人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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【感想文】妖魔夜行 悪魔がささやく

書籍データ

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収録タイトル

突然ですが、人生を変えた本ってありますか?私にはあります。

この絵本を探しています(見つかったかもしれません by みなぎ | エッセイ投稿サービスShortNote(ショートノート)

では、人生を救ってくれた本ってありますか?私にはあります。
一冊は、スティーブン・キングの「ドロレス・クレイボーン
(絶版かよ!)

そしてもう一冊がこの本、「悪魔がささやく」です。
表題作である「悪魔がささやく」は物事をありのままに受け止めることを私に教えてくれた。
「酷い状況にあるときにつらいのは当たり前だ。それを無理に前向きになることこそが狂気だ」
当たり前といえば当たり前のことだけれど、それに私はすごく救われた。
なんてことない普通のラノベで、多分作者も誰かを救おうなんてな考えて書いているわけでもないだろう若者向けファンタジー小説だ。
それでもその文章は、人を救ってくれる。
そういう本に適切な時期に恵まれたことは幸運なことだろうと思う。

全体

現代(バブル)日本、主に東京を舞台にしたダーク・ファンタジー。人間の姿に化けた神通力を持つ妖怪たちが主人公。
同じ設定、登場人物で複数の作家が短編を書くというちょっと変わった形式が面白い。
設定が共通しているのはあっても、登場人物まで同じって言うのはあんまりないよね。

水野 良「身飾り」

神戸税関に引き取り手もなく残されたハンドバッグとともに、職員の女性が失踪する。
それと時を同じくして、夜の街に派手なブランド物で身を飾る女性が現れる。
彼女は周囲を操りさらに自分を飾り立ててゆき…

 

結構バブルの香りがする話だけどあまり違和感なく読めます。
地味でごくごく平凡な女性が妖怪に取りつかれてしまう話。怖いというよりもせつない話です。ちょっぴりハラハラするけれど、怖いということはないかな。
何となく心温まる終わり方。

白井 英 「妖刀」

ふとしたことから手に入れた日本刀が、持ち主の憎む人間を切り殺してゆく。
それに気づいた半妖怪の青年は…

まあまあ黒い話。あっさりしているけど一応残酷描写ありかな。
ちょっと推理物っぽい雰囲気(あくまでも雰囲気)で好きな話です。

山本 弘「悪魔がささやく」

夢魔使いである女子高生摩耶は悪魔憑きと判断され、悪魔払いと称して監禁されていた。自らの正しさを疑わない神父に追い詰められた彼女の理性は限界に近づき…

すごく好きな話。でも、摩耶はあんまり好きじゃないwウジウジしてっからこうなんだよぉ。しっかりしろよぉ。
とはいえこの妖魔夜行というシリーズ全体のヒロインである彼女の成長が全体の大まかな流れだから仕方ないかな。

ストーリーはかなり面白いです。
監禁という舞台設定からして大きな動きはないのですが、非常に緊迫感のある話になっています。
盲信することの恐ろしさと、真実を見極めることの大切さ。現状を正しく認識することの必要性。世界の残酷さ。
短い話だからネタばれせずに語るのは難しいけれど、そういう話です。

 

想いで補正がすごいけど、今読んでも面白いよ。