すいてること前提 information?inspiration?展 5/27
月曜にやっている美術館、ということでサントリー美術館に行ってみた。
今回のinformation or inspiration?展というなかなかおもしろそうな企画が気になっていたのだ。
日本美術工芸品を、何の説明もない状態で見るのと詳しい情報を知ってから見るので、感じ方がどう変わるのか、といったインスピレーション的な展示らしい。
入口がinformation?とinspiration?で別れていて、同じものを別の切り口から表示する展示。全体を2周する構成。
内容は面白いんだけど、見づらかった。工芸品なので小さいものが多く、特にinspirationの方は見せ方を工夫しているのもあって覗きこむような展示や視点を指定するものが多い。
と、言うことは行列ができるわけですよ。だって、今見てる人が立ってるスポット似た立たないと見えないんだもん。
月曜だから空いていてまだ良かったけど、それでも「前の人まだ終わらんのかな」「もうちょっと見たいけど待ってる人いるしな」というストレスがあって嫌だった。
これが土日とかで混んでたらうんざりしただろうなぁ。
全品撮影可です。
まずは作品名だけを見てinspirationの展示風景から。作品名もここでは伏せてみます。
なんじゃこれ?と考えながら見て欲しい。
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inspiration
A. 何かの影
入ってぱっと眼に飛び込んでくるのがこれ。
ガラスを光に透かした影。綺麗ねぇ。すごい存在感がある。
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B. 赤い部屋
赤い光の中に瓶?壺?が一つ。素材も質感もわからずにシルエットだけを眺めていると、すごく透明感があるガラス瓶のように見えてきて面白い。
ただしこれは覗きこまないと見えないので、後ろの人の圧に負けて早々に退散。もっとゆっくり見たかった。
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C. 覗き穴
この位置からご覧ください、のマークに立つと、ベージュの紙で仕切られたスペースの中央だけ穴があいていて、その向こうに掛け軸が見える。
写真撮ると何が何やらだね。
本当はここでゆっくりこれは何だろうって考えられたらいいんだけど、後ろの人が以下略。
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D.ご自由にお触りください
どーん!と何かのオブジェ。でけぇ。色々と模様が彫り込まれてでこぼこしている。
チョコレートかキャラメルみたいね。
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E.銹絵染付松樹文茶碗
騙し絵みたいになってるやつ。特定の個所に筒状の鏡を置くと絵が正確に見れる。
何が面白いって、鏡像だから歪むんですよね。だから歪まない位置で見ようとするとそれは水平で見るしかないんだけど、そうすると鏡には何も映らないの。
ヴァニタスだよね。
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F.パズル
2組のパズル。大きい箱にパーツを効率よく収納するもののようです。
私もやりたかったんだけどさ…すごい夢中になってずーっとやってる人がいたんで諦めた。適当なところであきらめて交代して欲しい。
なんかこの展示、客にいっぱい来て欲しいの?欲しくないの?って感じ。
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というわけでinspirationいったん終わりです。
こちらは途中でやっていた展示。
nendo 「uncovered skies」
光に照らされた白い道を行くと、傘の影にだけ空がうつる。
めっちゃきれいだし、詩的で好き。
上からプロジェクターで映像を投影しているのだけれど、そのプロジェクターからは偏光フィルムをはずしているため、真っ白な光に見える。
その中に偏光フィルムを貼られた傘を入れてやることで、初めて映像が視認できるようになるという簡単な仕組みです。
偏光フィルムなので、傘をくるくるすると角度が変わって色が違って見えて楽しい。
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information
さて、こちらからはinformationです。
答え合わせとしてinspirationと同じアルファベットを振ってみます。
A.切子 蓋付三段重
まずinfomationってどの程度の情報量なのよ?っていうと、一つの作品についてこの程度。(3か所の表示をつなげています)
情報過多!
光の正体は、ガラス製の重箱でした。
中にカラフルな和菓子でも詰めたらきれいでしょうなぁ。
B.朱漆塗瓶子
赤い漆の器でした。酒器ですね。こうやってみると完璧に漆だけど、色情報を遮断すると素材すら分からなくなるんだなぁと。
inspirationの方では赤いフィルム越しに見せられていました。
c.蓮下絵百人一首和歌巻断簡
蓮の描かれた掛け軸。でもなんかつぎはぎ?と思ったら。
こういうことだそうです。ロ、ロマン……!!!
誰が作ろうと決めて、どういう人たちが分け合ったのかなぁと考えるとロマンしかない。
残りが失われているというのも諸行無常で儚さが強い。
この掛け軸単体がどうというより、全体として大きな流れがあるんだなぁと眺めながら考える作品。インスタレーションと言ってもよいよね。
d.薩摩切子紅色被皿
赤い切子ガラスの器。inspirationの方は、この模様を再現したものでした。
e.銹絵染付松樹文茶碗
侘び寂びの抹茶椀。お茶を点てた時、抹茶の緑色と外に描かれた松の緑色とが響きあって超クール、という説明があった。
f.御所車桜蒔絵提重
江戸時代のピクニックセットです。
お重とお皿などが一つの箱にすっきり収まり、持ち運びできるようになっています。
こういうの、欲しいよねぇ。
ヤフオクとかで探すと意外と数出てきます。数万で買えることもあるみたい。お花見とかで使ったら楽しかろうねぇ。
とはいえ、このお重の中身をきっちり詰めないといけないのかとか思うと、買う気がうせるというか……本当に使うならゴムパッキン欲しいなとか、持ち運びには車が無いと厳しいよなとか、現実的なことばかり考えてしまう。
でも家にあったら楽しかろうなぁ。
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以下、inspirationではただ裏側を見るだけだったけど気に入った作品
楓流水蒔絵車透香枕
髪の毛に香を焚き染めるための道具だそうです。
枕は普通に首にあてる箱枕を使い、髪の毛をこの上にのせて寝るのだとか。中に香を入れて焚き、その煙で髪をいぶす感じですね。
綺麗だし面白い。
しかし昔の人は寝返りとかしなかったのかな?って箱枕を見ると思います。それに絶対首痛いよね…
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色絵獅子鈕毬形香炉
獅子が毬で遊んでいるデザインの香炉。かわいい。すごくかわいい。うちに猫がいなかったら蚊取り線香用に欲しいくらいかわいい。
ちょっと読みづらいけど読んで欲しい。獅子の生まれ方がかわいい。
二頭がじゃれてできた毛玉から生まれるってなにそれ。かわいい。イラストも可愛い。桃太郎か。最高か。
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というわけで、結構面白かったけど、かなりストレスだった。
inspirationの方は覗きこんだり特定の場所で見たりと、一人で見る分にはいいが他の鑑賞者がいると邪魔だし順番待ちとかあって嫌だった。
informationの方は文章やたらあって読むのに時間かかるし、そうやって読んでると本体の方見る気力が疲れてちょっと薄れた。
そもそも人気が出て混雑したら成立しない展示方法であるように思う。人を集めたい美術館として本末転倒感がある。
結局、普段の美術館のキャプションや展示方法は適切なんだなぁって再確認した日であった。