人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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窓の何を表すの 窓展:窓をめぐるアートと建築の旅 11/2

久々の近代美術館。

www.momat.go.jp

企画展のテーマは「窓」ですが、そこまで厳密なものでもないようです。
窓を表現した作品、窓を思わせる作品、窓から想起した作品、主題ではないけれど窓が一応含まれる作品。そういうのだけでなく、「窓じゃないけど窓っぽい気がする作品」すら含まれます。タイトルに窓という言葉は含まれないし、窓を表現したのだというエビデンスもない。なんでこれ選んだんだろう?というのも含まれます。別にいいけど、なんで?

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横溝 静「Stranger No.5」

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こんな手紙を(もちろん現地語で)送って撮影させてもらうプロジェクトらしい。

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窓は「自分がストレンジャーのままで、相手もストレンジャーのままで、どのくらいまで距離を縮められるかなということを視覚化」するための装置となった

 なんか哲学的だねぇと思う。このプロジェクトには、はめ殺しの窓こそがふさわしいと思う。
自分の世界と外の世界とを安全につなぐのが窓だ。ドアと違い、基本的に外部の者は窓からは侵入してこない。あなたとわたしが触れ合うことはない。言葉を交わすことも、おそらくない。ただ存在を確認しあうだけのもの、それが窓。
そういう距離感を確認するプロジェクト、面白いと思う。

あと、このおじさん何を持ってるの?ブランコでもぶら下がってるの?って思う。

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北脇 昇「非相称の相称構造(窓)」

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自宅だった寺院の窓をモチーフとした

すっごい砂壁っぽい。この黄土色の壁に押し付けられたような傷跡が見えるの、めっちゃ砂壁っぽい。実家感あってちょっとブルーになるくらい。

古い寺院の、窓ガラスも入っていなさそうな窓。防犯のため塗装色のために柵上に柱が固定されている。この赤と緑の葉なんでしょうねぇ?リズミカルで面白い絵です。
しかしあまりにも実家感。

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ヴォルフガング・ティルマンス「tree filling window」

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窓を画面いっぱいに写した写真。両開きのガラス窓を開けた先には、これまた画面いっぱいの大樹。窓ガラスも外の世界に染まって緑一色。
圧迫感を感じてもよさそうだけれど、十分に距離があるせいか開放感がある。
一色の画面って結構好きです。家の壁に掛けたい感じ。

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ハンス・リヒター「色のオーケストレーション

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これは…窓…?
ハンス・リヒターはドイツの画家・映画監督だそうです。抽象絵画の走りの人。
学窓されているけれど元々は巻物だったそうで、もしかしたら次々に現れる色のリズムを楽しむように設計されたものなのかもしれない。

ただ、こういうところが窓ですねという解説が一切ないので、なんでここにあるんだろうって正直思います。その横には「抽象絵画」というタイトルの黒一色の絵があったりして、なんなんだろう~ってもやもやする。

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ズビグニエフ・リプチンスキ「タンゴ」

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こちらは動画作品です。タンゴのリズムに合わせ、おもちゃのような家で行われる不思議な出来事。

一人の少年が室内に入ってしまったボールを窓から侵入してこっそり回収する。
孫を抱いたおばあさんが、ベビーベッドに孫を寝かせて出て行く。
そんなごく短いアクションが繰り返されます。少年が部屋を出たと思ったらまたボールが室内に飛び込んでくる。孫を置いて右手に抜けた老婆は左のドアから現れて、同じベッドに孫を寝かせる。そのベッドには今何人の子が寝ているのか?布で格差らえていて見えない。
少年と老婆はお互い干渉しない。まるで別の次元、時間軸に生きているように器用にお互いを避ける。そうやって部屋に入ってきては出て行く人は増え続ける。荷物を置く男性、荷物を取りに来る別の男性、料理をテーブルに置く老婆、部屋に来て料理を持ち帰る老人、着替える女性、アスリート、それぞれはお互い相手を認識することなく器用に相手をよけて同じ行動を繰り返す。そう、ダンスのように。
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なんかめっちゃ引き付けられるものがあって、目が離せない動画。

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池水 慶一「East Wind, Filne 東の風、晴れ より」

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六甲アイランドでかつて行われたインスタレーションの記録展示。面白いね。

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たった25人しか来なかったってもったいない気がするなぁ。
六甲には全く土地勘がないのだけれど、まだ電車とか通ってなくてアクセス悪かったのでしょうね。

何にもないところに巨大な、どこにも通じていない窓があるのは不思議な光景だっただろう。11メートルといわれてもピンとこないけど、写真見ると長いな!ってびっくりするサイズだ。

きっと開放感のある作品だっただろうな。

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美術の観点だけでなく、建築とか文化の観点から窓を語った小冊子がいっぱいもらえるの面白かった。

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なかなか読みごたえがあってよいよ。

でも展示自体は、「窓」展というにはちょっと弱いなぁっていうのが多かった。窓が主題じゃなくてもいいなら、展示作品の集め方なんてなんだってよくなっちゃう。