人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




にほんブログ村 美術ブログ 美術鑑賞・評論へ
Push
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
Push

Push

Push

河が大好き ドービーニ展 損保ジャパン 4/21

損保ジャパンでドービニを見てきたよ。

www.sjnk-museum.org

サブタイトルはバルビゾン派から印象派への架け橋」そして煽り文句が「モネも愛した“水の画家”」
なんというか、大人の事情が見える。
バルビゾン派じゃちょっとパンチ弱いから、人気のある印象派って言葉を入れよう。
ドービニってマイナーだからなぁ。なんか有名人の名前入れとく?モネとかいつも行列できるじゃん!それにしよ
って感じがすっごいする。
正直ドービニさんのことは知らなかった。日本で個展開催するのは今回が初めてだというくらいだから、まったく有名ではないと思う。
でもこのサブタイトルはねぇ。なんか、バルビゾン派の中心人物というより、二つの流行の狭間で画風が日和った人みたいじゃん。もっと自信持っていこ!

 とはいえ私もドービニのことは知らなかったので、素直に調べます。

シャルル=フランソワ・ドービニー - Wikipedia

シャルル=フランソワ・ドービニは19世紀フランスの画家。自然を愛し、各地を巡って描かれる風景画が中心のバルビゾン派の中心メンバー。「バルビゾンの七星」とも言われています。
最初はサロン入選を目指して歴史風景画(歴史、神話の場面を描きつつも風景がメインとなる絵)を描いていましたが、落選。ふっきれたのか純粋な風景画を描くようになってからブレイクしています。最終的にはサロンの審査員にもなったくらいなので大出世。

春は題材となる風景を求めて旅をし、夏は避暑地で休養。秋冬に絵をパリのアトリエで描いて春にサロンに出品。当時の風景画家たちはそんな生活を送っていたそうです。ゆうが出うらやましいけど、春見てスケッチしたもの夏の間に忘れないのかなぁ、当時カラー写真とかないのになぁと感心する。

水辺の風景が好きで、ボタン号という船をアトリエにして川を下りながら絵を描いたという逸話があります。その船の絵を描いたり、版画集を出したり。
それ、印象派がみんなやってたやつじゃん。
バルビゾンから印象派が派生していったってのは文字通りなんだな。

 ---

シャルル=フランソワ・ドービーニ「聖ヒエロニムス」f:id:minnagi:20190422142102j:image

サロン入選を目指して最初に描いていた頃の作品。
なんていうか、やりたいことはわかるけどサロンに選ばれないのもわかる。
結構大きい絵なのですが、実物を見るとなんか塗り分けがしっかりしているんですよ。グラデーションがかかっていないというか、セル画塗りっぽいというか。
それがいいとか悪いとかじゃなくて、サロン受けはしないだろうなって。
個人的な好みから言うと、この雲は好きじゃないです。岩肌に光があたっているところは好き。

---

シャルル=フランソワ・ドービーニ「オワーズ川、日没」
f:id:minnagi:20190422142119j:image

この人の絵は夕焼けの絵が好きです。
鮮やかに大胆なピンク色に染めた空が眩しいのがとてもきれい。なんだけど、ポストカードにもブックレットにもなかった。もっとまっピンクと言っていいくらいなんだけどな。
正直この川の風景が好きすぎるようで、まったく同じ構図の絵が大量にあって正直ちょっと後半飽きたよ。

木立の裏に隠れた日没が川に反射して、夜の影をぐっと印象付ける絵。眩しい太陽に引き付けられる、詩情のある作品。

 

---

シャルル=フランソワ・ドービーニ「ブドウの収穫」
f:id:minnagi:20190422142123j:image

これが一番好きです。
大胆に広くとられた空、低い台地、穏やかに働く人々。すごく開放感があって、どこまでもいけそうな気がする絵。あっさり簡略化された人物はその広大さをより強く印象付けている。

---

テオドール・ルソー「沼」
f:id:minnagi:20190422142110j:image

これは別の人の絵。同じバルビゾン派のルソーの絵です。
このサイズ感の割にチマチマ描き込まれたシダ類みたいな葉っぱの表現、この時代感がすごいある。
近景も遠景も同じ圧力で、というより近くの人物より遠くの木々の方にピントがあったような作風はめっちゃぐいぐい来る感じであまり見てくつろげるという感じではない。むしろひりひりするような、険しいものを感じる。牧歌的とはほど遠いすごいソリッドな鋭角さ。

中央の密になった木肌が好き。なんとなくベックリンを思い起こさせる。

---

シャルル=フランソワ・ドービーニ「扉絵:船の旅」
f:id:minnagi:20190422142115j:image

彼がアトリエにしていたという船の旅を描いた銅板画。
原版の一部が展示されていたのですが、めちゃくちゃピッカピカだったので驚きました。まったくくすんでいない純銅の鮮やかな色。相当前のものなのに、さびないのかな。
若いころは挿絵画家として働いていただけあって、とても繊細で美しい筆致です。おとぎ話のようなメルヘンさがある。

---

初期は本当にサロンを意識したしっかり丁寧きっちりな絵なのですが、だんだんとのびやかになる様が見ていてよいです。やはり画家は自分が描きたいものを描くのが一番いい。
後期になるとモネ達印象派との交流に影響され、筆触分割のタッチやパレットナイフで描いたような空、色だけでなくごつごつ厚塗りで持ち上げて表現される岩肌なと、描き方が自由になってきます。印象派ではないですね、そういい切るには写実が過ぎる。
しかし写実と自由のバランスがとてもいいと思います。

損保ジャパンは展示の仕方がそっけなくておしゃれさとか工夫とか全然ないんだけど、その分作品数がとても多くてお得な感じあります。