絵だけを見に行こう 怖い絵展
去年から楽しみにしていた怖い絵展に行ってきました。
これ、大人気ですね。開始直後から入場1時間待ちとかだし。この元になった本が出たの結構前だと思うんだけど、PRいっぱいしているのかなぁ。
最初は10月8日、開始直後の日曜日に行こうとしたのですが、入場が80分待ちということで断念。そんなに混んでいると、館内も人が多くて見づらいしね。
翌週の月曜日、16日に行ってきたのですが、それでも入場30分待ちでした。
だって、月曜だよ?平日だよ?普通の美術館休みの日だよ?(上野の森美術館は会期中無休です)しかも、結構な雨の日だったよ?なんでこんなに混んでるんだぁ。
怖い絵展、というのは中野京子さんの書かれたそのまんま「怖い絵」という本をベースにした展示です。最初の本は2013年出版だけど、同シリーズをずっと続けてるんだなぁ。二匹目の…げふんげふん。
本の内容は正直、コンセプトは面白いのだけれど絵画について全く詳しくない人が書いているので結構トンデモです。
以前ブログに書いた[本当に怖い絵が見たい 読書感想文・ロンドン塔の王子たち]けど、絵画を前に想像力を逞しく働かせたエッセイ本(婉曲表現)になっています。
でもまぁ美術館に展示する以上は学芸員さんの監修入るから大丈夫でしょう、と思ったんだけどね。
もしかしたらあるかしら?と期待していたヴァニタスは1枚も無くてちょっと残念。まあ、あれは怖いというより寂しいといった方が正しいかもだからねぇ。
ざっくりした感想を言うと、
・全体的にちょっと痛んでいるというか黄変している絵が多かった。
・ルドンやクリンガーなど、好きな画家のものが多くてうれしかった。
・図録に載っているのに展示されていないしパンフにもない絵が多かった。手袋の絵くらいしか会場に展示換えと明記されていなかったと思う。東京以外で表示されたのだろうか。笑う蜘蛛とか見たかった。
・元の本が雑なつくりだから心配していたのだが、解説がちょっといい加減だった。後述。
なんか文句の方が多くなったけど、混雑を乗り越えられるならとてもいい絵が多いので行って損はないと思う。
展示換えについてもう少し明確に教えてくれるなら、もう一度行ってもよいのだが。
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ポール・ドラローシュ 「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
でっけー!!って言うのが最初の感想。額もすごいので、この絵だけ図録に額ごと載っています。
壁一面を埋め尽くす巨大な絵ですが、荒々しいところは全くなくとても丁寧に描かれています。ドレスの質感、人物描写。政治闘争に巻き込まれて政略結婚させられ、英国女王に祭り上げられるもたった9日で退位、処刑されたという幼い少女のあどけなさがよいです。何も知らなかったんだろうなぁ。彼女のドレスを手に呆然とする侍女もとてもいい。この人も処刑対象なのだろうか。
しかし絵のそばにある解説が明らかに間違っている。
中央の白い服の女性、レディ・ジェーン・グレイは既婚者なのだが、その指にある指輪を「婚約指輪」と解説している。それだけならまだ結婚指輪じゃなくて婚約指輪なの?て思う程度だが、別のコーナーでがっつり「結婚指輪」って書いちゃってるんだもの。
その程度はさぁ。統一しようぜ。
そしてこの白い服はコルセットががっつり見えていることからわかるように完璧下着なのですが、「ドレス」としちゃってるし。この絵だけじゃなく会場全体の信頼度が下がるからちゃんとして欲しい。
というわけで、解説は話半分がいいよ。
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ギリシャ神話からの物語。妻を亡くした吟遊詩人オルフェウスは一人身を貫き、それを憎まれた女たちに八つ裂きにされてしまうという物語です。
パステル画かフレスコ画のような淡い色彩だけれど油彩。
竪琴の上に置かれたオルフェウスの首は眠っているかのように穏やかで、とても好きな絵です。
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ギュスターヴ=アドルフ・モッサ 「彼女」
まるで現代のイラストレーションのようだが、1905年に作成された油彩。この作者はもう一つ「飽食のセイレーン」というのも出ていて、それとほぼ同じ顔、髪型。そしてセイレーンに対してマン・イーターという異形の殺戮者。
癖だね。うん、癖だ。作者の性癖ガンガン出てる。好きだよ、そういうの。
膝の上にいる猫の足跡が左側の死体の上にあるのもポイントが高い。
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チャールズ・シムズ 「そして妖精たちは服を持って逃げた」
この人を知ったのが結構収穫かなぁと思う。
夢の中のような物語。乱暴ではないのだけれどあいまいな筆致でぼんやりと描かれた世界の中、現世と異界戸の境界線が溶けて行く感じ。その漠然とした画面が画家の脳内の混乱を表しているようで割と怖いと思う。
空想、イマジネーションというよりは真の狂気がある感じ。
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オーブリー・ビアズリー 「章末飾り」
オスカー・ワイルドの戯曲、サロメの挿絵から最終画像。これが一番好き。仮面のどことなく中華風な奇妙な人物が好き。サロメの棺が化粧箱というのも、死体を好色に見つめるサテュロスも好き。
でもね。ワイルドの二次創作のせいでサロメちゃんがだいぶ悪役になってるのかわいそうだなって思うから、一度でいいから原作読んでほしい。全然彼女悪い子じゃないから。彼女、別に洗礼者ヨハネの首がほしかったわけでも恋をしたわけでもないから。お母さんに強要されただけだから。
該当部分だけでもいいから原作(新約聖書)読んで…→ サロメ (ヘロディアの娘) - Wikipedia
まぁそれはそれとして、この絵も好きだしワイルドのサロメも好きだ。
しかしサロメちゃんはいい子なんだ!てことは覚えていただきたい。
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エドヴァルド・ムンク 「マドンナ」
あああああああ!この絵すきいいいいいいいいい!!!!!!!
前ブログに書いたことがあるけど、これ本当に好きです。
ポストカード買っちゃった。大判のポスターとかあったら買ったけど、ちょっと質の悪い複製画(高い)しかなくて残念。
これは群馬県立近代美術館蔵ってありました。美術館公式サイトにはなぜかないけど。
版画なので、他にも大原美術館とか岐阜県美術館とか日本に何枚かあるようです。私も一枚欲しい。
何を思うのか目を閉じてたゆたうマドンナ、その美しい肌、かきあげる髪の豊かさ、それをつけ狙うとりまきと恐れのあまり近づくことも目を離すこともできない胎児の用に委縮した自分。
本当にすごいいい絵だと思う。
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結構混んでいるし、解説はいい加減だなぁと思うところもある。
しかし展示作品自体は文句なしにすごくいいからお勧めできる展示です。
ミクロの世界 驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ 三井記念美術館
火曜日に三井記念美術館の「驚異の超絶技巧!」展を見に行ったのだが、そのあと仕事が爆発に爆発を重ね、全く語る余裕がなかった。つらかった。www.mitsui-museum.jp
というわけで行ってきたんだよ。
しょっぱなからこんなパネルが貼ってあって期待が高まるね。
入ってすぐの2作品は写真撮影可能。
初代 宮川鉱山 「猫ニ花細工花瓶」
高浮彫でできた猫と花。花はすごく見事だなと思う。猫はちょっと眠り猫みたいでかわいくない。
高橋 賢悟 「origin as a human」
生花をもとに型どりして鋳造しているのだとか。細かいところまで恐ろしく忠実に再現されている。
柴田 是真 「古墨形印籠」
漆芸で作られた印籠。墨にしか見えない面白さと、表面に彫られた数々の楽器の彫刻も見事で楽しめる。触ったらどんな感じなんだろう。すごく気になる。端っこちょっと爪で削ってみたい(だめだけど)。もちろん漆だから固いのだろうけれど、本当なのかなって思う。
あと、墨!と見せかけて漆!なんだけど、さらに実は漆と見せかけて墨だったら面白いなぁ。
春田 幸彦 「優先鞄置物『反逆』」
七宝焼きで作られた鞄。
皮を剥がれ鞄にさせられた蛇が命を取り戻して人間を襲うという趣向だけれど、とてもかわいらしくてこういうカバンがあってもいいなぁと思ってしまう。
うろこの部分もだけれど、革を模した部分も素晴らしい。
本郷 真也 「暁」
カラスをかたどった自在金物。羽が動くそうだ。
今回、自在金物を実際にいくつか動かした映像も展示されていて最高だった。けれどこれは対象じゃなかったなぁ。
この黒の光沢を出すために自動車工場の廃油を使っているというのもまたカラスらしさがあってよいエピソードだなと思った。
稲崎 栄利子 「Arcadia」
ポストカードが気に入るものがなくて、図録の写真もいまいちで、買ったのがこのクリアファイル。
もうどうやって作ってるのかさっぱりわからない。
ベースに小さな陶器のパーツを張り付けては焼くということを繰り返しているらしい。
まるで深海のサンゴ礁のような美しさ。こういうのって、最初にどの程度設計をしているのだろうね。
細かいものが多くてとても楽しかった。行かれるならぜひ嘆願今日を持っていくといい。
私最初怖い絵が見たくて上野行っちゃって、ついてからまだやってないって気づいて急遽こっちに来たから持っていき忘れちゃったんだよね。ちょっと後悔している。
アップで見てもすごいなぁ。
最終日でしたね 文化庁メディア芸術祭
仕事の繁忙期が例年になく爆発していて毎日泣きそうです。
一応行ったけど書く暇がない、「第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」です。
トピックス:「第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」開催 (9/16〜28)|東京オペラシティ文化財団
シン・ゴジラがいたり
漫画が読めたり
意味のない滑らかな動きをするロボットに生命を感じるかという展示。面白い。
電気信号で塩味を感じることができるフォーク。欲しい。
ポスターで綺麗だと思ったこれは、実物はイマイチ。お前、放射能言いたいだけちゃうんかって作品増えたよなぁ。
勝手に石を分類する。面白い。
VRは混みすぎてて無理だった。
早くゆっくり読み書きできるようになりたい。
みそらは語る神の栄誉 オラトリオ 天地創造
忙しすぎてだいぶ心が死んでいます。webを読むのもできないし、ツイッターでもにゃーんしか言えないし。(大げさ
なのでもう9月も終わる頃だというのに8日の話をするのです。なぜならうまく作業が進まなくて空き時間ができてしまったから。
というわけで、じゃん!
9月8日、仕事上がりにオラトリオを聴きに行きました。
オラトリオってのは、なんでしょう、音楽には詳しくないのですが歌劇です。以前セミオペラという触れ込みのよくわからん舞台を見たことがあるのですが、それと同じ。オーケストラと歌で物語を紡いでいきます。
歌詞カードがもらえるので、これが結構わかりやすくて面白い。
打楽器がドンガラ言えば雷だし、管楽器がヒュルリラ言えば風です。今何が起きているのかがBGMで表現される感じ。
天地創造なので最初には混沌があるのですが、その表現が整った不協和音なのも面白い。
みそら、と言って反応する人は恐らく同窓な気がします。
「今日の日は明日に語り。夜行きて、夜に語る。」
これが聞きたくて来たのでした。
もちろん歌詞は日本語ではないし、全体から見ればあっという間に終わってしまう部分。でも聞きに来てよかったなぁと思います。
できれば日本語歌詞のコンサートをして欲しいな。
踊る人形 フィリップ・アペロワ展
本ブログ2回目となる銀座グラフィックギャラリーに土曜行って来た。
フィリップ・アペロワ展が16日までというので、今日を逃すと もう行く暇がねぇ!!と午後からの待ち合わせ前に駆け込みで見て来たけど、日曜ぽっかり予定が空いてあらー?ってなってるありがちなやつ。
1回はこんな感じ。特に作品タイトルや説明もなく置いてあるだけなので、パンフレットと突き合わせてコレか?て自分で判断する。と言ってもどれがどれだかわかんないようなことはないけど。
個人使用なら撮影は可能とのこと。ブログは個人使用なのか?というのは弱小故金銭が発生してるわけじゃないのでグレーのままにしておきたい。
地下はこんな感じー。ポスター作品がメイン。
映像作品もあった。規則正しくめまぐるしく変化するタイポグラフィによる映像は、イッセイ・ミヤケなどのコマーシャルに使われたらしい数十秒のものがエンドレスで流されている。いつまでも見てトリップできるやつ。さすがにこれを勝手にネットのせるのはアウトだろうなぁ。
フィリップ・アペロワはパリのグラフィック・アーティストだ。商業デザインをメインに行っているようだ。
タイポグラフィ、すなわち字組みによるデザイン作品が数多く展示されている。
作品自体はシンプルでリズミカル。しかしサイズ感もあるがパワーはすごい。
面白いなぁと思った作品。
これはエルメスの巨大なスカーフ。ロラン・バルト生誕100周年を記念して製作されたもので、本の全ページを写真に撮って配置したものなのだとか。
すごくいいよね。好きな本で作ってほしい。
これは個展のポスター
めちゃくちゃ鮮やかでくっきりしていて、織物かな?て思ったけど普通に印刷だった。詳細文言の部分も額のアクリルの上に書いてあるのかと思うほどだけど、普通に印刷。
アメリカの小説家、フィリップ・ロスの書いた本のタイトルを組み合わせて肖像画を作り上げたもの。
人はその言葉によって作られる。これ、作者本当にうれしいんじゃないかなぁ。最高の賛辞だよね。
他にもいっぱいあって面白かったよ。ここは無料だしセンスいいから好きだ。