竹橋駅を出て皇居を左手に国立近代美術館本館を超えて10分ほど歩くと、首都高の入り口側にかっちょいいレンガ造りの近代建築がある。それが国立近代美術館工芸館だ。とてもマイナーな施設である。
しかしこの工芸館という施設、というかシステムはもう移転が決定している。石川県の方に移動するらしい。まぁ国立のくせに美術館東京に密集しすぎ問題あるから仕方ないかしらとは言いつつ勿体無い。向こうに行ってもみんなに可愛がってもらうんだよという気持ちである。
割にそんなに行ってないんだけどね。駅から遠いし広告下手だし地味だしさ〜。
とはいえ最後の展示ということで行ってきました。
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大島 如雲「鋳銅大膽瓶」
なにこれめっちゃイケてる。
ぱっと見ただの黒い壺なのですが、よく見るとその中を鯉が泳いでいます。暗い水面に溶け込む黒い鯉がうっすら透けて見える。その意匠を思いつくだけで天才かよって思うのに造形力もすげえ。ほんの一部だけで全体を破綻なく表現してる。比べるもんじゃないけど、宮川香山の高浮彫りと真逆の発想でこれはこれで超クール。
欲しいなぁと思うけどどう考えても家に置くところがない。工芸品はいつもそうだ。
あ、もちろん今回も宮川香山の作品見れるよ。
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田口 義国「日食蒔絵飾箱」
クール…めっちゃクール。
日食の暗闇の中、眠っていた木兎たちが森の中でそっと目を覚ます。そんな意匠だけれど、これは本当に木兎なのだろうか。何かもっと不穏な生き物なのではないだろうか。
この角度だとニャンコちゃんにも見えるな。超かっこいい。
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中村好文 「LAPIN」
これは厳密には展示品ではないです。映像作品の鑑賞用に、子供椅子が並べられているところです。現行市販品。
LAPIN(ラパン) 白 - kanata art shop online
かーわーいーいー!うさちゃん可愛いしネジの目つきが悪いとこがまた可愛い。白と黒一個ずつ欲しい。可愛い。でも高い。ああ、僕がお金持ちで家にキッズがいたら買ってしまいたいよ。
この他にも柳宗理とか、ブランド椅子がいっぱい置かれて座れるようになってた。よき。
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杉田禾堂「用途を指示せぬ美の創案」
これは工芸品とはいえないかもしれません。
しかし工芸以外の何ものでもない、形態の研究と素材の扱い方、こういう手段が存在しても差し支えなく信じます。年月の経過が素材をますます美しくして来ます。
と、作者の箱書きにあるとのこと。
工芸…工芸って何だろうね…狭義の工芸としては「意匠のある実用品」だろう。では百円ショップに売っているレポート用紙は工芸だろうか?カラフルな付箋紙は工芸品だろうか。翻って、見て楽しむ以外に用途のないリヤドロ人形は工芸なのだろうか。美しさというのは実用の一部なのだろうか。
工芸って何だろうね…
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北原 千鹿「羊置物」
これだって特に何かを入れるわけでもないただの置物なんだから、工芸というのか美術というのかわからないよなぁ。
でもま、かわいいからいい。めっちゃ可愛いからいい。作者の名前が鹿なのに作ったのは羊かよってとこも含めてとてもいい。
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というわけで最終展示、お疲れさまでした。楽しかった。
近代からほぼ現代といっていい時代まで、実用品と美術品のはざまをたくさん見ることができました。
美術館が移転、といっても移築をするわけではないので、この建物自体は残ります。それからどうするかはわからないみたいなことを係員さんが言ってたような。
どうなるんだろうねぇ。せっかくカッコいい建物なんだから、活かしてほしいよねぇ。
温度湿度管理の必要な美術館という特性上、内装は全く近代的でなく普通になっている建物、復元してカフェとかにしてくれたらいいのにな。