人の金で美術館に行きたい

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。

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眠気も吹き飛ぶ豪華さ ルーベンス展 11/10

ふふふ、懸賞に当たりました。

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と言うわけで行ってきましたよルーベンス展。楽しみにしてたんだ。土曜だから、20時まででした。ゆっくり見れていい。

www.tbs.co.jp

上野の森の前を通ったのですが、フェルメール展やばいね。17時過ぎに誇張じゃなく300人くらい並んでたし、それなのに最後尾に「30分で入場」って札を掲げていて。30分でこんだけの人数あの狭い美術館に詰め込んだら芋洗いじゃね?立ち止まることもできなくね?日時指定入場券つけてこれ?って思った。

あそこの運営はちょっとひどいなと前から思ってる。今年のフェルメールは流石にパスします。

 

気を取り直してルーベンス

16世紀のフランドル≒ベルギーの画家ですが、今回の展示ではイタリアで学んだことが強調されていました。古代ギリシア彫刻に学んだところが大きいからでしょう。

作品数は70と少なめですが、当時から評価の高い王宮画家だけあって、大きい作品が多く、下絵はほとんどないので見応えは非常にあります。ゴージャス!ダイナミック!ビューティフル!と分かりやすい作品のためか、最近にしては珍しくキャプションが少なめでした。文書が多いのも面白いけど、それに感想が引きずられることもあるから良し悪しですね。ルーベンスは素直にその迫力に圧倒されてればいいんだね。

 

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「パエトンの墜落」1604-05年

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太陽神(誰なのかは出典による)の息子、パエトンの絵です。太陽を引く馬車を御しきれない彼をゼウスが雷で打ち殺した瞬間。めっちゃダイナミックな構図です。こうして小さい画像で見ると普通に見つかるのだけれど、雷の中央にパエトンがいないので、現物見たときはパエトンを探してしまった。
明暗のくっきりした眩い絵画。

神の雷、という主題はなんとなくサウルの回心を思い出します。それもとても良い絵でした。

 

「ヘスぺリデスの園のヘラクレス」1638年
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「「噂」に耳を傾けるディアネイラ」1638年
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2枚1組の絵。元は向かい合わせで飾られていたとか。

試練の一つとして黄金のリンゴを手に入れるヘラクレスのたくましさ、明るさに対して、その妻ディアネイラはとても不穏な絵です。「噂」のアレゴリーである老婆はヘラクレスの浮気を伝え、そこから生じた不和によりヘラクレスは命を落とすのですが…

浮気してたよね、ヘラクレス

どの本でもディアネイラのせいで死んだ!みたいな扱いなんだけど、浮気したじゃん。噂は真実じゃん。ねぇ。
思いのほかざっくりと荒々しい絵。

 

法悦のマグダラのマリア」1625-28年
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キリストが死んだ後のマグダラのマリアは色んな逸話があるけれど、これは荒れ野に隠居したバージョン。神の恩寵を受けて恍惚と倒れる彼女を天使が支えるというよくわからないシチュエーションの絵。使者のように青白く崩れ落ちるマグダラのマリアがとても美しい。

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「天使に治癒される聖セバスティアヌス」1601-03年ごろ
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ペストの守護聖人、聖セバスティアヌス。この時代も流行したのかなぁと思うけれど、どちらかというと男性の肉体美を追求したのだろうなと思います。
宗教画ではあるけれど、内省を促すような穏やかな絵ではなく、神の威光を伝えるダイナミックな絵が多い。プロテスタント改革に対抗したカトリックにより、民衆の心に訴えるわかりやすく大胆な絵を求められたこと。まだ個人で絵画を所有するほど市民が豊かではなく、教会や宮殿のために大きく華やかな絵を求められていたこと。
そういう時代では、暗い絵は好まれなかったのかもしれません。

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「エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち」1615-16年
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捨てられた 嬰児を発見する姫君、という主題はいろんな神話に現れる人気のものだ。
こちらはモーセではなくエリクトニオス。足が蛇みたいになっていたり、背景の噴水のおっぱいがいっぱいだったり、不思議な絵だ。
こうして見ると、召使であろう老婆がぬっと突き出してくるような、妙な存在感を放っている。
主題としてはヨーロッパの始祖となる初代アテナ王の絵ということで、西洋文化の讃美らしい。華やかで、思わせぶりで、いつまでも見ていられる。

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他にもすごい絵がたくさんあった。
「髭をはやした男の頭部」という絵が好きだ。もじゃもじゃ頭の老人の横顔を描いたものだが、巻き毛が光り輝いて本当に美しい。

ただ、ルーベンスって後世本当に大事にされていたのかな?ってちょっと疑問に思った。
アベルの死」という絵があったが、元は「洗礼者ヨハネの斬首」という絵だったが、18世紀に2度にわたり他の画家が頭、犬、背景を描き足して主題を変えられたそうだ。
頭って…普通、頭勝手に変える?犬とか漫画チックな軽いタッチで全体と全く合っておらず、どうしてこんなことしちゃったんだろうと不思議になる絵だった。
斬首というタイトル、そして頭を足したということから、多分最初は首から先が無かったのだろう。その断面はどんなものだったのだろうか。

「死と罪に勝利するキリスト」も大きくてしっかりした絵だけど妙にのっぺりしていてルーベンス感が無いなと思ったら、後年大幅に修復された時にらしさが失われてしまったそうで、がっかり修復はいつの時代もあるのだなぁと逆に面白くなった。

ルーベンス以外としては、「パトモス島の福音書記者聖ヨハネ」という絵が好きです。
黙示録を幻視する聖ヨハネという激しい主題なのですが、画面は美しく穏やかで素晴らしい。

全体として、明暗のくっきりしたダイナミックでゴージャスな絵なのですが、王宮向け、教会向けというには意外にもざっくりしたタッチで柔らかい雰囲気なのが印象的でした。肌の色も影に青系の色を使っていたりして、女性のふくよか()な体型もあってルノワールを連想させます。動物、とくに馬の描き方などはおなかがプリッとして目がぱっちりとしてドラクロワのものに近い感じです。ルーベンスは16世紀、ドラクロワは19世紀でルノワールは20世紀の人なので、3~4世紀も時代を先取りしている感じです。
もちろん後の2人がルーベンスに学んだことは間違いないのですが、こういったのびのびとした絵の始祖であり一種最初から完成されたものなのだなと思いました。

とてもよかったです。
入場前に京都人にフランダースの犬ごっこを禁じられたのが心残りなので、みなさまにおいては是非これぞという絵を選んで「僕もう眠いんだ」ごっこをお楽しみいただければと思います。