部なのだろうか。
工芸って何だろうね…
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北原 千鹿「羊置物」
これだって特に何かを入れるわけでもないただの置物なんだから、工芸というのか美術というのかわからないよなぁ。
でもま、かわいいからいい。めっちゃ可愛いからいい。作者の名前が鹿なのに作ったのは羊かよってとこも含めてとてもいい。
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というわけで最終展示、お疲れさまでした。楽しかった。
近代からほぼ現代といっていい時代まで、実用品と美術品のはざまをたくさん見ることができました。
美術館が移転、といっても移築をするわけではないので、この建物自体は残ります。それからどうするかはわからないみたいなことを係員さんが言ってたような。
どうなるんだろうねぇ。せっかくカッコいい建物なんだから、活かしてほしいよねぇ。
温度湿度管理の必要な美術館という特性上、内装は全く近代的でなく普通になっている建物、復元してカフェとかにしてくれたらいいのにな。
強い政治色 バルセロナ展 2/11
バルセロナ展、という何だかフォーカスがよく分からないタイトルの展示を見てきた。
今回のテーマはなんなのか?バルセロナの歴史なのか?街並みなのか?建築なのか、出身の芸術家なのか?
その答えはなんなのかというと、全部でした。
スペイン展ではなくバルセロナ展と言うのは単に国ではなく都市にフォーカスしたんですよという以上の意味がある。バルセロナはスペインとはまた違う固有の文化、言語を持つカタルーニャ自治州の首都であり、帰属意識としてはスペインではなくカタルーニャの方に強く持っているのだ。しかしスペイン側は国の一部として強く管理しようとしたりカタルーニャ語の使用を禁止しようとしたりと、こう歴史的にかなり軋轢がある地域なのです。今でも独立運動あるしね。
そんな政治色が、キュレーションからも提供美術館側からもビシビシと伝わる展示でした。
全体的にピリピリしてるよ。
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ジュゼップ・プッチ・イ・カダファルク「カザ・アマッリェー」
まずは建築から。かっこいいねえ。小笠原伯爵亭のシガールームみたい
こういうおうちが欲しいな…おうちの中にステンドグラスが欲しい。本物ならうれしいけど、シール状の偽ンドグラスでもいい。ゴシック調の石柱にガラスがはまってるのすごいカッコいいけど、冷静に考えると日本では無理だな。台風の季節とか即死するな。
他にも建築写真、図面、椅子やドア!まで来ていてなかなか面白かった。もちろんガウディもあるよ。
元々中世から続く城郭都市であったバルセロナは近代化による人口増大、それに伴う住居不足、人口過密、衛生状態の悪化による病気の流行といった流れで城壁の撤去、区画整理を余儀なくされます。ついでに無秩序になった街を区画整理しようというのがおそらくヨーロッパ全土で行われたのでしょうね、この時期。
パリは同じような流れで放射状の道が走る街になりましたが、バルセロナは京都のように碁盤の目のように道が通ります。統一感を求めてひたすらに同じ素材で似通ったデザインの建物を大量に並べたパリと違い、バルセロナはどうやら個性的な建物も多かった模様。
一部このように古い建物を活かして近代的な改装を加えて使っているのは地震の少ない土地ならではでしょうね。
東京も区画整理してくれればよかったのになぁ。壁がなかったから整理の必要感じなかったんだろうけど、関東大震災の時とかいくらでもタイミングはあっただろうに。
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ラモン・カザス「サンタ・マリア・ダル・マール教会を出発する聖体祭の行列」
こうやって小さな画像にするとわかりにくいでしょうが、本当に不思議な絵です。
とても大きな絵で、まるで写真のように見えるのですがどこにもピントが合っていない。ここまでぼんやりした絵を描くのは逆に難しくないかと思うほど全てが淡くかすれてスローモーションの悪夢のよう。
この絵だけを見るとただのお祭りの絵のようですが、この場面のすぐそばで、当時暴動的なこと(テロだったかデモだったかうろ覚え)が起きていたそうです。だから当時見た人は「ああ、あれね」とすぐに想起できたのだとか。怖いよぅ。
本当に写真をもとに描いたのではないか?というのが京都人の見立てだけどどうだろうね。
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ジュアン・プラネッリャ「織工の娘」
産業革命のころ。産業の工業化が進み、大量生産が少ない労力でできるようになった結果、安い労働力として子供や女性が工員として酷使されるようになるのは全世界的な潮流。日本でも女性職工の問題あったものねぇ。そんな過酷な状況に置かれた子供たちの健康状態はとても悪く、平均寿命も短かったそうです。というのが解説に。重い。
絵画としてはドラマティックで美しいなと思うけれど、個人的にそういう状況を儚くけなげな美少女に託して上流階級が消費するのはなんだかなぁって思わなくもないよね。ってのはいつも言ってることだけど、今回は特にこの絵のすぐ横に上流階級の同じ年頃の女の子が豪華なドレスを着ている絵があって、階級格差についての解説パネルもあって、あああああ!!!!って感じ。
ただまぁ、単純な絵画として見れるものと、こういう気持ちになる絵(スケーイン派とかね)との差って何だろうなぁと考えてみるべきかもしれない。
えーと、絵画としてはドラマティックな明暗差と機械の構造美がいいなぁと思います。
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ジュアキム・ミール「魅惑の入江――マジョルカ」
ポストカードは青みが強く出ている。もう少し緑がかった印象の絵です。
これ、日本画みたいだなぁって見た瞬間思った。顔料そのままのような色のせいか、画面左上のごつごとした岩の表現のせいか。昭和の日本画って感じがする。
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ラモン・カザス「入浴前」
発表当時、あまりにセンセーショナルだと話題になった絵だそうです。
どこが?て感じだけど、リアルな裸体画が芸術か猥褻かという問題は昔から議論の大賞なのでしょう。カトリック色の強い国ならなおさらのことだし、現代だってこの分野は意見の分かれるところだしね。
個人的には、右側にある湯沸かし器に注目したい。
同時代のボナールが描く入浴する女性の図は、室内にたらいを置いて水浴びをしていたのに対し、こちらには浴槽と給湯器がある。都市の再開発がパリより遅かったのかしらね。それで上下水道の設備が整っていたのかな。たぶんこれ電熱器だろうし、電気も通っていたのだろうとかいろいろ技術面のことを考えて楽しくなってくる。
窓からの光に照らされた女性、輝く銅の給湯器、素朴な室内着の質感。明るく美しい絵だと思う。
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というわけで全体的に「バルセロナは!カタルーニャ!スペインは酷い!!!」というメッセージが非常に強くてドギマギする展示であった。うん、そういうの嫌いじゃないけど。
あと「四匹の猫」というコーナーが面白かったよ。
芸術家たちが交流や若手の育成を目的に始めたカフェ(当時のカフェといえば、ムーラン・ド・ラ・ギャレットのようにショーもやるのが定番のよう)だそうで、そこの発行した雑誌や演芸のポスターがとてもよかった。
また、パブロ・ピカソも若いころ出入りしていてパンフレットを任されたりしていたとのことで、「ピカソはわしが育てた」感が良かった。
ミロやダリ、コルビュジェといった有名作家もいるし、あまり知られていない画家たちも多くて幅広く勉強になる展示でした。
でもちょっと圧が怖い。
鏡の国 永遠のソール・ライター 2/9
2017年に文化村でやったソール・ライター展の第二弾です。
大人気だったものねぇ、前回。
2017年の様子はこちら
ハマスハイのすぐ後に見たんだけど、なんか雰囲気似てるよね。都会の中の孤独、傍観者としての世界、鏡の向こう、閉店した店、物陰からの覗き見。
自分の中で完結した、静かで安全な世界は寂しくて心地よい。けれど決して物悲しいわけではなく鮮やかな色合いなのがアメリカ的だと思う。サイモン&ガーファンクルの世界だ。
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「レミィ」
妖精かな?街中に舞い降りたティンカーベルかな?
携帯可能な小型カメラ、一眼レフ、カラーフィルムといったカメラの歴史と共に歩んだソール・ライターの作品はモノクロもカラーもあります。モノクロは詩情があってとても良い。
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「高架鉄道から」
しかしやはりカラーは良い。
構図が凄く良い。強い日差しで区切られた安全地帯のバランスが良い。
近すぎてぼやけた線路、遥か高みから覗く世界。強すぎる光の中にいる子供たちが向かうのは真っ暗な闇。ヴァロットンの世界。
赤い服を着た子が大穴のような影のぎりぎり縁にいるところや、闇の中右側に目玉のようなものが見えるところもダーク・ファンタジーの世界だ。
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「Haircut」
床屋に入る男性。隠し撮りだろうね。ショーウィンドウを鏡として不思議な構図を作り出している。
彼は商業写真家だった頃から、効果的に鏡を使っています。被写体を分割し、見ているこちらを拒絶し、迷宮へと迷い込ませる。そんな夢のような効果が彼の撮影したファッション写真にはよく使われている。
この写真では鏡と言うにはあまりに鮮やかで、一瞬どちらが現実か分からなくなる。
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「コンタクトシート」
ねこーん。
ASPかなって写真だ…けど、そもそも若い人にASPは通じるのだろうか。
ネガフィルムでは何が写ってるのか確認しづらいので、こうやって一覧にしたんだそうです。それをコンタクトシートって呼ぶんだって。
可愛がってたんだなぁと言うのが伝わる写真。
他に、カラー写真のスライドもたくさんあった。彼の時代はカラー写真をプリントするコストがかなり高かったので、現像したフィルムをスライド投影して楽しんでいたそうです。ということは、カラーポジフィルムだったんだね。
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一箇所だけ撮影可能なコーナー。彼と、そのパートナーの絵だそうです。だいぶナビっぽい。
「画家になりたかった男」というサブタイトルの通り、彼の絵は鮮やかな色使いが独特でとても美しいです。
絵画もたくさん見たいな。
美しき個人的世界 ハマスホイとデンマーク絵画 2/2
上野でハマスホイを見てきた。
ハマスホイ。古い表記だとハンマースホイ。外来語や人名は現地読みで読みましょうって運動ずっとあるけどなかなか刷新されないよね。
ウィキペディアでもハンマースホイになっている。
あまりメジャーな画家ではないけれど、もっと注目されていい画家だと思います。日本人絶対好きじゃん。
フェルメール好きな人は絶対好きだし、クノップフ好きな人も間違いなく好き。ベックリンの好きな京都人も好きだしルドンが好きな僕も好き。
そんなハンマースホイとその出身地であるデンマークの絵画について、この国独自の美意識が生まれたころから時系列で丁寧に追った展示です。
いいからとにかく見て見なよ、きっと気に入るから。
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クレステン・クプゲ「フレズレクスポー城の棟 -湖と町、森を望む風景」
フレズレクスポー城というのが美しいことで有名な城なのだそうです。
だというのに、この構図。
肝心のお城は屋根と尖塔の一部、小さな煙突しか見えません。いいのかそれで。
見えるのは国土のほとんどが平原だというデンマークの街並み。そして、何よりも広い空。
非常に大胆です。
この国の絵画は、静謐でとても美しい。
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ダンクヴァド・ドライア「ブランスー島のドルメン」
ドルメンとは巨石記念物のこと。デンマークの歴史を象徴スフモチーフとして人気になったそうです。古代文明、石を積みがち。
ちょっとメルヘンが強いけれど丁寧に細かく描かれた良い絵だと思います。
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ユーリウス・ポウルスン「夕暮れ」
これは、現代画家の作品では?と思うような一枚。
地平線に沈みゆく夕日に照らされて、何もかもがぼんやりとにじんで見える世界。逆光で輝く木の葉たち。
うん、19世紀に描かれたとは思えない。
これは極端なというか意図的にこう描いたものだけれど、全体的に今回の展示は輪郭があいまいな絵が多いなぁと思った。形があまりくっきりはっきりしないで溶け込んでいるようなもの、画面の中のものが全て揺れ動いているようなものが多かった。
風の強い国なのかなぁって思った。
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ピーザ・スィヴェリーン・クロイア「漁網を繕うクリストファ」
ぎゃああああ!かっこいい!!!!!!
やばい…めっちゃイケメン……上から描いたというより背景の絵の具をパレットナイフで削ぎ落したように見えるサインもかっこよすぎます。最高。
暗い部屋、窓からのドラマティックな明かり、走る筆、すべてがかっこいい。
デンマーク田舎の漁師町、スケーインにプリミティブなデンマーク国民の原点を見出した画家グループ、スケーイン派の作品です。とはいえスケーインの町に取材しているとはいえ、漁師町の力強さ、ある種男臭さ、愛国主義的な他の作品群とはちょっと雰囲気が違います。
(すげーどうでもいいけど、文化芸術このムーブやりがちだよね…自分たちより”素朴”な人たちを探してキャッキャするやつ…上から目線で失礼だぞ)
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ヴィルヘルム・ハマスホイ「チェロ奏者、ヘンリュ・ブラムスンの肖像」
さて、満を持してのハマスホイ。
今までの作品群も完成度が高く美しかったですが、やはりハマスホイはすげえなって素直に思います。
肖像画なのにこの描き方。人の顔判別できないじゃん…チェロの光が反射してるとこにしか興味ないじゃんこの描き方。でもかっこいい。超かっこいい。
モチーフと自分との心理的距離が近くないと描けないという逸話が残っているそうです。この人とはあんま距離近くなかったのかな。
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ヴィルヘルム・ハマスホイ「ロンドン、モンタギュー・ストリート」
首都であるコペンハーゲンの裕福な家に生まれ、早くから頭角を現したハマスホイは真正のお坊ちゃん、シティーボーイです。ですよね。すべての作品が実にシュッとしていらっしゃる。
そんな彼は基本的にコペンハーゲンのアパートに住んでいましたが、旅行や仕事などでけっこ海外に滞在していたとのこと。これはそんなイギリス滞在時に住んでいた部屋から見た光景だそうです。
誰もいない朝もやの中、整然と並ぶ建物たち。冷たい印象は受けず、まるでファンタジーSFのような、おとぎ話感がある。とはいえすべての要素はきっちり正確に描かれているのがデンマーク絵画らしいところ。この柵の正確さと言ったら。
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ヴィルヘルム・ハマスホイ「室内ー開いた扉、ストランゲーゼ30番地」
ドアの上部が歪んでいるのは私の撮影ミスではなく、ハマスホイの意図するところでもなく、キャンバスが歪んでしまったのだそうです。
やはりハマスホイの室内画はいい…描きたいものを描いている感じがする。
光の美しさ、時間の堆積、ドアの外の空虚。
静かな時間、ストーリーに頼らない構図の美しさ、人との関係性を排除した内面の世界。そういう絵画はハマスホイの、そしてこの時代のデンマーク絵画の特徴のようです。すごく好き。
先ほど書いたようにここはハマスホイが住んでいたデンマークの「アパート」だそうですが、めっちゃ広いじゃんって率直思う。
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ハマスホイといえば室内画のイメージが強いですが、人物画や風景画もたくさん展示されていました。
その中でも人物画はめちゃくちゃカッコいいのですが、なんか図録で見るとぼんやりして普通?ってなっちゃうんですよね……彼特有のサテンのようなタッチが消えてしまうからかなぁ。ぜひ実物を見てほしい。
高級感 シャネル ヤコポ・バボーニ・スキリンジ展 1/25
銀座中央通りの二丁目交差点は、ルイ・ヴィトンとブルガリとカルティエとシャネルが向かい合っている。
シャネルとカルティエの間、マロニエ通りを有楽町側に進むと、シャネルビルの脇に小さな入り口が見える。それがシャネル・ネクサスホールの入り口だ。
いや、入りづらいわ!!!!
腐ってもシャネルだし、入ってすぐエレベータで終わりの小さな入り口なのにドアマン居るし。シャネルもヴィトンもブルガリもカルティエも一個も持ってないし。
何ならブルガリは併設のカフェに行こうとしたことあるけど「サンダルの方はちょっと」って京都人が断られて以来行ってないし!レストランじゃなくてカフェなのにドレスコードってどゆことよ!
というわけで、友人に付き合ってもらって行ってきた。入りにくいんだもんよ。
というわけで、ヤコポ・バボーニ・スキリンジ展。
日本語版ウィキペディアには載ってないよ。
フランスの現代作曲家さんだそうです。オーケストラ用音楽とか映画音楽とか作ってるんだとか。
会場で流れていましたが、穏やかに美しく、しかしどことなく不安を誘うような音楽でした。あんまり現代アートとしてとんがってないというか、普通にきれいな音楽。
撮影可否書いてないしなんか聞ける雰囲気じゃないからパンフ。
紹介サイトによっては「直接体に描きながら作曲してる」とあるけど、さすがにそれは誇張だよねぇ?
人種も性別もバラバラな、でもまぁそれなりに若く美しい人たちに描かれた楽譜。
読めたらもっと楽しいのだろうねぇ。きれいです。
ベリーショートなら髪の上にも描けるんだなとか、足の裏にきれいに描いてるなとか、どうでもいいところが気になったりもする。
両手を広げた男性の腕に描いて、頭の上から撮影した、まるで鳥のようなやつが良かった。
しかし入りにくいなぁ。
慎重に選べ 記憶の珍味 1/25
銀座に行くので資生堂パーラー。
諏訪綾子さん、結構前から知っていました。なんだったかなぁ、確か金沢21世紀美術館のがニュースになったんだよな。
面白そうだなぁとずっと気になってたので、行けてうれしい。行きたいときに行けるイベントじゃないからね。
暗い会場の間取りはこんな感じ。
こんな感じに展示されているもののガラスケースととって、その中にたまった香りを確認します。
全部ねぇ、食べ物のにおいじゃない。
かといって、「アレのにおいだな」ってのもない。しいて言うなら、全部香水の匂い。
というわけで私はこれにしました。なんというか、スモーキーな香り。
ソーセージかベーコンでも出てくるのかしら?と思いつつ係員のおじさんに声をかけると、チケットをもらえます。
さて、ここから小一時間並んで「記憶の珍味」を食べることができるわけですが、そこは撮影禁止です。鞄と携帯電話を係の人に預けることになります。
なので仲の描写はせず私の感想だけをお伝えします。
<ネタバレ>えっナニコレめっちゃ怖いんだけど…>
あ、食べるのこれか。もう食べていい?まだ?まだかかるの?もういい?いただきまーす!
さっきのにおいだ…おいしくはないな………ていうかまずいな!はっきりとまずいな!!
やっばいコレどうしようめっちゃまずい。めっちゃまずい。ぺっしちゃダメかな…?しないときついよな、うん、出そう…ってティッシュ鞄の中じゃん…
しょうがない、飲み込もう。って飲み込むにはでかいな、噛み切らないと…結構固いな…ヴォェッ!!!!…やばい、吐くところだった。何とかこらえた。
何だろうこれ、スモーキー通り越して焦げたタイヤのにおいがする。辛い。めっちゃ涙目なる。
何とか飲み込めた…めっちゃつらい…
</ネタバレ>
って感じでした!
参加できてよかったけど、二度と行かないし、この人の他のイベントにも参加しないかもしれない。
あのねぇ、ポケットにティッシュ入れていったほうがいいよ!
お姉さんとの約束だ!!!