【感想文】シェイヨルという名の星
書籍データ
- タイトル:シェイヨルという名の星
- 作者:コードウェイナー・スミス
- 訳者: 伊藤 典夫
- 読書時間:約2.5時間
- お勧め度:★★★
収録タイトル
う~~ん、困る。この本の評価はとても困る。
ぶっちゃけ、私が悪い。今この本を読むべきじゃなかった。でもそんなん読まなきゃわからんじゃんって言いたい。
この本を読む前に、人に「シリーズ物だけどこれだけ読んで大丈夫かな?」って聞いたんですよ。そしたら「このシリーズはそれぞれ独立してるから大丈夫だよ」って言われたんですね。ならば安心だと読んでみたら、確かに完結した物語なんですよ。前からの続きではないし、次巻に続く終わり方でもない。特にこの一冊は短編集だしね。問題はなかったです。問題は。
でもこれ、全部外伝じゃねーか。
いやほんと、物語の終わりが
「この人こそが後の重要人物○○である」とか
「この一族からあの重要人物○○が排出されるのである」とか
し・ら・ん・わ!!!
はーい、私が悪いんですよねー。既刊読まないでいきなりほぼ最終巻から読んじゃったんですもんねー。失敗ですねー。
チクショ。
1巻から読んでたら、オススメ度は変わるかもしれない。
クラウン・タウンの死夫人
ノーストリリアに名前だけチラリと出てきたド・ジョーンの話。
未来から過去を振り返るような、神話や伝説を語るような、面白い語り口の話。遥か未来の世界が舞台のSFなのに、古代の話をしてる荘厳さがある。
また、伝説となった話を語っているため「この場面はあの有名な絵で知られている」という描写が入るのがよかった。
いちばん有名のは、サン・シゴナンダのあの驚くべき "一筆画"だろう。ーー背景のパネルはむらのないグレイ一色で、左手にかすかな茶と黄、右手にかすかな黒と赤、そして中央に絵の具のこすれた跡と見まがう不思議な白い線、ーーそれがなぜか途方にくれた女エレインと、悲運に祝福された少女ジョーンを想起させる。
この絵、すごく見てみたい。小説だから成り立つ表現で、実際にどんな絵なのかは全くわからないけどその鮮やかさが眼に浮かぶようで、でも形が掴めなくて、気になる。
あと、これ宗教色めっちゃ強いなと思った。名前といいストーリーといい、完全にジャンヌ・ダルクをなぞっている。
宗教が禁じられた世界で
<第一の忘れられた者>の御名において。<第二の忘れられた者>の御名において。<第三の忘れられた者>の御名において。
って、完璧に<父>と<子>と<精霊>の三位一体じゃない。
老いた大地の底で
正直よくわからなかった…。なんなんだよダグラス=オウヤン惑星団って。この話だけなの?前々からの重要要素なの?なんでロードとサンボーイは対決したの?あの二人がなんで戦ったのか全然わからなかった。一人で踊りたいなら踊らせておけばいいじゃないか。テロリスト的な扱いだったのだろうか。
表現とかは面白いけどストーリーは面白くなかった。
帰らぬク・メルのバラッド
これはノーストリリアの外伝。完全にオマケ小説で、これだけ読んでもイマイチな話。ク・メルは魅力的だけどストーリーはひどく単純。
シェイヨルという名の星
これはすごく面白かった。設定も面白いし、牛男のキャラクターも非常に魅力的。ドラッグでトリップしているような怪しい世界。どんどん姿を変える奇怪な人物達。ああ、フルCGで見てみたい。どれほど美しくどれほどおぞましい世界なのだろうか。
ハッピーエンドなのかどうか微妙なオチは弱いなと思うけど、牛男の良さでだいぶ救われてる。
というわけで人類補完機構の本を二冊読んだ。シリーズ物の後半いきなり読んじゃって失敗したなって思う。一巻から読むかどうかは…微妙だなぁ。