人の金で美術館に行きたい+読

美術館に行った話とか猫の話とかします。美術館に呼んでほしい。あと濫読の記録。




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ぐるぐるしてる 荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ 6/14

www.shiseidogroup.jp

 久しぶりに資生堂パーラーに行ったよ。
入ったとたん、美しき青きドナウが大音量で流れていてなんだろう?ってなった。

Product Placement Ⅱ(シャンデリア)Ⅲ(鏡)h4

f:id:minnagi:20190617151313j:image

メビウスの輪のような光るオブジェ。きれーい。
本当はここまでビッカビカではなくて綺麗に見えるのだけれど、写真に写すとこうなっちゃう。あと、なんか変な位置に残像出る。
奥の鏡は古い資生堂の鏡です。紅い絨毯も作品の一部ってことらしいけど撮り忘れたや。

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The Last Ball

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プロジェクターで大きく動画が写されています。

本展のメインとなる映像作品は、『秋の日本』のなかの「江戸の舞踏会」の章がベースになります。これは、明治18年鹿鳴館で催された舞踏会を訪れたロティが、35歳の自身の視線でその様子を描いた見聞録です。これをもとに芥川龍之介1920年に『舞踏会』を書いていますが、それは、舞踏会でロティのダンスの相手をした17歳の初々しい日本人女性が主人公です。映像では、このふたつを原作として東洋と西洋の「まなざし」がワルツを軸に同じ時空間のなかで交差する情景を作り出します。

とのことです。iPhoneを持った男女に、相手を撮影しつつなるべく自分が写らないように逃げる、という行為をしてもらい、その動きがまるでダンスのようになっているのを全体で撮影。


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男女が撮った動画はスクリーンの裏表から同時に照射。すると裏側の映像が透けて見えて多重露光のように見えます。iPhoneには赤と緑のフィルターをあらかじめ装着しているため、2つの動画が重なる部分だけくっきり見えると言う仕組み。

凝ってるなぁというのが正直な感想。
なんでこんなこと考えちゃうんだろうなぁ。

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戯訳「聖なる都・京都」「日光霊山」「江戸」

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奥の部屋では観光案内みたいな動画も流れていたけど、これは軽く見ただけ。

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すっごい手間暇かけてわけわからんことをしている、というのが正直な感想。
まあまあ面白くて好きです。

あのメビウスの光いいなとおもう。お家廊下の隅の、普段誰も通らないところにひっそりと飾っておきたいような美しさ。

面白かった。

【ネタばれ】粘膜戦士

書籍データ

  • タイトル:粘膜戦士
  • 作者:飴村 行
  • お勧め度:★★★★

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舞台

戦時下(第二次世界大戦?)の日本及び日本占領下の東南アジア小国ナムール。
日本軍はナムールの抗日ゲリラに手を焼いている。
ナムールには爬虫人という種族が人間と共存している。髪が無く顔の中央が隆起し大きな目玉を持つ爬虫人の顔面は爬虫類そっくりだが、人間と同じ知能を持っている。
日本に連れて行かれた爬虫人達は使用人として重宝されている。

収録タイトル

↓粗筋開始(白文字)↓

鉄血

ナムールに駐屯している丸森軍曹、ベカやんとあだ名される男は大佐の私室に呼び出された。そこでベカやんは大佐に同性愛行為を強要される。また、その後も行為に従うならば様々な特典を与えようと持ちかけられる。軍隊で上官に逆らうことはできないこともあり、一度は承諾する。
しかしいざ行為に及ぼうとすると大佐は彼をナイフで切り裂こうとする。
ベカやんは助かるために大佐に調子を合わせなぜそんなことをしようとするのかを語らせる。

大佐はナムールに赴任してから現地の料理が気に入り、究極のナムール料理を求めるうちに現地人が呪われるとして食べない爬虫人の脳みそを食べてしまった。その時から狂気に侵された彼は、性欲の虜となり、爬虫人の頭にある謎な器官を食することで奇跡が起こると信じ込むようになったのだ。大佐はベカやんを切り裂いて犯したうえで器官を食するつもりだった。

ベカやんは大佐を言いくるめて自分に危害を加える前にその器官を食べるさせる。するとベカやんは自分の脳内に何かが侵入してくるのを感じ、それに伴い大佐は廃人のようになる。脳内への侵入者に操られるまま、ベカやんは大佐を刺殺する。大佐に脳を食われた爬虫人がベカやんの体に侵入してきたのだ。

大佐殺しの罪から逃れるため、ベカやんは軍を脱走し、日本を目指す。

肉弾

ナムールで大怪我を負った兵士は治療中にその強い生命力を評価され、人体改造手術を施されてサイボーグ戦士となる。その成果を評価されて大幅に出世した兵士は日本の実家へと戻ってくる。両親と弟に迎えられる兵士。その見た目は半機械といった様子だった。
兄が国の英雄になった弟は学校で教師や級友にもてはやされて戸惑う。

その直後、町にサーカスがやってくる。
猛獣たちを引き連れたパレードの警備にあたった兵士は突然の轟音に驚いた猛獣に襲われ、「故障」してしまう。まるで狂人のように奇声を発して暴走する兵士は軍に引き取られるが、修理不能として除隊扱いで実家へと戻される。

その狂態が町じゅうに知れ渡ったため、家族は非常に肩身の狭い思いをする。弟は学校でひどく虐められるが、教師にすら「兄が自決しないのが悪い」と見捨てられる。

悲惨な状況にショックを受ける弟のところに、級友の優等生が訪ねてくる。そして猛獣が暴れたのが虐めっ子の仕業だと告げ、復讐をそそのかす。言われるがまま、兄に軍からの指令が来たと騙して虐めっ子を殺させる。復讐に手を貸してくれたと思っていた優等生は実は自分の家に都合の悪い虐めっ子一家の殺害を目的としていた。さらに虐めっ子の父も殺すようにと強要する優等生からの指令を受けて呆然とする弟。

その時正気を取り戻した兄は自分が完全に故障してもうすぐ機能停止することを告げる。そして自爆してその場の証拠を全て消すから逃げるようにと弟に告げる。
言われるがまま逃げる弟だが、なかなか爆発が起こらない。もしも自爆前に兄の機能が停止してしまえば、自分たち家族は不名誉除隊の家族なうえ殺人犯の遺族となってしまう。敬愛する兄ではあるが、早く自爆してくれと祈ることしかできないでいる。

柘榴

早くに母を亡くした少年は、祖父母と父、そして厳しい婆やと共に屋敷で暮らしている。祖父は不治の病に冒されており、ベッドの上でまったく体を動かすことができずにいる。少年は祖父に会うことを禁じられている。上流家庭では召使として爬虫人を使うのが一般的なこの国で、婆やは異様に爬虫人を嫌っている。

少年は父と婆やの話の端々から、昔父は誰かと浮気をして母をひどく苦しめ、それを婆やは恨みに思っているのでないかと推測している。
庭に生えているザクロの実を食べようとして婆やから異常なほどの叱責を受け、その下には母の死体が埋まっているのではないかと考えるようになる。

少年は自分の部屋の下、地下から不思議な歌声が聞こえてくるのに気づく。また、夜中に不審な人物が庭をうろついていることにも気づく。
ある日体調を崩した少年は、学校を休む。そして婆やと父がいない隙に地下へと侵入する。
真っ暗な部屋の中には一人の少女が暮らしていた。自分が誰かわかるかと問う少女に、異母姉妹ではないかと答える。
少女の答えは少年の想像を超えるものだった。少女の母は昔父に雇われていた爬虫人の女中だった。性格の悪い正妻=少年の母とうまくいかない父が爬虫人女中と愛し合い生まれたのが少女。それに怒った制裁が爬虫人女中を殺し、庭のザクロの下に埋めたのだという。ショックを受けて倒れる少年。

意識を取り戻した少年は、自分が祖父の部屋にいること、父と祖母がいることに気づく。そして祖父が死んだことを聞かされる。
雇い主である祖父が死んだからと家を出る婆や。
二人の口から祖父が横暴で浮気性のひどい男だったこと、それに耐えかねた祖母が爬虫人の下男と不倫していたこと、祖母と爬虫人下男の間に子供が生まれたこと、二人が結婚したことを告げられる。また、父も自分の娘である地下で暮らしていた爬虫人少女と結婚すると宣言する。
爬虫人と人間が真に愛し合って行為をするとき、異様な快感が生まれるのだという。祖母と父はその中毒のようになっていた。
父はそのうち少年にも爬虫人の女をあてがうことを約束する。

極光

日本の軍事施設で残忍な少佐は部下とともに拷問の準備をしていた。
ナムールゲリラの青年と老人が軍事施設に侵入し、重要書類を盗もうとしたところを拘束されていた。少佐たちの任務は、彼らの窃盗目的、またゲリラたちの最新の情報を得ることだった。

何をされても一言も口を聞かないスパイ二人だが、少佐は青年が主犯で老人はただついてきただけの無能者だと推定する。
青年は鼻の穴に巨大肉食ムカデを入れられる拷問を受けて気絶してしまう。
老人は同じ拷問を受けさせられるが、逆にムカデを噛み砕いて食べてしまう。

青年に何も話さないと誓ったという老人は、口だけを動かし「しゃべらずに」自供を始める。少佐は読唇術でそれを読み取る。

獣姦趣味の老人は若者に軍から重要書類を盗むのを手伝えば大金を与え、しかも軍に飼われている豚を好きにしていいと言われたのだと言う。
やはり老人はただの無能な気違いだと少佐たちは結論付ける。

しかし翌日意識を取り戻した青年の自供は老人のものとは全く異なるものだった。
博打癖があり金に困っていた青年はヘモやんという老人に声をかけられ軍から書類を盗めば大金を渡すと言われ、引き受けていた。また、老人に催眠術をかけられ、自分をナムールの抗日分子で恐れを知らぬ男と思い込まされていたため拷問にも耐えられたが、無視恐怖症のためムカデの拷問で催眠術が溶けて自分の意識を取り戻したのだという。

慌てて老人の牢屋を確認するが、すでに老人は逃亡した後だった。
少佐はかつて軍にいた超有能スパイだが軍上部と揉めて銃殺刑となった男を思い出す。
もしや老人の正体は彼だったのであろうか。

凱旋

第一話、鉄血の主人公ベカやんはひっそりと日本に帰還し、逃走を続けていた。村を目指して山の中を進む彼は、爬虫人の女の死体を発見する。検分していると男に襲われて意識を失う。

気付くとベカやんは手錠をかけられ拘束されていた。襲ってきた男は彼に酒を渡し、酒盛りをするから嘘をつかずに本当のことを言えという。
ベカやんは脱走兵であることを自白するが、とっさに偽名を使ってしまう。男はベカやんの鉄砲を奪い、銃弾を投げ捨てる。そして自分の話を始める。
彼はナムール人と日本人のハーフで、日本で人種差別を受けていた。そんな日本のために命は投げ出せないと徴兵逃れのため森に入り、そこで出会った爬虫人の女中と意気投合し、夫婦同然の生活を送るようになる。爬虫人はカッパのモモ太や不思議な生き物とも知り合いなのだという。
彼らの希望はナムールに行くこと。爬虫人は故郷に帰ることを、男は人種差別を受けない生活を夢見ていた。しかし徴兵逃れの男が海を渡ることは現実的ではなく、男にとってナムール移住は夢物語に過ぎなかった。いつまでも移住を実現しようとしない男と爬虫人は口論となり、男は爬虫人を殺してしまったのだという。

話し終えると男はお前は嘘をついたとベカやんを責める。軍支給の持ち物に書かれていた本名と名乗った偽名が一致しないことが最初からばれていたのだ。
男はベカやんを殺そうとするが、先ほど投げ捨てた銃弾が偶然焚火の中に入っていて、暴発したものにあたって死んでしまう。

命拾いしたベカやんは男の持ち物から手錠のカギをとりだし、自由の身となる。そして先ほどの話にあったカッパに興味を引かれ、会いに行ってみることにする。 

シリーズ第一巻、粘膜人間の前日譚であることが判明する。

↑粗筋終了(白文字)↑

【感想文】粘膜戦士

書籍データ

  • タイトル:粘膜戦士
  • 作者:飴村 行
  • お勧め度:★★★

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一応短編集なのだけれど、全体的に大きな流れがあるので感想は最後。

舞台

戦時下(第二次世界大戦?)の日本及び日本占領下の東南アジア小国ナムール。
日本軍はナムールの抗日ゲリラに手を焼いている。
ナムールには爬虫人という種族が人間と共存している。髪が無く顔の中央が隆起し大きな目玉を持つ爬虫人の顔面は爬虫類そっくりだが、人間と同じ知能を持っている。
日本に連れて行かれた爬虫人達は使用人として重宝されている。

収録タイトル

鉄血

ナムールに駐屯している軍曹は上司である大佐に同性愛行為を強要される。大佐が狂気に冒されていることを見てとった軍曹は命の危機を覚え、このピンチを何とか脱出しようと大佐に調子を合せるが…

肉弾

戦地から自宅に戻った兄はサイボーグと化していた。
国の英雄の弟として人気者になった少年だが、兄が事故で「故障」し「破棄」されたことで非国民の家族に転落することになり…

柘榴

早くに死んだ母。厳しい婆や。不治の病に冒されて見舞いも禁じられた祖父。食べることを禁じられた庭のザクロ。
重苦しい家に住む少年は夜中に不審者が家を出入りしていること、自室の地下から少女の歌声が聞こえてくることに気づく。大人たちの目をかいくぐり少年は地下室へと侵入し…

極光

日本軍の施設に重要書類を盗み出そうとしたゲリラが捕獲された。
強い意志を瞳に宿した青年と、愚鈍な老人。何をされても全く口を聞かない二人に軍人たちは拷問をとり行う。

凱旋

山の中を一人進む脱走兵は突然男に襲われて拘束される。
男の取り調べを交わして自由の身になるため脱走兵は彼に調子を合わせてチャンスを探るが…

感想

 面白かった。読み終わってから表紙を見ると、ああコレはあの話のアレか、ってなって楽しい。
粘膜シリーズは世界観が共通しているだけで各話読み切りだからどれから読んでもいいよって聞いたのだけれど、やはり1巻から読んだ方がよさそうだ。既刊からの登場人物がいて、あとがきで「粘膜○○を読んだ読者はニヤリとするだろう」的なことが描いてあってちょっと悔しかった。

全体に、粘膜シリーズとしてはグロ度が低め。少し悲しい話が多かった。
特に「肉弾」がよかった。この後はどうなるのだろうなぁと。
柘榴は救いようのない話で、「愛し合った人間と爬虫人が結ばれると最高の快楽」という設定だけれど、そうやって快楽のために爬虫人を選ぶことを愛って呼ぶのかなぁとか真剣に考えてしまった。あまりそういうたぐいの話ではないと思うんだけど。
極光はいまいちだった。後書きにもあるように、粘膜兄弟読者に向けたサービス、スピンオフ作品なのかもしれない。まだ読んでないんですよ。手元にはあるから読もうと思う。

粘膜シリーズにしてはパンチが足りなくてちょっと物足りなかった。
もうちょっと派手なシーンがあると良かったなぁ。

めっちゃお得 藝大コレクション展 6/2

藝大コレクション展に行ってきた。
東京藝術大学は当然のことながら明治時代から美術教育のトップをひた走っているので所蔵品がすごい。美術の教科書に出てくる絵は大体ここか西美にあると言っても過言ではない。

www.geidai.ac.jp

そのコレクション展が430円で入場できて、こんな立派なパンフをもらえるのだからめちゃくちゃお得と言っていいと思う。

表紙は原撫松「裸婦像」。温かな質感が魅力的な絵ですが、結構謎なシチュエーションです。壁に何書いてるの?

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6ページだけどこんなに絵が乗っててみっちり解説あるから超得した気持ち。
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三宅 克己「雨模様」

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三宅克己 - Wikipedia

この作品が一番好きです。
明治時代、西洋化政策を推し進めた政府によって若手を海外に芸術留学させていた時期がありました。おりしも印象派全盛期だったこともあり、多くの画家がフランスへ留学するなか、一部の画家たちはイギリスでの勉強を選んだ…というコーナーで紹介されていました。

遥かに広がる畑、遠くに見える建物、そこに群がる雨雲。
こういう高さの無い低い風景って海外特有だよなぁと思います。この位引きで描写したら、日本なら山がこの後ろに表示されると思う。

薄く、無感動と言っていいくらいにあっさりと描かれた田舎の風景。
緻密に描かれた近景と雄大な雲との対比が面白い作品。

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花田 寛「熊野路」

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色がすごく綺麗。日本画は印刷物より絶対実物の方が綺麗。どうしても印刷は色がきつくなってしまうけれど、実物はもっと繊細で美しく、もう少し緑っぽい青。
雄大で写実的で、とても美しい作品。

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「起立工商会社」工芸図案

小林 晴景

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山本 光一

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明治時代、工芸品の製作・輸出を行っていた起立工商会社 - Wikipediaという会社のデザイン帳だそうです。ちょうど海外でジャポニスムが大流行していた時期ですからね。
たぶんだけど上は壺絵、下は絵皿の下絵なような気がする。会社に所属しているデザイナーがこういう絵を描きためて、職人が様々なものに絵付けをする際の指示書として使ったのでしょう。実際よく見ると蒔絵時の色や金粒サイズなどが朱書きで指示されているものもたくさんありました。
カラスの絵でデザインと高浮彫の壺とを並べているものがあって、その再限度が素晴らしかった。
会社がつぶれるときに社員がこれを持って藝大(の前身)に講師として加わったとのことで、詳細は不明だそうです。

 

三浦 文治「動物園行楽」

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これすごい。
ぱっとこれだけ見せられたら、現代作家さんの作品かな?って思ってしまう。

伝統的な日本画の文法で当時の上野動物園を「写生」した作品です。めっちゃきれい緻密に描かれているし、全体のどこか現実離れしたノスタルジア感がよいです。
バンダナとかにプリントして上野動物園のお土産として売ればいいのにって思う。きっと売れる。

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今回はやや展示スペースが少なかったのですが、値段安いし満足度としてはパーフェクトでした。何故か入口の床に高橋由一鮭図が貼ってあってなんでじゃって思った。

他、売店で「小さな絵画展」と言うのがやっていたのですが、撮影禁止だったので割愛。
現代作家の作品青田買いするんなら東京藝大の売店が一番投機として勝率高いんだろうなぁと思いました。まぁ投機はともかく(だってそれって手放さないといけないってことじゃん)、気に入った絵をそのうち買ってみたいなぁ。お小遣いためねば。

【感想文】ローマ貴族9つの習慣

書籍データ

  • タイトル:ローマ貴族 9つの習慣
  • 作者:マルクス・シドニウス・ファルクス(ジェリー・トナー)
  • 訳者:北 綾子
  • お勧め度:★★★★


今日の猫
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職場の同僚に奴隷のしつけ方を勧めてアフィで買わせることに成功したよ!やったね、アフィ初収入★
だけど最低引き出し金額に足りないから引き出せませぬ。くそぅ。

というわけで奴隷のしつけ方を勧めてる時に気づいた続編がこちら。
続編出てたんだ~本って本当に広告下手だよねぇ。続編出たなら出たよって言ってくれないと読めないじゃん。というわけで早速入手して読んでみた。

内容は、歴史雑学ものと自己啓発本を混ぜたような感じ。
古代ローマの貴族である「マルクス・シドニウス・ファルクス」が現在の蛮族(ローマ市民以外)である我々に成功する秘訣と精神についての指導をしてくれる、という構成です。
各章の項目は以下となっています。

  • 地位と財産を築く
  • 貞淑な妻を娶る
  • 円満な家庭を築く
  • 余暇を楽しむ
  • 健康に生きる
  • 神々の加護を受ける
  • ローマ人の精神を身につける
  • 感情を制御する
  • 誉れ高く死ぬ

文章が面白く、内容も興味深いです。
とはいえ当然語り手が古代ローマ人(という設定)なので、現代人にはほとんど参考になりません。
病気になったら神殿に行って神託を受けろとか平然と書いてあるし、男尊女卑もひどい。基本的に女性と奴隷には人権が無いし。

こういう本を読むたびに思うのですが、
「男は人妻と不倫をしてもいいが女は不倫をしてはいけない」
ってなんで当然のことのように言えるんでしょうね…?全ての女が不倫をしないなら、男は当然他人の妻と不倫できるわけないじゃん…?論理学以前の問題じゃない???
もちろん「俺だけは何してもいいの!」って言いたいだけだというのはわかるのですが。
古代~中世の感覚はどうかしている。

とはいえマルクスは(時代の割に)高潔で自己管理のできる男なので、参考になる部分もそれなりにあります。
面白いけど、前作ほどのパンチはないですね。でも読んで損はない本です。

ストーリーはないので粗筋はありません。

 現行本だよ。今すぐ買って僕にアフィ収入を与えよう!

彫刻とは何か 時間/彫刻‐時をかけるかたち 6/2

geidai-sculpture2019.wixsite.com


 

鈴木 弦人「Yggdrasill」

f:id:minnagi:20190603151451j:image

見た瞬間、京都人がゲラゲラ笑いだした作品。
ユグドラシルってこれだよね?ユグドラシル - Wikipedia いや、作品としては面白いけどそんなに声出して笑うか…??私の知らない元ネタがあるのかもしれない。
大きな泉に立つ、仏塔の相輪のような、避雷針やアンテナのような構造物。
面白い(interestinng)だな、カッコいいな、とは思うけど、普通見て笑うようなものではない、よな?
すぐ横に沼田一雅「正木先生像」があって、しらーっと作品を見ているの面白い。
「最近の若もんの作るもんは、わからんちん」とでも言っているかのようだ。
f:id:minnagi:20190603151532j:image木造かと思ったら陶製らしいけど、屋外に置いて大丈夫なのかしら。結構埃で汚れてるよな。

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小塚 照己「石(石膏)」

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画像、端っこ切れちゃった。
すごく大きな、ベンチみたいな石膏像。よく見ると石割りの跡がある。
これは中までみっちり石膏なのだろうか。それとも外側だけで中が空洞なのだろうか。ゼロから作りだしたものだろうか、本物の石を型取りしたものだろうか。
わからないけど、中が空洞ならいいなと思う。上に座ろうとしたら、段ボールみたいにぺちゃんとつぶれてしまえばいいと思う。

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冨井 大祐「LION」

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ブックエンドを組み合わせた作品。同じような作品が他にあと二個あった。名前は商品名のようです。面白いね。

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大巻伸嗣 トキノカゲ

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ツイッターでめっちゃバズってたやつ。
新体操で使うゴースのような薄く大きな布が、下に開けられた5つの穴から出る風によって吹き上げられる。
布の4隅は垂直に張られたテグスへと固定され、その線に沿って上下運動をする。

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言うて見れば非常に単純な仕掛けではある。けれどとても美しく、いつまでも見ていられる魅力がある。

www.youtube.com

動画あった。 

本当に、素直に綺麗だった。フロアにいる人も長時間眺めている人が多かった。ランダムに吹き上がる風と、会場に入る自然風とに翻弄されるゴースの表情は同じものを見せることがない。個人的には、風がやんでゆっくりと床へと降りてゆく瞬間が好きだ。
理屈もいいけどやっぱり綺麗なのが一番だよなぁ。

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テーマが「時間」ということで動きを表すような作品が多かった。
けれども、見ていて彫刻ってなんだろうなぁと考えてしまった。
ブックエンドの組み合わせしている人は、街中で気に入ったもの(ガードレールとか)を写真に撮ってそれをスライドショーにした動画も作品として展示していた。
小箱に小石を入れて内部にカメラを設置して振りまわし、小石がひたすら転がる様を録画した動画を作品としている人もいた。
それって彫刻なんだろうか。
気になったので東京藝大のサイトを見に行ったら、彫刻科の説明にこんなことが書いてあった。

彫刻科では、幅広い造形の研究に重点をおき、過去の美術の歴史や日本美術の伝統を踏まえながら世界に視野を広げ将来の美術を展望できるような豊かな感性を持つ人材の養成が重要であると考えています

立体なら全部彫刻、なのかなぁ。
街中の偶然美しい形となっているもの(ガードレールとか)を見出すことも芸術家の作品であるってのはまぁわかるんですよ。デュシャンの言うところのレデイ・メイドですよね。でもそれを撮影した動画って「彫刻」なのかな…わからぬ…
まぁこの展示企画そのものが

現代における彫刻の意味を探る展示会として企画したもの

ということなので、こうやって『彫刻、とは…』と考えてしまうこと自体がしてやったりなのかもしれません。
ちょっと奇をてらいすぎている感じはあったけど面白かった

背景も作品のうち 藝大彫刻科作品 6/2

上野公園の端には、藝大の展示スペースがある。東京都美術館の横、音楽堂の前だ。

福島 李子「さわれた夢」

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見てなかなかいいじゃんって思ったのですが、写真に撮るとわかりづらいなぁ。
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ウレタンフォームの表面のような、黙々とした中に色々なものが埋まっている。人体とか車とか。写真じゃわかりづらいけど。
「さわれる夢」だけど、いい夢じゃないのかな。悲しい悪夢みたいだ。


地面がすごく黒いのに作品が明るい灰色一色、そして細かい彫刻作品の表面がシマシマ。これじゃ写真時に写るわけもない。実際にはもう少し白っぽい印象なのですが、白飛びしないように撮影するとこうなってしまう。

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君島 英樹「解放」

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これは…いいのだろうか?屋外に飾ることを想定した作品なのだろうか?他の作品に比べてめっちゃ汚くなってない?汚れることも作品のうちなの?
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いろんな質感があって面白いけど、「めっちゃ汚れてる」ってことに意識が行ってあんまちゃんと見れない。
作品説明のポスターでは真っ白だったんですよ。なんだこれは。
屋外に平たい作品置くものだからめっちゃゴミたまってるけど…

狭いところに閉じ込められて真っ暗だったのが、解放されて明るくなる。周囲の光を取り込み反射して輝き、様々な色合いを身につけて行く。
みたいな感じかなぁと思うんだけど。

広い世界に出て行くということは、良くも悪くも純粋だったものが汚れて行くということなのかもしれない。

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林 岳「押入れと宇宙」

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宇宙船みたいなカッコいい作品。岩肌の質感と削られた内部との対比がいいです。
元々ひとつの塊だった岩に菌糸が巣食い、成長するにつれて岩を割り押し上げて行くような。
ある日押し入れを開けたら、別の生命体系が生まれていたような。


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上田 華奈「Rationalist」

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タイトルは合理主義者、純理論者あるいは理性主義という意味です。

理性主義 - Wikipedia

これが一番好き。なんというか、この場所に設置するのにぴったりしている。
規則正しく作られた形、ぐんっと伸びた様。

きっちりとした形は古代ギリシャからの数学的美しさを感じ、また、理論専攻で思いあがった様も感じさせる。

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犬の彫刻もあってかわいかったのだけれど、写真に撮ってみたらなんか地面と色が近いからか何が何屋らだったので省略。
どこに作品を置くかってのも大事なんだな。