人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【ネタばれ感想】ねじの回転

書籍データ


今日の猫
f:id:minnagi:20190710180946j:image

家にあるホラー小説短編集を読み始めたら、序文に「過去にこんな名作が」みたいな感じで紹介されていたので読みかけの本をほっぽり出して読んでしまった。だって家にある本って基本何度も読んでる本だし。

というわけで、「ねじの回転」

田舎屋敷で住み込みで孤児の家庭教師をすることになった女性。
かわいらしい妹と、何故か学校を放校処分になって戻ってきた兄。その前に男と女の幽霊が現れる。それが既に死亡した下男と前任の家庭教師だと判明する。
下男と家庭教師の間に何があったのか。
兄はなぜ放校処分となったのか。
家庭教師にしか見えない幽霊は実在するのか。

 なんだかクラシカルな表紙。

「turn the screw」と言う成句は「圧迫を加える」「追い打ちをかける」と言う意味があるそうです。
その言葉の通り、ギリギリと追い詰められていくような物語です。

Wikipediaに粗筋が完全ネタばれで全部のっている。

ねじの回転 - Wikipedia

妖精たちの森って映画が前日譚設定であると書いてあるけど、ストーリー怖くない…?

 

以下ネタばれ

ビクトリア朝の物語なので、なんか思わせぶりなセリフが続くばかりで具体的に何がどうなっているのかさっぱり分からない。
兄がなぜ放校処分になったのか。
下男と前家庭教師との間にあった、恐らくは性的なトラブルは何なのか。
この二人はなぜ屋敷から消えたのか。
これらは「とても口には出せない」というような表現で曖昧に思わせぶりに、何かがあったことを匂わせる表現が会話にちらりとのぞくだけで、だから何がどうしたってのが全く分からないままである。
まぁ、そういうのは嫌いじゃない。

ただ気に食わないなぁと思ったのが訳者後書き。
なんか、作中で曖昧にしているところを勝手に決め付けて書いているんですよね。
「幽霊は本当はいなくて、主人公である新任家庭教師が周りをコントロールするために言い張っているだけである」という論調なんですよね…
いや、本文には「幽霊がいる」って明言されてるじゃん。新任家庭教師の一人称なんだから彼女が見たって書いている以上、彼女にとっては幽霊はいるんですよ。
それを「もしかしたら新任家庭教師が幻覚を見ているだけなのでは?」って解釈するのは個人の読書の仕方として問題ないけれど、それをあとがきの中でさも正統解釈のように書くのはどうかと思う。


あと裏表紙にも、「本当に幽霊は実在するのか?私こそ幽霊なのではないか?」って意味不明な文章が描かれているんですけど、新任家庭教師は明らかに幽霊ではありえません。
だって普通に他の人と会話してるし、子供たちの伯父から雇われてるし、この物語のあと他の子供の家庭教師とかしてるし!
なんでこんな煽り書いちゃったのかわからない。

私個人としては、幽霊はいたと思います。というか、いないって言い張るほどの根拠に欠ける。人によって見えたり見えなかったりするのは、幽霊なら当たり前だし。
Wikipediaとかでも新任家庭教師が兄を殺したみたいな書き方だけど、普通にとり殺されたんじゃないかなぁ。

なんかもやっととした読了感でした。でもそのもやもやがいいんだろうなこういう本は。