人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【感想文】粘膜戦士

書籍データ

  • タイトル:粘膜戦士
  • 作者:飴村 行
  • お勧め度:★★★

f:id:minnagi:20190606164639j:image

一応短編集なのだけれど、全体的に大きな流れがあるので感想は最後。

舞台

戦時下(第二次世界大戦?)の日本及び日本占領下の東南アジア小国ナムール。
日本軍はナムールの抗日ゲリラに手を焼いている。
ナムールには爬虫人という種族が人間と共存している。髪が無く顔の中央が隆起し大きな目玉を持つ爬虫人の顔面は爬虫類そっくりだが、人間と同じ知能を持っている。
日本に連れて行かれた爬虫人達は使用人として重宝されている。

収録タイトル

鉄血

ナムールに駐屯している軍曹は上司である大佐に同性愛行為を強要される。大佐が狂気に冒されていることを見てとった軍曹は命の危機を覚え、このピンチを何とか脱出しようと大佐に調子を合せるが…

肉弾

戦地から自宅に戻った兄はサイボーグと化していた。
国の英雄の弟として人気者になった少年だが、兄が事故で「故障」し「破棄」されたことで非国民の家族に転落することになり…

柘榴

早くに死んだ母。厳しい婆や。不治の病に冒されて見舞いも禁じられた祖父。食べることを禁じられた庭のザクロ。
重苦しい家に住む少年は夜中に不審者が家を出入りしていること、自室の地下から少女の歌声が聞こえてくることに気づく。大人たちの目をかいくぐり少年は地下室へと侵入し…

極光

日本軍の施設に重要書類を盗み出そうとしたゲリラが捕獲された。
強い意志を瞳に宿した青年と、愚鈍な老人。何をされても全く口を聞かない二人に軍人たちは拷問をとり行う。

凱旋

山の中を一人進む脱走兵は突然男に襲われて拘束される。
男の取り調べを交わして自由の身になるため脱走兵は彼に調子を合わせてチャンスを探るが…

感想

 面白かった。読み終わってから表紙を見ると、ああコレはあの話のアレか、ってなって楽しい。
粘膜シリーズは世界観が共通しているだけで各話読み切りだからどれから読んでもいいよって聞いたのだけれど、やはり1巻から読んだ方がよさそうだ。既刊からの登場人物がいて、あとがきで「粘膜○○を読んだ読者はニヤリとするだろう」的なことが描いてあってちょっと悔しかった。

全体に、粘膜シリーズとしてはグロ度が低め。少し悲しい話が多かった。
特に「肉弾」がよかった。この後はどうなるのだろうなぁと。
柘榴は救いようのない話で、「愛し合った人間と爬虫人が結ばれると最高の快楽」という設定だけれど、そうやって快楽のために爬虫人を選ぶことを愛って呼ぶのかなぁとか真剣に考えてしまった。あまりそういうたぐいの話ではないと思うんだけど。
極光はいまいちだった。後書きにもあるように、粘膜兄弟読者に向けたサービス、スピンオフ作品なのかもしれない。まだ読んでないんですよ。手元にはあるから読もうと思う。

粘膜シリーズにしてはパンチが足りなくてちょっと物足りなかった。
もうちょっと派手なシーンがあると良かったなぁ。