19世紀末最高 ボストン美術館の至宝展
東京都美術館に、ボストン美術館展を見に行った。
最近都美に行くたびに、前の広場で○○国フェアをやっていて、珍しい屋台が出ているのでついご飯を買ってしまう。週末はパキスタンフェアをやっていた。罠だ。
公から資金援助を受けずに有志の寄贈で成り立っているという美術館の性質からか、各作品を寄贈したコレクターの紹介があるのが面白かった。
入ってすぐにエジプト考古学、次いで古代中国に日本画、印象派の頃のフランス絵画と続く展示はちょっと意図がよくわからない。各時代に繋がりがあるわけでもなくバラバラだなぁと。
美術館全体の方針がないと、各コレクションのレベルは高くとも全体のまとまりを欠くのかなと思った。
チラシに使われている絵画。
フィンセント・ファン・ゴッホ「郵便配達人ジョゼフ・ルーラン」1888年
同、「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」1889年
ゆりかごって?と思ったら、女性が持っている紐が、ゆりかごに繋がってて引っ張ると揺れるらしい。一般的なんだね。
力強くてゴッホらしい絵。
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ジョン・シンガーサージェント「ロベール・ド・セヴリュー」1879年
かーわーいーいー
まだ7歳だという少年はスカートスーツを着ています。そろそろ子供服も一般化されているはずの時代だし、デザインも男の子向けって感じ。でもスカート。筆跡が素早くて詳細がわからないけど、年齢的にも女児服って訳でもない気がする。
ミニチュアピンシャーっぽい犬が嫌がってるのもまた良い。無理やり小脇に抱えてるけど、今にも逃げ出しそうに生き生きとしている。
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ジョン・シンガー・サージェント「フィスク・ウォレン夫人(グレッチェン・オズグット)と娘レイチェル」1903年
スキー!と思ってポストカード買ったら同じ作者だった。よほど好きなのか、自分。
背景の聖母子像とモデルの親子のポーズが呼応しているのは、繰り返しでリズムを作る西洋画の一般的手法。
母親が緑の服を着ようとしたけれど画家がNGを出したとあった。多分、娘とのバランスだろう。緑だとドレスの印象が強くなりすぎるから。
描かれている面積は小さいけれど、明らかに娘の方が描き込まれているし、めっちゃ可愛い。多分だけど娘をメインに描きたかったのだと思う。子供が好きなのかな。
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エドガー・ドガ「腕を組んだバレエの踊り子」1872年頃・未完
ドガ好き。すごく好き。この背景の赤、激しい朱色は写真に撮るのが難しい。実物見た方がいい。
ドガの作品は油絵でも厚塗りのパステル画に見えるのが不思議だなぁと思う。色使いが独特なのだと思う。
色を混ぜすぎてどの絵も暗く濁った色をしているし、肌色にこれを使う?てくらい暗褐色、むしろ灰色だったりもする。それが舞台でスポットライトを浴びる姿となると、あやしさと存在感、この世ならざるものな感じがするから好きなのだ。
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トマス・エイキンズ「クイナ猟への出発」 1874年
構図がとても大胆。静かな一場面を切り取っているけれどとても力強い。
海の色がいい。浅瀬を描けと言われて、この色を使う人はなかなかいないだろう。
銀色ですらない、土色の海。光を反射し、海の底を透かし、現れる波の色は確かにこんな色だ。けれど再構築を含まずまたそのままに塗るのは勇気のいることだろうと思う。
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クロード・モネ「くぼ地のヒナゲシ畑、ジヴェルニー近郊」 1885年
ちょっと珍しいタイプのモネ。
鮮やかな色使いと溶け込むような形。穏やかで秘密の庭園みたいな感じがある。
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ポストカードなかったけど、アメリカ絵画で海運業の人を描いた肖像画が良かった。
このサイトの下の方で見れる。
ジョン・シングルトン・コプリー「ジョン・エイモリー」
まだ稚拙で、ペンキ画みたいではある。のっぺりしていると言えばそうだし、ディズニーシーとかに描かれてる壁画っぽいとも言える。
でもこの絵からは風が吹いている。
奥に開かれた海からの風がカーテンを揺らし、画面のこちらまで吹き抜けている。
上手い絵以前に、いい絵ってこうだと思う。
ところで、そんな毎日毎日美術展に行ってるわけじゃないから、最近行った美術館の話はもう終わりだ。明日はどうしよう。
ギラギラ光る 佐々木達郎 漆芸展
日本橋三越のギャラリーで、アヴァンギャルドな漆芸展示をやってた。
漆芸家 佐々木達郎 漆 美の世界 展覧会情報 What's new
新しい漆芸だよね。こういうのいいと思う。
右のとか、宇宙みたいで好きだ。すごく新しいし、新しいだけじゃなくて漆芸の良さが活かされているし、突飛なだけで終わらず確実に美しい。
雅貼り(みやびばり)というオリジナルの様式なのだそうです。大胆で力強い。
パンフになかったけど、兎柄のお皿?がとてもよかった。
中央に金箔で満月が描かれ、その周りを兎たちがぐるりと取り巻いて踊っている。
金箔に反射した光が全体に反射して、蠱惑的だった。本当に月明かりに照らされているみたいな感じがしてよかったんだ。
漆の絵はちょっと切り絵みたいで、古いロシアポスターみたいだ。あんま好きじゃない。
器ものがすごくいいと思う……でもこれ、何に使うんだろ? くぅ、こんないい器を使う文化がないからわからない。
芸術品の理解って、生活レベル要求されるなぁと悲しい感想です。
夏休みの朝みたいな treasure hunting -宝物を探しに-
わざわざ東京市部から日本橋まで行ったのだもの、1個見て終わりにはしないよね。
というわけで、日本橋高島屋の美術画廊X
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淀川テクニック 「イワトビペンギンNo.1」
入口にあるオブジェは、ごみを再利用したものということ。なかなかリアルに作成されています。
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大畑 伸太郎 「虹」
絵画と立体を組み合わせた作品。すごい。どの角度から見てもきっちり見える。
こうして写真に撮ると、光り輝くようだ。
塗りがポリゴンっぽいのもいい。あえて粗い感じにしているのに、質感がすごくリアル。
うーん。しゅーる。
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大畑 伸太郎 「九月の雨」
町田の街並みみたい。アニメみたいな絵がらだけれど、構成力がすごく高い。めちゃくちゃリアルなサイバーパンクだ。何となく物悲しいところも含めて。
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藤永 結 「プリンが好き」
かわいい。玖保キリコさんの絵に似てるなと思った。あんな毒は無いしもっと繊細だけれど。本当に幸せそうでいい。
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藤永 結 「無重力ないしょ話」
上と同じ作者の。色がとてもきれいだし、幸せそうで見ていて楽しくなる。
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いしかわ かずはる 「12番線」
刺繍かな?と思ったけど、糸を貼り付けた作品のようです。12番線っといったら新宿の中央線かな。色も中央線カラーだし。
板や紙に張り付けたものもあるけれど、こうしてガラスに貼ると面白さが際立つね。最小限の線で表現するのもなかなかの技量が必要なんだろうなぁと思う。
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そのほかに立体作品もあったりして面白かった。
ただ、原子爆弾風のものを木馬と組み合わせたオブジェにして原爆ドームの前において写真撮っていた人がいて、クズ野郎だなと思った。私はそういうのが大嫌いだ。センセーショナルさがウリなんて本人の内容が無いことの証拠のようなものだ。人を馬鹿にしたような態度、相手を利用する姿勢も最低だと思う。
全体的に完成度がとても高い作品ばかりだった。無料だし写真撮影可能なのでお勧め。
SAMURAI9 新宿京王プラザホテル 気鋭作家9人、魅惑の絵画展
日本橋で絵画展を見た(一昨日のブログ)ら、出口にこんなチラシがあって。
なんだ、同じ人たちの展示じゃないか。京王プラザホテルって帰り道だし無料っぽいな?と思ったのでついでに行ってきた。
こんな感じでホテルの一角にどどんと飾られています。
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濱田 富貴 「星繭」
虫の卵をモチーフにしているそうです、というのは高島屋の方のキャプション。こっちは特に説明なく作者の略歴と置いてあるだけ。
草の実みたいできれいなんだけど、虫って言われるとなんかぞわぞわするよねぇ。中でうごめいている力が、急に邪悪なものに思えてくる。
なんて思うのは私が虫嫌いだからかしら?
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依田 万実 「Sky Stairs」
これ、どうなのかなぁ。日本画って言うけどそりゃ岩絵の具なんだろうけど全然日本画っぽい描き方していないし、題材もヤコブの梯子(キリスト教)っぽくない?
いっそ油絵の方が向いているのでは?という画風だし、日本画の良さを全く生かしていない。ついでに言うとここに出した2枚も高島屋の方の絵も同じ空へ伸びる梯子の絵で、ワンパターンかよって思った。あんま好きじゃない。
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入江 明日香 「Iris de Sibérie(シベリヤアヤメ)」
やっぱりきれいだねぇと思う。すごく繊細な線で、色づかいもとても素敵。
東華ファンタジーみたいだね。
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入江 明日香 「En tete- a -tete avec la【以下メモミスで不明】(お月見)」
すみません、うまくタイトル撮れて無くて後半がわかんない。「お月見」という日本語タイトルは間違いないのでそれで。
ウサギちゃんかわいい!かわいい!
8月いっぱいやっているし、無料だし、新宿に用のある人は少し足を延ばしてみればいいと思う。
国のお墨付き 文化庁新進芸術家海外研修制度50周年記念展
滅多に郵便が来ないのであまりポストをチェックしないのだけれど、火曜日に久しぶりに開けたらこれが来ていた。
目についた美術チケットプレゼントには全部応募してるんだけど、そのうちの一つにあたっていたのだ。やべーやべー、開催期間短いじゃん!
というわけで、たまたま水曜が午後から私用で有給だったので、午前中日本橋に行ってきました。
いろんなタイプの作家が見れて楽しかったよ。
これすっごい好き!ってのから、絵はうまいけどつまんないもの描くなぁって人から、すごい下手だけど本当に国の奨励受けたの?てのまで。(失礼が過ぎる)
もっと長くやればいいのになぁ。
数が多いからコメントは簡単に。
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呉 亜沙「metabolism」
かわいい。ひたすらかわいい。色がすごくきれいで気に入った。
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入江 明日香 「la forèt noire」
ねこたんかわいい!
環境破壊で消えかけた自然の神が、自然保護により復活している姿みたいなコメントがついていた。足元の烏とか、攻撃形態に転身してるようにも見える。
ラノベの表紙みたいだけど好きだよ。
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西田 俊英 「月と孔雀」
印刷だと消えちゃうけど、背景の木目っぽいのとか、尾から星屑が撒かれてるのとかとてもきれい。
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松永 久 「相」
抽象画。紺色の絵の具をスクレイパーでガッと伸ばしている。水を連想する。とても夏らしく涼やかでよい。
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齋藤 研 「風景」
このサイズの画像だと完全につぶれてるけど、背景の木の部分が縦線で表現されていて面白い。微妙な色、線の長さと太さで森と木々が生まれている。
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山内 和則 「室内」
明るい、フランス絵画のような作品。現代的な蛍光色のような色がとても良い。外と内をつなぐ二重世界。扉からテーブルに落ちる影の色が好きだ。
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石黒 健一郎 「SHAFT TOWER(奔別)」
この人ホキ美術館で見た!相変わらずすごい描写力。そしてただ写生力で終わらない情緒。廃墟を描きながら、暑い夏の日のさわやかさがある。
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ところで、後半の画像がすごい小さくて荒いのにお気づきでしょうか。
今回、ポストカード少なかったんですよ。そしてその代わりにこんな公式グッツがっ!
ほぼ全作品を掲載した二つ折りクリアファイル!
くそぅ、クリアファイルなんて使わないのに買ってしまった。だって、図録よりずっと安いんだもの。このグッツはとてもいいですね。
気に入った作品が全部ポストカードにあるとは限らないし、図録はかさばるし気に入らなかったものも載っているし。
これならすごい思い出になるし、見れば本物を見たときのことを思い出していろいろ感想がわいてくる。
他の美術展でも作ってくれればいいのになぁと思います。権利関係難しいかな。
ちなみに、今回チケットがあたったのはこのサイト。メジャーどころは全く当たらないが、マイナー展示の当選は2回目です。
実は続きます。
アイアン・メイデン 明治大学博物館
明大博物館に行った話には続きがある。
常設展の話をしていないじゃないか。
明大を建てるときに色々発掘されたというものが展示されている。
おままごとセット、かわいい。庶民が使用していたものだろうけれど、意外と精巧にできている。
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図解五十五箇条(えときごじゅうごかじょう)
庶民が守るべき規律的なものが描かれています。なんだろう、江戸しぐさ()的な?
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ほらこれ、時代劇に出てくる奴!
高札 キリシタン禁制
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複製品だそうですが、サイズがよくわかるね。
ギロチン
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こちらも複製品
アイアン・メイデンといえば内部に仕込まれた針のイメージが強いけれど、これは後付けではないかという説が有力だそうで。
元々針はなかったのではないか。
恥辱刑として、ただの檻として使われたのではないか。この中に閉じ込められた人が出してくれと騒ぐのを嘲笑する目的で使用されたのではないかという説明でした。
その割に、針ついてるんだけどな。
考古学コーナーとかもあったけれど、それはどでもないかな。
にしても何で明大で刑事なんだろうねぇ。あんまりそういうイメージないけれどね。
法学といえば我が母校中央大学が有名だと思うのですが、中大博物館は無いようです。
こういう所に大学の力って出るのかなぁ。