人の金で美術館に行きたい

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。

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ロマン・チェシレヴィチ 引きずり込まれる力

というわけで、15日銀座でヴァニラ画廊を見終わった私はとりあえず満足であった。

しかしまだ昼間。交通費をかけてやってきたのにこのまんま帰るのもなぁ。でもカフェに行くのも高いしなぁ。と考えていたら思いついたのがGGG

今までタイミング合わなくて行けなかったけど、なんかやってるかもじゃな〜い?

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とふらふら来てみたらなんかかっこいいのやってた。このとき気づかなかったんだけど、初日だったんだね。あとで写真を見返して気づいた。
入ってまずびっくりしたのが、大音量で第九を流していたこと。
いや、第九、歓喜の歌は好きだしパッと見ただけでイメージにかなり会うと思ったけどさ、美術展で音楽って珍しいよね。

www.dnp.co.jp

 

そんでまず入口から見ようかな?て思ったら、係員さんが「もうすぐギャラリートークです!」「今からでも参加できます!」って繰り返していてね。気づいたんですよ私。
「はは~ん。これって外部から来賓呼んだはいいけど客がいなくて焦ってるやつだな」って。
そんだから無料だっていうし賑やかしに参加してあげましょうと行ってみたらね。
着席した途端「1時間半を予定しています」って言われたからちょっぴり後悔したよね。ちょっぴりね。
それでもこの作家知らない人だから、解説を聞いてから見たほうが楽しめるかな?と気を取り直したけど後援者の方がポーランドの方でね。同時通訳の人がかなりポーランド語が苦手みたいでね。訳してる量が明らかに少なすぎるし、聞き取れないらしくめっちゃ聞き返してるし、揚句には「えーと、画面に映した英語資料を読んでください」とか言っちゃうしね。
チェシレヴィチの功績について講演者さんがPDFにまとめたのを映しながらの解説だったんだけどさ。だったらせめて文字日本語に訳しておいてほしかったよね……

 

というわけで、ロマン・チェシレヴィチについてはよくわからなかった。ポーランドからパリへと移住したデザイナー。
初期はタイポグラフィやフォトグラフィを使用した主に映画のポスターで活躍。
特にフォトグラフィに関しては当時画期的なデザインであった。
ライフスタイル雑誌「ty i ja」 ティ・イ・ジャ:あなたと私)という雑誌の総合企画やデザインを手がけ、パリ時代はELLEやVOGEのディレクションを行ったり自分で社会問題に関する新聞を出したりもしていた。
ということくらいしかわからなかった。本当はもっといろいろ語ってる空気だった。

 しかしギャラリートークの前に「この後オープニングパーティがあります」「2回に軽食が」「レセプションにもご参加ください」とか言い出して”あ、これ私呼ばれてないのに関係者席に紛れ込んだやつかもしれぬ”と気づいたのでできるだけ小っちゃくなっていました。
だってまわり明らかに日本人じゃないんだもん。ポーランド人なんだもん。どーみても関係者なんだもーんー。

 

ギャラリートーク終わって展示室に戻ったら、みんなパシャパシャ写真撮ってるし係員何にも言わないしなので私も写真撮ってきました。携帯だから写りよくないけど。
もしかしたら関係者だから写真撮ってOKだったのかもしれないけど、禁止ってどこにも書いてなかったもん。なかったもん。 

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ポスター?全体的にほとんどキャプションがないのでわからない。
でもすっごくかっこいい。セクシー。
夜遊びという性的なものに対して、求められている箇所だけを大胆にトリミングしてここだけあればいいのだろう?とあざ笑うかのような挑発的なデザイン。後ろの男性が皆画一的になっているのも、結局みんなこれが目当てなんだろう?と言っているかのよう。
それでもまとめ方がスタイリッシュなので下品さがない。

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「パリの夜遊びガイド」

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 写真の中央を削除して凝縮させたような作品。ルドンとか、水木しげるみたいだね。
こんなキャプションがあった

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 この人が元祖なのかな。単眼の奇怪な男ではあるけれどグロテスクさは無い。
とても奇妙な美しさがある。

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「目の汚染に対してズームせよ(髭のある顔)」

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 かっこいい!かっこいい!かっこよすぎるううううう!
手法、方向性は上と同じなのだけれど、なんてスタイリッシュなのだろうか。
ノワール映画の1シーンのようだ。マジシャンのような、執事のような、殺し屋のような冷徹さがここにある。
異様にセクシー。好き。めっちゃ好き。

映り込み激しくて悲しい。スマホ用の偏光レンズアタッチメント買おうかな。

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ロマン・チェシレヴィチ展ポスター 1975年

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 同じ顔が延々続いて行くのがパッと見ネクタイに見える。
カフカといえばもちろんあの奇妙な世界の物語なわけで、とても雰囲気あっていると思う。…といいつつこの審判という作品は読んだことがないのですが。まなければ。まなければならない本がどんどん増えていく。

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カフカ

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 これも相当好きな作品。
連行されていく男の顔が消えている。誰が何のために連行されているのかわからなくなる。明日は私が彼のように何の前触れもなくとらえられ、弾劾されるのではないかという不安定な気持ちになる。
そう、彼の作品全体に通じるのはこの足元をすくわれるような気持ちだ。 

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ロマン・チェシレヴィチ展ポスター

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 過去の有名作品に他の作品や写真を合成することで新しい作品とするシリーズ。同様の手法のものがたくさんあった。
美術ブログを見に来るような人は知っていると思うが、元の絵はアルブレド・デューラーの自画像だ。そして、正面を向く男の姿というのはキリストを意味している。
正面向きの顔に上を向く横顔の瞳を合成している。それだけで化け物じみて見える不思議。キュプクロスのようなその姿は先に紹介した中央に押し込まれた写真 に通じるものがある。
これはある種のキュビズムなのかしら?

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気候変動シリーズ 祈り

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 こちらも同系列ですね。モナリザの写真を使用した作品はいくつかありました。その中でも大きく取り上げられているのがこの人民服を着たモナリザ
政治的な意味がないとは思えないよねぇ。

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ロマン・チェシレヴィチ展 フォトモンタージュ

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 これは今までとはちょっと毛色の違う作品。
まるでダリだなとおもったら、ちょうど同時代なんですね。そりゃ系統が似るわけだ。流行したんだな。
彼は芸術家ではあるけれど、やはりデザイナーなんだろうなと思った一枚。

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ブルグント公女イヴォナ

 

対してダリは、やっぱり芸術家だなぁと思う。

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参考:サルバトーレ・ダリ 蝶に囲まれたダリのシュルレアリスム的肖像

 

 デザイナーというのが芸術家より下にある、という意味ではない。
デザイナーは芸術家の一分野だ。画家や彫刻家といった分類と同レベルのものだ。
では芸術とデザインは何が違うのか、というか芸術はデザインの一部なわけだが何を持って絵画ではなくデザインだと認識されるのかという私見なんですが。
それはやはり、伝えたいものだと思うんですな。
もちろん古典絵画にだって伝えたいものがあって主題やテーマがある。でも、デザインはそれがより明確にされている。

映画の封切りであったり会社のイメージであったり雑誌の内容であったり。
そういうものを整理して明確に伝えるもの、それがデザインであると思う。

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ロマン・チェシレヴィチの展示は日本初(どの程度のレベルで言ってるかは不明)だそうだけれども、だいぶ日本人好みではないかと思う。特に若い世代に受け入れられそうな気がする。
これからももっと見てみたいなぁ。その時はもう少し詳しい解説を入れてほしいなぁと思う。
展示法もシンプルだけどかっこよくて、大音量の歓喜の歌がぴったりで本当にトリップするのではないかと思うほどだった。
もしかしたら初日だけかもしえれないけれど、あのBGMはぜひ続けてほしいと思う。

 

そしていつか、堂々とレセプションパーティに行きたい…
(始まる前にこそこそ退散しました)